459 / 504
いちばんの失敗
しおりを挟む
その瞬間、衝撃音があたりに響く。土飛沫が辺りに舞う。
「な、なに?」
あたりには私たち以外誰もいないはずなのに起きた轟音に戸惑いつつ、魔力感知に引っかかった方向を直視する。
その方向にいたのはたった一人だった。
「そこをどけぇ!」
「っ!」
土煙の中から音速以上のスピードで突進してきたその女性を私は思わず受け止めた。
「どけといっただろ!」
「何者かは知らないけど、ちょっと落ち着いてくれない?」
女性はボサボサの茶色髪を伸ばし、鋭い目つきでこちらを睨みつけている。背丈はまあまあ高く、その姿はまるでライオンのようだった。
ライオン種だろう。
「どかないってんなら、お前ら全員殺す!」
「殺させるわけないでしょう?」
いきなり現れたと思ったら、いきなりの殺す発言。さっきの素早い動きも考慮すると、この人は手加減しなくてよさそうだ。
「みんな、下がってて……そうだね、自陣まで後退」
「小隊長は!?」
「ここに残るよ」
「そんな!僕たちも戦えます!」
「冗談言わないで。ここに残ってたら死ぬよ?」
人間誰しも死にたくないもの、死にたくなければさっさと逃げるべし。
「大丈夫、誰もあなた達に手出しはさせない」
「ベアさん……」
「こら、小隊長と呼びなさい」
「は、はい!」
さて、小隊のみんなは馬に乗ったまま逃げていく。というわけで、私はしばらくこいつの相手をしよう。
「逃すか!」
懲りずに私を無視して、小隊のみんなの方へと突進していく。私はそれを冷静に見つめる。
そして、転移で瞬時に前方へ現れた。ライオン種の女性は急に現れた私に反応できずにそのまま蹴り飛ばされる。
「行かせるわけないでしょう?」
「このガキ!よくもあたいの顔を!」
先ほどよりもスピードが上がる。常人には認識できないのは当然として、魔力感知……あ、そもそも獣人族って魔力ないから魔力感知意味ないじゃん!
《位置情報を私が主の脳に直接送信しています》
あ、あざます。
とにかく、相手の気を察知する系統のスキルでもその動きを追いきれないほどの速さで私に迫ってくる。どこにしまっていたのか鉤爪を取り出し、私に双撃を放つ。
間合いに入ったまま私が動かないのを見て、まるで勝ったかのような顔をしている。
だが、それを思わず鼻で笑ってしまった。
「なっ!?」
鉤爪の双撃は私の指一本で弾かれた。
「何をした!」
「ただ、指で弾いただけよ」
私はデコピンする動作を女性に見せる。馬鹿にされたと感じたのか憤りながら、女性は軌道を変えながら再びこちらに詰めてきた。
「だから、無駄なのよ」
私は大剣であたり一帯を丸ごと削り取る。大剣を薙ぐだけで、地面は抉れ凄まじい音と共に大地にその振動が伝わる。
それにより吹っ飛ばされた女性をそれよりも早い速度で追いつき、髪を掴んで地面に叩きつける。
「ぐあっ!?」
髪の毛を持ち上げて体を引っ張り上げる。といっても、私の方が身長が小さいので、頑張っても足を引きずらせてしまうが。
「あなた、自分より強い人と戦ったことないでしょ?」
「な、なんだと?」
「戦闘の仕方は単調もいいところ。ただ突っ込んでくるだけ……それさえわかっていればなんの脅威にもならないわ」
実力的にはそこらへんの兵士など瞬殺できるくらいの実力はあるのだが、本物の強者にはただ単調な攻撃で勝てるなんざ甘くない。
知恵のある魔物ですら策を弄する今の時代に、愚直に突っ込んで勝てるのは自分よりも弱い存在を相手する時だけだ。
「ん、その傷は……?」
そして、持ち上げていた女性の横腹を見るとそこには何かで傷つけられた跡が見えた。
「なるほど、私と戦う前に誰かにやられてたのね」
「くそ!これさえなければ……この傷さえなければお前なんてすぐに殺せたんだ!」
そんな負け惜しみを言う女性。
その時に、私は何かがプツンといった気がした。
「あ?」
「っ!!??」
体に残っている魔力を全て威圧に変換して前面に押し出す。
「私を殺す?私が子供の頃から努力してきて手に入れた力を馬鹿にするつもり?あなたごときに私が負けるわけないでしょ?」
言葉の一つ一つにありとあらゆる威圧をのせて届ける。女性の目は今にも飛び出しそうなほど大きくなり、目からは涙がたれかかっていた。
「あなたに私は倒せない。そして、あなたは私に倒されたの」
「あ……あぁ……」
ということをしたら、
「あれ?もう気絶した?」
いやー、最近ストレス溜まってたから思わずこの人で発散しちゃった⭐︎
悪いことをしたとは絶対に思わないけど、スッキリできた。
「ふう、この人を捕虜にして……」
と思いながら、ふと気づいた。
「あれ、なんか地面陥没した?」
気づけば一定の距離で、私を中心に地面が綺麗に陥没しているではないか!
「あ、あれぇ?重力魔法は使ってないよ?」
《主の威圧が強力すぎて、物理的にも効果を発揮したのです。威圧に使用した圧力が魔力だったせいでしょう》
そんなツムちゃんの解説を聞きながら、私は魔法でその女性を捕縛する。そして、その時変な感覚に襲われた。
「誰?」
パッと後ろを振り向くと、まあ予想はしていた人がいた。
「マレスティーナ?」
「大正解!」
そこにはマレスティーナが立っていた。
「激しい威圧を感じてきてみたら、君がいるとはね」
「どっかの誰かさんがこの人を取り逃したからでしょう?」
「言うねぇ」
「あまり遊んでないで、さっさと鎮圧してもらいたいのだけど?私だって暇じゃないの。痴女大賢者の尻拭いなんて真っ平ごめんよ」
と、適当に煽る。
「はは、君に煽るのはまだ早いよ」
そういってマレスティーナは瞬時に魔法を構築してこちらに飛ばしてきた。
「ちょっ!?何するの!?」
「そこまで言われて私もプッチンときちゃったから、ちょっと殺り合おう!」
「はあ!?」
ベアトリス、齢15にしていちばんの失敗だった。
「な、なに?」
あたりには私たち以外誰もいないはずなのに起きた轟音に戸惑いつつ、魔力感知に引っかかった方向を直視する。
その方向にいたのはたった一人だった。
「そこをどけぇ!」
「っ!」
土煙の中から音速以上のスピードで突進してきたその女性を私は思わず受け止めた。
「どけといっただろ!」
「何者かは知らないけど、ちょっと落ち着いてくれない?」
女性はボサボサの茶色髪を伸ばし、鋭い目つきでこちらを睨みつけている。背丈はまあまあ高く、その姿はまるでライオンのようだった。
ライオン種だろう。
「どかないってんなら、お前ら全員殺す!」
「殺させるわけないでしょう?」
いきなり現れたと思ったら、いきなりの殺す発言。さっきの素早い動きも考慮すると、この人は手加減しなくてよさそうだ。
「みんな、下がってて……そうだね、自陣まで後退」
「小隊長は!?」
「ここに残るよ」
「そんな!僕たちも戦えます!」
「冗談言わないで。ここに残ってたら死ぬよ?」
人間誰しも死にたくないもの、死にたくなければさっさと逃げるべし。
「大丈夫、誰もあなた達に手出しはさせない」
「ベアさん……」
「こら、小隊長と呼びなさい」
「は、はい!」
さて、小隊のみんなは馬に乗ったまま逃げていく。というわけで、私はしばらくこいつの相手をしよう。
「逃すか!」
懲りずに私を無視して、小隊のみんなの方へと突進していく。私はそれを冷静に見つめる。
そして、転移で瞬時に前方へ現れた。ライオン種の女性は急に現れた私に反応できずにそのまま蹴り飛ばされる。
「行かせるわけないでしょう?」
「このガキ!よくもあたいの顔を!」
先ほどよりもスピードが上がる。常人には認識できないのは当然として、魔力感知……あ、そもそも獣人族って魔力ないから魔力感知意味ないじゃん!
《位置情報を私が主の脳に直接送信しています》
あ、あざます。
とにかく、相手の気を察知する系統のスキルでもその動きを追いきれないほどの速さで私に迫ってくる。どこにしまっていたのか鉤爪を取り出し、私に双撃を放つ。
間合いに入ったまま私が動かないのを見て、まるで勝ったかのような顔をしている。
だが、それを思わず鼻で笑ってしまった。
「なっ!?」
鉤爪の双撃は私の指一本で弾かれた。
「何をした!」
「ただ、指で弾いただけよ」
私はデコピンする動作を女性に見せる。馬鹿にされたと感じたのか憤りながら、女性は軌道を変えながら再びこちらに詰めてきた。
「だから、無駄なのよ」
私は大剣であたり一帯を丸ごと削り取る。大剣を薙ぐだけで、地面は抉れ凄まじい音と共に大地にその振動が伝わる。
それにより吹っ飛ばされた女性をそれよりも早い速度で追いつき、髪を掴んで地面に叩きつける。
「ぐあっ!?」
髪の毛を持ち上げて体を引っ張り上げる。といっても、私の方が身長が小さいので、頑張っても足を引きずらせてしまうが。
「あなた、自分より強い人と戦ったことないでしょ?」
「な、なんだと?」
「戦闘の仕方は単調もいいところ。ただ突っ込んでくるだけ……それさえわかっていればなんの脅威にもならないわ」
実力的にはそこらへんの兵士など瞬殺できるくらいの実力はあるのだが、本物の強者にはただ単調な攻撃で勝てるなんざ甘くない。
知恵のある魔物ですら策を弄する今の時代に、愚直に突っ込んで勝てるのは自分よりも弱い存在を相手する時だけだ。
「ん、その傷は……?」
そして、持ち上げていた女性の横腹を見るとそこには何かで傷つけられた跡が見えた。
「なるほど、私と戦う前に誰かにやられてたのね」
「くそ!これさえなければ……この傷さえなければお前なんてすぐに殺せたんだ!」
そんな負け惜しみを言う女性。
その時に、私は何かがプツンといった気がした。
「あ?」
「っ!!??」
体に残っている魔力を全て威圧に変換して前面に押し出す。
「私を殺す?私が子供の頃から努力してきて手に入れた力を馬鹿にするつもり?あなたごときに私が負けるわけないでしょ?」
言葉の一つ一つにありとあらゆる威圧をのせて届ける。女性の目は今にも飛び出しそうなほど大きくなり、目からは涙がたれかかっていた。
「あなたに私は倒せない。そして、あなたは私に倒されたの」
「あ……あぁ……」
ということをしたら、
「あれ?もう気絶した?」
いやー、最近ストレス溜まってたから思わずこの人で発散しちゃった⭐︎
悪いことをしたとは絶対に思わないけど、スッキリできた。
「ふう、この人を捕虜にして……」
と思いながら、ふと気づいた。
「あれ、なんか地面陥没した?」
気づけば一定の距離で、私を中心に地面が綺麗に陥没しているではないか!
「あ、あれぇ?重力魔法は使ってないよ?」
《主の威圧が強力すぎて、物理的にも効果を発揮したのです。威圧に使用した圧力が魔力だったせいでしょう》
そんなツムちゃんの解説を聞きながら、私は魔法でその女性を捕縛する。そして、その時変な感覚に襲われた。
「誰?」
パッと後ろを振り向くと、まあ予想はしていた人がいた。
「マレスティーナ?」
「大正解!」
そこにはマレスティーナが立っていた。
「激しい威圧を感じてきてみたら、君がいるとはね」
「どっかの誰かさんがこの人を取り逃したからでしょう?」
「言うねぇ」
「あまり遊んでないで、さっさと鎮圧してもらいたいのだけど?私だって暇じゃないの。痴女大賢者の尻拭いなんて真っ平ごめんよ」
と、適当に煽る。
「はは、君に煽るのはまだ早いよ」
そういってマレスティーナは瞬時に魔法を構築してこちらに飛ばしてきた。
「ちょっ!?何するの!?」
「そこまで言われて私もプッチンときちゃったから、ちょっと殺り合おう!」
「はあ!?」
ベアトリス、齢15にしていちばんの失敗だった。
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。
チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。
なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!
こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。
※注:すべてわかった上で自重してません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる