52 / 255
妹奪還作戦
しおりを挟む
「えと、これをこうして……」
慎重に火薬を筒に入れ、弾頭を即席のリロードキットではめ込む。
プレス機のような見た目のそれを慎重にレバーを押し下げていく……手にかかる抵抗を感じながら弥生は目を凝らし加減を調整した。
「信管は入ったから後は薬莢の再成型……」
しっかりと弾丸がはまったのを確認して次の道具をセットしていく。
今度は弾頭をしっかりと保持するための先端を加工する。
「弥生、僕は今本当に君を尊敬するよ……」
真剣に機械を操作する弥生の後ろからエキドナが声をかける。
半分くらい諦めていた弾丸のリローディングをなんと弥生は三日で機械をそろえて実現させようというのだ。
「後はこれをプレスして……」
手元のハンドルを操作して弥生は作業を終える。
きゅるきゅるとハンドルを戻した後、セットしてあった弾丸を慎重に取り出した弥生は後ろにいるエキドナに振り替えって出来上がった弾丸を手渡した。
見た目には出来上がってる弾丸だが、実際に使うまで油断はできない。
受け取ったエキドナは弾丸のサイズ、重量を測定し今残ってる弾丸と比較した。
見た目……よし。重量……よし。
「試すか……弥生、これつけて」
コルクのような木の皮で作った即席耳栓をエキドナは弥生につけさせる。
そして作業室の隣に即席で作った的を置いた試射室へ移動、置いてある自分の銃を手に取った。
見た目は完璧、抜きっぱなしになっている弾倉にもスムーズに入る。
そしてその弾倉を銃にセットし、スライドを操作する。
かしゃん、と小気味い音を立てて問題なく初弾が装てんされた。
「よし、後は……暴発だけ気を付ければ……」
念のため加工した針金を引き金につけて銃を木を削って作ったホルダーにセットする。
仕上げにロープで木を固定。針金につけたロープを持って距離をとった。
「じゃあ、行くよ」
弥生に向けた合図に応えたのを確認後、ドキドキしながらエキドナはロープを引く。
トリガーが引かれると同時に撃鉄が弾丸を叩いた。
――ダァン!!
的にした丸太に大きな穴が穿たれる。
その穴は比較のためにエキドナが撃った別の弾丸の穴と遜色なく、同じ程度の威力だと見て取れた。
大成功である。
「やった、できた……出来た出来た出来たぁ!! 弥生!! 大成功だよ!!」
思わずぴょんぴょんと跳ねるエキドナ。
反対に弥生は……
「ふあっ!?」
涎を垂らして寝落ちしかけていた。
「ありがとうぅぅ! そしてごめんね!! 一回寝ておくれぇ!!」
貫徹二日、あり合わせの道具と鍛冶ギルドの協力により弥生が根性でこの世界にリローディングツールを生み出した瞬間だった。
◇◆――――◇◆――――◇◆――――◇◆――――◇◆
「で、どうするのじゃ?」
数時間後、弥生をしっかりとベッドに寝かせて文香とジェミニに任せてエキドナはあるメンバーを統括ギルドに集めていた。
その一人は洞爺である。
今回エキドナに助けてほしい、と乞われて二つ返事で引き受けたのだが。詳細をまだ聞いてなかった。
「えー、とある国のお偉いさんを懲らしめて妹を処刑台から救うだけの簡単なお仕事です」
「わかった」
「突っ込もうよ!? 割と大事だと思うよ!?」
「面倒じゃ。とにかく敵を斬れば良いのじゃろう?」
「ちょっとは躊躇してよ!? 品行方正な日本人じゃないのか君は!! なんで思考が基本デストロイなんだよ!!」
「じゃあ、斬らんのか?」
「いやまあ、その可能性も考慮して洞爺なんだけど……」
「そもそも考えるまでもなかろう。儂はおぬしに借りがある、妹を助けるのに手を貸さぬという選択肢はもとより無い。好きに使え」
「……ありがとう」
潔すぎる洞爺の物言いに釈然としないエキドナだが、問答してる時間も惜しい。
それに……
「で、あたしはいつ脱げばいいのかしら?」
「なんでこんなのに頼んじゃったんだ僕はっ!!」
全力で二日前の自分をぶん殴りたいエキドナさんであった。
いささか浅慮だったのではないかと今更後悔している。
「頼む前に気づくと思うのじゃが……おぬし本当に機械かの?」
「ぐうの音も出ないよ!! ありがとう!!」
「で? 本当に城攻めするのか? 腕が鳴るわい」
「どうしてこうそろいもそろってバイオレンスなんだ人間って!? 良いかい!? もう一回だけ言うからちゃんと記憶にとどめてよ!? レンに乗ってベルトリア共和国に行く! そこで先行して情報収集している夜音と合流、人身売買組織に潜入して証拠を入手! それを持って宰相さんに直談判!! 妹の無罪放免を勝ち取り帰宅!! ウェイランドに帰るまでが作戦だよ!? わかった!? わかってくれた!?」
「「で、いつ暴れればいい?」」
「もうヤダこの二人!? 洞爺はまともそうだったのに!!」
とんだ外見詐欺である。
「まあまて、フットワークの軽い儂らほど適任はおらんじゃろうて」
「そうそう、役に立つわよあたし達」
古今東西そのセリフで役に立つ人物って見たことない、そう言いたくなるのをぐっとこらえてエキドナは考える。もうちょっと物資と情報欲しいなぁ……昔は衛星とかハッキングしまくってスマートな事してた気がするんだけど。と心の中でほろりと行きそうだ。
だってめちゃめちゃ笑ってるんだもん洞爺と牡丹。
せめてレンはまともでありますように、と達観したエキドナさんによる妹救出作戦は幕を上げたのだった。
慎重に火薬を筒に入れ、弾頭を即席のリロードキットではめ込む。
プレス機のような見た目のそれを慎重にレバーを押し下げていく……手にかかる抵抗を感じながら弥生は目を凝らし加減を調整した。
「信管は入ったから後は薬莢の再成型……」
しっかりと弾丸がはまったのを確認して次の道具をセットしていく。
今度は弾頭をしっかりと保持するための先端を加工する。
「弥生、僕は今本当に君を尊敬するよ……」
真剣に機械を操作する弥生の後ろからエキドナが声をかける。
半分くらい諦めていた弾丸のリローディングをなんと弥生は三日で機械をそろえて実現させようというのだ。
「後はこれをプレスして……」
手元のハンドルを操作して弥生は作業を終える。
きゅるきゅるとハンドルを戻した後、セットしてあった弾丸を慎重に取り出した弥生は後ろにいるエキドナに振り替えって出来上がった弾丸を手渡した。
見た目には出来上がってる弾丸だが、実際に使うまで油断はできない。
受け取ったエキドナは弾丸のサイズ、重量を測定し今残ってる弾丸と比較した。
見た目……よし。重量……よし。
「試すか……弥生、これつけて」
コルクのような木の皮で作った即席耳栓をエキドナは弥生につけさせる。
そして作業室の隣に即席で作った的を置いた試射室へ移動、置いてある自分の銃を手に取った。
見た目は完璧、抜きっぱなしになっている弾倉にもスムーズに入る。
そしてその弾倉を銃にセットし、スライドを操作する。
かしゃん、と小気味い音を立てて問題なく初弾が装てんされた。
「よし、後は……暴発だけ気を付ければ……」
念のため加工した針金を引き金につけて銃を木を削って作ったホルダーにセットする。
仕上げにロープで木を固定。針金につけたロープを持って距離をとった。
「じゃあ、行くよ」
弥生に向けた合図に応えたのを確認後、ドキドキしながらエキドナはロープを引く。
トリガーが引かれると同時に撃鉄が弾丸を叩いた。
――ダァン!!
的にした丸太に大きな穴が穿たれる。
その穴は比較のためにエキドナが撃った別の弾丸の穴と遜色なく、同じ程度の威力だと見て取れた。
大成功である。
「やった、できた……出来た出来た出来たぁ!! 弥生!! 大成功だよ!!」
思わずぴょんぴょんと跳ねるエキドナ。
反対に弥生は……
「ふあっ!?」
涎を垂らして寝落ちしかけていた。
「ありがとうぅぅ! そしてごめんね!! 一回寝ておくれぇ!!」
貫徹二日、あり合わせの道具と鍛冶ギルドの協力により弥生が根性でこの世界にリローディングツールを生み出した瞬間だった。
◇◆――――◇◆――――◇◆――――◇◆――――◇◆
「で、どうするのじゃ?」
数時間後、弥生をしっかりとベッドに寝かせて文香とジェミニに任せてエキドナはあるメンバーを統括ギルドに集めていた。
その一人は洞爺である。
今回エキドナに助けてほしい、と乞われて二つ返事で引き受けたのだが。詳細をまだ聞いてなかった。
「えー、とある国のお偉いさんを懲らしめて妹を処刑台から救うだけの簡単なお仕事です」
「わかった」
「突っ込もうよ!? 割と大事だと思うよ!?」
「面倒じゃ。とにかく敵を斬れば良いのじゃろう?」
「ちょっとは躊躇してよ!? 品行方正な日本人じゃないのか君は!! なんで思考が基本デストロイなんだよ!!」
「じゃあ、斬らんのか?」
「いやまあ、その可能性も考慮して洞爺なんだけど……」
「そもそも考えるまでもなかろう。儂はおぬしに借りがある、妹を助けるのに手を貸さぬという選択肢はもとより無い。好きに使え」
「……ありがとう」
潔すぎる洞爺の物言いに釈然としないエキドナだが、問答してる時間も惜しい。
それに……
「で、あたしはいつ脱げばいいのかしら?」
「なんでこんなのに頼んじゃったんだ僕はっ!!」
全力で二日前の自分をぶん殴りたいエキドナさんであった。
いささか浅慮だったのではないかと今更後悔している。
「頼む前に気づくと思うのじゃが……おぬし本当に機械かの?」
「ぐうの音も出ないよ!! ありがとう!!」
「で? 本当に城攻めするのか? 腕が鳴るわい」
「どうしてこうそろいもそろってバイオレンスなんだ人間って!? 良いかい!? もう一回だけ言うからちゃんと記憶にとどめてよ!? レンに乗ってベルトリア共和国に行く! そこで先行して情報収集している夜音と合流、人身売買組織に潜入して証拠を入手! それを持って宰相さんに直談判!! 妹の無罪放免を勝ち取り帰宅!! ウェイランドに帰るまでが作戦だよ!? わかった!? わかってくれた!?」
「「で、いつ暴れればいい?」」
「もうヤダこの二人!? 洞爺はまともそうだったのに!!」
とんだ外見詐欺である。
「まあまて、フットワークの軽い儂らほど適任はおらんじゃろうて」
「そうそう、役に立つわよあたし達」
古今東西そのセリフで役に立つ人物って見たことない、そう言いたくなるのをぐっとこらえてエキドナは考える。もうちょっと物資と情報欲しいなぁ……昔は衛星とかハッキングしまくってスマートな事してた気がするんだけど。と心の中でほろりと行きそうだ。
だってめちゃめちゃ笑ってるんだもん洞爺と牡丹。
せめてレンはまともでありますように、と達観したエキドナさんによる妹救出作戦は幕を上げたのだった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる