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第1章 王国の北方、アウロラ公爵領で家庭教師生活
第7話 歓迎の夕食の席で
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「遠方からの新たな客人との出会いに、乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
アイザック公爵閣下の音頭で、アウロラ公爵家の夕食の幕が上がった。
「使用人達と共に同じ食事をすることに対して、眉根を寄せる家もいるが、我がアウロラ公爵家では代々一般家庭と同じ料理を出して共にすることにしている。豪奢な王都の料理に慣れている君には物足りないかもしれないが……」
「いえ、僕は下級貴族家の貧乏学生ですから、パンと自分で調理したスープだけで食事を済ますこともあります。それにお肉はどれも王都ではいいお値段をするので、食卓にこんなにお肉が並ぶだけでもありがたいですよ」
苦笑いを浮かべたアイザック様に俺は素直な感想を述べた。そして、香草と香辛料を使って丁寧に焼かれた鹿肉を大皿から自分の取り皿に取って食べた。美味い。これまで食べたことがない味だ。
「旦那様、ディーハルト様からいただきましたお酒をお持ちしました」
そう言って、セバスチャンさんがアイザック様に無色透明なウォッカが入ったグラスを差し出した。
「おお、待っていたぞ!……ふむ。匂いはなく、味もなく、水の様に飲めるが、これは……かなりクるな!!」
そう言って、大喜びのアイザック様はストレートで注がれていたグラスを瞬く間に空けてしまった。
「セバス、もう一杯だ」
「……どうぞ。ですが、旦那様。このお酒はこの1本限りであることをお忘れないよう」
アイザック様の催促に、素早くセバスさんは別に用意したグラスに今度は氷とウォッカを注ぐと再びアイザック様に差し出し、釘を刺した。
「むっ、そうだったな。んくっ、……氷を浮かべて飲むこの飲み方も悪くないな」
アイザック様はウォッカを気に入った様で大層ご満悦だ。
「あらあら、お酒にこだわりがある貴方がそこまで褒めるお酒があるなんて珍しいわね」
アイザック様の隣の席に座られている腰が細い青みがかった銀髪の巨乳美女、アウロラ公爵夫人であるナターシャ様がアイザック様の様子を見て微笑んだ。
ナターシャ様は胸元を強調し、青と白を基調としているドレスを纏われているため、視線がその胸に吸い寄せられてしまう。だって、男だもの。
しかし、女性は男性よりも視線に敏感ということを今生で腐れ縁とその母親によって、俺は嫌という痛い思いをしてきている。その恐怖のきお……じゃなかった。経験から、ナターシャ様の方を向くときは何とか視線が胸に向くのを逸らした。
「ナターシャも一口飲んでみるか?」
「あら、貴重なお酒と聞いてますのに、よろしいのですか?」
「ああ、もちろんだ」
アイザック様は快諾して、ウォッカがロックで注がれているグラスをナターシャ様に渡した。そう言えばこの世界ではカクテルがなかったことを俺は思い出した。今度作ってみよう。
このお2人、アウロラ公爵夫妻は幼馴染で許婚、婚約者の流れで結ばれてながらも恋愛結婚したという、貴族の結婚の多くが政略結婚であるこの世界の貴族社会で稀有な存在だ。
子供が2人いる今でもその仲は冷めることはなく、北方で寒い季節になったのにお2人がいる場所だけ、一足以上早く、春を通り過ぎて、真夏の様に暑くなっている。使用人の人達にとっては見慣れた光景のようで、皆さん温かい目でお2人を見守っている。
「そういえば、ディーハルト君はもう成人していたのだったな? 酒を飲んでもなにも言われはしまい」
「はい。美味しいワインをいただいています」
そう言って、俺はセバスチャンさんから渡されたワインが注がれているグラスを掲げて見せた。
既に明日のシャルロット様の講義の準備は完了しているから、この夕食の後にする必要があることは自作魔導具の携帯浴室で風呂に入って寝る位だ。
残念ながら、湯を張って入る風呂は全く普及していない。上にその有用性を全く認識されていない。いや、いなかった。
ここ数年で、南のウェルダー公爵領を起点に風呂ブームが急速に広まり始めている。
当然、俺の下宿を夜襲してきたフレアがメリッサさんに(以下略
それはさておき、この世界には酔い醒ましの魔術があるから、折角の御厚意をふいにするのはナンセンスだ。酔い醒ましの魔術のおかげで、アルコール中毒による命の危険はかなり低い。だからといって、完全にならないという訳ではないので、ある程度摂取量を自分でコントロールする必要はある。酒は飲んでも飲まれるなはこの世界でも至言だ。
俺は夕食が始まる前に、酔い醒ましの魔術を改造した魔術を自身に施している。過度に酔うのを条件として術式が発動し、体内のアルコールを魔術を織り交ぜた化学反応#__・__#で分解して無毒化し、酩酊状態を無効化する魔術を施して対策をしているから飲酒は問題ない。
注いでもらったワインは食卓に並ぶ肉類に合うもので、香りと絶妙な酸味、口当たりの良さが上質のものであることを物語っている。おかげで食が進む。
「それにしてもシャルとレティが遅れるとはな……」
「ふふふっ、ディーハルト様のこの歓迎の夕食会はシャルにとっては……どうやら、到着したようですわね」
アイザック様がそうぼやき気味に呟いたのを受けて、ナターシャ様がそう言われると、扉が開いた。
赤薔薇をモチーフにしたと思われるドレスを着たセミロングの銀髪のナターシャ様の面影をもつ美少女と、彼女に付き従う様に歩みを進める玄関で転びそうになったのを支えた銀髪のメイド少女が入室してきた。
「「「乾杯!!」」」
アイザック公爵閣下の音頭で、アウロラ公爵家の夕食の幕が上がった。
「使用人達と共に同じ食事をすることに対して、眉根を寄せる家もいるが、我がアウロラ公爵家では代々一般家庭と同じ料理を出して共にすることにしている。豪奢な王都の料理に慣れている君には物足りないかもしれないが……」
「いえ、僕は下級貴族家の貧乏学生ですから、パンと自分で調理したスープだけで食事を済ますこともあります。それにお肉はどれも王都ではいいお値段をするので、食卓にこんなにお肉が並ぶだけでもありがたいですよ」
苦笑いを浮かべたアイザック様に俺は素直な感想を述べた。そして、香草と香辛料を使って丁寧に焼かれた鹿肉を大皿から自分の取り皿に取って食べた。美味い。これまで食べたことがない味だ。
「旦那様、ディーハルト様からいただきましたお酒をお持ちしました」
そう言って、セバスチャンさんがアイザック様に無色透明なウォッカが入ったグラスを差し出した。
「おお、待っていたぞ!……ふむ。匂いはなく、味もなく、水の様に飲めるが、これは……かなりクるな!!」
そう言って、大喜びのアイザック様はストレートで注がれていたグラスを瞬く間に空けてしまった。
「セバス、もう一杯だ」
「……どうぞ。ですが、旦那様。このお酒はこの1本限りであることをお忘れないよう」
アイザック様の催促に、素早くセバスさんは別に用意したグラスに今度は氷とウォッカを注ぐと再びアイザック様に差し出し、釘を刺した。
「むっ、そうだったな。んくっ、……氷を浮かべて飲むこの飲み方も悪くないな」
アイザック様はウォッカを気に入った様で大層ご満悦だ。
「あらあら、お酒にこだわりがある貴方がそこまで褒めるお酒があるなんて珍しいわね」
アイザック様の隣の席に座られている腰が細い青みがかった銀髪の巨乳美女、アウロラ公爵夫人であるナターシャ様がアイザック様の様子を見て微笑んだ。
ナターシャ様は胸元を強調し、青と白を基調としているドレスを纏われているため、視線がその胸に吸い寄せられてしまう。だって、男だもの。
しかし、女性は男性よりも視線に敏感ということを今生で腐れ縁とその母親によって、俺は嫌という痛い思いをしてきている。その恐怖のきお……じゃなかった。経験から、ナターシャ様の方を向くときは何とか視線が胸に向くのを逸らした。
「ナターシャも一口飲んでみるか?」
「あら、貴重なお酒と聞いてますのに、よろしいのですか?」
「ああ、もちろんだ」
アイザック様は快諾して、ウォッカがロックで注がれているグラスをナターシャ様に渡した。そう言えばこの世界ではカクテルがなかったことを俺は思い出した。今度作ってみよう。
このお2人、アウロラ公爵夫妻は幼馴染で許婚、婚約者の流れで結ばれてながらも恋愛結婚したという、貴族の結婚の多くが政略結婚であるこの世界の貴族社会で稀有な存在だ。
子供が2人いる今でもその仲は冷めることはなく、北方で寒い季節になったのにお2人がいる場所だけ、一足以上早く、春を通り過ぎて、真夏の様に暑くなっている。使用人の人達にとっては見慣れた光景のようで、皆さん温かい目でお2人を見守っている。
「そういえば、ディーハルト君はもう成人していたのだったな? 酒を飲んでもなにも言われはしまい」
「はい。美味しいワインをいただいています」
そう言って、俺はセバスチャンさんから渡されたワインが注がれているグラスを掲げて見せた。
既に明日のシャルロット様の講義の準備は完了しているから、この夕食の後にする必要があることは自作魔導具の携帯浴室で風呂に入って寝る位だ。
残念ながら、湯を張って入る風呂は全く普及していない。上にその有用性を全く認識されていない。いや、いなかった。
ここ数年で、南のウェルダー公爵領を起点に風呂ブームが急速に広まり始めている。
当然、俺の下宿を夜襲してきたフレアがメリッサさんに(以下略
それはさておき、この世界には酔い醒ましの魔術があるから、折角の御厚意をふいにするのはナンセンスだ。酔い醒ましの魔術のおかげで、アルコール中毒による命の危険はかなり低い。だからといって、完全にならないという訳ではないので、ある程度摂取量を自分でコントロールする必要はある。酒は飲んでも飲まれるなはこの世界でも至言だ。
俺は夕食が始まる前に、酔い醒ましの魔術を改造した魔術を自身に施している。過度に酔うのを条件として術式が発動し、体内のアルコールを魔術を織り交ぜた化学反応#__・__#で分解して無毒化し、酩酊状態を無効化する魔術を施して対策をしているから飲酒は問題ない。
注いでもらったワインは食卓に並ぶ肉類に合うもので、香りと絶妙な酸味、口当たりの良さが上質のものであることを物語っている。おかげで食が進む。
「それにしてもシャルとレティが遅れるとはな……」
「ふふふっ、ディーハルト様のこの歓迎の夕食会はシャルにとっては……どうやら、到着したようですわね」
アイザック様がそうぼやき気味に呟いたのを受けて、ナターシャ様がそう言われると、扉が開いた。
赤薔薇をモチーフにしたと思われるドレスを着たセミロングの銀髪のナターシャ様の面影をもつ美少女と、彼女に付き従う様に歩みを進める玄関で転びそうになったのを支えた銀髪のメイド少女が入室してきた。
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