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102 沈黙の池上と暴走の山森③
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通用口から館内に入る。数日休んだだけなのだが、何だか随分と時間が流れたような気がする。
「おはようございます」
事務室に入って行くと、私に起きたことを知っている人は知っているらしく、労しそうに見てくる人や、淡々と転居届を書くように言ってくる人、何故かバームクーヘンをくれる人など反応は様々だった。
「けいちゃん······」
声をかけてきた山森を見てギョッとした。隈が出来て顔色が悪い。
「山森さん、まだ具合悪かったんですか? ごめんなさい、私が休んでたから有給取れなかったんでしょうか」
「ううん、家の方でちょっとあって······。けいちゃんの方こそ大丈夫なの?」
「無事に引っ越しまして、腕はちょっと痣になってて痛いんですけど、何とか平気です」
「そう······。あれ、この頃着けてた可愛いの外しちゃったの? レース編みで凝ってたのに」
手首を指さして不思議そうに聞いてくる。しばらく着けていたから、なくなるとあの重みが恋しいというか少し寂しい気もする。
「ブレスレットのことですか? 引っ越してから見つからなくて。もしかしたら空き巣に盗られたのかもしれません。がっかりです」
「そうなの? 前の家で失くしたの?」
「ええ。あれ、実は八頭早苗さんからプレゼントされた物だったので、ご遺族に返したかったんです。
前の家っていくつか備え付けの家具になってるんですけど、お風呂とか顔洗う時に外すようにしてたので、洗面台の横の棚にいつも置いてたんです。あの日はつけ忘れちゃったから、その辺りにあるんじゃないかと思うんですけど、今回引っ越しは全て業者任せでよく見てなくて。
無いの気づいてから探しに行けばよかったんですけど、空き巣を思い出して怖くって······。あれって池上さんだったんですかね? 何か知ってますか?」
俯く私を励ますように、山森が背中を撫でてくれる。
「池上、は、まだ認めてないけど、けいちゃんの家を知ってたものね。······あの時も近くに来てたんでしょう?」
「はい。だからまさかって気持ちの方が大きいんですけど、なんか情報が外に漏れてる気もしてたし」
「とにかく起こってしまったことはもう諦めよう! ブレスレットも、故意に失くしたんじゃないなら仕方ないわよね」
「失くしちゃったの気にしてるので、他の人に言わないで下さいね。
あーあ、落ち着いたらレース編みとボタンで似たようなの作ってみようかな」
「元気出して!」
しばらくデータから離れていると、前にしていたことが何だったのか咄嗟に思い出せない。パソコンを立ち上げて、以前やったものの確認作業をしたり、デスクに溜まった仕事をこなしていると、内線が入った。
「······はい。今行きます」
「おはようございます」
事務室に入って行くと、私に起きたことを知っている人は知っているらしく、労しそうに見てくる人や、淡々と転居届を書くように言ってくる人、何故かバームクーヘンをくれる人など反応は様々だった。
「けいちゃん······」
声をかけてきた山森を見てギョッとした。隈が出来て顔色が悪い。
「山森さん、まだ具合悪かったんですか? ごめんなさい、私が休んでたから有給取れなかったんでしょうか」
「ううん、家の方でちょっとあって······。けいちゃんの方こそ大丈夫なの?」
「無事に引っ越しまして、腕はちょっと痣になってて痛いんですけど、何とか平気です」
「そう······。あれ、この頃着けてた可愛いの外しちゃったの? レース編みで凝ってたのに」
手首を指さして不思議そうに聞いてくる。しばらく着けていたから、なくなるとあの重みが恋しいというか少し寂しい気もする。
「ブレスレットのことですか? 引っ越してから見つからなくて。もしかしたら空き巣に盗られたのかもしれません。がっかりです」
「そうなの? 前の家で失くしたの?」
「ええ。あれ、実は八頭早苗さんからプレゼントされた物だったので、ご遺族に返したかったんです。
前の家っていくつか備え付けの家具になってるんですけど、お風呂とか顔洗う時に外すようにしてたので、洗面台の横の棚にいつも置いてたんです。あの日はつけ忘れちゃったから、その辺りにあるんじゃないかと思うんですけど、今回引っ越しは全て業者任せでよく見てなくて。
無いの気づいてから探しに行けばよかったんですけど、空き巣を思い出して怖くって······。あれって池上さんだったんですかね? 何か知ってますか?」
俯く私を励ますように、山森が背中を撫でてくれる。
「池上、は、まだ認めてないけど、けいちゃんの家を知ってたものね。······あの時も近くに来てたんでしょう?」
「はい。だからまさかって気持ちの方が大きいんですけど、なんか情報が外に漏れてる気もしてたし」
「とにかく起こってしまったことはもう諦めよう! ブレスレットも、故意に失くしたんじゃないなら仕方ないわよね」
「失くしちゃったの気にしてるので、他の人に言わないで下さいね。
あーあ、落ち着いたらレース編みとボタンで似たようなの作ってみようかな」
「元気出して!」
しばらくデータから離れていると、前にしていたことが何だったのか咄嗟に思い出せない。パソコンを立ち上げて、以前やったものの確認作業をしたり、デスクに溜まった仕事をこなしていると、内線が入った。
「······はい。今行きます」
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