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004 映画コレクター佐山氏亡くなる④

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 その後の仕事は正直手に付かなかった。そうこうしてる間に就業時間が終わり、他の人に気づかれないようにひっそり集合した調査資料課のメンバーと
会議室に入り、西村課長が来るのを待つ。

「でもさ、日比野ちゃんって一人暮らしでしょう? 夜遅くなって帰り大丈夫?」
「どのくらい遅くなるんでしょう? 今日は洗濯してないので、まあ平気かと思いますが」

 池上の問いかけに、これからのことを思って少し緊張して答えていると、尾崎係長が吹き出した。

「日比野さん、緊張し過ぎだよ。遺品整理には前にも行ったことがあるから、君は読み上げるものを書き留めてくれればいいからね」
「そうそう、俺は恐らく外の見回りになるのかな? ガタイ的に」

 と田代主任も笑って会話に入ってくる。

「だからそんなに考えなくても平気だよ。きっと」「きっと、が怖いですね。でもあんまり考えるのは止めときます」
「日比野ちゃんらしくなってきたね! 淡々とこなそう、今夜は」
「はい、よろしくお願いします」

 ちょうど話が一息ついたところで西村課長と福峰ふくみね館長が入ってきた。

「皆さん。急なことで申し訳ないが、先に話した通り、この後佐山邸に向かってもらい、奥様の遺品整理を手伝ってきてほしい。佐山氏は高名な映画紙資料のコレクターだが、奥様やご家族は関心がないようで、無闇に処理してしまうよりかは遺言にあった我々のところに一番に入ってもらって出来るだけ寄贈したいということらしい」

 館長がいかにも申し訳ないという顔で頭を下げてくれた。こういうところが腰が低くて人当たり良さそうに見えて、······実は相当切れ者の館長の技だ。

「承知しました。向かうのはこのメンバーですか?」

 尾崎係長の声に西村課長が応えて、説明を始める。

「そうだね。ミニバンでも借りて、田代が運転。私と尾崎と池上、日比野で現地入り。現地では、細心の注意を払って行動する必要があるので、田代は佐山邸に車をベタ付けせず、車を適当に走らせて周辺の様子もチェックしてみて問題なさそうなら合流で。
 そして実働部隊として残りのメンバー。私達は映画資料の確認。うちのデータベースにあるものは基本的に貰わない。だが、希少価値のあるもの、状態の良いものは譲っていただきたいという気もするので、そのあたりは臨機応変に。
 日比野さんにはノートパソコンを貸すから、データベースからうちの紙資料簡易リストを抽出しておいてもらって、現地ではそれと照合して持ち出す資料の一覧を作ってくれ。
 最終的にお持ちの資料を全て目録状にしてお渡しして差し上げたいが、もしかしたら几帳面な佐山氏のことだから、すでにそういうものが存在するかもしれん。というか、その所蔵目録を先に見つければ作業は大分楽になる。
 動きはそういう感じだ。いいな?」

 皆が頷き、了承の意を示す。
 その時に、池上が間延びした声で質問する。

「あのー。残業代の他に夕飯出ますか? 焼肉弁当とか」
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