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一番怖いのだーれだ?
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「……夜音ちゃんのヘルプコール。真司、準備は良い?」
「いつでもいいけど、今の悲鳴なんかおかしくない?」
議員会館の三階が突如窓ガラスという窓ガラスがひび割れて、夜音の絶叫が轟いた。
牡丹を治すために弥生の所まで移動してきた真司の耳にももちろんそれは届いている。
「まあ本当なら夜音ちゃんの分身人形が血を吐いたりうめき声を上げたら合図なんだけど」
「どう考えても痴漢か何かに遭遇したっぽいよね? アレ」
「微妙な判断だけど……撃とうか?」
「クワイエット兄に確認してもらったら? なんかまだ夜音の泣き声続いてるんだけど……」
いやぁぁぁ、とか、みにゃああぁぁぁ、など弥生や真司が遊園地でよく聞く様な内容である。
とてもじゃないが痛みに耐えてたりと戦っている感じではない。
「……そうしようか」
「じゃあ、合図出すね」
ローブのポケットから一枚の紙を取り出して真司は月明かりがきれいな夜に掲げた。
「我望むは闇を照らすささやかな灯火なり」
ぽんっ! と気が抜けたような空気音と共に黄色い球体が空へと飛んでいき……しばらくすると真っ白に輝き始めた。魔法士ギルドに行けば一枚いくらで、それこそ子供のお小遣いでも買えるごくごく一般的な物である。
「……あ、見つけた。クワイエット兄が降りていく」
その明かりに照らされて一匹の飛竜とその背に乗る人物が議員会館へ向かっていったのを弥生と真司が確認した。
「なんでもなければ良いけどね。皆無事だと良いなぁ」
「そう願うよ、本当にとっておきだからね僕の魔法もレンのブレスも……フィン姉のあの魔法も」
「個人的にはあの気持ち悪いちょんぱとは会いたくないからそれも辞さない……」
「上手い事追い詰めている場所がわかったらプランZZでやるから……我慢してよ姉ちゃん」
「はーい」
正直な所、弥生自身は先ほど愚痴をこぼした通りちょんぱがここにいて一般人が誰も居なければ即座にプランZで手っ取り早く葬りたい。なにせ飛竜のジェミニと、その相棒である空挺騎士『イスト』の仇である。それに……あのちょんぱは弥生の家族である真司も危険な目に合わせた。
この場合は弥生に慈悲はない。敵は『死』あるのみ。
「きっとエキドナ姉が上手くやってくれるよ。あんな高い物……オル姉が用意したの?」
「内緒~」
「怖い怖い、姉ちゃんを本気で怒らせるだなんてちょんぱは間抜けだね。地の果てまで追いつめられるのに」
そう呟いた真司は肩をすくめて姉の隣にちょこんと座りこむ。
そろそろ戦闘開始から一時間、予定通り作戦終了が近づいていた。
――そのころの夜音ちゃん――
「うああぁぁぁん!! 目玉がぁ!! 脳があぁ!? ひぃぃ! これ内臓!?」
「そうね、もうとっくにゾンビちょんぽの内臓はないぞう~」
なんだか牡丹の頭が真っ赤に染まり、でかいたんこぶが連なっている。
いまだに取り乱している夜音の暫定武装と化している彼女の顔は貧血で青ざめていた。
「いぃぃぃやああぁぁ!!!」
「そろそろ私の頭が砕けるわね」
三階の廊下は石造りでざらざらしてるし、時折偶発的に遭遇するゾンビちょんぱを力任せに牡丹で殴り。散々な目にあっているが彼女は……自業自得である。自業自得。大事な事なので二回記しておくが。
「あ、夜音。灯りよ……あれはクワイエットの投入合図だわ。だからお願い、離して……」
だんだん走馬灯が見え始めた牡丹だが、ちゃんと合図を覚えていた。
「へ!? え? あ……やよいぃぃ! ありがとぉぉ」
自分の思いが届いて安心したのだろう。夜音さんはぽいっと牡丹を脇に捨ててぺたんと腰を抜かしてしまう。鼻水は垂れるわ涙で目は真っ赤で庇護欲をそそられる感じだったのだが……隣で顔相が変わるくらい擦られ叩かれまくった牡丹のせいで猟奇的な何かを発していた。
――お、見つけた
がしゃん! と割れ欠けた窓を蹴破って黒髪の青年が廊下に飛び込んでくる。
今回協力してくれているジェミニに乗って追加戦力として待機していたのだ。もちろん出番がなくともちょんぱが逃走しない様に見張る役や、怪我人が出た時の搬送も彼の大事な役目である。
今回は真面目に戦うのでちゃんと黒い装束で何本ものナイフやいくつかの魔法具も準備して、完全武装だ。
「くわいえっとぉぉぉ! ごわがったぁぁ!」
「なんだなんだ!? いきなり……うおっ!! 牡丹、大丈夫なのか!? すごい怪我じゃないか!!」
その怪我のほぼ十割が夜音によるものであるとは露知らず、クワイエットが心配する。
「か、回復を……」
のろのろと手を伸ばす牡丹にクワイエットは腰に括り付けてある一本の小瓶の栓をきゅぽん! と小気味のいい音を立てて抜く。
「直接かけるぞ」
透明の液体を一番怪我が酷そうな……と言うかそこしか怪我をしていないのだが牡丹の頭に振りかける。するとしゅわしゅわとすぐに蒸発を初めて怪我を塞いでいった。
「助かったわ、死ぬところだった」
「何があった、あのちょんぱはやっぱり強かったのか?」
「いや、これは夜音に」
「……何をやらかしたお前」
「真っ先に私を疑うなんてひどい男ね、クワイエット」
「普段の言動について胸に手を当てて思い出してみろ」
「品行方正な一般市民じゃない」
「……お前、本気でそう思ってる節があるから怖い」
なんにせよ、とりあえず夜音と牡丹の安全を確認できたクワイエットは次の行動に移る。
もちろん残りのエキドナ、洞爺、キズナと合流してあのちょんぱと戦うのだ。
「そうそう、洞爺さんたちの安否がわからないわ。死んではいないと思うけど」
「そういう事は速く言ってくれ……大丈夫だ。洞爺殿達が自分らは良いから三階を駆け回って合流できない君らと合流を、と聞いてここにいるからな」
「ちょんぱは?」
「なんだか逃げ回っているらしい、エキドナがあいつの弱点を掴んでいるから必死だろう」
ゾンビちょんぱが逃げ回る際に夜音が問答無用で殴るため、三階に留まっているがさっさと逃げたいのは変わっていなかった。
「じゃあ行っていいわ、夜音も落ち着いたし」
「…………」
「そんな目で見ないで、いやもう本気で反省してるから……」
「夜音、大丈夫か?」
「大丈夫……」
ヒックヒックとしゃくりあげているが大分落ち着いた夜音を見て、クワイエットもここを牡丹に……非常に不安だが任せる事にした。
「いつでもいいけど、今の悲鳴なんかおかしくない?」
議員会館の三階が突如窓ガラスという窓ガラスがひび割れて、夜音の絶叫が轟いた。
牡丹を治すために弥生の所まで移動してきた真司の耳にももちろんそれは届いている。
「まあ本当なら夜音ちゃんの分身人形が血を吐いたりうめき声を上げたら合図なんだけど」
「どう考えても痴漢か何かに遭遇したっぽいよね? アレ」
「微妙な判断だけど……撃とうか?」
「クワイエット兄に確認してもらったら? なんかまだ夜音の泣き声続いてるんだけど……」
いやぁぁぁ、とか、みにゃああぁぁぁ、など弥生や真司が遊園地でよく聞く様な内容である。
とてもじゃないが痛みに耐えてたりと戦っている感じではない。
「……そうしようか」
「じゃあ、合図出すね」
ローブのポケットから一枚の紙を取り出して真司は月明かりがきれいな夜に掲げた。
「我望むは闇を照らすささやかな灯火なり」
ぽんっ! と気が抜けたような空気音と共に黄色い球体が空へと飛んでいき……しばらくすると真っ白に輝き始めた。魔法士ギルドに行けば一枚いくらで、それこそ子供のお小遣いでも買えるごくごく一般的な物である。
「……あ、見つけた。クワイエット兄が降りていく」
その明かりに照らされて一匹の飛竜とその背に乗る人物が議員会館へ向かっていったのを弥生と真司が確認した。
「なんでもなければ良いけどね。皆無事だと良いなぁ」
「そう願うよ、本当にとっておきだからね僕の魔法もレンのブレスも……フィン姉のあの魔法も」
「個人的にはあの気持ち悪いちょんぱとは会いたくないからそれも辞さない……」
「上手い事追い詰めている場所がわかったらプランZZでやるから……我慢してよ姉ちゃん」
「はーい」
正直な所、弥生自身は先ほど愚痴をこぼした通りちょんぱがここにいて一般人が誰も居なければ即座にプランZで手っ取り早く葬りたい。なにせ飛竜のジェミニと、その相棒である空挺騎士『イスト』の仇である。それに……あのちょんぱは弥生の家族である真司も危険な目に合わせた。
この場合は弥生に慈悲はない。敵は『死』あるのみ。
「きっとエキドナ姉が上手くやってくれるよ。あんな高い物……オル姉が用意したの?」
「内緒~」
「怖い怖い、姉ちゃんを本気で怒らせるだなんてちょんぱは間抜けだね。地の果てまで追いつめられるのに」
そう呟いた真司は肩をすくめて姉の隣にちょこんと座りこむ。
そろそろ戦闘開始から一時間、予定通り作戦終了が近づいていた。
――そのころの夜音ちゃん――
「うああぁぁぁん!! 目玉がぁ!! 脳があぁ!? ひぃぃ! これ内臓!?」
「そうね、もうとっくにゾンビちょんぽの内臓はないぞう~」
なんだか牡丹の頭が真っ赤に染まり、でかいたんこぶが連なっている。
いまだに取り乱している夜音の暫定武装と化している彼女の顔は貧血で青ざめていた。
「いぃぃぃやああぁぁ!!!」
「そろそろ私の頭が砕けるわね」
三階の廊下は石造りでざらざらしてるし、時折偶発的に遭遇するゾンビちょんぱを力任せに牡丹で殴り。散々な目にあっているが彼女は……自業自得である。自業自得。大事な事なので二回記しておくが。
「あ、夜音。灯りよ……あれはクワイエットの投入合図だわ。だからお願い、離して……」
だんだん走馬灯が見え始めた牡丹だが、ちゃんと合図を覚えていた。
「へ!? え? あ……やよいぃぃ! ありがとぉぉ」
自分の思いが届いて安心したのだろう。夜音さんはぽいっと牡丹を脇に捨ててぺたんと腰を抜かしてしまう。鼻水は垂れるわ涙で目は真っ赤で庇護欲をそそられる感じだったのだが……隣で顔相が変わるくらい擦られ叩かれまくった牡丹のせいで猟奇的な何かを発していた。
――お、見つけた
がしゃん! と割れ欠けた窓を蹴破って黒髪の青年が廊下に飛び込んでくる。
今回協力してくれているジェミニに乗って追加戦力として待機していたのだ。もちろん出番がなくともちょんぱが逃走しない様に見張る役や、怪我人が出た時の搬送も彼の大事な役目である。
今回は真面目に戦うのでちゃんと黒い装束で何本ものナイフやいくつかの魔法具も準備して、完全武装だ。
「くわいえっとぉぉぉ! ごわがったぁぁ!」
「なんだなんだ!? いきなり……うおっ!! 牡丹、大丈夫なのか!? すごい怪我じゃないか!!」
その怪我のほぼ十割が夜音によるものであるとは露知らず、クワイエットが心配する。
「か、回復を……」
のろのろと手を伸ばす牡丹にクワイエットは腰に括り付けてある一本の小瓶の栓をきゅぽん! と小気味のいい音を立てて抜く。
「直接かけるぞ」
透明の液体を一番怪我が酷そうな……と言うかそこしか怪我をしていないのだが牡丹の頭に振りかける。するとしゅわしゅわとすぐに蒸発を初めて怪我を塞いでいった。
「助かったわ、死ぬところだった」
「何があった、あのちょんぱはやっぱり強かったのか?」
「いや、これは夜音に」
「……何をやらかしたお前」
「真っ先に私を疑うなんてひどい男ね、クワイエット」
「普段の言動について胸に手を当てて思い出してみろ」
「品行方正な一般市民じゃない」
「……お前、本気でそう思ってる節があるから怖い」
なんにせよ、とりあえず夜音と牡丹の安全を確認できたクワイエットは次の行動に移る。
もちろん残りのエキドナ、洞爺、キズナと合流してあのちょんぱと戦うのだ。
「そうそう、洞爺さんたちの安否がわからないわ。死んではいないと思うけど」
「そういう事は速く言ってくれ……大丈夫だ。洞爺殿達が自分らは良いから三階を駆け回って合流できない君らと合流を、と聞いてここにいるからな」
「ちょんぱは?」
「なんだか逃げ回っているらしい、エキドナがあいつの弱点を掴んでいるから必死だろう」
ゾンビちょんぱが逃げ回る際に夜音が問答無用で殴るため、三階に留まっているがさっさと逃げたいのは変わっていなかった。
「じゃあ行っていいわ、夜音も落ち着いたし」
「…………」
「そんな目で見ないで、いやもう本気で反省してるから……」
「夜音、大丈夫か?」
「大丈夫……」
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