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妹はリア充候補です
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「日下部文香です! よろしくおねがいします」
元気溌剌でたいへんよろしい文香の自己紹介は、クラスで湧き上がる拍手喝采で受け入れられた。
隣に立つオルトリンデもにこにこと笑みを浮かべている。
このクラスは職員の中でも共働きや片親の子供たちが多く、朝から夕方まで居るのが常だ。
弥生も定時で帰れる時はそのまま迎えに行く手間も省ける上、安全面でもばっちり。
安心して仕事に打ち込んでもらえるだろうとオルトリンデは考えていた。
「文香、あなたは一番前の席……左から二番目の所が開いているのでそこに座ってください」
こくん、と頷きニコニコ顔で文香はおとなしく席に向かう。
隣の席に座るのはラミア族の女の子でたれ目の人懐っこそうな笑顔が特徴的だ。
蛇の足もピコピコと左右に振れて嬉しそうである。
「よろしくね!」
「ミリア!、よろしくね文香!」
きゃいきゃいとあっという間に打ち解ける文香にオルトリンデはさらに目を細める。
人族であるがゆえに偏見を持つ、持たれる場合が少なくないのだが……文香は何となく大丈夫そうだ。
普段であれば一言静かに、と注意するのだが今日ぐらいはいいだろう。
「では、ホームルームを始めます。今週はクラス替え直後という事もありますので授業はありません。放課後にお知らせを渡しますのでちゃんと保護者の方に見せること。いいですね?」
はーい! と元気な声が返ってくるのを満足気に受け止めてオルトリンデは副担任にクラスを任せた。去り際に文香へみんなと仲良くね、と声をかけるのも忘れない。
今日は文香だけではなく、弥生の案内もしなければいけない。
まずは文香を、と。クラスを優先して弥生をほかの書記官、面倒見が良い事で定評のあるベテランに任せたとはいえ……この国に来て間もない弥生が不便を感じないようにとの配慮だ。
なお、この時のオルトリンデは知る由もないが……弥生がその頼れる先輩書記官の机を占拠したのはこの頃である。
「とはいえ見学ルートも任せてしまいましたから……視察も兼ねてしまいましょう。どこかで会うでしょう」
その考えが甘かったと知るのはもうしばらく先だったりする。
もしかしたらここでオルトリンデが館内放送を駆使して弥生との合流を最優先したなら未来は変わっていたかもしれない。
結局、三級から二級書記官がお仕事を遂行する事務棟を……下の階から順番に見て回ったが出会うことはなかった。
それどころか……
「地味な少女……来てないですよ?」
「そういえば、今日でしたよね前代未聞の満点採用の子」
「あいつが案内していて迷うわけ無いんだがな」
と、誰も見ていない。
ひょっとして文香が心配になってクラスの方を見学しているとか? オルトリンデは首をかしげながらも文香のいるクラス、つまり自分の担当クラスに戻ってきた。
「いないですね……というか文香は一体何をやってるんでしょうか」
ついでに文香の様子を見ると不思議な光景が目に映る。
文香の背後、隣に群がるクラスメイト、その視線の先は全員彼女の手元に集中していた。
窓越しではオルトリンデから何をしているのか見えなかったが……皆が興味津々にみているのは気になる……気になるのだが。
「後で聞けばいいか、それより弥生です……本当にどこに行ったのやら」
優先順位を再確認してオルトリンデは再び事務棟に向かう。
そこで弥生の事を頼んだはずの書記官に泣きつかれることになるとは……この時は想像もしていなかったのだった。
一方、文香は良い意味でおとなしかった。
ちょうど小学校一年生を終えて二年生に上がる時にこの世界に来てしまった彼女。
はっちゃける時もあるが、しっかり者の弥生と冷静沈着な真司の妹だけの事はあり。素直にクラスの状況へなじんでいた。
そもそもあの過酷な生前の学校生活に比べたら天国だった。
みんな様々な種族だけあって、見た目もほとんど同じ人はいないが仲がいい。特に文香にとってミリアはとてもコミュニケーションがとりやすい。
「ミリーちゃんの足いいなぁ……」
「そうなのー? ふみちゃんのような足も良いよ? 靴可愛いもん」
「背伸びすると棚の上のお菓子取れそう」
「……気にしたことなかった!!」
がびーん! と文香の言葉にコミカルに反応する彼女は非常に愛くるしかった。
「ふみちゃんはきょうだいいる?」
「いるよ! おにいちゃんがまほ……まほうしギルドで。おねえちゃんはここでお仕事してるの」
「いいなー、私おねえちゃんほしい」
「……! そうだ、おねえちゃんあげる!!」
文香の爆弾発言に固まるミリア、どうやら弥生はミリアの姉になるのかもしれない。
「こ、困るんじゃない?」
「だいじょうぶ、ミリーちゃんが上半身で文香が下半身ね」
「……そんなおねえちゃんいやだよぉ」
エキドナのことだった。それにしても扱いがひどい。
そんなこんなで文香がクラスに溶け込むのはかなり早かった。
ほかのクラスメイトも文香のあけっぴろげで偏見のない気質に好意的だったし、文香の愛嬌もあってか数か月後にはちょっとしたファンクラブが結成される事になる。
元気溌剌でたいへんよろしい文香の自己紹介は、クラスで湧き上がる拍手喝采で受け入れられた。
隣に立つオルトリンデもにこにこと笑みを浮かべている。
このクラスは職員の中でも共働きや片親の子供たちが多く、朝から夕方まで居るのが常だ。
弥生も定時で帰れる時はそのまま迎えに行く手間も省ける上、安全面でもばっちり。
安心して仕事に打ち込んでもらえるだろうとオルトリンデは考えていた。
「文香、あなたは一番前の席……左から二番目の所が開いているのでそこに座ってください」
こくん、と頷きニコニコ顔で文香はおとなしく席に向かう。
隣の席に座るのはラミア族の女の子でたれ目の人懐っこそうな笑顔が特徴的だ。
蛇の足もピコピコと左右に振れて嬉しそうである。
「よろしくね!」
「ミリア!、よろしくね文香!」
きゃいきゃいとあっという間に打ち解ける文香にオルトリンデはさらに目を細める。
人族であるがゆえに偏見を持つ、持たれる場合が少なくないのだが……文香は何となく大丈夫そうだ。
普段であれば一言静かに、と注意するのだが今日ぐらいはいいだろう。
「では、ホームルームを始めます。今週はクラス替え直後という事もありますので授業はありません。放課後にお知らせを渡しますのでちゃんと保護者の方に見せること。いいですね?」
はーい! と元気な声が返ってくるのを満足気に受け止めてオルトリンデは副担任にクラスを任せた。去り際に文香へみんなと仲良くね、と声をかけるのも忘れない。
今日は文香だけではなく、弥生の案内もしなければいけない。
まずは文香を、と。クラスを優先して弥生をほかの書記官、面倒見が良い事で定評のあるベテランに任せたとはいえ……この国に来て間もない弥生が不便を感じないようにとの配慮だ。
なお、この時のオルトリンデは知る由もないが……弥生がその頼れる先輩書記官の机を占拠したのはこの頃である。
「とはいえ見学ルートも任せてしまいましたから……視察も兼ねてしまいましょう。どこかで会うでしょう」
その考えが甘かったと知るのはもうしばらく先だったりする。
もしかしたらここでオルトリンデが館内放送を駆使して弥生との合流を最優先したなら未来は変わっていたかもしれない。
結局、三級から二級書記官がお仕事を遂行する事務棟を……下の階から順番に見て回ったが出会うことはなかった。
それどころか……
「地味な少女……来てないですよ?」
「そういえば、今日でしたよね前代未聞の満点採用の子」
「あいつが案内していて迷うわけ無いんだがな」
と、誰も見ていない。
ひょっとして文香が心配になってクラスの方を見学しているとか? オルトリンデは首をかしげながらも文香のいるクラス、つまり自分の担当クラスに戻ってきた。
「いないですね……というか文香は一体何をやってるんでしょうか」
ついでに文香の様子を見ると不思議な光景が目に映る。
文香の背後、隣に群がるクラスメイト、その視線の先は全員彼女の手元に集中していた。
窓越しではオルトリンデから何をしているのか見えなかったが……皆が興味津々にみているのは気になる……気になるのだが。
「後で聞けばいいか、それより弥生です……本当にどこに行ったのやら」
優先順位を再確認してオルトリンデは再び事務棟に向かう。
そこで弥生の事を頼んだはずの書記官に泣きつかれることになるとは……この時は想像もしていなかったのだった。
一方、文香は良い意味でおとなしかった。
ちょうど小学校一年生を終えて二年生に上がる時にこの世界に来てしまった彼女。
はっちゃける時もあるが、しっかり者の弥生と冷静沈着な真司の妹だけの事はあり。素直にクラスの状況へなじんでいた。
そもそもあの過酷な生前の学校生活に比べたら天国だった。
みんな様々な種族だけあって、見た目もほとんど同じ人はいないが仲がいい。特に文香にとってミリアはとてもコミュニケーションがとりやすい。
「ミリーちゃんの足いいなぁ……」
「そうなのー? ふみちゃんのような足も良いよ? 靴可愛いもん」
「背伸びすると棚の上のお菓子取れそう」
「……気にしたことなかった!!」
がびーん! と文香の言葉にコミカルに反応する彼女は非常に愛くるしかった。
「ふみちゃんはきょうだいいる?」
「いるよ! おにいちゃんがまほ……まほうしギルドで。おねえちゃんはここでお仕事してるの」
「いいなー、私おねえちゃんほしい」
「……! そうだ、おねえちゃんあげる!!」
文香の爆弾発言に固まるミリア、どうやら弥生はミリアの姉になるのかもしれない。
「こ、困るんじゃない?」
「だいじょうぶ、ミリーちゃんが上半身で文香が下半身ね」
「……そんなおねえちゃんいやだよぉ」
エキドナのことだった。それにしても扱いがひどい。
そんなこんなで文香がクラスに溶け込むのはかなり早かった。
ほかのクラスメイトも文香のあけっぴろげで偏見のない気質に好意的だったし、文香の愛嬌もあってか数か月後にはちょっとしたファンクラブが結成される事になる。
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