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大会メンバー

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 ホームルーム前、レインは思いっきり頭を机にぶつけた。別に眠かったから意識が朦朧としていたわけではない。気分が劇的に落ち込んでいるだけのことだ。

「最悪だよ……」

「魔術大会に出たくないの?」

「いや、別に?そういうわけじゃないよ。そうじゃないんだ……」

 リシルは不思議そうにレインの顔を覗き込む。別に魔術大会に出たいわけではないし、出たくないわけでもない。正直そんなのどっちでもいい。学生が出るようなイベントなのであればそのレベルというものは……その、高が知れているのでは?と思ってしまうのだ。

 確かに得られる学びは多いかもしれないけれど……。

 それに、重要なのはそこじゃない。学校長にグレンとの戦いを見られたことが重要なのだ。見られたからなんになると言われて仕舞えば、その通りなのだが……少なくともレインの今の実力は把握されてしまった。

 グレンは積極的には攻めてはこず、そういう意味では手加減をしていた。手加減しているグレンを追い込むところまでしか行けなかったのは悔しいし、不安だ。レインという人間はそこまでの奴と思われるとか、そういうことじゃない。なんだか、心の奥底から湧き上がってくるのだ。

 なんだろう、面倒事の予感がする。具体的に言えば、学校長に仕事を押し付けられるような気がするのだ。それがいつになるのかはわからないけど、絶対にいつかはやってくる気がする。

「ところで、今年は出場人数が若干変更されたんだってね」

「え、どういうこと?」

「今年の一年はなぜか特別に四人しか出さないんだって!理由はわからないけれど、先生たちは『舐めプ舐めプ』って騒いでたよ」

 ……学校長、いくらなんでも僕を過信しすぎでは?舐めプされた相手校がブチギレてすんごい覚醒を果たしたらどうしてくれるのですか。

「僕と、アルフレッド……あと二人は?」

「あ、そのうちの一人は私よ!」

「リシル?そんなに出たかったの?」

「いやあ、そういうわけじゃないけど。こう見えても私、『三席』だから!」

「何それ?」

「レインが主席で合格して、その次に次席がいるでしょう?その次!3番目ってこと!」

「え、リシルの上がいるの?」

「いるはずよ?誰なのかはわからないけど……」

 次席合格者ということはきっとクラスも一緒のはずだ。成績順にまとめられているのだからまず間違いない。

 ってことは、このクラスの誰かということになる。

「はい、みなさんお静かに」

 騒ぎ立てているクラスの中に学校長の通る声が響いた。

「今日は魔術大会のメンバーについてお話しします。もうすでにメンバーは決まっているので、メンバーである人はたちなさい」

 そこで立ち上がったのはレインとリシル……そしてもう一人であった。立ち上がったのは、黒髪黒目の丸い眼鏡をかけた地味めな女の子だった。三つ編みにした髪を肩まで垂らし、立ち上がった後でもずっと下を向いている。

「あ、あの子だよ。私と同じ部屋なの」

「同居人なの?」

 そういえば、リシルが言っていた。同じ部屋に住んでいる子はちょっと変わった子だったと。普通の貴族みたいに騒がしくないからってこと?

「レイン、ミチカ、リシルの三人と別のクラスから一人です。大会出場メンバーに選ばれた四人を見習ってみんなは日々精進していくように、以上」

 ホームルームが終われば生徒たちは自由に歩き始め、教室がまた騒がしくなってくる。

 ミチカと呼ばれた少女の方を見ると、ミチカは自分の席に座りなおしてぼーっとしているように見えた。同じ大会に出場するメンバーなのだから少しくらい話しておいた方がいいかもしれない。

 そう思い、レインはミチカの方へと近づく。

「ミチカさん、でいいのかな?」

「あっ……」

 おもむろに話しかけるが、思ったよりも会話を成立させるのは大変そうだ。

「僕のことわかる?同じ大会出るらしいんだけど……」

「う、うん……レイン、君……ですよね?」

「そう!これからよろしくね」

「は、はい……」

 そんな会話をしている時、リシルが後ろから近付いてきた。

「ミチカー、この子だよ。いつも私が話してたのは」

「うん、知ってたよ」

「え、ちょっと待ってなんか僕のことで話してたの?」

 二人が同室の仲間というのは知っているけれど、僕のことで何か話を?話すようなこともない気がするけれど。知らない生徒の話をされてミチカはどう思っていたのだろう……。

「どう?かわいいでしょ?」

「はい……!思ってた以上に!」

「え?え?」

 肩に腕を回されてミチカの前に突き出される。

「ヘイゼル様と一緒にいるところを見ましたけど、とってもお似合いでした!」

「えー、でも私はアルフレッド君がいいと思うなー。いつもツンツンしてるアルフレッド君がレイン君にだけデレるのよくない?」

「分かります!」

「あの~……?」

 一体何の話をされているのかわからず、レインはただただ突っ立っているだけであった。
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