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序章

第0話 失職ついでに異世界転生することになった

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目覚めると見知らぬ天丼……じゃなかった天井すらなく、果てしない白色。見渡す限り真っ白な空間。

いや、それよりも俺は??

「おお、目覚めたようじゃな」

「……」

声のした方に振り向くと、好々爺といった感じのご老人と萎縮している美女がいた。

一体どういう状態なんだと疑問に思うと、

「ああ、ここは大雑把に言うなれば死後の世界じゃ。お主はもう……死んでおる」

は? 何を根拠に似妙に違うが、世紀末救世主に秘孔を突かれたモヒカンモブザコの様なことを言われなければならないんだ? といきなりの言葉に俺は思わず反論が頭に浮かび返してしまった。

けれども、その言葉が漠然と頭ではそれが事実であることがなぜか分かってしまっている。

「ほれ、既にお主が死亡してから7日が経過しており、これこの様に地球での葬式と納骨は終わってしまっておるから現世のお主の肉体はもう物理的に用を成さない形になっておる」

老人が言うと、なぜかそこにあるプロジェクターで上映されている動画、葬式の様子が空間上に投影された。

「本当に申し訳ございません」

その映像が終わるまで、呆然と見ていた俺はなぜか先ほどから老人の傍にいた美女に頭を下げられ、謝罪された。

いや、そもそも貴方達はどなたでしょうか? ん? そう言えばなんだか自分の手足の感覚が曖昧だ。

「おお、すまなんだ。わしは例えるならばお主が生きていた世界、お主等の地球世界を管理している便宜上、神と呼ばれている存在じゃ。そして、こちらの女性はわしの部下で、別の異世界を管理している女神イルテミス。彼女は今回、研修視察でわしの世界に降臨したのじゃが、暗殺を目論んだド阿呆どもにそうになり、間一髪で身代わりになったお主に救われたのじゃ。手足の感覚が曖昧なのはお主は物質的な肉体を失っておるからじゃよ」

「本当にありがとうございました」

老人神様の説明がなぜか腑に落ちると、再び、イルテミス様が俺に頭を下げられた。女神様(美人)に頭を下げられるとどうにも気持ちが落ち着かないので、謝意は受け取ったのでもう頭を下げないよう俺はお願いした。

「さて、死んでしまったお主の今後なのじゃが、残念ながら、今回のことを目論んだ阿呆どもの所為でお主の魂魄はわしの管理しておる地球世界の輪廻の輪から強引に弾き出されてしもうた。簡単に地球うちでは転生できなくなってしまったのじゃ。いや、できなくはないのじゃが、やはり今すぐという訳にはいかぬな。お主の体感時間で少なくとも14年間は必要じゃ」

俺の世界の神様が申し訳なさそうにそう告げた。すると、俺はこれからどうなるのかという不安が湧き上がってきた。

「今回のお主の死は異例じゃ。ふむふむ、本来であれば失職したどん底から這い上がって大富豪になって幸せな家庭を築くメイクミラクルな未来もあったようじゃな。しかし、その可能性も今となっては潰えさせてしまったのじゃ」

おのれ、イルテミス様のお命を狙って俺を殺したド阿呆共、許さん!

「このままお主の魂魄をここに放置しておくと、1日ともたずに霧散してしまい、なにも残らぬ。それで14年も待てというのは無理な話じゃ。蛇足じゃが、1日24時間、365日を14回という意味じゃからな。魂魄の控え場所の冥界は例外なく予定外アポなしお断りじゃ。あそこの管理者の閻魔はともかく、補佐官の鬼が冷徹じゃからのう。だからといって、お主の魂魄を今すぐ強引に輪廻の輪に戻そうとすると、魂魄自体が異物として弾き出されて跡形もなくバラバラになってしまう恐れがあるのじゃが」

「今回のことは私の責任でもありますので、私の管理している世界は地球の輪廻の輪以外の方法で転生を行っているので、貴方の魂魄を私の管理する世界で転生していただくことができます。私の世界に転生された後もこの地球世界への転生権利を保持できます。」

つまり、このままだと文字通り魂も残らない俺には異世界への転生にはいかYESしか選択肢がないということか。それとさっきから俺の思考はお二人には漏れてますよね。

「うむ。気にせんでよいぞ。ちなみに、イルテミスの管理している世界はお主が好きなゲームの世界と同じで魔法やスキルといった技術がある。獣人やエルフ、ドワーフといった亜人種もおる。その分、医療と科学技術は発展していないから注意したほうがいいかもしれんのう」

多大なお世話になっていた医療と科学技術が発展していないとか、そこはかとなく転生するのが不安になってくるな。これは転生特典で今の記憶そのままで、便利なスキルをいくつか予め取得しておきたい……無理かな。

「いえ、今回の事情を考慮して、現在の記憶の保持も可能ではあります。しかし、あなた自身に関する地球世界での記憶は大変申し訳ありませんが今回の事故で消失してしまっているため、転生後に引き継ぐことができません。スキルに関しては最大8つまでは初期取得は可能ですので、この一覧からお選びください」

今更になって、自分が誰であったかを思い出せないことに気がついたが、神様達で戻せないならどうあっても無理だろう。

葬式までされた前世になる自分に関する記憶が残らないことに未練がない訳ではないが、俺はイルテミス様が表示したスキルリストに眼を移した。すると、

「ふむ、折角じゃからこれらから選んでもよいぞ」

地球の神様がいくつかリストにスキルを追加してくれた。おお! これはありがたい




「私は貴方を束縛するつもりはありませんので、新たな生を自由に生きてください」

「また14年後以降に会うこともあるじゃろうが、達者でのう」

8つのスキルを決め、転生に必要な諸々の準備を終えた俺を二柱の神が見送られ、俺の意識は心地よい眠りに落ちていった。





◆◆◆


「行ったのう」

「……はい。此度の件、真に申し訳ありませんでした」

「よいよい、お主が無事でなによりじゃ。それにしても、まさか、わしの管理している世界でことを起こすとは。降臨直後で無防備になるとはいえ、お主を直接狙ってくるとはのう。共謀してこちらで内通しておったお主の後釜を狙っておった奴等は一網打尽にして、壊滅させた。そっちのド阿呆どもの処罰処分は終わったのか?」

「はい。全員捕らえて、罰としてを私の世界に招くために必要な神力を徴発しました。存在維持がぎりぎりできるまで神力を抜き取って、無様な抵抗ができないように首輪もつけてます。後任も既に手配済みです。問題を起こしたのがそちらの世界ですので、どうぞ、そちらの世界の理で裁いてください」

「うむ。こちらの理に照らし合わせ間違いなく罪を審らかにして裁こう。そして、前回の協議どおりに刑の執行後の罪人どもの身柄はこちらの世界が貰い受ける」

「ええ、お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」

その言葉を最後に二柱の神はその場から消えた。



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