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部隊長レイン
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「やばい……死ぬ」
レイン、初めての過労死の危機が迫る。ここ最近でレインの仕事内容は一変してしまった。
普段は民間の依頼などをこなしてお金を稼ぎつつグレンの研究を手伝いながら研究資料を見て学ぶということを繰り返していたのだが、魔術界直轄の部隊員となったことで、なんというか……大変な仕事がたくさん回されてくるようになった。
その中にメインとして含まれるのはやはり『異常現象への対処』である。
「『部隊長』!突入準備が完了しました!」
「あ、うん。じゃあ行こうか」
「はい!」
えらく気合の入っている青年(圧倒的年上)に敬語を使われる日が来るなんて思ってもみなかった。
異常現象の対処のためと銘打ってとても危険であるということをアピールしていたというのに、なぜだか部隊員志願者が大量にできてしまった。
魔術界直轄というネームバリューは偉大である。魔術界直轄というのはそんじょそこらの支部内幹部よりも高官であるようで……ただの上級魔術師とは一線を画す発言権だそうで。
まあ、新米魔術師のレインにはよくわからないし、どうでもいい話なのだが。レインが望んでいるのは『師匠』のもとにまで届く名声ただ一つである。
ちなみに今回対処にあたっているのは、火力が上がり続ける焼却炉の破壊だ。
これも異常現象だとのことで、すでに火力は一万度を超えているそうな。すでに高温のエネルギーが辺り数百メートル圏内を地獄に変えてしまっている。
「部隊長!これ以上の接近は不可能です!」
「ふむ……」
「部隊長、ご指示を!」
「あ、僕のことか。レインと呼んでよ」
「そんな!上官を呼び捨てになど……」
発足人として持ち上げられたレインを含むヴァージとオリバーは『部隊長』と呼ばれて、それぞれ『α隊』『β隊』『γ隊』として活動している。部下は十名ずつ。だが、志願者はそれ以上にいる。今後も増えるかもしれないと考えるだけで胃が痛くなってくる。
「これ以上近づけない?何弱気になってのさ。ちゃんと頭を使わなきゃ」
お手本を見せてやると、部下たちを押しのけて前に出る。
焼却炉の周りは普通の街であったため、すでに家屋が燃えて街の原型は留めていなかった。
「部隊長!」
「見ててよ」
熱波がレインの身体の全身を溶かそうと襲い掛かってくる。だが、それはレインの身体に触れる前に身体に纏っている魔力によって押しのけられ霧散していく。
これは黒い人型を相手にしたときに新しく考えた技である。全身に薄い魔力の膜を張ることで、ある程度の魔術的、物理的現象を跳ねのける力とするのだ。
「す、すごい!」
「どうだい、すごいだろう」
「流石は九歳で上級魔術師となった『天才』だ!」
部隊員が口々にレインを誉めたてる。
「属性がない魔術なんて初めて見ました!」
「ああ、無属性魔術のことか?」
これは魔術と呼んでいいのか正直微妙なラインであるが……レインは人型の技術を盗み見て新たな発想に至ったのだ。
そもそも、魔術に属性がなくたっていいじゃないか、と。
魔術に属性があるから魔術の才能がなければ魔術が使えないとなってしまう……それでは、せっかくある魔力がもったいないではないか。宝の持ち腐れになるくらいなら、新たな『属性』をこの手で作ってみんなを救ってしまおうと、レインは思い至ったわけである。
その結果が無属性魔術の発明だ。
属性を纏わせずに、魔力を体内もしくは肉体の周りのみで機能させることで肉体機能の強化、防御術、攻撃術を作り上げた。
作った期間はわずか数週間だった。それを論文として提出し、それは魔術界に大いに受け入れられた。始めこそ、中級魔術師が論文すらまともに発表したことないのに昇格するのはおかしいといろんなところから反発を喰らったものだが、これを一つ発表しただけで状況は一変した。
才能がないと言われて魔術の道を諦めた者が、魔術の世界に戻ってきた。これは大きな貢献であった。
「おっと?」
熱波ではなく空中で炎の塊が渦を巻き、まるで東の龍のような姿でレインへと向かってくる。
「部隊長!?」
炎はレインの身体を貫通し、すべてを焼き尽くす超高温でレインの身体を溶かしたように見えた。実際、後ろからただついてきていた部隊員全員がそう思っていた。
だが……
「ふむ、炎には反撃する意思を持っていると報告書に記載を」
「「「ええ!?」」」
「?どうしたの?」
「あれ?身体が……無傷!?」
レインの身体は魔力体であり、いくら攻撃されても死ぬことはない。グレン以外にまだバレていないため、意外に有能な力だ。
そして、攻撃されたときの修復速度の練度もレインは常に上げ続けてきた。攻撃を受けた次の瞬間には傷が感知するように魔力の流れを作りそれを術式として組み込んだのだ。
「僕に攻撃は効かないよ!」
炎がもう一度レインの身体を行き着くさんと突進してくる。先ほどよりも火力が上がり、全身が燃えるように熱く感じる。炎は近づくにつれ、熱波を吸収して巨大化していき次第にレインを呑み込むほどの大きさを手にした。
だが、炎の大きさなどレインの前では無意味なのだ。
「『ブレード』」
レインは自身が考えたオリジナルの水の魔術を使い、右手を水の剣に変形させた。水の肉体であるから、レインの魔力次第でいくらでも変形することが可能なのだ。
ひじの先から透明な水が片手剣を形作り、それを炎に向かって振り下ろす。圧倒的な火力を見せた炎であったが、レインのブレードを前にそれは真っ二つに切り伏せられた。
それを斬った次の瞬間、熱波は収まり、燃え盛る家屋の火の勢いも徐々に弱まり始めていった。そして、斬った炎の跡にはガラスの破片のようなものが落ちていた。
「なるほど、これが本体だったのか」
拾い上げて、それを丁寧に袋の中に保管する。
「これを持ち帰って上へ報告しに行くぞ。今回も無事に解決だ」
「「「おお!」」」
部隊員の歓声に包まれながら、レインは焼却炉を後にする。だが、レインにはこの後帰ってからもグレンの仕事を手伝いに行くという仕事がまだ残っている。
活動開始が朝の五時で、現在時刻が夜の十二時。そして今から再び仕事である。なんて仕事に忙殺される日々なのだろうか。
だが、これで『師匠』の元にも僕の話が伝わるのなら……と、考えると不思議と我慢することが出来た。とりあえずしばらくは……。
「さて、帰還するぞみんな!」
レイン、初めての過労死の危機が迫る。ここ最近でレインの仕事内容は一変してしまった。
普段は民間の依頼などをこなしてお金を稼ぎつつグレンの研究を手伝いながら研究資料を見て学ぶということを繰り返していたのだが、魔術界直轄の部隊員となったことで、なんというか……大変な仕事がたくさん回されてくるようになった。
その中にメインとして含まれるのはやはり『異常現象への対処』である。
「『部隊長』!突入準備が完了しました!」
「あ、うん。じゃあ行こうか」
「はい!」
えらく気合の入っている青年(圧倒的年上)に敬語を使われる日が来るなんて思ってもみなかった。
異常現象の対処のためと銘打ってとても危険であるということをアピールしていたというのに、なぜだか部隊員志願者が大量にできてしまった。
魔術界直轄というネームバリューは偉大である。魔術界直轄というのはそんじょそこらの支部内幹部よりも高官であるようで……ただの上級魔術師とは一線を画す発言権だそうで。
まあ、新米魔術師のレインにはよくわからないし、どうでもいい話なのだが。レインが望んでいるのは『師匠』のもとにまで届く名声ただ一つである。
ちなみに今回対処にあたっているのは、火力が上がり続ける焼却炉の破壊だ。
これも異常現象だとのことで、すでに火力は一万度を超えているそうな。すでに高温のエネルギーが辺り数百メートル圏内を地獄に変えてしまっている。
「部隊長!これ以上の接近は不可能です!」
「ふむ……」
「部隊長、ご指示を!」
「あ、僕のことか。レインと呼んでよ」
「そんな!上官を呼び捨てになど……」
発足人として持ち上げられたレインを含むヴァージとオリバーは『部隊長』と呼ばれて、それぞれ『α隊』『β隊』『γ隊』として活動している。部下は十名ずつ。だが、志願者はそれ以上にいる。今後も増えるかもしれないと考えるだけで胃が痛くなってくる。
「これ以上近づけない?何弱気になってのさ。ちゃんと頭を使わなきゃ」
お手本を見せてやると、部下たちを押しのけて前に出る。
焼却炉の周りは普通の街であったため、すでに家屋が燃えて街の原型は留めていなかった。
「部隊長!」
「見ててよ」
熱波がレインの身体の全身を溶かそうと襲い掛かってくる。だが、それはレインの身体に触れる前に身体に纏っている魔力によって押しのけられ霧散していく。
これは黒い人型を相手にしたときに新しく考えた技である。全身に薄い魔力の膜を張ることで、ある程度の魔術的、物理的現象を跳ねのける力とするのだ。
「す、すごい!」
「どうだい、すごいだろう」
「流石は九歳で上級魔術師となった『天才』だ!」
部隊員が口々にレインを誉めたてる。
「属性がない魔術なんて初めて見ました!」
「ああ、無属性魔術のことか?」
これは魔術と呼んでいいのか正直微妙なラインであるが……レインは人型の技術を盗み見て新たな発想に至ったのだ。
そもそも、魔術に属性がなくたっていいじゃないか、と。
魔術に属性があるから魔術の才能がなければ魔術が使えないとなってしまう……それでは、せっかくある魔力がもったいないではないか。宝の持ち腐れになるくらいなら、新たな『属性』をこの手で作ってみんなを救ってしまおうと、レインは思い至ったわけである。
その結果が無属性魔術の発明だ。
属性を纏わせずに、魔力を体内もしくは肉体の周りのみで機能させることで肉体機能の強化、防御術、攻撃術を作り上げた。
作った期間はわずか数週間だった。それを論文として提出し、それは魔術界に大いに受け入れられた。始めこそ、中級魔術師が論文すらまともに発表したことないのに昇格するのはおかしいといろんなところから反発を喰らったものだが、これを一つ発表しただけで状況は一変した。
才能がないと言われて魔術の道を諦めた者が、魔術の世界に戻ってきた。これは大きな貢献であった。
「おっと?」
熱波ではなく空中で炎の塊が渦を巻き、まるで東の龍のような姿でレインへと向かってくる。
「部隊長!?」
炎はレインの身体を貫通し、すべてを焼き尽くす超高温でレインの身体を溶かしたように見えた。実際、後ろからただついてきていた部隊員全員がそう思っていた。
だが……
「ふむ、炎には反撃する意思を持っていると報告書に記載を」
「「「ええ!?」」」
「?どうしたの?」
「あれ?身体が……無傷!?」
レインの身体は魔力体であり、いくら攻撃されても死ぬことはない。グレン以外にまだバレていないため、意外に有能な力だ。
そして、攻撃されたときの修復速度の練度もレインは常に上げ続けてきた。攻撃を受けた次の瞬間には傷が感知するように魔力の流れを作りそれを術式として組み込んだのだ。
「僕に攻撃は効かないよ!」
炎がもう一度レインの身体を行き着くさんと突進してくる。先ほどよりも火力が上がり、全身が燃えるように熱く感じる。炎は近づくにつれ、熱波を吸収して巨大化していき次第にレインを呑み込むほどの大きさを手にした。
だが、炎の大きさなどレインの前では無意味なのだ。
「『ブレード』」
レインは自身が考えたオリジナルの水の魔術を使い、右手を水の剣に変形させた。水の肉体であるから、レインの魔力次第でいくらでも変形することが可能なのだ。
ひじの先から透明な水が片手剣を形作り、それを炎に向かって振り下ろす。圧倒的な火力を見せた炎であったが、レインのブレードを前にそれは真っ二つに切り伏せられた。
それを斬った次の瞬間、熱波は収まり、燃え盛る家屋の火の勢いも徐々に弱まり始めていった。そして、斬った炎の跡にはガラスの破片のようなものが落ちていた。
「なるほど、これが本体だったのか」
拾い上げて、それを丁寧に袋の中に保管する。
「これを持ち帰って上へ報告しに行くぞ。今回も無事に解決だ」
「「「おお!」」」
部隊員の歓声に包まれながら、レインは焼却炉を後にする。だが、レインにはこの後帰ってからもグレンの仕事を手伝いに行くという仕事がまだ残っている。
活動開始が朝の五時で、現在時刻が夜の十二時。そして今から再び仕事である。なんて仕事に忙殺される日々なのだろうか。
だが、これで『師匠』の元にも僕の話が伝わるのなら……と、考えると不思議と我慢することが出来た。とりあえずしばらくは……。
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