上 下
95 / 131

095 第四のコレクター川真田の告白②

しおりを挟む
 現在池上は、任意の事情聴取を受けているのだが、黙秘を続けているとのこと。警察署に連れて来られた時は、「日比野恵の安否を確認して下さい」と必死の形相で話したので、ホテルまで様子を見に行ったこと。無事が分かると、今度は何も喋らなくなってしまったこと。

「池上さんが······。そんな訳ないと思いますが、まさかそんな」
「そのクラファン詐欺のことなんだけどね、たしかに川真田さんの知り合いの役者の卵が、『プロデューサーが急遽入院して来られなくなってしまったから、今日だけその役をやってくれないか?』と言われて演じたんだそうだ。関わったのはその日限りで、彼は詐欺に加担した意識もないから、普通に劇団の稽古に励んでいたよ。後から成功報酬として10万円を背の高い猿マスクの男から受け取ったと」
「······その猿マスクが池上さん、かは」
「ええ、素顔は見てないから何も分からないみたいですよ」

 それなら池上と門木氏を結びつけるものなんてないじゃないか。そう思っていると、残酷な言葉が降ってくる。

「ニッコー門木氏さんの振込先口座がね、池上聡太さんになっているそうだ」

 息が詰まる。

「で、遺書の続きだけど······川真田さんは当初外村監督の映画は本当に作られるものと思っていたようでね。なので彼は詐欺を行う気はなかったが、池上さんに紹介されたプロデューサーが突如入院したために、辻褄合わせをしてほしいと頼まれたから役者を手配したと。
 そして、そのクラファンのお金がどこに行ったかというと、池上さんの海外の仮想通貨にされてるらしいんだ」
「本当ですか?」
「そこの裏付けはこれからになるね。
 そして彼の告白文には、その他にも三人の殺し方もきちんと説明されている。辻褄は合っている。
 でもあの日何故日比野さんを捕まえようとしていたのか。八頭早苗さんとの婚姻が整っていたとしたら、彼女の遺産も手に入るところだった。それが目前だったのに、今直ぐに死ななければいけない理由が分からないんです。勘ですけど、自殺の理由が弱いと言うかね」





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RoomNunmber「000」

誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。 そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて…… 丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。 二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか? ※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。 ※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

パストメール

れくさん
ミステリー
主人公の湯浅あさひは昔のあることに後悔をする日々を送っていた。人を疑わなかったことで起こり続けた不可解な現象、あさひの人生はそれにめちゃくちゃにされていた。ある日人生に絶望していたあさひは自殺を試みるが….

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

時の呪縛

葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。 葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。 果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。

蠱惑Ⅱ

壺の蓋政五郎
ミステリー
人は歩いていると邪悪な壁に入ってしまう時がある。その壁は透明なカーテンで仕切られている。勢いのある時は壁を弾き迷うことはない。しかし弱っている時、また嘘を吐いた時、憎しみを表に出した時、その壁に迷い込む。蠱惑の続編で不思議な短編集です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...