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将軍の噂の理由

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「大したことではない!この国の大臣ともなればたんまり金があるんだ!」

「へーすごーい(棒」

 現在、酒場でお酒を嗜んでおります。え、誰とだって?

 大臣だよ☆

 今すぐにでも顔面パンチをくらわしたいほど、金持ち自慢ばかりしている。なんで私がこんな奴と酒盛りしているといえば!

「それにしても、美人だな。どうだ?俺の専属の娼婦にならないか?」

「いえいえー、私には身に余りますー(気持ち悪!?近寄んな!)」

 私を犠牲にすることによって、酔わせて情報吐かせ用作戦!

 アナトレス公爵家は全員ネーミングセンスがそこまでよろしくないので、作戦名についてはご愛嬌。

 単純明快、色仕掛けです。

 もちろん、化粧で別人に変化しています。たまたま、酒場に入ってきた色気たっぷりなレディーに大変身!

 みんな驚きで目が飛び出そうになっていた。そういえば、作戦の話してなかったな……。

 特にユーリとレオ君は尻尾という感情表現機能が備わっているせいで、何を考えているのかバレバレなんだよな。

 まあ、見なかったことにしたけど。

「そういうでない……お前のような女なら大歓迎だ。なんなら今日――」

「大臣様、ちょっと失礼します」

「なに――を!?」

 そろそろ我慢の限界だったので、ちょっとばかり幻覚を見てもらうことにした。

 顔面を思いっきり地面に叩きつける。だが、バーテンダーは一切何も言わない。

 なぜなら大臣の卑劣さを目の前で聞かされていた一人だからである。

「さて、店員さん?カクテルいっぱい貰えるかしら?」

「水割りですね、かしこまりました」

 幻覚で何を見ているのかはわからない。だが、本人にとってとてもいい夢になるように設定している。

 幻覚が溶ける前に、叩きつけた顔面を掴んで元の席まで戻す。これにはさすがのバーテンダーも私の筋力に驚いていた。

 元に戻し、ちょうどいいタイミングで大臣の目が覚めた。

「大臣様、カクテルをどうぞー」

「ん?あ、ああありがとう」

「それでー、どうしてそんなにお金を持っているんですかー?」

「んん?そうだな、愚民どもから搾り取っているからだな!」

「……ほぉ?それは詳しく聞きたいですね」

「バカだよな!愚民どもときたら、税金がほとんど俺の懐の中に入っているということを知らずにどんどん金を持ってくるんだからな!おかげで俺は政治にも絶大な影響が持てる!そのおかげで金も入る!すべてが手に入ったのだ!」

 ツムちゃん?おっけー?

 《はい、録音完了です》

「はっ、とんだ最悪な豚だな」

「は?」

「私らから、金を巻き上げる……へぇ?これはいいスキャンダルになるな」

「いきなり何を」

「私の顔に見覚えない?」

 私は水の魔法で顔の化粧を落とす。すると、大臣の表情も大きく変化した。

「貴様!?まさか、田舎領主の妹という!」

「今更かよ。あなたの蔑む愚民の一人ですがなにか?」

「き、貴様!衛兵!衛兵!」

 大臣の声とどうじに外から入ってきた兵士たちが各々武器を構え始める。

「そいつを殺せ!」

「はっ!」

 気合のたっぷり入った声を幕府軍が上げる。

「はは、やっぱ隊長さんとは違うかー」

 そんなことを考えながら、大臣の首根っこを掴む。

「ははは!そんなに余裕をかましていていいのか!?」

「いいよ、だって……」

 私が視線を送る先には、もうすでに『糸』で拘束された兵士たちが並んでいる。

「私の出る幕じゃないもの」

「なっ!?」

「ありがとー平助君!」

 そういうと、どこからともなく平助君スタッと私の前に姿を現した。

「あ、はい!え、えと……どうでした、か?」

「うん!とってもいいと思うよ!裁縫スキル使いこなしてるね!」

「あ、ありがとう!」

 とてもうれしそうにえへへと笑う平助君。いやぁ、癒されますな。

「き、貴様!俺をどうするつもりだ!」

「え、死にたかったら殺してあげるけど?」

「ふざけるな!俺を誰だと思ってる!こんなことが幕府にバレたら、お魔の家族は……いや、ここの領民全員皆殺しだぞ!」

「うっさいなぁ」

 私はおもむろにツムちゃんの取った録音を流してもらう。

 《バカだよな!愚民どもときたら、税金がほとんど俺の懐の中に入っているということを知らずにどんどん金を持ってくるんだからな!おかげで俺は政治にも絶大な影響が持てる!そのおかげで金も入る!すべてが手に入ったのだ!》

「こ、これは!?」

「録音、わかる人にはこれがあなたの声だってすぐにわかるだろうねぇ?こんなのばらされたら、困るのはあんたの方だってわかる?」

 生憎と、こっちには優秀なツムちゃんがいるのだ。あとは、これを幕府に流し、適当な民たちに聞いてもらうだけだ。

「ふん!詰めが甘いな!」

「んー?」

「俺がたったこれだけの兵しか連れてないと思ったら大間違いだ!俺の下には幕府の三割ほどの兵が下についている。やろうと思えば、今すぐ都にいる愚民どもを人質に出来るんだ!どうだ?これで、わかっただろう!?」

「詰めが甘いのはあなたの方じゃない?」

「なん――」

「都にも私の味方はいるわよ」

 そう、実は隊長さんに少しお願い事をしておいたのだ。

『これから、反乱の予兆が幕府に生まれるから、あなたは人質を取られる前に制圧してほしい』

『は?』

『もちろん、一人じゃできないのは分かってる。だけど……大臣に不満を持っている人なんていくらでもあつめられるでしょ?』

『まあ、そうだが……』

『お願い……あの大臣がいなくなれば、絶対に民たちの生活が楽になるの。一回きりでいい、命も賭ける、信じて!』

 とまあ、そんな感じの会話をしたのだ。

 反乱が起きてもすぐに抑えられるように待機してもらっている。

「残念でした」

「ふっ……ははははははは!」

 いきなり笑いだす大臣。気でも狂ったのだろうか?

「どうやら貴様は知らなかったようだな!」

「何を?」

「将軍様が……どうして、強いと言われるようになったのか!」

 それは……天使だから?

「それはな!将軍様は政治にかかわっている大臣が殺されたら、どこからともなく現れて殺した相手に復讐をしてくださるのだ!」

「はい?」

「突如としてその場に現れ、どんな相手であっても瞬殺する……我らが将軍は最強だあああああ!」

「あ、ちょっと!?」

 気づいたら、大臣は手に持っていたグラスを割り、喉に突き刺していた。話に気を留められて止めることが出来なかった……。

 そして――

「久方ぶりです。政治が揺らぐのは」

 その場には聞き覚えのある声が響いていた。
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