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悪巧み
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『師匠』がいるとこでも『異常現象』は起きているらしい。そこで起きた現象が一体どれほどの脅威度に当たるのかはわからないが、やはり危険であることには違いない。現状『師匠』滞在している国は、そんな危険から守るために『師匠』をどうしても留めておきたいに決まっている。
『師匠』が帰れるようになるのは、本格的に『異常現象』が収まった時である。仕事のやる気が湧いてきた。僕が『異常現象』を消していくたびに、『師匠』の帰還が早くなるということか。そうなれば、僕は休暇をとっている暇などではないのであるが……。
今は気にしないでおこう……。気にしていたら、多分アルフレッドの訓練に集中できない。『師匠』の帰りがいち早くなることはとてもいいことではあるが、それで友達を捨てるほどレインも落ちぶれてはいない。
新聞をばさっと閉じる。気持ちを切り替え、見たいもの見たことだしと新聞をしまってアルフレッドを探すことにした。アルフレッドは別に本を読むことが好きというわけではなかったはずなのだが、入口にはいなかった。
広い大図書館の中を探すのはなかなかに大変そうである。とりあえず、適当に大図書館の中を歩いてみる。
ここには魔術関係以外の本ももちろん置かれている。今日は休日ということもあってか、何人か席に座って読書をしているようだ。だが、そのスペースにはアルフレッドはいなかった。
「どこ行ったんだ?」
そう思いながら、あちこち見て回っていると、一つのスペースにアルフレッドがいるのを見つけた。
「ここ……」
あー……。
レインはこっそりとアルフレッドの背後に近寄る。
「なーに読んでるの?」
「のわあ!?」
「しーっ!大きな声出しちゃだめだよ」
「い、今のはお前が悪いだろ!」
アルフレッドは持っていた本を隠すように、背中に回した。
「何読んでたの?」
「べ、別に。なんでもいいだろ?」
「そこの看板見える?」
「え?かんば……」
図書館には大抵、看板でどんなものがおいてあるコーナーなのかがわかるようになっている。この図書館もそれは例外ではなく、アルフレッドがいたコーナーは……。
「成人向けコーナーはもう少し大人になってからにしよーねー」
「う、うるさいな!もう!」
「ふーん、で、何読んでたのかなー?」
「うっさい!」
「あはは!」
人を揶揄うのはいかんせん楽しかった。
♦️
「で、今度はどこいくんだ?」
「うーん、正直別に他は行かなくてもいいんだけど……」
「おい待て、それじゃあ俺が醜態を晒しただけになるからやめろ」
「あれを醜態っていう自覚はあったの?」
「いいじゃんか、別に……お前だって興味あるだろ?」
「えー……?あんまないかな」
「聞いた俺がバカだった。で、どこ行く?」
図書館にいけただけでもレインは十分満足しているのだが、他に行ってみたいと言える場所は……。
「強いていうなら、帝城が見てみたい」
「帝城?」
「アル君がどんなところに住んでるのか気になるし」
「別にいいけど……多分、中には入れないぞ?」
「わかってるって。外を眺めるだけでもいいからさ!」
「んー」
アルフレッドがチラリと護衛のいる方向を見た。
「やっぱ護衛なんていない方が良かったかもな」
「友人との外出までみられるのはいい気分じゃないなって」
だが、アルフレッドは皇族である。普通に考えたら、平民のレインと一緒に出かけている時点で異常事態なのだ。普通は学校で貴族たちの跡取りたちを関係を築いて駒を増やしていくのが普通であるが、アルフレッドはそういったことを一切しない。
「そんなんで友達が増えてもしょうがないだろ」というの言い分らしい。そういうところも、アルフレッドらしくてレインはかなり好感が持てる。
「……じゃあさ、護衛を二人でまかない?」
護衛と言ってもたった一人である。騎士だかなんだかは知らないけれど、レインは体力にそれなりの自信があった。それに、そっちの方がレインもアルフレッドも伸び伸びできるというもの。
見失ってしまったのは護衛のせいだしね。
「いいな、それ」
二人の悪巧みにより、犠牲になる護衛には少々の同情を禁じ得なかった。
『師匠』が帰れるようになるのは、本格的に『異常現象』が収まった時である。仕事のやる気が湧いてきた。僕が『異常現象』を消していくたびに、『師匠』の帰還が早くなるということか。そうなれば、僕は休暇をとっている暇などではないのであるが……。
今は気にしないでおこう……。気にしていたら、多分アルフレッドの訓練に集中できない。『師匠』の帰りがいち早くなることはとてもいいことではあるが、それで友達を捨てるほどレインも落ちぶれてはいない。
新聞をばさっと閉じる。気持ちを切り替え、見たいもの見たことだしと新聞をしまってアルフレッドを探すことにした。アルフレッドは別に本を読むことが好きというわけではなかったはずなのだが、入口にはいなかった。
広い大図書館の中を探すのはなかなかに大変そうである。とりあえず、適当に大図書館の中を歩いてみる。
ここには魔術関係以外の本ももちろん置かれている。今日は休日ということもあってか、何人か席に座って読書をしているようだ。だが、そのスペースにはアルフレッドはいなかった。
「どこ行ったんだ?」
そう思いながら、あちこち見て回っていると、一つのスペースにアルフレッドがいるのを見つけた。
「ここ……」
あー……。
レインはこっそりとアルフレッドの背後に近寄る。
「なーに読んでるの?」
「のわあ!?」
「しーっ!大きな声出しちゃだめだよ」
「い、今のはお前が悪いだろ!」
アルフレッドは持っていた本を隠すように、背中に回した。
「何読んでたの?」
「べ、別に。なんでもいいだろ?」
「そこの看板見える?」
「え?かんば……」
図書館には大抵、看板でどんなものがおいてあるコーナーなのかがわかるようになっている。この図書館もそれは例外ではなく、アルフレッドがいたコーナーは……。
「成人向けコーナーはもう少し大人になってからにしよーねー」
「う、うるさいな!もう!」
「ふーん、で、何読んでたのかなー?」
「うっさい!」
「あはは!」
人を揶揄うのはいかんせん楽しかった。
♦️
「で、今度はどこいくんだ?」
「うーん、正直別に他は行かなくてもいいんだけど……」
「おい待て、それじゃあ俺が醜態を晒しただけになるからやめろ」
「あれを醜態っていう自覚はあったの?」
「いいじゃんか、別に……お前だって興味あるだろ?」
「えー……?あんまないかな」
「聞いた俺がバカだった。で、どこ行く?」
図書館にいけただけでもレインは十分満足しているのだが、他に行ってみたいと言える場所は……。
「強いていうなら、帝城が見てみたい」
「帝城?」
「アル君がどんなところに住んでるのか気になるし」
「別にいいけど……多分、中には入れないぞ?」
「わかってるって。外を眺めるだけでもいいからさ!」
「んー」
アルフレッドがチラリと護衛のいる方向を見た。
「やっぱ護衛なんていない方が良かったかもな」
「友人との外出までみられるのはいい気分じゃないなって」
だが、アルフレッドは皇族である。普通に考えたら、平民のレインと一緒に出かけている時点で異常事態なのだ。普通は学校で貴族たちの跡取りたちを関係を築いて駒を増やしていくのが普通であるが、アルフレッドはそういったことを一切しない。
「そんなんで友達が増えてもしょうがないだろ」というの言い分らしい。そういうところも、アルフレッドらしくてレインはかなり好感が持てる。
「……じゃあさ、護衛を二人でまかない?」
護衛と言ってもたった一人である。騎士だかなんだかは知らないけれど、レインは体力にそれなりの自信があった。それに、そっちの方がレインもアルフレッドも伸び伸びできるというもの。
見失ってしまったのは護衛のせいだしね。
「いいな、それ」
二人の悪巧みにより、犠牲になる護衛には少々の同情を禁じ得なかった。
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