映画をむさぼり、しゃぶる獣達――カルト映画と幻のコレクション

来住野つかさ

文字の大きさ
84 / 131

084 待ち伏せ①

しおりを挟む
「ねえ、それでどうだったの? 映画とか話し合いとかさ」
「ええとですね、映画の方はこれを読んでもらえますか? 話すより早いんで」

 注文を済ませると、山森が待ちかねていたというように昨日の事を聞いてくる。

 表通りから少し中に入ったところにあるカフェに入った私達は、いつもならランチが届くまでに他愛のない雑談をするところだが、山森は朝からこの件が聞きたかったのだという。

 実は映画のあらすじを説明をするのは苦手だ。あれこそ脳の差が出てしまうというコンプレックスがある私は、用意しておいたメモを渡す。これは主観が入る感想や批評的な書き方ではなく、覚えている限りをプロット風に書いた『夜を殺めた姉妹』のストーリーだ。




――――――――――

冨樫甲児監督作『夜を殺めた姉妹』

●精一杯の装いをした姉妹が、夜の街に向かう。姉は着物、妹はワンピース。とある郭に行くが、「痩せぎすじゃ話にならん。だがよい相手を紹介してやろう」と成り上がりの女衒に二人まとめて売られそうになる。と、そこに郭の一番の姐さんが現れ、「こいつに付いて行くと死ぬよ」と耳打ちされ、隙を見て逃がしてもらう。途方に暮れた姉妹は、母の薬代のために髪を売ろうとした床屋で、「本当に困ったら信仰を捨ててそこに行けば食べさせてもらえる場所」として隠れキリシタンの住処を教わる。

●時が流れ、母の弔いを済ませた姉妹は、髪も短くして家も何もかも売り払っていた。姉美千代の婚約者だった男が「姉妹で妾になるか?」と嘲りに来るが、毅然と断る。妹華子は最後まで琴だけは手元に置きたいと駄々を捏ねたが、手に持てる荷物だけを抱えて家を後にする。そして、隠れキリシタンの潜伏先へ。下働きをしつつ、見知らぬ信仰には関わらないようにする姉妹を彼らは何も言わなかった。その事で姉妹の心は徐々に解れていく。

●ある日華子が買い出しに行った先で一人の男と知り合う。穏やかで優しい、中性的な美貌を持つ男。妹の荷物を落としてしまったお詫びに甘味をご馳走してくれたという。表向きは隠れキリシタンとは分からぬように共同生活をしているが、信仰の違いからか姉妹は常に疎外感を感じていた。それが元いた場所の空気を纏う男との出会いにより、華子は浮つくようになる。そんな中男が二人の演奏が見たいと手放したはずの琴と三味線を贈ってくれる。勧められるまま演奏し、喝采を受ける姉妹。礼を言うため姉妹が男を呼び止めようと後を追うと、男の前を塞ぐように男の父が現れて、見合いをするようにせっつくのを見る。嫌がる男だが、父と共に消えて行ったそこは、かつての姉妹の家だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...