上 下
27 / 108
第2章 自由連合同盟都市国家メルキオール 首都メルキオール編

第27話 この世界の貨幣価値と番兵と世間話。初めてこの世界の宿屋でお泊りする件

しおりを挟む
「お疲れ様です」

「おお、ありがとう。入場する人数を言ってくれ」

「3人です」

労いの言葉をかけた俺に水晶球を持った番兵が応え、長槍を持った番兵2人が警戒しながら近寄ってくる。
俺と会話している番兵さんが持っているのは端的に言えば嘘発見器の魔導具だ。

俺の言葉に水晶球は青く輝く。

「3人で馬車持ちか、それなら、銀貨1枚に正銅貨3枚だ」

これまでスルーしてきたが、この世界の貨幣価値について説明しよう。

この世界の貨幣の種類は鉄貨、鋼貨、赤銅貨、青銅貨、正銅貨、銀貨、金貨、魔銀ミスリル貨、白金プラチナ貨、神硬金オリハルコン貨の10種類。
分かりやすく表にすると下記の通りだ。
    相当円
 鉄貨=10
 鋼貨=50
赤銅貨=100
青銅貨=500
正銅貨=1,000
 銀貨=1万
 金貨=10万
魔銀ミスリル貨=100万
白金プラチナ貨=1,000万
神硬金オリハルコン貨=1億

ちなみに【異世界電子通販ネットショッピング】の仮想通貨1Cが約10円相当なので、1C=1鉄貨と考えることができる。とはいえ、この世界の物価価値が向こうの世界と一致している訳ではないので注意が必要だ。

そして、一般人がお目にかかれるのは金貨まで。それ以上は豪商かギルド、高ランク冒険者、国家位しか持っていない。

「はい、銀貨1枚に正銅貨3枚です。メルキオールは始めてなんで、泊まりやすいお勧めの宿屋ってありますか?」

番兵の人に枕として聞いてみる。

「馬車持ちだったら大通りをこのまま3区画までまっすぐ進んで右に曲がった先にある”宿木亭”がお勧めだ。老舗で、穴場。飯も美味し、宿も清潔な方だ。下手なこの入り口近くの新興の安宿よりは遥かにマシなはずだ」

ほほう、それはいいことを聞いた。

「新興の安宿? そういえば人がやけに多いみたいですがなにかあったんですか?」

「ああ? お前さん知らないのかい?」

「申し訳ありません。この都市から離れた場所から来た者で、疎いのです」

世間話してはいるが、この番兵、水晶の魔導具をしまっていないから迂闊なことは言えない。

「なら、しょうがねえな。なんでも、最近お隣のオディオ王国の国王とお姫様が馬鹿やって、ご先祖が封じた竜の封印を解いちまって、呪われちまったらしい。呪いの影響を恐れたと国民達がメルキオールに逃げてきているって話だ。国境の村とかは基本、余所者お断りだから、道中の魔物を命がけでなんとかやり過ごして、この首都メルキオールに着の身着のままで来ているってところだな」

ここまでは道中商人達から仕入れた情報と同じだな。

「へぇ、そうなんですか。そういえば、お隣のオディオ王国とキナ臭い話題を耳にしたことがあります。なんでも、禁じられている勇者をオディオ王国は召喚したとか。もしかして、メルキオールに来るより前に勇者が王国から逃げてきて冒険者登録しているとかありません?」

俺達よりも先に駄メン達が王国から逃げ出している可能性も0じゃない。いるなら予め遭遇する心構えができるが、果たして……。

「はっはっは。なかなか面白いこと言うね兄さん。少なくとも、みたいだし、もし、勇者なんてものが冒険者登録したら、大騒ぎになるんじゃねぇか?」

ぬぅ、どうやらいないではなく、いないかもしれないか。警戒したほうがいいかもだな。それに、ギルドの方も情報封鎖の可能性があるからこの番兵の話を鵜呑みにするのは危険だな。

「っと、これ以上はお仕事の邪魔になりますね。お話ありがとうございました。これは気持ちです。3人で今夜の酒代にでもしてください」

そう言って、俺は皮袋から銀貨を1枚取り出して、番兵に渡した。

「おっ、すまねな」

「いえ、貴重なお話ありがとうございます。私達が安心していられるのも番兵の貴方達がきちんとお仕事してくれているからですよ。それでは」

そう言って俺は馬に【偽装】したケイロンに馬車を進めさせた。

「さっきの話にあった”宿木亭”に向かってくれ」

「了解シマシタ」



「いらしゃいませ。当宿は馬車1台駐車料金が1泊銀貨1枚で、馬の餌代と宿代は別になります。宿泊されますか?」

「ありがとう。宿泊するから駐車場所まで誘導してください」

「毎度あり。ではこちらです」

”宿木亭”の門番の1人の誘導に従い、馬車を駐車場に停車した。

「貴重品は馬車に置いていかない様お願いします。紛失されても当方は責任を負いかねますので。馬はどうされます? 馬房に繋ぎますか?」

さて、どうしよう。ケイロンは【偽装】しているから馬扱い。魔法生物だから、通常の馬の餌は不要。いっそのこと俺の【空間収納】にいれることも可能だ。

『マスター、提案ガアリマス』

『なんだ?』

『様子見デ一晩私ハ場房ニ行ッテミヨウト思イマス。モシカシタラ何カ情報ヲ得ラレルカモシレマセン』

たしかに【念話】で対象指定すれば動物でも対話は可能。もしかしたら、収穫があるかもしれないな。

『わかった。許可する。但し、耐え切れなかったり、ヤバくなったらすぐに連絡してくれ』

『分カリマシタ』

俺はケイロンとの【念話】を終了し、案内役となっている門番に1晩試しに馬房に預けることをお願いし、馬に【偽装】したケイロンを預けて、宿の建物に飛鳥とクロエを伴って入った。



「いらっしゃいませ。3名様ですね。お1人様1泊正銅貨4枚になります。お部屋は2階、お食事は別料金で1階の食堂で摂ることができますよ。お湯はお1人分の桶1杯で正銅貨1枚になります。トイレは1階のあちらになります」

使い込まれているが掃除が行き届いて清潔なのは言うに及ばず、思っていたよりも雰囲気のいい宿で、料金も良心的だな。

「空いている部屋の種類はどれ位あるかな?」

俺は受付の女性に尋ねた。

「3人部屋が1つと2人部屋が2つ、1人部屋が5つです。ちなみに3人部屋でしたら、割り引きまして1泊銀貨1枚になります」

3人部屋の割引は魅力的ではあるが俺の独断はだめだな。

「2人とも、部屋割りはどうする? 3人部屋、2人部屋と1人部屋、それぞれ個室が選べるけど。後お湯はどうする?」

「出費を抑えるため3人部屋にしましょう。お湯は今夜は不要で」

『我もアスカに同意じゃ』

「わかった。3人部屋でひとまず3泊でお願いします」

「わかりました。こちらにご記帳……代筆しましょうか?」

「いや、大丈夫だ」

そう言って、俺は台帳にカタカナで3人の名前を記入した。

「ありがとうございます。3泊ですと、銀貨3枚になります。こちらがお部屋の鍵です」

俺が料金を支払うのと引き換えに鍵を渡された。

「ありがとう。食堂は何時までやっているかな?それと厨房を借りることはできるかい?」

「食堂はこの都市では夜鐘が9回鳴る終業の鐘がなりますとラストオーダーになります。厨房の利用は混雑時はできませんが、それ以外でしたら、応相談。あ、お部屋での調理は禁止ですのでご注意ください」

なるほどね。

「わかった。ありがとう。じゃあ部屋に行こうか」

「はい」

『うむ』

俺達は日が傾き出したなか、今夜泊まる部屋に移動した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...