469 / 504
嘘から出た真
しおりを挟む
元々才能が豊かだったお兄様はあっという間に実力をつけていった。流石にステータスはそこまで上昇はしなかったものの、戦闘訓練にしてはとてもいい収穫になったのは間違いない。
まず初めに弱点が減った。魔法構築と肉体運動を同時に行うのは難しいことのはずなのだが、お兄様は結構すんなりと会得していた。
魔法の使い方も色々と増えた。元から目くらましに使ったりしていたのだが、それが進化して軽い発光を起こせるようになったのだ。
光魔法ではない、太陽の光を反射させているのだ。これによって、目くらましの効果が増えると同時に、外側から見ているお兄様には相手の位置がスポットされているのと同義。
つまり、魔法の命中率も上がったのである。
「これだけ戦えればSランクなんてすぐね」
元よりステータスではAランクトップなので、冒険者になっていればSランク入りは間違いないだろう。
Sランク冒険者って私とかミサリー……身近なところに二人もいるから感覚が狂うかもしれないけど、この広い世界でたった数人しかいない超エリートなのである!
というより、レオ君やユーリはそこら辺のSランク冒険者なんかより強いため、Sランクという指標は当てにならないと最近感じてきたが。
♦
お兄様の訓練が終わった後、街から離れたところで戦闘を行っていたのにも関わらず、ユーリたちに訓練していたのがバレてしまった。
「探知にずっと引っかかってたよ」
だそうである。
忘れちゃいけないのが、このクリクリの目でこちらを見つめてくる愛らしい少女の姿をしたユーリ(男)は魔王だったこと。
首を傾げるようなしぐさをするな!可愛いなおい!
《また負けましたね》
なにが!?
っていうか負けてないし!
「ご主人様?」
「えぇい!ユーリは今日ご飯抜きよ!」
「ええ!?なんでぇ!?」
「なんとなく?」
「理不尽!」
ユーリによっていろんな人に私がお兄様を訓練していたことがバレされた。ライ様にも、
「義妹殿やっぱりとっても強い!」
「あはは……」
無駄に羨望の眼差しを受ける羽目になった……これは大いなるプレッシャーに過ぎないのだよ!
と、一時の平和が街には訪れていた。私の内心は平和ではなかったけど。いまだに街に出ると英雄扱いされる。
貢献度でいえば決して高くないんだけどな。
「そういえば最近、冒険者組合の依頼書ないわね」
冒険者組合に足を運んだ私はそう呟く。すると、受付さんが答えてくれた。
「最近はここら近辺で地震が多いらしく……魔物も寄り付かないんですよ」
「ア……そうなんですね」
確実に私たちの工作活動である……。
「あ、でも依頼ならありますよ?」
「依頼あるの?でも、ボードには何も張ってないけど」
依頼というのは基本依頼板という板に依頼書が張り付けてあり、冒険者はそれを引っぺがして受付に提出する……これで冒険者の仕事が始まるのだ。
「たしかここのあたりに……ありました!」
そう言って取り出した紙には、Sランク用という文字が見えた。
「これは……」
急募『謎の仙女の調査』
「場所は都近辺って……」
「そうなんです!どうやら将軍様と殺し合いをなさったという仙人が出たらしくて!」
あ……
「その余波で山が壊れたとか!」
修復した……と言っても、それは見た目を取り繕っただけに過ぎない。破壊した後までは完全に消せないのだ。
「なんか……ごめん」
「はい?なんか言いましたか?」
「いえ!何も言ってません!この依頼は謹んで私が拝命します!」
「どうしてそんなに力んでいるんですか?」
これ、ここに乗っている仙女ってまんま私じゃねえか!どうしてこうなった……適当にその場で話を合わせるためについた嘘が、どうしてこうも大事になってあらわになるのだ!
幕府軍の人たちが一番納得しやすい回答をして、その場を乗り切ったが……今度はうわさがここまで広がるとは思わなかった。
それだけ幕府軍は私のこと……というよりも、その謎の仙女のことは危険視しているようだ。光栄なことととらえるべきなのかもしれないけど、これは一刻も早く私が納めなくてはならない。
なぜなら、仙女なんていないのだから。
冒険者は依頼を失敗すると、組合からの評価と周りからの評判が落ちる。ありもしないクエストで誰かが不幸になるかもしれないと……そんなの絶対にダメだ!
幸いこれはSランク冒険者限定のようだし、被害者が出る前にさっさと引き受けてしまおう。
「はい、これ。Sランク証」
「わぁ……こうやってみると、やっぱりSランク冒険者って感じがします!」
「どういう意味です?」
「だってほら……ベアトリスさんって妹みたいな感じじゃないですか?だから……失礼ですが、強そうには見えないのです」
「なっ!?」
確かに私は末っ子だが、強そうに見えない……いや、わかっていたことだけど、面と向かって言われると結構傷つく。
というより、受付さんメンタル凄いな。私が怒るとか思わないのだろうか?
多分なんも考えてないんだと思う、そういう顔をしている。
「大丈夫です!こう見えてSランク冒険者の中でも強い方だと思うので!」
「そうですね!では、頑張ってください!あ、期限は二週間です!それまでに成果がなければ依頼は失敗扱いになります」
「わかってる。じゃあ、行ってきまーす」
そういって私は堂々と組合を出た。
これだけ、さも当然にクリアできるという風に組合を出てしまっては失敗することはもはや私のプライドが許さない。
ということで、この依頼は絶対にクリアする。
「嘘から出た真ってことで……どうにか頑張りますか」
まず初めに弱点が減った。魔法構築と肉体運動を同時に行うのは難しいことのはずなのだが、お兄様は結構すんなりと会得していた。
魔法の使い方も色々と増えた。元から目くらましに使ったりしていたのだが、それが進化して軽い発光を起こせるようになったのだ。
光魔法ではない、太陽の光を反射させているのだ。これによって、目くらましの効果が増えると同時に、外側から見ているお兄様には相手の位置がスポットされているのと同義。
つまり、魔法の命中率も上がったのである。
「これだけ戦えればSランクなんてすぐね」
元よりステータスではAランクトップなので、冒険者になっていればSランク入りは間違いないだろう。
Sランク冒険者って私とかミサリー……身近なところに二人もいるから感覚が狂うかもしれないけど、この広い世界でたった数人しかいない超エリートなのである!
というより、レオ君やユーリはそこら辺のSランク冒険者なんかより強いため、Sランクという指標は当てにならないと最近感じてきたが。
♦
お兄様の訓練が終わった後、街から離れたところで戦闘を行っていたのにも関わらず、ユーリたちに訓練していたのがバレてしまった。
「探知にずっと引っかかってたよ」
だそうである。
忘れちゃいけないのが、このクリクリの目でこちらを見つめてくる愛らしい少女の姿をしたユーリ(男)は魔王だったこと。
首を傾げるようなしぐさをするな!可愛いなおい!
《また負けましたね》
なにが!?
っていうか負けてないし!
「ご主人様?」
「えぇい!ユーリは今日ご飯抜きよ!」
「ええ!?なんでぇ!?」
「なんとなく?」
「理不尽!」
ユーリによっていろんな人に私がお兄様を訓練していたことがバレされた。ライ様にも、
「義妹殿やっぱりとっても強い!」
「あはは……」
無駄に羨望の眼差しを受ける羽目になった……これは大いなるプレッシャーに過ぎないのだよ!
と、一時の平和が街には訪れていた。私の内心は平和ではなかったけど。いまだに街に出ると英雄扱いされる。
貢献度でいえば決して高くないんだけどな。
「そういえば最近、冒険者組合の依頼書ないわね」
冒険者組合に足を運んだ私はそう呟く。すると、受付さんが答えてくれた。
「最近はここら近辺で地震が多いらしく……魔物も寄り付かないんですよ」
「ア……そうなんですね」
確実に私たちの工作活動である……。
「あ、でも依頼ならありますよ?」
「依頼あるの?でも、ボードには何も張ってないけど」
依頼というのは基本依頼板という板に依頼書が張り付けてあり、冒険者はそれを引っぺがして受付に提出する……これで冒険者の仕事が始まるのだ。
「たしかここのあたりに……ありました!」
そう言って取り出した紙には、Sランク用という文字が見えた。
「これは……」
急募『謎の仙女の調査』
「場所は都近辺って……」
「そうなんです!どうやら将軍様と殺し合いをなさったという仙人が出たらしくて!」
あ……
「その余波で山が壊れたとか!」
修復した……と言っても、それは見た目を取り繕っただけに過ぎない。破壊した後までは完全に消せないのだ。
「なんか……ごめん」
「はい?なんか言いましたか?」
「いえ!何も言ってません!この依頼は謹んで私が拝命します!」
「どうしてそんなに力んでいるんですか?」
これ、ここに乗っている仙女ってまんま私じゃねえか!どうしてこうなった……適当にその場で話を合わせるためについた嘘が、どうしてこうも大事になってあらわになるのだ!
幕府軍の人たちが一番納得しやすい回答をして、その場を乗り切ったが……今度はうわさがここまで広がるとは思わなかった。
それだけ幕府軍は私のこと……というよりも、その謎の仙女のことは危険視しているようだ。光栄なことととらえるべきなのかもしれないけど、これは一刻も早く私が納めなくてはならない。
なぜなら、仙女なんていないのだから。
冒険者は依頼を失敗すると、組合からの評価と周りからの評判が落ちる。ありもしないクエストで誰かが不幸になるかもしれないと……そんなの絶対にダメだ!
幸いこれはSランク冒険者限定のようだし、被害者が出る前にさっさと引き受けてしまおう。
「はい、これ。Sランク証」
「わぁ……こうやってみると、やっぱりSランク冒険者って感じがします!」
「どういう意味です?」
「だってほら……ベアトリスさんって妹みたいな感じじゃないですか?だから……失礼ですが、強そうには見えないのです」
「なっ!?」
確かに私は末っ子だが、強そうに見えない……いや、わかっていたことだけど、面と向かって言われると結構傷つく。
というより、受付さんメンタル凄いな。私が怒るとか思わないのだろうか?
多分なんも考えてないんだと思う、そういう顔をしている。
「大丈夫です!こう見えてSランク冒険者の中でも強い方だと思うので!」
「そうですね!では、頑張ってください!あ、期限は二週間です!それまでに成果がなければ依頼は失敗扱いになります」
「わかってる。じゃあ、行ってきまーす」
そういって私は堂々と組合を出た。
これだけ、さも当然にクリアできるという風に組合を出てしまっては失敗することはもはや私のプライドが許さない。
ということで、この依頼は絶対にクリアする。
「嘘から出た真ってことで……どうにか頑張りますか」
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません
ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」
目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。
この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。
だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。
だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。
そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。
人気ランキング2位に載っていました。
hotランキング1位に載っていました。
ありがとうございます。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる