映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

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130 ヨシイ古書店の供述(後)⑤

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 そのために前もって何度か私が八頭さんのところに行く比江島に付いて行ったりしていて、下地は作っていた。そして前日の内に八頭さんのところに撮影台本のコピー品を比江島からのプレゼントと偽って渡し、その代わりリウマチの注射器が足りなくなって痛がってるからここにあるのを貸して欲しいと行って持って来ていた。

「これを使って、殺人に仕立てます」
 牧田には、佐山の家の近くに育っているトウゴマでリシンを作らせておいたので、それを注射器を使って比江島に打つ。嘔吐は綺麗に片付け、完全に死んだところで性器を切り取り、持ち帰る。
「阿部定風にして女性絡みと思わせます」
 豊兄の言葉を聞き、さっさと片付けて逃げる。

 その後で由紀子夫人が目覚める時には跡形もないので、比江島が殺されていることに気づかなかったはずだ。

 そして次は八頭さんの殺人。まず、川真田が欲を突っ張らかして、八頭さんと結婚して財産を手に入れようとする。とは言っても、川真田は八頭さんが好きだったのではないかとも思えるが。振られた腹いせに殺したような気もするね。

 睡眠薬を飲ませて彼女を眠らせてから偽造した婚姻届を提出しに行き、急いで戻って来てから比江島を殺す時に使った注射器を戻して、祭壇にセットを組む。面白かったので比江島のブツはレッドロブスターに挟まれた形で牛乳パックで氷漬けにしていたので、それを飾り付けて首を絞めて殺した。映画のようにセットを組み、八頭さんに演出をつけて吊るした。
 ここの家にいるのは耳の遠い老人だけ。そう思っていたのに、まさかその日、奥でお嬢さんが寝ているとは思わなかった。誤算でしたね。
 比江島が言ってきた、佐山が預けたシルバーのブレスレットも彼女の腕から無くなっていたし。

 川真田は、佐山のコレクションで一財産儲かると皮算用を弾いていたようで、困ったことに我々が裏の商売をしようと考えていた予約制ミュージアムを本気で金儲けに使おうと考え出した。
 それでもっと儲け話をと考えて外村監督のクラウドファンディングまでやらかした。もうこいつを飼っていると、こっちまで足元掬われる。
 そう思って殺した。とりあえずの罪を全部着せて。そして、豊兄がニッコー門木とかいう名前でやっている批評家の本人役を時々やらせていた池上に、我々の罪を擦り付けた。

 でもなかなか上手く行かないものですねえ。

 お嬢さんと馬鹿にしていた彼女にしてやられて、池上にも裏をかかれていた。
 山森さんは使えないし、ブレスレット一つも取れなかった。
 あの『素晴らしき石』も見つからない。まあこれだけ見て回ってもないのだから、どこかの誰かが本当に大悪魔を召喚するのに使ったんでしょうかね。


 ······豊兄は、もう駄目かもしれませんよ。毎晩おかしな夢を見るんだそうです。早く解放しろ、と言うのだそうですけど、あんなちっちゃな石の中に何かがいるっていうんですかね?

 今日は中秋の名月で空には満月があるんでしょう? 『夜を殺めた姉妹』のラストのようなね。次に満月が重なるのは7年後。それまでに豊兄はどうなっているのかなあ。······私もね。


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