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051 カルト映画と殺人②
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そんなことを思っていたら、八頭女史がまたポツリと話し出した。
「比江島は飄々としているようで、どこか佐山に嫉妬しているようなところがあったのよ。コレクター同士、それにかけられる時間と余裕。佐山が決して優れていたというわけでもないのに、憧れの歪みだったのかしら」
「比江島氏が佐山氏を、ですか?」
八頭女史は頷きながら、決して私が過去に付き合ったことがあるから嫉妬して、とかではないのよ。と悲しそうに言った。八頭女史は本当に比江島氏のことが好きだったのかもしれない。
「だからって比江島が誠実だったとは思ってないわ。他に女がいたかもしれないけど、それを私に知られないようにしてくれている。そういう礼儀はあったの。でも······この頃少しおかしかったのよね」
「どういう風におかしかったのですか?」
それには答えず、八頭女史は腕のブレスレットから一つを取って私の手首に付ける。赤系の中でこれだけはメダルがいくつか連なった形のあっさりとしたシルバーのものだった。
「預かってて。良かったらまた来てよ。一人で居るのに耐えられなさそうだから」
ワインを更に勧められる。もう飲めないですと断ろうとするが、これだけ乾杯ねと言われて、ボトルの残りを分け合いグッと飲み干す。
「ありがとう。このワイン、比江島が何かあった時に開けようなんて言ってたやつなの。······お祝いすることもないままになっちゃったけどね」
シーシャの煙と慣れない酒精、気づくとだんだん目が開けられなくなってくる。
「八頭さん、申し訳ないですがそろそろ······」
「そうね、タクシーを呼ぶから少し待っててね」
ソファにもたれ掛かって休ませてもらう。何故こんなに眠いのだろう。
八頭女史が配車の電話をかけてくれ、シーシャを燻らす。そうこうしているうちに玄関のインターフォンが鳴ったので立ち上がろうとするが、うまく動けない。スマートフォン連動のインターフォンなのか、八頭女史はスマートフォンを見ながら「来ちゃったものはしょうがないわ」と言って席を立った。
しばらくするとドヤドヤとこちらに向かって来る足音がするが、もう体が動かせない。
八頭が止めているが、コレクションルームに来客が入ってくる。
「比江島は飄々としているようで、どこか佐山に嫉妬しているようなところがあったのよ。コレクター同士、それにかけられる時間と余裕。佐山が決して優れていたというわけでもないのに、憧れの歪みだったのかしら」
「比江島氏が佐山氏を、ですか?」
八頭女史は頷きながら、決して私が過去に付き合ったことがあるから嫉妬して、とかではないのよ。と悲しそうに言った。八頭女史は本当に比江島氏のことが好きだったのかもしれない。
「だからって比江島が誠実だったとは思ってないわ。他に女がいたかもしれないけど、それを私に知られないようにしてくれている。そういう礼儀はあったの。でも······この頃少しおかしかったのよね」
「どういう風におかしかったのですか?」
それには答えず、八頭女史は腕のブレスレットから一つを取って私の手首に付ける。赤系の中でこれだけはメダルがいくつか連なった形のあっさりとしたシルバーのものだった。
「預かってて。良かったらまた来てよ。一人で居るのに耐えられなさそうだから」
ワインを更に勧められる。もう飲めないですと断ろうとするが、これだけ乾杯ねと言われて、ボトルの残りを分け合いグッと飲み干す。
「ありがとう。このワイン、比江島が何かあった時に開けようなんて言ってたやつなの。······お祝いすることもないままになっちゃったけどね」
シーシャの煙と慣れない酒精、気づくとだんだん目が開けられなくなってくる。
「八頭さん、申し訳ないですがそろそろ······」
「そうね、タクシーを呼ぶから少し待っててね」
ソファにもたれ掛かって休ませてもらう。何故こんなに眠いのだろう。
八頭女史が配車の電話をかけてくれ、シーシャを燻らす。そうこうしているうちに玄関のインターフォンが鳴ったので立ち上がろうとするが、うまく動けない。スマートフォン連動のインターフォンなのか、八頭女史はスマートフォンを見ながら「来ちゃったものはしょうがないわ」と言って席を立った。
しばらくするとドヤドヤとこちらに向かって来る足音がするが、もう体が動かせない。
八頭が止めているが、コレクションルームに来客が入ってくる。
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