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オーバーパワー

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「うわ……これ嘘でしょ?」

 帰った後、回収した資料全てに目を通して情報を探ろうとしていたところ、あることに気づいた。

「明らかに予算の欄違うじゃん……これじゃ国家運営できなくない?」

 その他の資料にも目を通してみたが、明らかに間違った数字が記載されていた。

「これってどういうこと?」

 《おそらく、それは偽の資料でしょう》

「もしかして……まんまと騙された?」

 《肯定します》

 いや、確かに思い返せば不自然だよな……誰も入ってはいけないと言われているのはまだわかるが、そもそも論廊下に国の重要な資料をほったらかしにするわけないのだ。

「あぁ……なんであの時確認しなかったんだ……!」

 くそう!いつもならちゃんと確認したのに!資料の量に目が眩んで確認しなかったのが悪かった。

「振り出しに戻っちゃったな。むしろ、マイナスかも?」

 資料がなくなったのには流石に気づかれただろう。だから、国の情報を盗もうとしている輩がいると相手にバレたわけだ。

「絶対警戒されてるじゃん」

 幸いなことに警備がいくら増えようとネルネの能力さえあればどうとでもできる。よって、今考えるべきは……

「あーもう、疲れた……」

 《しばらく休まれてはいかがですか》

「そうさせてもらうわ」

 一旦この話は忘れよう。

「っと、体がちょっと動くようになってきたかな?」

 見ると、手が震えながもしっかり動いた。

「もう少し……動け!」

 震える手を持ち上げて目の前に持ってくる。

「まだぎこちないけど、動かせた!」

 手を見ても特に死ぬ前と変わった感じはしなかった。

「立てたりしないかな?」

 足に力を入れてみると、こちらも痙攣するかのように震えて動かしにくい。だが、全力で力を入れれば立てそうだ。

 横になっていた体を起こし、手を使ってベッドから降りようとする。

 その時、

「え……?」

 手を置いて支えにしていた壁が急に抜けたのだ。

「ありゃまあ、手形が」

 って、どういうこと?かなり脆かったのかな?

 そう思って違うところを触れる。すると、再びドゴンッと音を立てて穴ができた。

「あ、あれぇ?」

 《力を入れすぎです》

「嘘だ!?私そんなに力入れてないよ!というか立ち上がるだけに家破壊するような力は必要ないでしょ!?」

 《一度死んで蘇ったことにより、体がより頑丈に強化されているのをお忘れですか?》

「いや、忘れてはないけど……」

 こうはならないでしょ!

 《おそらく現在の状態では、自身の肉体より柔らかい物質は全て軟く感じるはずです》

「豆腐みたいに簡単に壊せるって?」

 《肯定します》

 終わった……。

「ちょっと待って、それじゃあ日常生活にめちゃくちゃ不便じゃない!?」

 私の肉体どんだけ頑丈になってんの?

「そんなの知ったこっちゃないわ!」

 足を地面につけて支えなしで立ってみた。足は小鹿のようにプルプルと震えて、一歩を踏み出すのにかなりの時間がかかったが、

「歩けた!」

 そう自分の足を見て嬉しそうに叫んだはいいものの、目の前にぽとんと何かが落ちる音して、前を見る。

 そこには手に花束を持っていたであろうミサリーが立っていた。ミサリーはお見舞い毎日ここに来てくれている。

「お嬢様!歩けるようになったんですか?」

「まあ、まだまだ大変だけどね……」

「お嬢様!おめでとうございますー!」

「あ、ちょっ……」

 ミサリーが嬉しさのあまり私に抱きついてくる。もちろん、小鹿のような私の足にはその勢いを耐え切れるほどの力はなく、後ろへと飛んでいき……

「きゃっ!」

「あぇ?」

 さっきまで私が寝ていたはずのベッド。フカっと着地するはずが、私の力が強すぎてそうは行かずに突き抜けてしまった。

「ああ!?」

 二人して二階から一階に落っこちた。

「え?え?」

「ミサリー……どうするのこれ!?」

「え、私?」

 あんただよ!

 《訂正、突き抜けたのは個体名ベアトリスです》

 うっさいわ!

「何が起きたんですか?ベッドがくりぬけて……」

「一回死んで蘇ったからか、私の体が特殊になっちゃったの」

 そうだ、体を動かすにまあまあ力を込めてたことと体が硬化していることが合わさって、大体の物質が豆腐のように簡単に貫通してしまうようだ。

「地面かたくてよかった……」

 みればフローリングにも穴が空いていたが、その下にある地面は少し凹んだ程度で済んだ。

「何の騒ぎ?」

 一階のその部屋でくつろいでいたのか、レオ君やらミハエルが私の元へ寄ってくる。

「あ、どうも」

「どうもじゃないでしょうが……」

「いや、これは私悪くないもん!」

 むしろ全てにおいて被害者でしょう!?そうでしょう!?

 みんなに呆れた顔をされているが、私は悪くない。

「部屋……変えてもらうか」

「ハイ……」

 とりあえず、貫通してしまった部屋は取り替えてもらうことになった。

 どうにか話を逸らそうと話題を切り替える。

「そ、そういえばライ様はどこに?」

「ライ様?そういえば最近見てないな……ミハエルさん知ってる?」

 ミハエルは少し考えた後に思い出したかのように表情を変える。初めて会った時は基本無表情の人だったのが最近はコロコロと変わるようになったな。

「蘭丸さんが部屋に閉じこもって出てこないと、ずっと心配してたのでもしかしたらそこにいるのかも」

「そっか……蘭丸さんは別に悪くないと思うけどね、洗脳されたのは」

 レオ君とユーリ、そして蘭丸さんは八光の仙人の洗脳を受けて、維持的に反乱軍の味方をしてしまった。蘭丸さんは正義感強そうだから、もしかしたらそれを引きずっているのかもしれない。

「じゃあ、蘭丸さんに会いに行こうか」

「「「は?」」」

「え、ダメ?」

「「「まずは部屋を貫通させないことを覚えてください」」」

「あ、はい……」
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