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オフの顔
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「なるほど、あれは所謂『お誘い』というやつだったのですか」
「だからそう言ってるじゃん!ホイホイ引っかかんないでよ、何年生きてんだよ」
この将軍、もしかしたら天然か?そう思わせるほどに、『オフ』の時がポンコツすぎるのだ。
「ですが、人間と天使の間では子供は作れませんよ?」
「そうなん?」
「正確には天使が男、人間が女であればできます」
わけわからんわ!
「子供が作れないのにそのような行動に出るとは、人間はどこか不思議です」
「あなたの思考回路の方が不思議なんだけど?」
こういう話をするためについてきたわけじゃないんだよ!
「それで、将軍はどこへ向かっているの?」
「『娯楽屋』です」
店の名前かとも思ったが、おそらく娯楽を提供する場所……という意味合いなのだろう。
「何か芸でもやってるの?」
「芸……というよりも、愛でにいくと言ったところでしょうか」
「えっ?」
一体どういうことだ?
♦️
それはいい意味で期待を裏切ってきた。目の前に広がる光景を見て私は思わず悶絶する。
だって、そこには……
「もふもふがいっぱいだ!」
とあるお店の中に入るとそこにはさまざまな動物たちがお出迎えしてくれた。猫や犬からモルモットにネズミ、果てにはインコやアヒルまでいた。
「ここは……」
「動物カフェです」
「こんな場所あったのか……」
もっと早く来ればよかった……。
よく見てみると、動物たちは将軍の足元へとたくさん集まっていた。それを見ていた将軍はしゃがんでその動物たちの頭を撫でている。
「なつかれてるね」
「休日ができるたびにきていた結果ですね」
「何回来てんだよ……」
「日頃の疲れをここでいやしてるのんです」
そう言いながら、餌を掌に乗せて食べさせている。その姿を見ていると、どうしても悪い人には感じない。
後ろから見ていて思わず聞きたくなる。なぜ、世界を混乱に陥れようとしている人の仲間が動物たちを撫でているのか、と。
撫でるなとは言わないけど、あまりにも行動が矛盾している……そう思っても仕方ないでしょう?だって、あまりにもイメージに反するんだもん。
動物カフェという名前の通り、ここはカフェなので一応飲み物を注文した。その間にも動物たちになつかれている将軍はしきりに手を動かしている。
「ねえ……」
「どうしました?」
「あなた、本当は何者なの?」
どうしても私にはあの女神の下に仕えるような人には見えなかった。確かにミアさんを殺そうとしたこともあった……が、今思えば不自然なところだらけだ。
まず第一に殺意を感じなかった。そして、わざわざ私の方を見たこと……。
どんなに考えても答えは出ないから、本人に聞いた。
「ただのしがない天使ですよ」
「……あっそ」
「ただ、周りと比べて『穏健派』というだけです」
「周りはもっと過激なんだ……」
気にしたところでどうしようもない。この人は敵で世界の敵だ。
敵に情けをかけてしまうのは今世の私の悪い癖だ。これなら前世の性格だった方がマシかもしれない。
死にたくないと言って力をつけたのに、情けをかけていたら本末転倒だ。気を引き締めていかないと、これからは特に大変そうだ。
敵に情けはいらない。
そんなことを考えていると、将軍が一匹の子犬を抱き上げて、こちらを向いた。
「あなたも撫でますか?」
「……!」
子犬を見るとつぶらな瞳がこちらを見つめている。将軍は相変わらずの無表情でこちらに子犬を差し出していた。
(もう……やめてよね)
そう思いながら、私は子犬を撫でた。キャンキャン鳴いているが、嫌がっているわけではなさそう。
良かったー、これでめちゃくちゃ抵抗されてたら私内心ボロボロになるところだった。
「やっぱ可愛いって正義だわ」
♦️
「休暇も取れたので、そろそろ職務に戻ります」
ほんの十数分だけ店にいたかと思えば、外に出て唐突に将軍はそんなことを言う。
「もう?まだ少ししか休めていないじゃない」
「これでも国王のようなものなので。では、今日は楽しかったです」
そう言って将軍は帰っていく。次元移動すればいいものを……将軍はそれをせず、代わりに周りの景色を眺めながらゆっくりとした歩きで本城のある方向へ向かって帰っていった。
「……私も帰るか」
そう思い、まだ日は高いが、私も自分が泊まっている宿に帰ることにした。
「だからそう言ってるじゃん!ホイホイ引っかかんないでよ、何年生きてんだよ」
この将軍、もしかしたら天然か?そう思わせるほどに、『オフ』の時がポンコツすぎるのだ。
「ですが、人間と天使の間では子供は作れませんよ?」
「そうなん?」
「正確には天使が男、人間が女であればできます」
わけわからんわ!
「子供が作れないのにそのような行動に出るとは、人間はどこか不思議です」
「あなたの思考回路の方が不思議なんだけど?」
こういう話をするためについてきたわけじゃないんだよ!
「それで、将軍はどこへ向かっているの?」
「『娯楽屋』です」
店の名前かとも思ったが、おそらく娯楽を提供する場所……という意味合いなのだろう。
「何か芸でもやってるの?」
「芸……というよりも、愛でにいくと言ったところでしょうか」
「えっ?」
一体どういうことだ?
♦️
それはいい意味で期待を裏切ってきた。目の前に広がる光景を見て私は思わず悶絶する。
だって、そこには……
「もふもふがいっぱいだ!」
とあるお店の中に入るとそこにはさまざまな動物たちがお出迎えしてくれた。猫や犬からモルモットにネズミ、果てにはインコやアヒルまでいた。
「ここは……」
「動物カフェです」
「こんな場所あったのか……」
もっと早く来ればよかった……。
よく見てみると、動物たちは将軍の足元へとたくさん集まっていた。それを見ていた将軍はしゃがんでその動物たちの頭を撫でている。
「なつかれてるね」
「休日ができるたびにきていた結果ですね」
「何回来てんだよ……」
「日頃の疲れをここでいやしてるのんです」
そう言いながら、餌を掌に乗せて食べさせている。その姿を見ていると、どうしても悪い人には感じない。
後ろから見ていて思わず聞きたくなる。なぜ、世界を混乱に陥れようとしている人の仲間が動物たちを撫でているのか、と。
撫でるなとは言わないけど、あまりにも行動が矛盾している……そう思っても仕方ないでしょう?だって、あまりにもイメージに反するんだもん。
動物カフェという名前の通り、ここはカフェなので一応飲み物を注文した。その間にも動物たちになつかれている将軍はしきりに手を動かしている。
「ねえ……」
「どうしました?」
「あなた、本当は何者なの?」
どうしても私にはあの女神の下に仕えるような人には見えなかった。確かにミアさんを殺そうとしたこともあった……が、今思えば不自然なところだらけだ。
まず第一に殺意を感じなかった。そして、わざわざ私の方を見たこと……。
どんなに考えても答えは出ないから、本人に聞いた。
「ただのしがない天使ですよ」
「……あっそ」
「ただ、周りと比べて『穏健派』というだけです」
「周りはもっと過激なんだ……」
気にしたところでどうしようもない。この人は敵で世界の敵だ。
敵に情けをかけてしまうのは今世の私の悪い癖だ。これなら前世の性格だった方がマシかもしれない。
死にたくないと言って力をつけたのに、情けをかけていたら本末転倒だ。気を引き締めていかないと、これからは特に大変そうだ。
敵に情けはいらない。
そんなことを考えていると、将軍が一匹の子犬を抱き上げて、こちらを向いた。
「あなたも撫でますか?」
「……!」
子犬を見るとつぶらな瞳がこちらを見つめている。将軍は相変わらずの無表情でこちらに子犬を差し出していた。
(もう……やめてよね)
そう思いながら、私は子犬を撫でた。キャンキャン鳴いているが、嫌がっているわけではなさそう。
良かったー、これでめちゃくちゃ抵抗されてたら私内心ボロボロになるところだった。
「やっぱ可愛いって正義だわ」
♦️
「休暇も取れたので、そろそろ職務に戻ります」
ほんの十数分だけ店にいたかと思えば、外に出て唐突に将軍はそんなことを言う。
「もう?まだ少ししか休めていないじゃない」
「これでも国王のようなものなので。では、今日は楽しかったです」
そう言って将軍は帰っていく。次元移動すればいいものを……将軍はそれをせず、代わりに周りの景色を眺めながらゆっくりとした歩きで本城のある方向へ向かって帰っていった。
「……私も帰るか」
そう思い、まだ日は高いが、私も自分が泊まっている宿に帰ることにした。
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