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激闘! VSちょんぱさん 第二ラウンド ②
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「くっそ、さっきより硬い!!」
洞爺が掬い上げるような一撃でゾンビちょんぱを浮かせてキズナが狙いすませたかのように回し蹴りをどてっぱらに叩きこんだが、まるで砂を目いっぱい詰め込んだ革袋のような感触が帰ってくる。
「退け嬢ちゃん!」
即座に洞爺が軽く跳躍し、身体を捻るようにして水平に刀を振り抜く。
斬るというより殴るために全身のばねを使い、遠心力を乗せた一撃は薄ら笑いを浮かべるゾンビちょんぱの首を正確に捕えた。
――ドゴン!
それでも鈍い打撃音でその体は縦に半回転して床に激突する。
「キズナ、洞爺、一回離れて!! 残りの弾をぶち込むよ!!」
とうとう最後の7発となったエキドナの大口径拳銃の弾が猛烈な破裂音と共に全弾ゾンビちょんぱへと命中した。
この間数秒、短時間の内に叩き込まれたキズナ、洞爺、エキドナの連携は普通であればオーバーキルとなるが。むくりと起き上がるゾンビちょんぱは砂ぼこりや血で汚れてはいるものの、その足取りや舐めるように凝視する目つきは健在だった。
「ひひ、もう終わりかい? そろそろ一個ぐらい壊そうかな?」
楽しんでいる。その事実は三人にとって辟易するしかなかった。
「姉貴、もういっそあいつの望み通り華々しく散るのはどうだ?」
「却下だよ。僕は高級品だぜぃ? くれてやるのはもったいないさ」
「しかし、ますますあ奴強くなっとらんか?」
攻撃は当たる、相手の攻撃も前動作でほぼほぼ見切れる。
しかしダメージが通らない。だんだん打つ手がなくなっているのはこちら側だ。
「プランZかなぁ?」
ちなみに弥生もこのエキドナと同じタイミングでプランZを発動させようとしていたりする。
「せめてあの訳の分からんカラクリだけでもわからんかエキドナ? また生えてきた時面倒なことになるぞ」
「だよねぇ、何なんだろうかあれ。飛び散った血液は人間そのものだし人体の構造を逸脱するような所もないし……」
「あたし突貫して徹底的に斬って殴ってみようか?」
「行ける?」
「あいつ鈍間だし5分全力、後よろしくでいいなら」
先ほどから再生と強化を繰り返すゾンビちょんぱの生態を何とかして解析したいエキドナが悩む。
へらへらとこっちの様子をうかがうゾンビちょんぱを妹一人で任せるのは怖いが……洞爺は切り札の一つとして温存したい。自分の自爆も最終手段としてまだやりたくないので……。
「夜音ももうすぐ戻ってくるだろうし、いいよキズナ。洞爺は僕の護衛。解析に集中するから頼めるかい?」
「請け負った。嬢ちゃん、無理はするなよ」
「爺さんこそあたしに見惚れて姉貴に怪我させんじゃねーぞ」
「抜かせ」
「じゃあいいかい? GO!!」
たんっ!! とエキドナの号令と同時にキズナが飛び出す。
すぅ……と細く息を吸い、そのまま止める。刀を鞘に叩き込んでまっすぐにゾンビちょんぱへ飛び込んでいく。
「氷雨流、氷華」
囁く様にキズナはつぶやいた。
それは彼女の母が得意とし、キズナの身体に文字通り叩き込まれた剣術。
一度抜けば相手を斬り散らすまで止まらないキズナの切り札の一つだ。
「む? あれは」
洞爺がそんなキズナを見て何かに気づいたが、今の彼女には関係が無い。
ただ一振りの刃であれ、母から授かった心構えの通り。心のままに構えた。
「何かな何かな? 次は何をしてくるのかな?」
反対にゾンビちょんぱは興味津々にキズナの動きを目で追う。
正直な所ゾンビちょんぱよりもキズナや洞爺の方が人間離れした運動能力を持っていた。
実際ゾンビちょんぱは避けないのではなく避けられないのだ。
視力が良いわけでもなく、運動神経がずば抜けている訳でもない。
だが、実際に攻撃を受けても平然としていられた。
「砕けろゾンビ野郎」
ぎらり、とキズナの鋭い眼差しがゾンビちょんぱの全身をロックオンする。
そして、鯉口を切ったキズナの抜刀は洞爺の動体視力ですら朧げに線が奔った程度にしか見えなかった。
「ひひっ!」
圧倒的な威圧に全く頓着せず、ゾンビちょんぱは嗤う。
その首に刃が食い込み、刎ね飛んだことにすら気づかずに。
さらにキズナは右手で振り抜いた刀の勢いを利用して身を浮かす。
背を向けたキズナの右わきから突き出す切っ先が相手の右わき腹を突き刺し、半瞬遅れて着地した両足が踵をつけたまま捻られた。
「まだまだっ!」
キズナは両手で刀を保持しながら右わき腹を刀身に当てて身体ごと身を回す。
そうでもしなければ斬れないほどにゾンビちょんぱの肉は弾性が強かった。
突き入れる時も気を抜くとそこで刃が止まりそうな位、密度が高い。
無理やりにでも、と渾身の力を込めて一気に刀を引く。
ざりっ!!
あれだけ刃を立てて斬りに行った洞爺ですら、皮一枚斬れるか斬れないかのゾンビちょんぱの脇腹を斬り抜いたのだ。
「見事」
洞爺が思わず刀を握る手に力がこもる。
それ位、ほれぼれするような斬りっぷりであった。
「っ!!」
それでもなおキズナは止まらない、さらに斬って、殴って、蹴って。
その身体を……自分の胴体がめちゃくちゃにされていくのを見て頭部だけのゾンビちょんぱはけたたましく哄笑を上げるばかりだった。
そして……
「キズナ! 離れて!」
ちょうど5分、全力で攻撃を続けたキズナに離脱の命令を出して姉が弾ける様に飛び出した。
「よくやったよ妹! これでもくらえ!!」
声も出せずに転がり込むようにエキドナと位置を入れ替えるキズナの口元が動く。
――ぶっ殺せ姉貴
洞爺が転がってきたキズナを受け止め、その身で守ろうとするのと。
最初に跳ね飛ばしたゾンビちょんぱの口からエキドナに弾丸が放たれたのはほぼ同時だった。
洞爺が掬い上げるような一撃でゾンビちょんぱを浮かせてキズナが狙いすませたかのように回し蹴りをどてっぱらに叩きこんだが、まるで砂を目いっぱい詰め込んだ革袋のような感触が帰ってくる。
「退け嬢ちゃん!」
即座に洞爺が軽く跳躍し、身体を捻るようにして水平に刀を振り抜く。
斬るというより殴るために全身のばねを使い、遠心力を乗せた一撃は薄ら笑いを浮かべるゾンビちょんぱの首を正確に捕えた。
――ドゴン!
それでも鈍い打撃音でその体は縦に半回転して床に激突する。
「キズナ、洞爺、一回離れて!! 残りの弾をぶち込むよ!!」
とうとう最後の7発となったエキドナの大口径拳銃の弾が猛烈な破裂音と共に全弾ゾンビちょんぱへと命中した。
この間数秒、短時間の内に叩き込まれたキズナ、洞爺、エキドナの連携は普通であればオーバーキルとなるが。むくりと起き上がるゾンビちょんぱは砂ぼこりや血で汚れてはいるものの、その足取りや舐めるように凝視する目つきは健在だった。
「ひひ、もう終わりかい? そろそろ一個ぐらい壊そうかな?」
楽しんでいる。その事実は三人にとって辟易するしかなかった。
「姉貴、もういっそあいつの望み通り華々しく散るのはどうだ?」
「却下だよ。僕は高級品だぜぃ? くれてやるのはもったいないさ」
「しかし、ますますあ奴強くなっとらんか?」
攻撃は当たる、相手の攻撃も前動作でほぼほぼ見切れる。
しかしダメージが通らない。だんだん打つ手がなくなっているのはこちら側だ。
「プランZかなぁ?」
ちなみに弥生もこのエキドナと同じタイミングでプランZを発動させようとしていたりする。
「せめてあの訳の分からんカラクリだけでもわからんかエキドナ? また生えてきた時面倒なことになるぞ」
「だよねぇ、何なんだろうかあれ。飛び散った血液は人間そのものだし人体の構造を逸脱するような所もないし……」
「あたし突貫して徹底的に斬って殴ってみようか?」
「行ける?」
「あいつ鈍間だし5分全力、後よろしくでいいなら」
先ほどから再生と強化を繰り返すゾンビちょんぱの生態を何とかして解析したいエキドナが悩む。
へらへらとこっちの様子をうかがうゾンビちょんぱを妹一人で任せるのは怖いが……洞爺は切り札の一つとして温存したい。自分の自爆も最終手段としてまだやりたくないので……。
「夜音ももうすぐ戻ってくるだろうし、いいよキズナ。洞爺は僕の護衛。解析に集中するから頼めるかい?」
「請け負った。嬢ちゃん、無理はするなよ」
「爺さんこそあたしに見惚れて姉貴に怪我させんじゃねーぞ」
「抜かせ」
「じゃあいいかい? GO!!」
たんっ!! とエキドナの号令と同時にキズナが飛び出す。
すぅ……と細く息を吸い、そのまま止める。刀を鞘に叩き込んでまっすぐにゾンビちょんぱへ飛び込んでいく。
「氷雨流、氷華」
囁く様にキズナはつぶやいた。
それは彼女の母が得意とし、キズナの身体に文字通り叩き込まれた剣術。
一度抜けば相手を斬り散らすまで止まらないキズナの切り札の一つだ。
「む? あれは」
洞爺がそんなキズナを見て何かに気づいたが、今の彼女には関係が無い。
ただ一振りの刃であれ、母から授かった心構えの通り。心のままに構えた。
「何かな何かな? 次は何をしてくるのかな?」
反対にゾンビちょんぱは興味津々にキズナの動きを目で追う。
正直な所ゾンビちょんぱよりもキズナや洞爺の方が人間離れした運動能力を持っていた。
実際ゾンビちょんぱは避けないのではなく避けられないのだ。
視力が良いわけでもなく、運動神経がずば抜けている訳でもない。
だが、実際に攻撃を受けても平然としていられた。
「砕けろゾンビ野郎」
ぎらり、とキズナの鋭い眼差しがゾンビちょんぱの全身をロックオンする。
そして、鯉口を切ったキズナの抜刀は洞爺の動体視力ですら朧げに線が奔った程度にしか見えなかった。
「ひひっ!」
圧倒的な威圧に全く頓着せず、ゾンビちょんぱは嗤う。
その首に刃が食い込み、刎ね飛んだことにすら気づかずに。
さらにキズナは右手で振り抜いた刀の勢いを利用して身を浮かす。
背を向けたキズナの右わきから突き出す切っ先が相手の右わき腹を突き刺し、半瞬遅れて着地した両足が踵をつけたまま捻られた。
「まだまだっ!」
キズナは両手で刀を保持しながら右わき腹を刀身に当てて身体ごと身を回す。
そうでもしなければ斬れないほどにゾンビちょんぱの肉は弾性が強かった。
突き入れる時も気を抜くとそこで刃が止まりそうな位、密度が高い。
無理やりにでも、と渾身の力を込めて一気に刀を引く。
ざりっ!!
あれだけ刃を立てて斬りに行った洞爺ですら、皮一枚斬れるか斬れないかのゾンビちょんぱの脇腹を斬り抜いたのだ。
「見事」
洞爺が思わず刀を握る手に力がこもる。
それ位、ほれぼれするような斬りっぷりであった。
「っ!!」
それでもなおキズナは止まらない、さらに斬って、殴って、蹴って。
その身体を……自分の胴体がめちゃくちゃにされていくのを見て頭部だけのゾンビちょんぱはけたたましく哄笑を上げるばかりだった。
そして……
「キズナ! 離れて!」
ちょうど5分、全力で攻撃を続けたキズナに離脱の命令を出して姉が弾ける様に飛び出した。
「よくやったよ妹! これでもくらえ!!」
声も出せずに転がり込むようにエキドナと位置を入れ替えるキズナの口元が動く。
――ぶっ殺せ姉貴
洞爺が転がってきたキズナを受け止め、その身で守ろうとするのと。
最初に跳ね飛ばしたゾンビちょんぱの口からエキドナに弾丸が放たれたのはほぼ同時だった。
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