73 / 255
決着 進化するメタルゾンビちょんぱさん
しおりを挟む
「なん、なんだ……あいつら寄ってたかって」
もう無事な所を探すのが難しくなってきた議員会館の三階、このフロアは基本的に従業員の休憩室や更衣室、食堂などが備えられていて……ようやく何とか人に見えるようになったゾンビちょんぱさんは女子更衣室に潜んでいた。
「大体なんで僕に付きまというんだよ? 僕はあのおもちゃで遊びたいだけだぜ?」
実際には国を跨いで悪い事を繰り返しているテロリストとは思えないほど子供のような主張である。
「くっそ……好き放題やりやがって。おかげであんなに用意した予備が後一つじゃないか。もういいや、角を回収してさっさと逃げよう。何回でも仕切りなおせるんだし」
この国で人身売買した時に手に入れた分はすでに加工が終わっていた。だからこそのゾンビちょんぱなのであるがもうそのストックが尽きようとしている。そもそも何の準備も無ければキズナの初回キックで意識を保てたかどうかも怪しい。
――ばたばたばたばた……
真っ暗な更衣室の外では偶に数人の足音が響いている。キズナたちがゾンビちょんぱを捜索して破壊する事を諦めていない証だ。
「だけど、なんで今は転移できない事がバレてるんだ?」
もうちょっとだけ身体を治してから行こう。せめて人ごみに紛れる事が可能なくらいに。
幸い服はここにあるのを適当に見繕えばいい。
―― そのころの洞爺達 ―
「意外と逃げ足が速いぞあ奴」
「一体何回ぶっ壊せば良いんだありゃあ……姉貴よりしぶてぇなメタルゾンビちょんぱ」
「いい加減その呼び名も語呂が悪いのう」
たったったっ、と軽快な足取りで三階を探索する洞爺とキズナ。
お互い刀を扱うためか間の取り方とかが似通っていて即席にしては良いコンビとも言えた。しかし悲しいかな、まだ一度もメタルゾンビちょんぱを見つけられていない。
ちなみにダントツで半狂乱夜音&暫定鈍器の牡丹ペアは二桁に届くほど遭遇していたりする。
「姉貴がいりゃあ見つけやすいんだけどな」
エキドナ本人は『ちょっと気になるからこの階を探すねぇ。任せた二人とも!』と先ほどの狩場で何かをし始めていた。
「無いものねだりしてもしょうがあるまい、む?」
廊下の突き当り、暗闇で見えづらいが誰かが駆け寄ってくるのが視界に入る。
「洞爺、キズナ」
夜音たちと合流したはずのクワイエットだった。
「そういえばあのパンク娘の泣き声止まったわね」
「じゃな、なんぞ通達か?」
確かにこのまま闇雲に探しても見つからなさそうなので相談したい、同時にクワイエットにはちょんぱのしぶとさの秘密とかを共有しておかなければならなかった。
「夜音と牡丹は二階で逃走経路をつぶす。俺たちで各部屋をしらみつぶしに探そう……エキドナは?」
「姉貴は上の階で何か調べてる、あたしとじいさんはとりあえず走り回っていた」
「……三人一組でやるか。まずは……ここからかな?」
――『女子更衣室』――
片側開きの木製の扉、そのど真ん中に分かりやすく札がかけられていた。
普段であればここで働くメイドさんや職員さんが着替えている場所。
「じゃな、嬢ちゃん。済まんが見てきてくれるか?」
「は? いいじゃん一緒に行けば」
「……男子禁制じゃろどう考えても」
「緊急緊急、パンツ位盗んでもあたしは誰にも言わない。パパならこれ幸いとばかりに品定めまですると信じてる」
「妻が居るから結構じゃ。ええい、問答する時間が惜しい……クワイエット殿、出入り口の警戒を頼む。儂と嬢ちゃんで行く」
「了解、まあ一発目から出くわすことは無いだろうが」
フラグ建築屋クワイエットさんである。
しゃきん、と手入れが行き届いたナイフを両手に構えて周りを警戒しつつも肩の力を抜いていた。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
「お主意外と古い言い回し知っとるの」
目線で洞爺がキズナに扉を開けるよう促す。
軽く頷いてキズナは刀の持つ手を反対側の手、左手で押すが……ぎしっ、と軋むだけで開かない。
「……手前開きか?」
今度は洞爺がドアノブに手をかけて退くが……みしっ、とドアの枠が当たる。どう考えても押し込むしかなかった。
「鍵かけてんじゃねぇ? あたしが開ける」
なるほど、言われてみれば夜音が脅かしていたとはいえ帰る際に施錠位はするか。
洞爺も納得し、キズナに場所を譲る。
「こんな簡単な鍵ちょちょいのチョイ……」
――かちゃん
ポケットから針金を数本出したキズナがあっという間に開錠する。
「よし、じゃあ開けるぜ!」
キズナが意気揚々とドアノブを捻った。そもそもこの期に及んで鍵が締まってるならこの中にちょんぱはいないだろう。居るなら鍵は空いてるはずだからだ。
ぐっと押し込むと……開かない。
「あれ? 開かねぇ……くぬっ」
ガチャガチャとドアノブを捻るとどうやら……鍵がかかっている。
「なんで? あたし開けたよな?」
「もしかして今の音、鍵がかかったのではないかのう?」
「こういうのってやたらイライラするのよね」
「「……(わかる)」」
面倒くさくなりキズナは即断即決、刀で扉を斬る。
無造作に分割された木製の扉はがらがらと……ドアノブだけをその場に残して崩れ去った。
そして、扉の開かなかった原因が姿を現す。
立って居たのは曖昧な笑みを浮かべる金髪で青い瞳の半裸の少年……ではなく。なぜかメイド服を着ているちょんぱだった。
一秒……二秒…………三秒。
たっぷり三秒間、世界は止まる。
「何やってんの?」
「に、逃げ遅れて」
ある意味嘘は言ってないが、どう見ても変態さんである。
洞爺は牡丹である程度慣れているのか、きっとメイドにでも変装して逃げ遅れた振りをしつつ逃げおおせる真っ最中に踏み込まれかけてやむを得ず身支度途中でドアを開けさせまいと奮闘していた。
という百点満点の推察をしている。
「却下だ、変態女装メタルゾンビメイドちょんぱ」
力任せにキズナは刀を振り下ろした。
もう無事な所を探すのが難しくなってきた議員会館の三階、このフロアは基本的に従業員の休憩室や更衣室、食堂などが備えられていて……ようやく何とか人に見えるようになったゾンビちょんぱさんは女子更衣室に潜んでいた。
「大体なんで僕に付きまというんだよ? 僕はあのおもちゃで遊びたいだけだぜ?」
実際には国を跨いで悪い事を繰り返しているテロリストとは思えないほど子供のような主張である。
「くっそ……好き放題やりやがって。おかげであんなに用意した予備が後一つじゃないか。もういいや、角を回収してさっさと逃げよう。何回でも仕切りなおせるんだし」
この国で人身売買した時に手に入れた分はすでに加工が終わっていた。だからこそのゾンビちょんぱなのであるがもうそのストックが尽きようとしている。そもそも何の準備も無ければキズナの初回キックで意識を保てたかどうかも怪しい。
――ばたばたばたばた……
真っ暗な更衣室の外では偶に数人の足音が響いている。キズナたちがゾンビちょんぱを捜索して破壊する事を諦めていない証だ。
「だけど、なんで今は転移できない事がバレてるんだ?」
もうちょっとだけ身体を治してから行こう。せめて人ごみに紛れる事が可能なくらいに。
幸い服はここにあるのを適当に見繕えばいい。
―― そのころの洞爺達 ―
「意外と逃げ足が速いぞあ奴」
「一体何回ぶっ壊せば良いんだありゃあ……姉貴よりしぶてぇなメタルゾンビちょんぱ」
「いい加減その呼び名も語呂が悪いのう」
たったったっ、と軽快な足取りで三階を探索する洞爺とキズナ。
お互い刀を扱うためか間の取り方とかが似通っていて即席にしては良いコンビとも言えた。しかし悲しいかな、まだ一度もメタルゾンビちょんぱを見つけられていない。
ちなみにダントツで半狂乱夜音&暫定鈍器の牡丹ペアは二桁に届くほど遭遇していたりする。
「姉貴がいりゃあ見つけやすいんだけどな」
エキドナ本人は『ちょっと気になるからこの階を探すねぇ。任せた二人とも!』と先ほどの狩場で何かをし始めていた。
「無いものねだりしてもしょうがあるまい、む?」
廊下の突き当り、暗闇で見えづらいが誰かが駆け寄ってくるのが視界に入る。
「洞爺、キズナ」
夜音たちと合流したはずのクワイエットだった。
「そういえばあのパンク娘の泣き声止まったわね」
「じゃな、なんぞ通達か?」
確かにこのまま闇雲に探しても見つからなさそうなので相談したい、同時にクワイエットにはちょんぱのしぶとさの秘密とかを共有しておかなければならなかった。
「夜音と牡丹は二階で逃走経路をつぶす。俺たちで各部屋をしらみつぶしに探そう……エキドナは?」
「姉貴は上の階で何か調べてる、あたしとじいさんはとりあえず走り回っていた」
「……三人一組でやるか。まずは……ここからかな?」
――『女子更衣室』――
片側開きの木製の扉、そのど真ん中に分かりやすく札がかけられていた。
普段であればここで働くメイドさんや職員さんが着替えている場所。
「じゃな、嬢ちゃん。済まんが見てきてくれるか?」
「は? いいじゃん一緒に行けば」
「……男子禁制じゃろどう考えても」
「緊急緊急、パンツ位盗んでもあたしは誰にも言わない。パパならこれ幸いとばかりに品定めまですると信じてる」
「妻が居るから結構じゃ。ええい、問答する時間が惜しい……クワイエット殿、出入り口の警戒を頼む。儂と嬢ちゃんで行く」
「了解、まあ一発目から出くわすことは無いだろうが」
フラグ建築屋クワイエットさんである。
しゃきん、と手入れが行き届いたナイフを両手に構えて周りを警戒しつつも肩の力を抜いていた。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
「お主意外と古い言い回し知っとるの」
目線で洞爺がキズナに扉を開けるよう促す。
軽く頷いてキズナは刀の持つ手を反対側の手、左手で押すが……ぎしっ、と軋むだけで開かない。
「……手前開きか?」
今度は洞爺がドアノブに手をかけて退くが……みしっ、とドアの枠が当たる。どう考えても押し込むしかなかった。
「鍵かけてんじゃねぇ? あたしが開ける」
なるほど、言われてみれば夜音が脅かしていたとはいえ帰る際に施錠位はするか。
洞爺も納得し、キズナに場所を譲る。
「こんな簡単な鍵ちょちょいのチョイ……」
――かちゃん
ポケットから針金を数本出したキズナがあっという間に開錠する。
「よし、じゃあ開けるぜ!」
キズナが意気揚々とドアノブを捻った。そもそもこの期に及んで鍵が締まってるならこの中にちょんぱはいないだろう。居るなら鍵は空いてるはずだからだ。
ぐっと押し込むと……開かない。
「あれ? 開かねぇ……くぬっ」
ガチャガチャとドアノブを捻るとどうやら……鍵がかかっている。
「なんで? あたし開けたよな?」
「もしかして今の音、鍵がかかったのではないかのう?」
「こういうのってやたらイライラするのよね」
「「……(わかる)」」
面倒くさくなりキズナは即断即決、刀で扉を斬る。
無造作に分割された木製の扉はがらがらと……ドアノブだけをその場に残して崩れ去った。
そして、扉の開かなかった原因が姿を現す。
立って居たのは曖昧な笑みを浮かべる金髪で青い瞳の半裸の少年……ではなく。なぜかメイド服を着ているちょんぱだった。
一秒……二秒…………三秒。
たっぷり三秒間、世界は止まる。
「何やってんの?」
「に、逃げ遅れて」
ある意味嘘は言ってないが、どう見ても変態さんである。
洞爺は牡丹である程度慣れているのか、きっとメイドにでも変装して逃げ遅れた振りをしつつ逃げおおせる真っ最中に踏み込まれかけてやむを得ず身支度途中でドアを開けさせまいと奮闘していた。
という百点満点の推察をしている。
「却下だ、変態女装メタルゾンビメイドちょんぱ」
力任せにキズナは刀を振り下ろした。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。


クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる