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ボス(魔王視点)
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魔法により壊された壁は修復し、俺も中に入れてもらうことができた。
「それで、そこにいるフォーマとやらは明らかに人間だが……一体どういうことだ?なぜここに人間が」
「あれー?私も人間ですけど?」
「マレスティーナ、お前は俺の中で人ではない」
「何それ、ひっどーい!」
マレスティーナを無視してずっと目を閉じているフォーマの方を見る。気配で俺が見ているのが伝わるのかフォーマは目を瞑ったまま答えた。
「ん、それは……ってその声、どこかで聞いたことあると思うのだけど」
「む?」
「……ごめん、なんでもない。私は転移でここまできた」
「転移とな?」
転移陣でもあったのだろうか?そうでなければ、この人間もまた転移使いということになる。それだけで、相当な実力者であることははっきりとわかる。
(ふっ、まだ人類も捨てたものではないのかもな)
次の戦争は骨のある戦いになりそうだ。
「古代の転移呪文で緊急で転移陣を作った人がいて、私もその中に入り逃げようとしたけど……」
「転移陣に入れきれずにランダムに飛んでしまったと?」
「ん」
「だが、お前ほどの実力者だ。すぐに人間領に帰還できるのではないか?」
「まだその時じゃない」
そう言って、また読書を始めた。
「ああ、この子の主人が今色々とやっていてね」
「主人?」
「とにかく、この子を見てどう思う?」
どうと言われても、反応に困る。俺は解析鑑定ができるわけではないから、見た感じで実力を測るしかない。
「ふむ……固有の能力まではわからないが素の実力は災害級レベル。魔法とスキル、戦闘経験を踏まえると災害級の中でも中位以上だろう」
「だってさ、フォーマ」
そう言われたフォーマは読書を続けながら、問いかけてくる。
「あなたはどの程度?」
「俺か?』
ちらりとマレスティーナの方を見る。
「最上位……とまではいかんな。だが、分類上ならそこにいるマレスティーナと同じだ」
「それは……」
「一人で、世界を滅ぼせるレベルだ」
そう言い切るとマレスティーナは笑い出す。
「あの時私に負けた小僧が面白いこと言うようになったじゃないか!」
「無論俺はお前に一度負けた。だが、次戦った時、負けるつもりはない」
「奥の手でもあるのかねぇ?」
全てを見通すかのようなその眼力、そして体全身を抜け目なく見られているという違和感が襲ってくる。
おそらくこの女には全て見えているのだろう。
「……こりゃあ、歴代最強の魔王の座、変わるかもな」
歴代最強の魔王は聖戦時から生き残っているただ一人の方だった。何百年間も魔王の座に君臨し続け、何度も勇者を退けてきた先代魔王が、何十年前の勇者との戦いで簡単に負けるはずがない。
「マレスティーナ、お前がやったのか?」
「先代魔王のこと?そりゃあ私じゃないね、あの悪魔さ」
「悪魔……ちっ、あいつか」
「安心しなよ、先代魔王は生きてるからさ」
「なっ!?」
死んではいなかったと?そうなれば、先代とも戦うチャンスがあるかもしれない。
己を強くするためには、常に強者と戦わなければいけないのだ。常に強い人物を相手にすることこそ、強くなる常套手段。
「それにしても、人間でここまでの強者がいるとはな。どうだ、俺を一戦交わさないか?」
そう問いかけるが、フォーマはじっと俺の顔を見つめてくるだけだった。
「やっぱり、私あなたのこと知ってる」
「そう、なのか?俺に人間の知り合いは……少ししかいないぞ?」
「あなたが知らなくても、私は知っているはず……でもどこで?」
フォーマはまた考え込んだ。
フォーマの頭の中は混乱していた。
(魔王を名乗るこの男の声、どこかで聞いたことがある。そして、この男は悪魔について知っていた。さらに言うと、先代魔王……ユーリを倒した悪魔というのは、私たちを襲った悪魔の少女しかいない。そして、その悪魔の少女を気軽に「あいつ」と呼べるような人物は、私の知っている中で一人しかいない)
フォーマの考えはまとまった。
「魔王、改めて自己紹介していい?」
「む?」
いきなりなんだ?
突然本を閉じたフォーマがその場に跪いた。マレスティーナは知っていたのか、平然とフォーマを見つめている。
俺だけが何をしているのかとあたふたしていたら、
「魔王、改め……黒薔薇のリーダー」
「っ!」
「お初にお目にかかる。元黒薔薇情報部門幹部のフォーマ、以後お見知り置きを」
「黒薔薇の幹部……」
黒薔薇という組織は、最初は俺が立ち上げた工作部隊だった。多種族で構成したその舞台は『傀儡』に丸投げし、「好きにしろ」と言って最近は放置していたことを思い出す。
「待て、待ってくれ!黒薔薇は……一体どれほどの規模になっているんだ?」
最初は数名からなる工作部隊だったはずが、いつの間にか『幹部』という概念が生まれるほど巨大になっていたというのか?
「わかんないけど、私が所属していた頃は配下が数百名いた」
「それは、お前の直属だけの?」
「ん」
どれだけ巨大になっているんだ!
「ははは!もしかして知らなかったのかい?それは最高に面白いな!」
「くっ……俺は魔王業務が忙しいんだ。いちいち黒薔薇の管理などしていられるか。だから『傀儡』に押し付けていたのに……」
……今度、傀儡の元に会いに行く必要ができたな。全く、俺の預かり知らぬところで一体何が起きているというのやら……。
「それで、そこにいるフォーマとやらは明らかに人間だが……一体どういうことだ?なぜここに人間が」
「あれー?私も人間ですけど?」
「マレスティーナ、お前は俺の中で人ではない」
「何それ、ひっどーい!」
マレスティーナを無視してずっと目を閉じているフォーマの方を見る。気配で俺が見ているのが伝わるのかフォーマは目を瞑ったまま答えた。
「ん、それは……ってその声、どこかで聞いたことあると思うのだけど」
「む?」
「……ごめん、なんでもない。私は転移でここまできた」
「転移とな?」
転移陣でもあったのだろうか?そうでなければ、この人間もまた転移使いということになる。それだけで、相当な実力者であることははっきりとわかる。
(ふっ、まだ人類も捨てたものではないのかもな)
次の戦争は骨のある戦いになりそうだ。
「古代の転移呪文で緊急で転移陣を作った人がいて、私もその中に入り逃げようとしたけど……」
「転移陣に入れきれずにランダムに飛んでしまったと?」
「ん」
「だが、お前ほどの実力者だ。すぐに人間領に帰還できるのではないか?」
「まだその時じゃない」
そう言って、また読書を始めた。
「ああ、この子の主人が今色々とやっていてね」
「主人?」
「とにかく、この子を見てどう思う?」
どうと言われても、反応に困る。俺は解析鑑定ができるわけではないから、見た感じで実力を測るしかない。
「ふむ……固有の能力まではわからないが素の実力は災害級レベル。魔法とスキル、戦闘経験を踏まえると災害級の中でも中位以上だろう」
「だってさ、フォーマ」
そう言われたフォーマは読書を続けながら、問いかけてくる。
「あなたはどの程度?」
「俺か?』
ちらりとマレスティーナの方を見る。
「最上位……とまではいかんな。だが、分類上ならそこにいるマレスティーナと同じだ」
「それは……」
「一人で、世界を滅ぼせるレベルだ」
そう言い切るとマレスティーナは笑い出す。
「あの時私に負けた小僧が面白いこと言うようになったじゃないか!」
「無論俺はお前に一度負けた。だが、次戦った時、負けるつもりはない」
「奥の手でもあるのかねぇ?」
全てを見通すかのようなその眼力、そして体全身を抜け目なく見られているという違和感が襲ってくる。
おそらくこの女には全て見えているのだろう。
「……こりゃあ、歴代最強の魔王の座、変わるかもな」
歴代最強の魔王は聖戦時から生き残っているただ一人の方だった。何百年間も魔王の座に君臨し続け、何度も勇者を退けてきた先代魔王が、何十年前の勇者との戦いで簡単に負けるはずがない。
「マレスティーナ、お前がやったのか?」
「先代魔王のこと?そりゃあ私じゃないね、あの悪魔さ」
「悪魔……ちっ、あいつか」
「安心しなよ、先代魔王は生きてるからさ」
「なっ!?」
死んではいなかったと?そうなれば、先代とも戦うチャンスがあるかもしれない。
己を強くするためには、常に強者と戦わなければいけないのだ。常に強い人物を相手にすることこそ、強くなる常套手段。
「それにしても、人間でここまでの強者がいるとはな。どうだ、俺を一戦交わさないか?」
そう問いかけるが、フォーマはじっと俺の顔を見つめてくるだけだった。
「やっぱり、私あなたのこと知ってる」
「そう、なのか?俺に人間の知り合いは……少ししかいないぞ?」
「あなたが知らなくても、私は知っているはず……でもどこで?」
フォーマはまた考え込んだ。
フォーマの頭の中は混乱していた。
(魔王を名乗るこの男の声、どこかで聞いたことがある。そして、この男は悪魔について知っていた。さらに言うと、先代魔王……ユーリを倒した悪魔というのは、私たちを襲った悪魔の少女しかいない。そして、その悪魔の少女を気軽に「あいつ」と呼べるような人物は、私の知っている中で一人しかいない)
フォーマの考えはまとまった。
「魔王、改めて自己紹介していい?」
「む?」
いきなりなんだ?
突然本を閉じたフォーマがその場に跪いた。マレスティーナは知っていたのか、平然とフォーマを見つめている。
俺だけが何をしているのかとあたふたしていたら、
「魔王、改め……黒薔薇のリーダー」
「っ!」
「お初にお目にかかる。元黒薔薇情報部門幹部のフォーマ、以後お見知り置きを」
「黒薔薇の幹部……」
黒薔薇という組織は、最初は俺が立ち上げた工作部隊だった。多種族で構成したその舞台は『傀儡』に丸投げし、「好きにしろ」と言って最近は放置していたことを思い出す。
「待て、待ってくれ!黒薔薇は……一体どれほどの規模になっているんだ?」
最初は数名からなる工作部隊だったはずが、いつの間にか『幹部』という概念が生まれるほど巨大になっていたというのか?
「わかんないけど、私が所属していた頃は配下が数百名いた」
「それは、お前の直属だけの?」
「ん」
どれだけ巨大になっているんだ!
「ははは!もしかして知らなかったのかい?それは最高に面白いな!」
「くっ……俺は魔王業務が忙しいんだ。いちいち黒薔薇の管理などしていられるか。だから『傀儡』に押し付けていたのに……」
……今度、傀儡の元に会いに行く必要ができたな。全く、俺の預かり知らぬところで一体何が起きているというのやら……。
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