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第1章 オディオ王国編

第12話 私達がアリシア王女に召集された件 (勇者:魔導師スバル・サツキ(メガネ)視点)

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アリシア王女の侍女から私に王女から私の下に召集があったと連絡が来た。

おそらく、一昨日牢送りにしたあの存在自体が汚点のオタク中年に身の程と言うものを教えてやることになったのだろう。

この国で無能の代名詞である錬金術師という詐欺師の職にしかつけなかった下賎民に対して称号の勇者を持ちながら、魔術師ソーサラーから、平民では生涯就くことすらできない上位職である魔導師メイジの職に昇格した私と同じく平民では夢物語のそれぞれの上位職に昇格した勇太達とではやはり生まれ持った格の違いは疑いようがない。アリシア王女や国王陛下のお言葉に素直に従うのがあの男が第一にすべきことだというのに。

 私と武、勇太、小鈴の4人はアリシア王女の執務室に集まった。ここにいつもはあるはずのポニーテールを靡かせている如月の姿だけがなかった。

「あのッ、なんで飛鳥ちゃんはここにいないんですか?」

この面子のなかで一番小柄な小鈴が執務机の椅子に座るアリシア王女に意を決して、この場にいない如月飛鳥について言及した。

「アスカ? ああ、あの魔術が使えないサムライの彼女ですか? 魔術が使えない無能者には今後、貴女達にお願いする魔王討伐関連のお仕事は荷が重いので、これからのことに関して、彼女には遠慮してもらうことにしました」

アリシア王女は美しい笑みを浮かべてそう仰った。たしかにこの場に内容はどうあれ【魔術】が使えない者はいない。賢いとはどう言い繕っても無理があり、とても【魔術】を覚えることができるとは思えない土門武ですら【強化魔術】を取得している。

【魔術】取得の有無は今後の重要な戦いで大きな差になってくる。だから、アリシア王女は如月を見限ることにしたのだろう。

如月飛鳥、彼女は名門如月家の息女で、学校では文武両道の才媛として名を馳せ、如月家以上の名門のである皐月家の私を差し置いて人心を掴み、私達が通う名門校の生徒会長に就いていた。

だが、その彼女もこの世界では高貴なる貴族が持つことを許されたとされる【魔術】が使えない無能者の1人。『如月一刀流』というカビの生えた剣術しか取り得がなく、サムライという刀での攻撃しか得意でない職を得たのがあの女の運の尽きだ。

あの女を加えた私達5人は所謂、幼馴染の間柄だ。自分が正しいと思ったら、深く考えもせず即座に行動を起こす御上勇太と彼に従者の如く脊髄追従する土門武。流されて2人に付き合って騒ぎを大きくする三条小鈴に、皆の世話を焼き、必要であればあのトラブルメーカー3人の手綱を握って致命的な失敗を避ける様に3人を誘導する如月飛鳥。私、皐月昴はその4人から少し離れた騒ぎに巻き込まれない位置で時折、助言を行っていた。

私は父の命で、我が皐月家のために勇太達に付き合っていたが、本音を言えば、呆れる馬鹿騒ぎを毎度起こす勇太と武には嘆息せざるを得ず、父の命と家のためということでなければ付き合い続ける気にはならない。この世界に召喚された今となっては、その煩わしい家の縛りもなくなったので、彼等には最早私にとって扱いやすい手駒という価値しか感じていない。

「それでは、集まってもらいました貴方達4人にはあの自身の罪を認めようとしない愚かな罪人である錬金術師の処分をお願いします。ああ、今回はいつもの訓練とは違って、手加減する必要はありませんよ。なにせ、相手は犯罪者ですから、殺してしまって構いません」

心に染みる心地よいアリシア王女の言葉が耳に響く。そうか、ようやく私は手加減せずに【魔術】を使えるのか。

「犯罪者の処刑か。悪事を働いたのだから、相応の報いを受けなければならない。それにあの男に手加減は必要ないことだな」

一見、もっともらしいことを言っているが、この男、勇太は自分の頭で深く考えて生きてきていない。ただそのときの感情と周囲の目、その場の勢いで物事を判断しているのだ。

「へぇ、手加減無用か。そいつはありがたいぜ」

考えない男その2であるゴリラが拳を突き合わせて歯をむき出しにした獰猛な笑みを浮かべた。脳みそまで筋肉でできていると学校では専らの噂だが、的を得ていると言わざるを得ない。

武はあの錬金術師の男に3日前に激昂して殴りかかって、返り討ちにあい、武術に関して素人である私が見ても見事な一本背負いで沈められた。

彼の治療を担当した高位治癒術師ハイヒーラーの小鈴が言うには、全身複雑骨折で生きているのが不思議なレベルだったらしい。そこに私は僅かな違和感を感じたが、王国の治癒術師達が勇者である武の頑強さによるものだと言うので、気にするのをやめた。

「ふえぇ、全力で魔術を使って、お城が壊れたりしないんですか?」

「この王城は初代王妃の魔術によって護られていますから、大丈夫ですよ。たとえ壊れたとしても、あの罪人が投獄された地下牢は廃棄して構わない場所ですので、遠慮は無用です」

小鈴の懸念をアリシア王女はいつもの優雅な笑みを浮かべて払拭された。

「では、皆さん、参りましょうか」

こうして、アリシア王女の号令の下、彼女を加えた私達5人はあの錬金術師の男を処刑すべく、男を投獄した地下牢に向かった。
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