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生徒会
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「生徒……会室?」
そこは生徒会室と呼ばれる部屋であった。生徒会とは、主に学校行事などを取り仕切る学校の生徒のみで構成された組織である。それは、教師に代わる権力を行使できる……その例によって生徒会にはもともと格が高い貴族の子息たちが参加するのが恒例となっている。
実際にヘイゼルは生徒会の会長であったようだ。
3年制の魔術学校で生徒会長は二年。ヘイゼルの優秀さが伺える。
「で、なぜ私たちを連れてきたんですか?」
「ああ、そのことなんだけど……実はリシル嬢を生徒会に誘おうと思ってたんだ」
「え?」
リシルは成績も優秀で、公爵家という高貴な血筋の生まれである。生徒会に入るになんら問題ない生徒であった。
「そ、そんな!私が生徒会だなんて烏滸がましいです!」
「そんなことはないよ。僕は昔から君の優秀さは知っているつもりだ」
「そんなことをおっしゃられたら、こっちにいるレイン君の方が優秀ですよ!」
ヘイゼルがレインの方をみやる。
「それも知ってる。入学試験中に上級魔術師を気絶させた生徒は、レイン殿のことだろう?」
「え?なんで知ってるの?」
「知ってるさ。仮にも生徒会長で、第二王子だからね。情報はすぐに僕の元へ入ってくるよ。それに、レイン殿が市井生まれということも知ってる」
「あ……」
ヘイゼルは近寄ってきて、優しく頭を撫でた。
「リシル嬢の友達は僕の友達でもあるって言ったろう?生まれなど関係ない。僕は優秀なものを集めたいだけだ。それに、上位貴族を生徒会に入れるという伝統なんてあくまで伝統だ。そんなもの無視して仕舞えばいいさ」
「え、あの~?」
「そういうわけだ、レイン殿。君も生徒会に入らないかい?」
「うぇ!?」
「いいじゃない、レイン君。一緒にやったらきっと楽しいわ!」
「う、うん……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
生徒会に入ると、授業以外に学校で過ごす時間が多くなる。これは、レインの研究時間が減ることを意味している。正直あまり気乗りはしないのだが……。
だが、リシルの顔を見ると満面の笑みで嬉しそうにしている。こんなの……断れるわけがないじゃないか。
「うん、やりたい、です」
「そうか、ならレイン殿もサインを書いてくれ。三年の先輩方がもうすぐ生徒会を引退するから、人数が減るのがわかってたからありがたい」
……ポジティブに考えよう。生徒会は生徒の情報がたくさん流れ込んでくる。それすなわち、レインが目にした『異常現象』のような情報も入ってくるかもしれない。生徒の身体を乗っ取った魔力……あれ一回きりで終わる事態とは思えない。
調査のためにも、レインは生徒会に入った方が動きやすくなるだろう。
「それじゃあよろしく頼むよ、主席殿」
「あ、あはは……」
なんでも知ってそうなヘイゼルに苦笑いしか浮かんでこないレイン。
「そうだ、生徒会員になったとはいえ、僕のことは親しく呼んでくれ」
「親しく?」
「ヘイゼルと呼び捨てに」
「ええ?そんな、恐れ多い……」
「いいよ、レイン殿になら……レイン君にならそう呼ばれたい」
言葉遣いも女子を落とすためのそれにしか聞こえてこないのは僕だけだろうか……。
「へ、ヘイゼル?」
「……うん、いいね。可愛いよ。昔の弟みたいだ」
「ヘイゼル、弟いたの?」
「ん?まだ知らなかったのかい?君たちと同じ学年に僕の一つしたの弟……第三王子がいるはずなんだが……」
少なくともSクラスにはいなかった。王子だからといって優秀なわけではないのか。この完璧な美貌を持つヘイゼルの弟なのだから、第三王子もとんでもなく整った顔をしているのだろうか?
それにしても……弟か。
「お兄ちゃん?」
「……っ!」
ニヤニヤと笑うリシル。肘でヘイゼルをツンツンとつついている。
「何恥ずかしがってるんですかあ?」
「ひどいね……これは、耐えられないだろ」
僕にも弟や妹がいたのだろうか?何せ、生まれた時から家族に関する記憶は一切持ち合わせていなかった。血のつながった家族というのを見たことがない、ずっと一人だった。今では、『師匠』たちが家族になってくれたから気にはしない。
でも、こうやってお兄ちゃんと呼ぶのは憧れの一つだったのだ。
「二人とも生徒会の仕事はまた今度……その都度、随時生徒会に呼び出すから」
「わかりました」
「わかった」
そして、しばらくヘイゼルとリシルが会話をしている間に、レインはふと窓に目をやった。外の景色は学校から街の景色を一望できるような素晴らしい景色である。薄暗い路地裏は見えない。
その時だ。
風の音と共に、空に舞っている一枚の手紙が見えた。それには、厳重に魔術で封印された痕跡が遠目で見え、風に運ばれながらレインの元へと飛んできていた。
「魔術界から?」
二人が見てない間に、こっそりと窓を開けた。そのタイミングを待っていたとでもいうように一瞬で中に流れ込んできた。窓を閉じ、手紙を服のポケットに突っ込んだ。
「僕、そろそろ帰ります!」
「そうか?引き止めてしまって、悪かったな。これからよろしくね、レイン君」
「はい!」
ヘイゼルに元気よく挨拶を返し、レインは走り出した。廊下は走ってはいけないのだが、今は緊急だし許しておくれ生徒会長。
そこは生徒会室と呼ばれる部屋であった。生徒会とは、主に学校行事などを取り仕切る学校の生徒のみで構成された組織である。それは、教師に代わる権力を行使できる……その例によって生徒会にはもともと格が高い貴族の子息たちが参加するのが恒例となっている。
実際にヘイゼルは生徒会の会長であったようだ。
3年制の魔術学校で生徒会長は二年。ヘイゼルの優秀さが伺える。
「で、なぜ私たちを連れてきたんですか?」
「ああ、そのことなんだけど……実はリシル嬢を生徒会に誘おうと思ってたんだ」
「え?」
リシルは成績も優秀で、公爵家という高貴な血筋の生まれである。生徒会に入るになんら問題ない生徒であった。
「そ、そんな!私が生徒会だなんて烏滸がましいです!」
「そんなことはないよ。僕は昔から君の優秀さは知っているつもりだ」
「そんなことをおっしゃられたら、こっちにいるレイン君の方が優秀ですよ!」
ヘイゼルがレインの方をみやる。
「それも知ってる。入学試験中に上級魔術師を気絶させた生徒は、レイン殿のことだろう?」
「え?なんで知ってるの?」
「知ってるさ。仮にも生徒会長で、第二王子だからね。情報はすぐに僕の元へ入ってくるよ。それに、レイン殿が市井生まれということも知ってる」
「あ……」
ヘイゼルは近寄ってきて、優しく頭を撫でた。
「リシル嬢の友達は僕の友達でもあるって言ったろう?生まれなど関係ない。僕は優秀なものを集めたいだけだ。それに、上位貴族を生徒会に入れるという伝統なんてあくまで伝統だ。そんなもの無視して仕舞えばいいさ」
「え、あの~?」
「そういうわけだ、レイン殿。君も生徒会に入らないかい?」
「うぇ!?」
「いいじゃない、レイン君。一緒にやったらきっと楽しいわ!」
「う、うん……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
生徒会に入ると、授業以外に学校で過ごす時間が多くなる。これは、レインの研究時間が減ることを意味している。正直あまり気乗りはしないのだが……。
だが、リシルの顔を見ると満面の笑みで嬉しそうにしている。こんなの……断れるわけがないじゃないか。
「うん、やりたい、です」
「そうか、ならレイン殿もサインを書いてくれ。三年の先輩方がもうすぐ生徒会を引退するから、人数が減るのがわかってたからありがたい」
……ポジティブに考えよう。生徒会は生徒の情報がたくさん流れ込んでくる。それすなわち、レインが目にした『異常現象』のような情報も入ってくるかもしれない。生徒の身体を乗っ取った魔力……あれ一回きりで終わる事態とは思えない。
調査のためにも、レインは生徒会に入った方が動きやすくなるだろう。
「それじゃあよろしく頼むよ、主席殿」
「あ、あはは……」
なんでも知ってそうなヘイゼルに苦笑いしか浮かんでこないレイン。
「そうだ、生徒会員になったとはいえ、僕のことは親しく呼んでくれ」
「親しく?」
「ヘイゼルと呼び捨てに」
「ええ?そんな、恐れ多い……」
「いいよ、レイン殿になら……レイン君にならそう呼ばれたい」
言葉遣いも女子を落とすためのそれにしか聞こえてこないのは僕だけだろうか……。
「へ、ヘイゼル?」
「……うん、いいね。可愛いよ。昔の弟みたいだ」
「ヘイゼル、弟いたの?」
「ん?まだ知らなかったのかい?君たちと同じ学年に僕の一つしたの弟……第三王子がいるはずなんだが……」
少なくともSクラスにはいなかった。王子だからといって優秀なわけではないのか。この完璧な美貌を持つヘイゼルの弟なのだから、第三王子もとんでもなく整った顔をしているのだろうか?
それにしても……弟か。
「お兄ちゃん?」
「……っ!」
ニヤニヤと笑うリシル。肘でヘイゼルをツンツンとつついている。
「何恥ずかしがってるんですかあ?」
「ひどいね……これは、耐えられないだろ」
僕にも弟や妹がいたのだろうか?何せ、生まれた時から家族に関する記憶は一切持ち合わせていなかった。血のつながった家族というのを見たことがない、ずっと一人だった。今では、『師匠』たちが家族になってくれたから気にはしない。
でも、こうやってお兄ちゃんと呼ぶのは憧れの一つだったのだ。
「二人とも生徒会の仕事はまた今度……その都度、随時生徒会に呼び出すから」
「わかりました」
「わかった」
そして、しばらくヘイゼルとリシルが会話をしている間に、レインはふと窓に目をやった。外の景色は学校から街の景色を一望できるような素晴らしい景色である。薄暗い路地裏は見えない。
その時だ。
風の音と共に、空に舞っている一枚の手紙が見えた。それには、厳重に魔術で封印された痕跡が遠目で見え、風に運ばれながらレインの元へと飛んできていた。
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二人が見てない間に、こっそりと窓を開けた。そのタイミングを待っていたとでもいうように一瞬で中に流れ込んできた。窓を閉じ、手紙を服のポケットに突っ込んだ。
「僕、そろそろ帰ります!」
「そうか?引き止めてしまって、悪かったな。これからよろしくね、レイン君」
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