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第1章 クソ勇者からはじまる簡単なお仕事
第47話 魔族の少女
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暗黒魔境横断を開始して三日目、セブンズはセレスティーのことを考えていた。
というのは、彼女が黎明樹の元へ行くことを嫌がっている、あるいは遅れさせようとしている態度が見えるからだ。十六年余の長い間、牢獄の中で待ち続けたにも拘らず、なぜそのような態度をとるのか? セブンスには彼女の真意が解らなかった。
一方セブンスは、この世界についてまだまだ分からないことが沢山あることは事実だが、彼に与えられたミッション――黎明樹の巫女であるセレスティーを黎明樹のもとへ送り届けること――を達成する能力が自分にはあると感じていたし、自信もあった。
そして、このミッションを早く完了し、異世界の人生、新たな人生を堪能したいと思っている。なぜなら、せっかくチートな能力を身に着けているのだから――
セブンスが一日の疲れを癒やすため、グラン邸の大浴場でふやけていると、湯けむりの向こうに人影が見えた。
「わたしも一緒にいいかしら?」
「もちろんいいよ、セレスティー」
セレスティーは美しい金髪を頭でお団子にし、身体にはバスタオルを巻いていた。
彼女は手桶で浴槽のお湯を掬い、何回か身体にかけた。
その気品に溢れた仕草はどこから来たものだろうか?
――エルフの民族的な習性なのかもな?
セブンスがセレスティーに見蕩れていると、遠くからパチャパチャという水面を叩く音が聞こえてきた。
「十二歳の女の子は風呂で泳いだりしないぞ~」
「ごめんなさーい!」
口では謝っているが、フェルは方向転換をすると再びパチャパチャと泳ぎだした。当然だが泳法は犬掻きである。
「しょうがない奴だな~」と言いつつも、@@@セブンスの目は優しい目をしている。きっと本当の家族――妹のように思っているのかもしれない。
ただ、フェルは見た目が人間の少女と変わらないが、行動がちょっと幼いので躾が必要かもしれないなとセブンスは思った。あまりに自由奔放過ぎると人間社会に溶け込めなくなることを彼は危惧しているようだ。
「お隣、いいわよねダーリン?」
顔を赤らめながらセレスティーが近づいてくる。
そんな彼女の恥じらう姿を見ているセブンスも恥ずかしくなってきた。
恥ずかしさは伝染でもするのだろうか?
「も、もちろんいいよ。一緒に風呂に入るのは初めてだな」
「うん、恥ずかしかったから……」
セレスティーのきめの細やかな肌が紅く染まっていく。
本当に恥ずかしかったらしい……。
いつも公然とセブンスに抱きついている態度からは想像もつかない。
「普通の反応で助かるよ。フェルはともかくとして、ミスティーやクラウも素っ裸で入ってくるから目のやり場に困るんだよ」
「ええ~っ!」
セレスティーの口から「先を越された……」という声が漏れてきたが、セブンスは聞かないふりをした。
「と、ところでセレスティー、今の旅は楽しいかな?」
「もちろん楽しいわ。わたしは小さい頃からエルフの里を出たことがなかったから、見るもの聞くものがすべて新鮮。ダーリンには感謝しているの」
「感謝はしなくてもいいよ。俺の任務だからね。それにしても、魔獣との戦い方はどうやって覚えたんだ?」
「結界の外には魔獣が普通に棲みついているから、訓練のために戦ったわよ」
エルフの里は大森林地帯だ。その中には七つほどの町があり、それぞれが結界を張っている。セレスティーはその中でも一番大きなアークフェリス族の町に住んでいた。そして、一六年前に幽閉された。
「だれが教えてくれたんだ?」
「ダーリン、あまり昔のことは話したくないんだけれど……」
「無理に話す必要はないよ。君がとても強いから興味を持っただけだから」
セレスティーは両手を頬に当てて思案している。
思い出したくない過去があるのだろう。彼女が幽閉されていたことからも酷い目にあっていることは間違いない。
「天使が教えてくれたの。自分の身は自分で守れるようにしないとだめだって」
「えっ! 天使……」
今度はセブンスが嫌な過去を思い出してしまった。
彼はゼラキエルという名の天使に殺されて異世界に転生したのだ。もしゼラキエルに殺されなければもう少しマシな生き方ができたはずだ。
「その天使の名前を訊いてもいいか?」
「ええ、ゼラキエルというのよ」
「!」
セブンスは絶句した。
憎きゼラキエルがこの世界にいて、しかもセレスティーの知り合いだったとは……。
――なんてこった。
「わたしね、幽閉されていた時、彼女に八つ当たりしてたの。わたしが幽閉されたのは彼女の所為だって決めつけて……」
セブンスの顔がみるみる朱に染まっていく。
セレスティーの声が届いていない――
「ど、どうしたのダーリン! 怒ってるの? わたし何か悪いことした?」
「ち、違うんだ。セレスティーに怒っているわけじゃない。その天使には恨みがある」
「そ、そんな……」
――俺は二度と地球に還れない。少なくと元には戻れない。ゼラキエルのせいで……。
「その話は後でしよう……」
セブンスがその話を切り上げたのは、浴場の扉に二つの影が現れたからだ。
それはクラウと魔族の少女だった。
「セブンスさま、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
クラウはセブンスの言いつけどおりバスタオルを身体に巻いていたが、魔族少女は一糸まとわぬ姿だった。
魔族少女の肌は薄い褐色で髪の毛は銀色、瞳はルビーのように輝いている。耳は若干尖っているが、エルフのように長いわけではない。戦闘民族である故か、身体は引き締まって無駄な脂肪が少ない。頭部に生えている二本の角さえも、そこになくては不自然なくらいバランスが取れている。
――美しい。
セブンスは怒りで頭が沸騰しそうだったが、魔族少女の美しさで冷静さを取り戻した。そんなセブンスを見てセレスティーは悲しそうに俯く。
彼が見惚れている間もクラウが魔族少女の世話を焼き、かけ湯をしている。それが終わると二人はセブンスの前に並んで湯に浸かる。
「せ、背中の翼はどうしたんだ?」
「あの翼は実体ではありません。飛行魔法を使うときの補助魔法なのです」
魔族少女の話し声にはまだ緊張感があるものの、一時の興奮状態からは覚めているようだった。
「そうだったのか。ということは天空族の翼も実体ではないのかな?」
「あれは魔法具だけど飾りに近いものです。魔族の翼は完全に魔法だけで実現しているから天空族のものとは全くの別物よ」
「そういえば君のはコウモリのような膜を張ったものだったけど、天空族のものは鳥の羽……、いや、天使の翼のようだった」
「あなたは天空族に会ったことがあるのかしら? だとしたらよく生きているわね」
「運が良かっただけだよ。もう少しで死ぬところだった」
「そうでしょうね。奴らは冷酷だから目の前の他種族は虫けらのように殺しますから」
「クックック……」
「な、何がおかしいの? 侮辱は許さないわよ!」
「ごめん。君とこんなに話ができるとは思わなかったから、急に嬉しくなった」
――誰かと仲良くなるには第三者の陰口を叩くのが一番か? あまりやり過ぎるとしっぺ返しが怖いけど。
もっとも、その第三者が敵対関係にある天空族なので、この場合しっぺ返しは当て嵌まらない。
「そう……だったの。ところで、自己紹介がまだだったわね。わたしの名はアイル・グラナガン。もちろん魔族よ」
「俺はセブンス・クロイツ。見ての通り人族だ。君のことはアイルと呼んでもいいかな?」
「もちろん構わないわ。あなたのことはセブンスと呼ぶからね」
「ああ、それでいい」
「……わたしはあなた達に謝罪しなければならない」
突然アイルは真剣な眼差しをセブンスたちに向けた。
「何のことだ?」
「あなた達はわたしを冬眠状態から開放してくれた。それなのに、話を聞かずに攻撃魔法を放ってしまった。本当に申し訳なかった。この通り謝罪します」
アイルは頭を垂れた。
大浴場でする話ではないかもしれないが、アイルとしては謝罪する機会がなかった。
「その謝罪、受け入れよう。みんなもいいかな?」
「ダーリンが受け入れるなら、わたしは依存ないわ」
「もちろん、わたしもですセブンスさま」クラウ とアイルはとっくに和解しているようだ。
「フェルはあっちで遊んでいるからいいか……」
その時、羽の生えた水色の小さな精霊がセブンスの頭の上に現れた。
ミスティーだった。
「わたしも謝罪を受け入れるわ」
「重い……」
「レディーに向かって失礼なこと言わないで!」
精霊といえども実体化すれば多少の重さは発生する。
「ふつう、レディーは頭の上に乗らない」
「わたしはいいのよ。精霊だから。ふふん」
「あのな~。まあいいよ」
「ふふふ。あなた達っていつもそうなの?」
「ああ、こんな感じだよ」
「……人族、エルフ、精霊、そして獣人? あなた達って変わってるわね。この中にわたしが居ても違和感がないわ」
「そう言われてみるとそうだな。最近は自分が本当に人族なのか疑っているけどな」
「人族離れした魔力を持ってるわね。わたしはこれでも魔王の娘なのよ。そのわたしよりも魔力が強いなんて……」
「セブンスさま、アイルさんは三百年間冬眠状態でした。現在の魔王とは縁がないと思われます」
「そうか。帰るところがなさそうだな。アイルはこれからどうしたい?」
「まだ考えていないの。できれば……あなた達としばらく行動を伴にしたいのだけど……いいかしら?」
「急ぐ旅ではなさそうだし……」
セブンスがセレスティーのほうを見ると、セレスティーは頷いて同意した。
「俺たちは君を歓迎するよ」
「アイルさん、良かったですね」セレスティーは満面の笑みを浮かべた。
「ふふふ、アイルさん、よろしくね」セブンスの頭の上でミスティーが貴族式の挨拶をした。
セブンスは黎明樹の精霊であるシルキーに言われたことを思い出した。
『魔獣や盗賊以外では、旅の途中で、冒険者、騎士隊、貴族、勇者、お姫さま、魔族、天空族、龍神族、いろいろと関わろうとしてくるかも知れませんが、適当に無視して下さい』
――すでに半分くらいと関わってしまって、無視できてない……。
セブンスがガーディアンの仕事が達成できるのか不安に思っていると、遠くからパシャパシャという水を叩く音が近づいてきた。
――悩んでも仕方ないか。
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2019年もよろしくおねがいします。
というのは、彼女が黎明樹の元へ行くことを嫌がっている、あるいは遅れさせようとしている態度が見えるからだ。十六年余の長い間、牢獄の中で待ち続けたにも拘らず、なぜそのような態度をとるのか? セブンスには彼女の真意が解らなかった。
一方セブンスは、この世界についてまだまだ分からないことが沢山あることは事実だが、彼に与えられたミッション――黎明樹の巫女であるセレスティーを黎明樹のもとへ送り届けること――を達成する能力が自分にはあると感じていたし、自信もあった。
そして、このミッションを早く完了し、異世界の人生、新たな人生を堪能したいと思っている。なぜなら、せっかくチートな能力を身に着けているのだから――
セブンスが一日の疲れを癒やすため、グラン邸の大浴場でふやけていると、湯けむりの向こうに人影が見えた。
「わたしも一緒にいいかしら?」
「もちろんいいよ、セレスティー」
セレスティーは美しい金髪を頭でお団子にし、身体にはバスタオルを巻いていた。
彼女は手桶で浴槽のお湯を掬い、何回か身体にかけた。
その気品に溢れた仕草はどこから来たものだろうか?
――エルフの民族的な習性なのかもな?
セブンスがセレスティーに見蕩れていると、遠くからパチャパチャという水面を叩く音が聞こえてきた。
「十二歳の女の子は風呂で泳いだりしないぞ~」
「ごめんなさーい!」
口では謝っているが、フェルは方向転換をすると再びパチャパチャと泳ぎだした。当然だが泳法は犬掻きである。
「しょうがない奴だな~」と言いつつも、@@@セブンスの目は優しい目をしている。きっと本当の家族――妹のように思っているのかもしれない。
ただ、フェルは見た目が人間の少女と変わらないが、行動がちょっと幼いので躾が必要かもしれないなとセブンスは思った。あまりに自由奔放過ぎると人間社会に溶け込めなくなることを彼は危惧しているようだ。
「お隣、いいわよねダーリン?」
顔を赤らめながらセレスティーが近づいてくる。
そんな彼女の恥じらう姿を見ているセブンスも恥ずかしくなってきた。
恥ずかしさは伝染でもするのだろうか?
「も、もちろんいいよ。一緒に風呂に入るのは初めてだな」
「うん、恥ずかしかったから……」
セレスティーのきめの細やかな肌が紅く染まっていく。
本当に恥ずかしかったらしい……。
いつも公然とセブンスに抱きついている態度からは想像もつかない。
「普通の反応で助かるよ。フェルはともかくとして、ミスティーやクラウも素っ裸で入ってくるから目のやり場に困るんだよ」
「ええ~っ!」
セレスティーの口から「先を越された……」という声が漏れてきたが、セブンスは聞かないふりをした。
「と、ところでセレスティー、今の旅は楽しいかな?」
「もちろん楽しいわ。わたしは小さい頃からエルフの里を出たことがなかったから、見るもの聞くものがすべて新鮮。ダーリンには感謝しているの」
「感謝はしなくてもいいよ。俺の任務だからね。それにしても、魔獣との戦い方はどうやって覚えたんだ?」
「結界の外には魔獣が普通に棲みついているから、訓練のために戦ったわよ」
エルフの里は大森林地帯だ。その中には七つほどの町があり、それぞれが結界を張っている。セレスティーはその中でも一番大きなアークフェリス族の町に住んでいた。そして、一六年前に幽閉された。
「だれが教えてくれたんだ?」
「ダーリン、あまり昔のことは話したくないんだけれど……」
「無理に話す必要はないよ。君がとても強いから興味を持っただけだから」
セレスティーは両手を頬に当てて思案している。
思い出したくない過去があるのだろう。彼女が幽閉されていたことからも酷い目にあっていることは間違いない。
「天使が教えてくれたの。自分の身は自分で守れるようにしないとだめだって」
「えっ! 天使……」
今度はセブンスが嫌な過去を思い出してしまった。
彼はゼラキエルという名の天使に殺されて異世界に転生したのだ。もしゼラキエルに殺されなければもう少しマシな生き方ができたはずだ。
「その天使の名前を訊いてもいいか?」
「ええ、ゼラキエルというのよ」
「!」
セブンスは絶句した。
憎きゼラキエルがこの世界にいて、しかもセレスティーの知り合いだったとは……。
――なんてこった。
「わたしね、幽閉されていた時、彼女に八つ当たりしてたの。わたしが幽閉されたのは彼女の所為だって決めつけて……」
セブンスの顔がみるみる朱に染まっていく。
セレスティーの声が届いていない――
「ど、どうしたのダーリン! 怒ってるの? わたし何か悪いことした?」
「ち、違うんだ。セレスティーに怒っているわけじゃない。その天使には恨みがある」
「そ、そんな……」
――俺は二度と地球に還れない。少なくと元には戻れない。ゼラキエルのせいで……。
「その話は後でしよう……」
セブンスがその話を切り上げたのは、浴場の扉に二つの影が現れたからだ。
それはクラウと魔族の少女だった。
「セブンスさま、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
クラウはセブンスの言いつけどおりバスタオルを身体に巻いていたが、魔族少女は一糸まとわぬ姿だった。
魔族少女の肌は薄い褐色で髪の毛は銀色、瞳はルビーのように輝いている。耳は若干尖っているが、エルフのように長いわけではない。戦闘民族である故か、身体は引き締まって無駄な脂肪が少ない。頭部に生えている二本の角さえも、そこになくては不自然なくらいバランスが取れている。
――美しい。
セブンスは怒りで頭が沸騰しそうだったが、魔族少女の美しさで冷静さを取り戻した。そんなセブンスを見てセレスティーは悲しそうに俯く。
彼が見惚れている間もクラウが魔族少女の世話を焼き、かけ湯をしている。それが終わると二人はセブンスの前に並んで湯に浸かる。
「せ、背中の翼はどうしたんだ?」
「あの翼は実体ではありません。飛行魔法を使うときの補助魔法なのです」
魔族少女の話し声にはまだ緊張感があるものの、一時の興奮状態からは覚めているようだった。
「そうだったのか。ということは天空族の翼も実体ではないのかな?」
「あれは魔法具だけど飾りに近いものです。魔族の翼は完全に魔法だけで実現しているから天空族のものとは全くの別物よ」
「そういえば君のはコウモリのような膜を張ったものだったけど、天空族のものは鳥の羽……、いや、天使の翼のようだった」
「あなたは天空族に会ったことがあるのかしら? だとしたらよく生きているわね」
「運が良かっただけだよ。もう少しで死ぬところだった」
「そうでしょうね。奴らは冷酷だから目の前の他種族は虫けらのように殺しますから」
「クックック……」
「な、何がおかしいの? 侮辱は許さないわよ!」
「ごめん。君とこんなに話ができるとは思わなかったから、急に嬉しくなった」
――誰かと仲良くなるには第三者の陰口を叩くのが一番か? あまりやり過ぎるとしっぺ返しが怖いけど。
もっとも、その第三者が敵対関係にある天空族なので、この場合しっぺ返しは当て嵌まらない。
「そう……だったの。ところで、自己紹介がまだだったわね。わたしの名はアイル・グラナガン。もちろん魔族よ」
「俺はセブンス・クロイツ。見ての通り人族だ。君のことはアイルと呼んでもいいかな?」
「もちろん構わないわ。あなたのことはセブンスと呼ぶからね」
「ああ、それでいい」
「……わたしはあなた達に謝罪しなければならない」
突然アイルは真剣な眼差しをセブンスたちに向けた。
「何のことだ?」
「あなた達はわたしを冬眠状態から開放してくれた。それなのに、話を聞かずに攻撃魔法を放ってしまった。本当に申し訳なかった。この通り謝罪します」
アイルは頭を垂れた。
大浴場でする話ではないかもしれないが、アイルとしては謝罪する機会がなかった。
「その謝罪、受け入れよう。みんなもいいかな?」
「ダーリンが受け入れるなら、わたしは依存ないわ」
「もちろん、わたしもですセブンスさま」クラウ とアイルはとっくに和解しているようだ。
「フェルはあっちで遊んでいるからいいか……」
その時、羽の生えた水色の小さな精霊がセブンスの頭の上に現れた。
ミスティーだった。
「わたしも謝罪を受け入れるわ」
「重い……」
「レディーに向かって失礼なこと言わないで!」
精霊といえども実体化すれば多少の重さは発生する。
「ふつう、レディーは頭の上に乗らない」
「わたしはいいのよ。精霊だから。ふふん」
「あのな~。まあいいよ」
「ふふふ。あなた達っていつもそうなの?」
「ああ、こんな感じだよ」
「……人族、エルフ、精霊、そして獣人? あなた達って変わってるわね。この中にわたしが居ても違和感がないわ」
「そう言われてみるとそうだな。最近は自分が本当に人族なのか疑っているけどな」
「人族離れした魔力を持ってるわね。わたしはこれでも魔王の娘なのよ。そのわたしよりも魔力が強いなんて……」
「セブンスさま、アイルさんは三百年間冬眠状態でした。現在の魔王とは縁がないと思われます」
「そうか。帰るところがなさそうだな。アイルはこれからどうしたい?」
「まだ考えていないの。できれば……あなた達としばらく行動を伴にしたいのだけど……いいかしら?」
「急ぐ旅ではなさそうだし……」
セブンスがセレスティーのほうを見ると、セレスティーは頷いて同意した。
「俺たちは君を歓迎するよ」
「アイルさん、良かったですね」セレスティーは満面の笑みを浮かべた。
「ふふふ、アイルさん、よろしくね」セブンスの頭の上でミスティーが貴族式の挨拶をした。
セブンスは黎明樹の精霊であるシルキーに言われたことを思い出した。
『魔獣や盗賊以外では、旅の途中で、冒険者、騎士隊、貴族、勇者、お姫さま、魔族、天空族、龍神族、いろいろと関わろうとしてくるかも知れませんが、適当に無視して下さい』
――すでに半分くらいと関わってしまって、無視できてない……。
セブンスがガーディアンの仕事が達成できるのか不安に思っていると、遠くからパシャパシャという水を叩く音が近づいてきた。
――悩んでも仕方ないか。
【後書き】
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2019年もよろしくおねがいします。
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