18 / 43
1章
18:ビジネス
しおりを挟む
「海藤、どういうことか説明してくれるね? 君は一体何をしようとしている」
自慢ともいえる程に気に入った執務机の上で、DT・ホウの拳が震える。
その理由は誰が見ても明らかな怒り、こめかみに浮かぶ血管や血走った眼差し、荒い鼻息……肩を怒らせて対面の客用ソファーに座る黒づくめの男を睨みつけていた。
「そんなに顔を赤くして、いい男が台無しですぜ大統領。なぁに、大したことでは無いですよ……ちょっとゴミ掃除に手間取っただけですって」
反対に落ち着いているのは山田権兵衛ならぬ海藤達治。
余裕たっぷりに紙煙草をふかしながら切子硝子のおちょこで日本酒を口に運ぶ、気分良く……と言う言葉の通りに上機嫌だった。
何せこの二日、あの斬鬼の足跡が絶えたのである。生死は不明だが……あの猪、もとい前進しか知らなそうな月夜の斬鬼が即座に動かないという事は……深手を負っているとみて間違いない。
部下に拠点となる予定だった家の周辺を捜索させているが、見かけた者は居ない……念の為に少しでも接点のあった顔役の女と蓮夜が灯子と食べた蕎麦屋の店主を連行した。
しかもわざと衆人の目に付くように……噂になるように堂々と。
「そのゴミ、実は日本では珠玉の宝石ではないのかね?」
ぶちり、と葉巻の端を噛み千切りDT・ホウは海藤を問い詰める。
「宝石? 言いえて妙ですな……ずっと闇に隠しているのに、汚い物には蓋をするのがお偉いさんの常套手段でしょうに。くっくっく……」
「海藤、私は言葉遊びをするために君を呼び立てたのではない! 銃は回収させてもらう!」
「回収? なんでまた、そんな事を? 日本政府になんか言われたんですかい?」
そんなDT・ホウの怒り心頭な様子に可笑しくてたまらない海藤が腰のホルスターから銃を取り出した。もちろん弾は全部抜いている。
「そうだ! 今朝早く本国へのクレームを出したと通達があった!! 外交官の私を通さずに、直接に! この意味が解るか!!」
力いっぱい、DT・ホウは執務机を殴りつけた。
あまりの威力に灰皿が飛び上がり、羽ペンを刺したインク壺が倒れてしまう……しかし、そんな事は関係ないと言わんばかりにDH・ホウは声をさらに荒げる!
その激しい音に、執務室の前で待機していた護衛がドアを開けて様子を見に来たが……海藤は『問題ねぇよ、俺がちょっとヘマしただけだぜ』と追い返してしまった。
「そんなにカッカカッカしないでくださいよ大統領閣下」
「黙れ! 本国に知れたら私は強制送還だ!! それこそアルカトラズへ送られてしまう!」
「だぁーいじょーぶですって……その特使は不幸な事故で太平洋の真ん中で沈んじまうんですから」
「な、にを……言ってるミスター! その特使はお前たち日本人だぞ!!」
「そうですよ?」
何を言ってるんだ、そう言わんばかりにあっさりと海藤は首をかしげながらへらへらとおちょこを口に運ぶ。
きりりとした飲み口が気に入って、店に並ぶとついつい金に糸目を掛けずに買い占めてしまうほどの溺愛ぶりだ、当然機嫌が良い時しか飲まない……つまり今だ。
「今、貴方に手を引かれては困るんですよ大統領。だから、安心してください、あと半年は女をいたぶり犯し、好き放題にできますから」
「そ、そう言う事を」
『言っているんじゃない』と声を荒げようとするDT・ホウの表情に戸惑いが混じる。
日本人は義に厚い、仲間を……同胞を大切にすると本国で学んでいた。実際、勤勉で器用で……先日のオイルライターの件から明らかだが独創性も優れている。
ただの田舎者とは来日してたった二日の内に意識を改められた。日本人は自分たちとは別のベクトルで優秀だと……その自分たちのベクトルとは金と物量、つまりビジネス感覚だ。
利害を考慮しないで動く、その日本人の性質を侮っていた……と言うよりも下に見ていたDT・ホウだが……。
「利害が一致しないんで、仕方ないっすよ……大事の前の小事、損切りとも言いますかね?」
「……」
そのビジネス感覚を備えた日本人が、DT・ホウの前に……今居る。
「まあ落ち着いてくださいよ。半年あればぜーんぶ上手くいきますから」
「改めて……説明を求めるが?」
数回、DH・ホウは息を整えるために深く、深く深呼吸をする。
眼を閉じて、一度怒りも何もかもをリセットするようにイメージを整えた。自分は現在この国の中では一番偉いアメリカ人なのだと。
そんなDT・ホウを海藤のサングラスの奥に隠れる視線が射貫く……そこには冷たい殺意を隠すかのように細められた双眸がある。
「なぁに、大統領は今まで通り女と遊んで俺たちのトップでいてくださいよ……場合によっちゃ日本のトップになれますぜ」
「……何が必要かね?」
眼を開け、それまでとは打って変わって……まさに外交官の顔をしたDT・ホウ。
そんな彼に満足したのか海藤は口の端を少し上げ、半分ほどに燃え落ちた紙巻きたばこを一気に吸う。普段なら、嫌みの一つでも飛ぶDT・ホウが眉一つ動かさず……海藤の言葉を待った。
「良いねぇ良いねぇ……賢いじゃねぇっすか、やっぱり貴方は長生きしますよ」
「もちろんだ。ビジネスにおいては私が君の先輩であり師だと自負している……」
「じゃあしばらく俺たちの事は放っておいてくださいよ、日本政府に何を言われても『機密』だとね……」
「……それだけかね?」
「ええ、それだけです。それに……」
ぷかり、と天井に顔を向け紫煙を輪っかに浮かべながら……口の両端が吊り上がる。
「……それに?」
忍耐強く、DT・ホウは海藤に先の言葉を促した。
「国盗りなんて古式奥ゆかしい大イベントなんざ人生で何度も経験できるもんじゃないですぜ。高みの見物と洒落込んでてくださいよ」
「君は……いや、Mr.海藤。その大イベントの利益はどれくらいだね?」
「そうっすねぇ……他国が喉から手が出るほど欲しい高水準の技術、恐れを知らない戦闘狂の軍団……なんてどうです?」
「…………」
DT・ホウは無言のまま、海藤の提示した利益を咀嚼する。
高水準の技術、それはすなわちこの国の職人を指すだろう……確かに突出した速さと精密さを持っていた。それは海藤が今も手のひらの上でもてあそぶオイルライターの細工、自分が今しがた力いっぱい殴りつけてしまった机……もし、この職人に武器の製造を任せたら? そう考えるだけで鼻から息が漏れる。
そして、恐れを知らない戦闘狂の軍団……昔は侍と呼ばれていた軍人たちは確かに実直で勇猛果敢だ。
「悪くない」
自然とDH・ホウは口にする。それを聞いて海藤はさらに笑みを深めた。
「でしょう?」
「しかし、一点わからない点がある。なぜ私がこの国のトップに?」
先ほどの海藤の言葉では、DT・ホウが日本のトップになると話している。なるのであれば海藤自身ではないのかという意味を込めて問い返す。
「なに、俺はぶち壊せればそれでいいんすよ。その後の事なんか興味は無いもんでね」
「ふむ……」
へらへらとおちょこを傾ける海藤をじっと見つめるDT・ホウだが、そのサングラスの奥に潜む目は全く笑っていないのを確認し……確信する。
「Mr.海藤、君は……壊れているのかね?」
「利用価値はあると思いませんかね? 必要ですか? 常識や命って」
「無い、ビジネスに必要なのは利益だ」
「じゃあ何の問題も無い」
「……そうだな、では。その利益に見合うだけの先行投資をしておくとしよう」
「何です? 金や武器はありますぜ?」
今度は海藤が首をかしげる番だった。
そんな海藤をDT・ホウは無表情に顎でついてこいと示す。眉根を寄せつつもついていく海藤。
執務室を出て中庭を横断し、敷地の奥の車庫へと入る。
「車庫じゃないですか」
「ああ、車庫だ。しかし、それだけではない……気づかんかね?」
白い漆喰の壁と丸太を組み合わせた屋根、公用車が三台あるだけだ。
何の変哲もない造りでただの広い小屋と言ってもいい。
「何も変わったところは……」
「外と中を良く見比べて見るのを勧める」
DT・ホウは腕組みをしたまま海藤を促す。
言われたまま、海藤は一度車庫を出てぐるりと数分かけてゆっくりとその周りを歩きながら入り口に戻ってきた。
「見比べろって言われましても単なる……ん?」
車庫の中は三台の車、確かにそれだけなのだが……海藤は違和感を覚える。
車が三台留まっているスペースはお世辞に言ってもそんなに広くはない、しかし……外に出て周りを歩くと数分かかった。
これが意味する事に海藤は気づく。
「なんか、広さおかしくないですか? 外と中」
「その通りだ。これは日本政府にも教えていない……来たまえ」
そもそもこの車庫は自動車を外交官が日本に持ち込む際、アメリカの技術者によって作られたものだった。表向きは単なる車庫に見える様に。
外の勝手口と同じような場所に見えるように配置されたドアノブを捻り、開ける。
そこに在ったのは……。
「まだこんなもん隠してたんですかい? 俺がやらなくても本国はやる気満々じゃないですか」
隠しスペースに鎮座するソレを見て、海藤は呆れたように紙煙草に火を灯す。
「備えあれば患いなし、と日本の諺では言うのかねこの場合は」
眼鏡の端をくい、と上げてDT・ホウは得意満面に胸を逸らした。
そのまま海藤に目配せをして告げる。
「やるのであれば徹底的に、美しいワンサイドゲームを……そう教えただろう? Mr.海藤」
「そうですねぇ。ありがたく使わせてもらいますよ大統領」
日が傾きつつある車庫に、二人の低い笑い声が木霊した。
自慢ともいえる程に気に入った執務机の上で、DT・ホウの拳が震える。
その理由は誰が見ても明らかな怒り、こめかみに浮かぶ血管や血走った眼差し、荒い鼻息……肩を怒らせて対面の客用ソファーに座る黒づくめの男を睨みつけていた。
「そんなに顔を赤くして、いい男が台無しですぜ大統領。なぁに、大したことでは無いですよ……ちょっとゴミ掃除に手間取っただけですって」
反対に落ち着いているのは山田権兵衛ならぬ海藤達治。
余裕たっぷりに紙煙草をふかしながら切子硝子のおちょこで日本酒を口に運ぶ、気分良く……と言う言葉の通りに上機嫌だった。
何せこの二日、あの斬鬼の足跡が絶えたのである。生死は不明だが……あの猪、もとい前進しか知らなそうな月夜の斬鬼が即座に動かないという事は……深手を負っているとみて間違いない。
部下に拠点となる予定だった家の周辺を捜索させているが、見かけた者は居ない……念の為に少しでも接点のあった顔役の女と蓮夜が灯子と食べた蕎麦屋の店主を連行した。
しかもわざと衆人の目に付くように……噂になるように堂々と。
「そのゴミ、実は日本では珠玉の宝石ではないのかね?」
ぶちり、と葉巻の端を噛み千切りDT・ホウは海藤を問い詰める。
「宝石? 言いえて妙ですな……ずっと闇に隠しているのに、汚い物には蓋をするのがお偉いさんの常套手段でしょうに。くっくっく……」
「海藤、私は言葉遊びをするために君を呼び立てたのではない! 銃は回収させてもらう!」
「回収? なんでまた、そんな事を? 日本政府になんか言われたんですかい?」
そんなDT・ホウの怒り心頭な様子に可笑しくてたまらない海藤が腰のホルスターから銃を取り出した。もちろん弾は全部抜いている。
「そうだ! 今朝早く本国へのクレームを出したと通達があった!! 外交官の私を通さずに、直接に! この意味が解るか!!」
力いっぱい、DT・ホウは執務机を殴りつけた。
あまりの威力に灰皿が飛び上がり、羽ペンを刺したインク壺が倒れてしまう……しかし、そんな事は関係ないと言わんばかりにDH・ホウは声をさらに荒げる!
その激しい音に、執務室の前で待機していた護衛がドアを開けて様子を見に来たが……海藤は『問題ねぇよ、俺がちょっとヘマしただけだぜ』と追い返してしまった。
「そんなにカッカカッカしないでくださいよ大統領閣下」
「黙れ! 本国に知れたら私は強制送還だ!! それこそアルカトラズへ送られてしまう!」
「だぁーいじょーぶですって……その特使は不幸な事故で太平洋の真ん中で沈んじまうんですから」
「な、にを……言ってるミスター! その特使はお前たち日本人だぞ!!」
「そうですよ?」
何を言ってるんだ、そう言わんばかりにあっさりと海藤は首をかしげながらへらへらとおちょこを口に運ぶ。
きりりとした飲み口が気に入って、店に並ぶとついつい金に糸目を掛けずに買い占めてしまうほどの溺愛ぶりだ、当然機嫌が良い時しか飲まない……つまり今だ。
「今、貴方に手を引かれては困るんですよ大統領。だから、安心してください、あと半年は女をいたぶり犯し、好き放題にできますから」
「そ、そう言う事を」
『言っているんじゃない』と声を荒げようとするDT・ホウの表情に戸惑いが混じる。
日本人は義に厚い、仲間を……同胞を大切にすると本国で学んでいた。実際、勤勉で器用で……先日のオイルライターの件から明らかだが独創性も優れている。
ただの田舎者とは来日してたった二日の内に意識を改められた。日本人は自分たちとは別のベクトルで優秀だと……その自分たちのベクトルとは金と物量、つまりビジネス感覚だ。
利害を考慮しないで動く、その日本人の性質を侮っていた……と言うよりも下に見ていたDT・ホウだが……。
「利害が一致しないんで、仕方ないっすよ……大事の前の小事、損切りとも言いますかね?」
「……」
そのビジネス感覚を備えた日本人が、DT・ホウの前に……今居る。
「まあ落ち着いてくださいよ。半年あればぜーんぶ上手くいきますから」
「改めて……説明を求めるが?」
数回、DH・ホウは息を整えるために深く、深く深呼吸をする。
眼を閉じて、一度怒りも何もかもをリセットするようにイメージを整えた。自分は現在この国の中では一番偉いアメリカ人なのだと。
そんなDT・ホウを海藤のサングラスの奥に隠れる視線が射貫く……そこには冷たい殺意を隠すかのように細められた双眸がある。
「なぁに、大統領は今まで通り女と遊んで俺たちのトップでいてくださいよ……場合によっちゃ日本のトップになれますぜ」
「……何が必要かね?」
眼を開け、それまでとは打って変わって……まさに外交官の顔をしたDT・ホウ。
そんな彼に満足したのか海藤は口の端を少し上げ、半分ほどに燃え落ちた紙巻きたばこを一気に吸う。普段なら、嫌みの一つでも飛ぶDT・ホウが眉一つ動かさず……海藤の言葉を待った。
「良いねぇ良いねぇ……賢いじゃねぇっすか、やっぱり貴方は長生きしますよ」
「もちろんだ。ビジネスにおいては私が君の先輩であり師だと自負している……」
「じゃあしばらく俺たちの事は放っておいてくださいよ、日本政府に何を言われても『機密』だとね……」
「……それだけかね?」
「ええ、それだけです。それに……」
ぷかり、と天井に顔を向け紫煙を輪っかに浮かべながら……口の両端が吊り上がる。
「……それに?」
忍耐強く、DT・ホウは海藤に先の言葉を促した。
「国盗りなんて古式奥ゆかしい大イベントなんざ人生で何度も経験できるもんじゃないですぜ。高みの見物と洒落込んでてくださいよ」
「君は……いや、Mr.海藤。その大イベントの利益はどれくらいだね?」
「そうっすねぇ……他国が喉から手が出るほど欲しい高水準の技術、恐れを知らない戦闘狂の軍団……なんてどうです?」
「…………」
DT・ホウは無言のまま、海藤の提示した利益を咀嚼する。
高水準の技術、それはすなわちこの国の職人を指すだろう……確かに突出した速さと精密さを持っていた。それは海藤が今も手のひらの上でもてあそぶオイルライターの細工、自分が今しがた力いっぱい殴りつけてしまった机……もし、この職人に武器の製造を任せたら? そう考えるだけで鼻から息が漏れる。
そして、恐れを知らない戦闘狂の軍団……昔は侍と呼ばれていた軍人たちは確かに実直で勇猛果敢だ。
「悪くない」
自然とDH・ホウは口にする。それを聞いて海藤はさらに笑みを深めた。
「でしょう?」
「しかし、一点わからない点がある。なぜ私がこの国のトップに?」
先ほどの海藤の言葉では、DT・ホウが日本のトップになると話している。なるのであれば海藤自身ではないのかという意味を込めて問い返す。
「なに、俺はぶち壊せればそれでいいんすよ。その後の事なんか興味は無いもんでね」
「ふむ……」
へらへらとおちょこを傾ける海藤をじっと見つめるDT・ホウだが、そのサングラスの奥に潜む目は全く笑っていないのを確認し……確信する。
「Mr.海藤、君は……壊れているのかね?」
「利用価値はあると思いませんかね? 必要ですか? 常識や命って」
「無い、ビジネスに必要なのは利益だ」
「じゃあ何の問題も無い」
「……そうだな、では。その利益に見合うだけの先行投資をしておくとしよう」
「何です? 金や武器はありますぜ?」
今度は海藤が首をかしげる番だった。
そんな海藤をDT・ホウは無表情に顎でついてこいと示す。眉根を寄せつつもついていく海藤。
執務室を出て中庭を横断し、敷地の奥の車庫へと入る。
「車庫じゃないですか」
「ああ、車庫だ。しかし、それだけではない……気づかんかね?」
白い漆喰の壁と丸太を組み合わせた屋根、公用車が三台あるだけだ。
何の変哲もない造りでただの広い小屋と言ってもいい。
「何も変わったところは……」
「外と中を良く見比べて見るのを勧める」
DT・ホウは腕組みをしたまま海藤を促す。
言われたまま、海藤は一度車庫を出てぐるりと数分かけてゆっくりとその周りを歩きながら入り口に戻ってきた。
「見比べろって言われましても単なる……ん?」
車庫の中は三台の車、確かにそれだけなのだが……海藤は違和感を覚える。
車が三台留まっているスペースはお世辞に言ってもそんなに広くはない、しかし……外に出て周りを歩くと数分かかった。
これが意味する事に海藤は気づく。
「なんか、広さおかしくないですか? 外と中」
「その通りだ。これは日本政府にも教えていない……来たまえ」
そもそもこの車庫は自動車を外交官が日本に持ち込む際、アメリカの技術者によって作られたものだった。表向きは単なる車庫に見える様に。
外の勝手口と同じような場所に見えるように配置されたドアノブを捻り、開ける。
そこに在ったのは……。
「まだこんなもん隠してたんですかい? 俺がやらなくても本国はやる気満々じゃないですか」
隠しスペースに鎮座するソレを見て、海藤は呆れたように紙煙草に火を灯す。
「備えあれば患いなし、と日本の諺では言うのかねこの場合は」
眼鏡の端をくい、と上げてDT・ホウは得意満面に胸を逸らした。
そのまま海藤に目配せをして告げる。
「やるのであれば徹底的に、美しいワンサイドゲームを……そう教えただろう? Mr.海藤」
「そうですねぇ。ありがたく使わせてもらいますよ大統領」
日が傾きつつある車庫に、二人の低い笑い声が木霊した。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる