479 / 504
将軍の末路は
しおりを挟む
「え、なあんで生きてんの」
自殺していたはず、いやそれよりも先に瓦礫に埋もれていたはず……ただの人間が重いが例を持ち上げることができるわけがない。
「あんた一体何者?」
まあ、正体などどうでもいいので、さっさと殺してしまおうとした時。
「ストップ!」
「ユーリ?怪我はもういいの?」
「うん、それはもうバッチリ!」
ユーリは先ほど将軍の攻撃を喰らっていたが、ユーリは腐っても元魔王だから、あの程度で死なないことはわかっていた。わざわざ先にユーリを退場させる……しかも殺さなかった将軍の意図は分かりかねるが、それも終わったことだ。
「で、どうして止めるわけ?」
構築した魔法を解除する。
「そいつは大臣じゃないよ」
「え……待って話が読めないんだけど?」
助けてツムちゃん!
《確かに大臣ではありません。魂の輝きが違います》
何それすごい、魂みえるの?
《大臣の魂は穢れに侵食されていましたが、今体内にいる魂は穢れが一切ありません》
要するに、
「あんた誰」
そうきいた次の瞬間、大臣の体が真っ二つになった。文字通り、体の真ん中からパッかんと割れたのだ。
「うぇ……」
と、最初は思ったが、何やらおかしい。体の中から白い光が漏れている。
一体何が起こっているのかと思い、中を覗き込もうとしたら中から手が出てきた。
「ぎゃああああ!」
その手は大臣の体を掴んで、脱ぎ捨てるように中から這い上がってきた。
「って、あんた!」
背中についた翼が大臣の体を吹き飛ばし、中から天使が出てきた。それも、
「将軍っ!」
「あ、お久しぶりです」
「どんなところから出てきてんの!?っていうか私今あんたを倒さなかった!?」
状況が全く理解できない、困惑しているのは私だけのようでユーリと将軍は平然としている。
「ユーリ、ちょっとどういうことか聞いてもいい?」
「ご主人様……あの、そもそも前提が違ったんだよ」
「前提?」
「この将軍?が、ボクらの敵だっていう前提が」
「え」
将軍の方に目をやるとこくこくと頷いているのが見えた。
「ええ、少しばかり利用させてもらいましたが」
「ちょっとどういうこと!?」
「もう疲れたんですよ、将軍をするのは」
将軍はいった。
「私は自由に生きろと前創造神に生み出されたはずなのに、なぜ女神の言うことを聞いて隔離されなくてはいけないのか」
「は、はあ……」
「私はもう自由になりたい、もう誰の命令も聞かない。だから、少しばかりあなたを利用させてもらいました」
「利用?」
「今さっき、私を倒してもらいましたが……あれは女神を騙すために行ったのです」
女神はこの世界に干渉はできないが、観察することはできる。女神は自身の部下が負けたと思い込み、将軍のことはすぐさま忘れ去るだろう。
「えっと……つまり、将軍はもう女神側じゃないってこと?」
「そういうことになりますね」
「女神に見つからない?」
「おそらくはもう大丈夫、女神は見た目で私を識別していたわけじゃないので。そこに転がっている大臣の魂を私が乗っ取りました。よって、女神の目には私がただの一般市民に見えるわけです」
の、乗っ取った!?
「そんなこともできるの?」
「仮にも私は長生きなおばあちゃんです。なんでもできます」
「お、おう……」
「それと、私はもう女神側についている天使ではありませんので、一言。もうあなたたちに敵対するつもりはありません。ですが、もしよろしければまた会いにきてもいいですか?」
将軍はそう寂しそうに告げる。
あれ、将軍が捨て猫に見えてきたぞ?おかしいな……こんな化け物ステータスの猫がいてたまるかって感じだけど可愛く思えてきた。
「そんなの全然いいよ。元々、私は将軍にいろいろお世話になっていたしね」
「っ!」
「また一緒にお店回ろうか」
「感謝します」
心なしか将軍が笑っているように見える。
と、そんなことをしている間に、野次馬がたくさんこっちを見ていたようだ。
「うわー、その翼もうみんなにバレちゃったけど?」
「問題ありません、私は幻覚を見せるのが得意なので彼らには翼は見えてません」
「そうなんだ」
ってことはさっきまでまだ手加減されてたの?いや、それは考えないでおこう。
《将軍のステータスは測定不能……おそらく主よりも高い数値なのでしょう。それに対抗できただけで十分かと》
慰めありがとツムちゃん。
「あ、お兄様方」
野次馬に気付いたのか、お兄様方一向がこちらにきていた。酒場を一つ粉々にしてしまったのもあってか、怒るかなと思ったが……何やら頭を抱える様子。
あ!お兄様は将軍の顔を知っているんだった!
「大丈夫でござるか!」
「あ、蘭丸さん」
蘭丸さんがこちらへ寄ってくる。
「ひどい有様ですが、何があったのでござるか?」
「あーちょっと色々……」
どう話を誤魔化そうと思って、ふと将軍の方を向いた。
「あ、蘭丸さん。この間、将軍様に会ってみたいと言っていましたよね?」
「へ?ああ、そんなこともあったでござるなぁ」
照れたように頭を掻きむしる蘭丸さんを将軍の前にぐいんと引っ張る。
「蘭丸さん、こちら将軍様です」
「え?」
蘭丸さんは驚いたように、将軍の顔を見つめる。
「あなたは?」
将軍は優しい声音でそう聞く。
「ら、蘭丸でござる……」
蘭丸さんはひどく赤面している様子、クーっ!青春って素晴らしいねぇ!?
そんなことを考えていたら、将軍がいきなり蘭丸さんの肩を掴んだ。何をするのかなと思って見守っていたら、まさかの予想外のセリフがその口から飛び出したのを聞いてしまった。
「一目惚れです」
「「「え?」」」
「蘭丸さん、私と付き合っていただけませんか?」
「「「ええええええええ!?」」」
「はい?どういうことでござるかぁ!?」
当の本人も状況が掴めていないようで、困惑している。将軍の方を見ると、私はこんな将軍の顔を初めてみた……なんと、顔が紅潮していたのである。
「これが、人間の感情というものですか、とても心地いい。蘭丸さん、あなたは私の理想の人です。どうか気持ちを受け取ってほしい」
「え、え?」
《天使には基本戦いに邪魔になる感情は全て抑え込まれるように種族特性が定まっていますが、将軍は座天使でありながら人間の魂を使って生き残ったため、人間のような喜怒哀楽をうまく表現できるようになったのでしょう》
いや、そういうことじゃない!
「あの、将軍?それまじ?」
「マジです。私にだって、好みはあります」
「あーそうですか……」
なんだかよくわからないけど、一件落着?なのか?
こうして、日ノ本の反乱は幕を閉じることになった。
自殺していたはず、いやそれよりも先に瓦礫に埋もれていたはず……ただの人間が重いが例を持ち上げることができるわけがない。
「あんた一体何者?」
まあ、正体などどうでもいいので、さっさと殺してしまおうとした時。
「ストップ!」
「ユーリ?怪我はもういいの?」
「うん、それはもうバッチリ!」
ユーリは先ほど将軍の攻撃を喰らっていたが、ユーリは腐っても元魔王だから、あの程度で死なないことはわかっていた。わざわざ先にユーリを退場させる……しかも殺さなかった将軍の意図は分かりかねるが、それも終わったことだ。
「で、どうして止めるわけ?」
構築した魔法を解除する。
「そいつは大臣じゃないよ」
「え……待って話が読めないんだけど?」
助けてツムちゃん!
《確かに大臣ではありません。魂の輝きが違います》
何それすごい、魂みえるの?
《大臣の魂は穢れに侵食されていましたが、今体内にいる魂は穢れが一切ありません》
要するに、
「あんた誰」
そうきいた次の瞬間、大臣の体が真っ二つになった。文字通り、体の真ん中からパッかんと割れたのだ。
「うぇ……」
と、最初は思ったが、何やらおかしい。体の中から白い光が漏れている。
一体何が起こっているのかと思い、中を覗き込もうとしたら中から手が出てきた。
「ぎゃああああ!」
その手は大臣の体を掴んで、脱ぎ捨てるように中から這い上がってきた。
「って、あんた!」
背中についた翼が大臣の体を吹き飛ばし、中から天使が出てきた。それも、
「将軍っ!」
「あ、お久しぶりです」
「どんなところから出てきてんの!?っていうか私今あんたを倒さなかった!?」
状況が全く理解できない、困惑しているのは私だけのようでユーリと将軍は平然としている。
「ユーリ、ちょっとどういうことか聞いてもいい?」
「ご主人様……あの、そもそも前提が違ったんだよ」
「前提?」
「この将軍?が、ボクらの敵だっていう前提が」
「え」
将軍の方に目をやるとこくこくと頷いているのが見えた。
「ええ、少しばかり利用させてもらいましたが」
「ちょっとどういうこと!?」
「もう疲れたんですよ、将軍をするのは」
将軍はいった。
「私は自由に生きろと前創造神に生み出されたはずなのに、なぜ女神の言うことを聞いて隔離されなくてはいけないのか」
「は、はあ……」
「私はもう自由になりたい、もう誰の命令も聞かない。だから、少しばかりあなたを利用させてもらいました」
「利用?」
「今さっき、私を倒してもらいましたが……あれは女神を騙すために行ったのです」
女神はこの世界に干渉はできないが、観察することはできる。女神は自身の部下が負けたと思い込み、将軍のことはすぐさま忘れ去るだろう。
「えっと……つまり、将軍はもう女神側じゃないってこと?」
「そういうことになりますね」
「女神に見つからない?」
「おそらくはもう大丈夫、女神は見た目で私を識別していたわけじゃないので。そこに転がっている大臣の魂を私が乗っ取りました。よって、女神の目には私がただの一般市民に見えるわけです」
の、乗っ取った!?
「そんなこともできるの?」
「仮にも私は長生きなおばあちゃんです。なんでもできます」
「お、おう……」
「それと、私はもう女神側についている天使ではありませんので、一言。もうあなたたちに敵対するつもりはありません。ですが、もしよろしければまた会いにきてもいいですか?」
将軍はそう寂しそうに告げる。
あれ、将軍が捨て猫に見えてきたぞ?おかしいな……こんな化け物ステータスの猫がいてたまるかって感じだけど可愛く思えてきた。
「そんなの全然いいよ。元々、私は将軍にいろいろお世話になっていたしね」
「っ!」
「また一緒にお店回ろうか」
「感謝します」
心なしか将軍が笑っているように見える。
と、そんなことをしている間に、野次馬がたくさんこっちを見ていたようだ。
「うわー、その翼もうみんなにバレちゃったけど?」
「問題ありません、私は幻覚を見せるのが得意なので彼らには翼は見えてません」
「そうなんだ」
ってことはさっきまでまだ手加減されてたの?いや、それは考えないでおこう。
《将軍のステータスは測定不能……おそらく主よりも高い数値なのでしょう。それに対抗できただけで十分かと》
慰めありがとツムちゃん。
「あ、お兄様方」
野次馬に気付いたのか、お兄様方一向がこちらにきていた。酒場を一つ粉々にしてしまったのもあってか、怒るかなと思ったが……何やら頭を抱える様子。
あ!お兄様は将軍の顔を知っているんだった!
「大丈夫でござるか!」
「あ、蘭丸さん」
蘭丸さんがこちらへ寄ってくる。
「ひどい有様ですが、何があったのでござるか?」
「あーちょっと色々……」
どう話を誤魔化そうと思って、ふと将軍の方を向いた。
「あ、蘭丸さん。この間、将軍様に会ってみたいと言っていましたよね?」
「へ?ああ、そんなこともあったでござるなぁ」
照れたように頭を掻きむしる蘭丸さんを将軍の前にぐいんと引っ張る。
「蘭丸さん、こちら将軍様です」
「え?」
蘭丸さんは驚いたように、将軍の顔を見つめる。
「あなたは?」
将軍は優しい声音でそう聞く。
「ら、蘭丸でござる……」
蘭丸さんはひどく赤面している様子、クーっ!青春って素晴らしいねぇ!?
そんなことを考えていたら、将軍がいきなり蘭丸さんの肩を掴んだ。何をするのかなと思って見守っていたら、まさかの予想外のセリフがその口から飛び出したのを聞いてしまった。
「一目惚れです」
「「「え?」」」
「蘭丸さん、私と付き合っていただけませんか?」
「「「ええええええええ!?」」」
「はい?どういうことでござるかぁ!?」
当の本人も状況が掴めていないようで、困惑している。将軍の方を見ると、私はこんな将軍の顔を初めてみた……なんと、顔が紅潮していたのである。
「これが、人間の感情というものですか、とても心地いい。蘭丸さん、あなたは私の理想の人です。どうか気持ちを受け取ってほしい」
「え、え?」
《天使には基本戦いに邪魔になる感情は全て抑え込まれるように種族特性が定まっていますが、将軍は座天使でありながら人間の魂を使って生き残ったため、人間のような喜怒哀楽をうまく表現できるようになったのでしょう》
いや、そういうことじゃない!
「あの、将軍?それまじ?」
「マジです。私にだって、好みはあります」
「あーそうですか……」
なんだかよくわからないけど、一件落着?なのか?
こうして、日ノ本の反乱は幕を閉じることになった。
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
星の記憶
鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは…
日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです
人類が抱える大きな課題と試練
【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。
チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。
なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!
こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。
※注:すべてわかった上で自重してません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる