355 / 504
洗脳
しおりを挟む
「はい?」
「兄妹ですから、そんなに冷め切った会話をするのではなく仲良くしてほしいのです!」
いきなり冒険者組合へ来たと思ったら予想の斜め上なことを言われたが……蘭丸さんのほうを見てもにこりと笑顔で返すだけだった。
「いやいやいや、私にはやるべきことが……」
「でも、今暇そうでしたよ?」
「ぐぬっ……」
反乱軍の侵攻を止めることについて考えたんです!決して暇だったわけじゃないです!
《否定します》
しないで!?
「とにかく、せっかく義妹殿が遠くの国から来てくださったんですもの、少しは仲良くしましょうよ」
そう言って、私の肩に腕を巻いてくる。
馴れ馴れしい感じもするが、馴れ馴れしいのではなくどちらかというとこの人はマイペースなのだろう。
マイペースな人は嫌いじゃないため、別にいいのだが……。
「あと、後ろの方たちも紹介してくださらない?特に後ろの獣人の方たち」
ライ様は獣人を見たことないようで、触りたそうにうずうずしていた。
「わかります……私も初めて見たときなんかもう大興奮でしたよ」
「そうよね!私がおかしいわけじゃないのよね!ほれ蘭丸、私も言った通りじゃない」
控えていた蘭丸さんは悔しそうな顔をしていた。
「なにかかけてたんですか?」
「私が獣人を見て興奮していたのを、横目でため息ついてきたんです!あんな可愛さの塊みたいな存在相手によく平静を装えますね蘭丸」
「いや、たとえ可愛くても同性でござるから……」
「今可愛いと認めたわね?」
「いえ、違うでござる!」
大変二人は仲がよろしいようで何よりだ。
「まあ?私には旦那様がいるからいいのだけど。蘭丸もそろそろ相手探したら?このままじゃ生涯独身よ?」
その言葉は蘭丸さんのハートにダイレクトに直撃したようで、ぐぬぬとうなりながら倒れこんでいる。
「このお兄さん大丈夫?」
「多分?」
ユーリの憐れなものを見るかのような目を見てライ様は爆笑していた。
「改めて、自己紹介するわお三方。私は磊……ライと呼んでね」
「ボクはユーリだよ!」
「レオです、よろしくお願いします」
「きゃあ可愛い!もう最高!義妹殿も美人だけど、二人も超美形じゃん!」
口調崩れてますよライ様。
「っと、義妹殿と一緒に行動しているということは二人も護衛なのかしら?」
「あー、護衛ではないですね。友達です」
「にしても、よくこんな美形を見つけてきますね。もしかして、義妹殿は面食いですか?」
なっ!?
「面食いじゃないです!」
今は……。
「それはそうと、お兄様と仲良くしろと言われても、私はどうすればいいんですか?」
「私にもわからないわ。だけど、そこは兄妹パワーで何とか……」
「兄妹パワーがないから仲良くないんですけど?」
「とにかく!私は旦那様と義妹殿が会話している姿を見ると心が痛むんです!二人とも真顔でかしこまった口調で話しちゃって!そんなの兄妹のあるべき姿ではありません!」
ライ様はそう念押ししてくる。多分、私が暗いことを言ってしまったから気を使ってくれているんだろう。
「まあ、善処します」
♦↓???視点↓
面白いものを見た。妹の顔だ。
「あんな髪色の家族、よく一発でわかったなー」
我ながらすごい。自身の髪の毛を黒染めしながら鏡を見る。
顔立ちも少し似ているが、それだけだ。
「やはり兄妹とは面白い」
会ったことがないのにもかかわらず、お互い一発で分かるのだから。だが、今は妹にかまっていられる時期ではない。
「まだ、だな……」
足りない、まだ今のままじゃ足りないのだ。
「犠牲が」
……私は今何を言った?犠牲が足りないと?
「違う、そうじゃない。私が望んでいるのはそういうものじゃない!」
唯一燃えていなかった自分の部屋でそう叫ぶ。だが、独り言だったはずのそれに返答が返ってきた。
「いいや、君が望んだのはまさにそれだ」
振り向けば、どこから現れたのか、一人の青年がいた。
「君は力を望んでいたはずだ。どうだい?幸せだろう?」
「違う……私は望んでいないぞ仙人め……」
次の瞬間には頭が狂いそうになるほどの激痛が全身を襲った。
「ぐっ……!」
「君の願望なんて関係ないけどね。『邪仙』の名のもとに、君は僕の言うことだけを聞いていればいいのだ」
一種の洗脳というものか、痛みが引いた頃にはすっかり考え方も変わっていた。
「ああ、そうだな。変えるには犠牲が必要だ」
「よし、これでいいかな」
邪仙は呟く。
「手駒は定期的に洗脳しないとね」
友との約束を果たすために、これは必要不可欠なことなのだ。
「それにしても、ベアトリスか……面白くなりそうだ」
黒薔薇の組織に協力していたあの少女……高祖の悪魔が倒せなかったのだ。
「もし仮に、運ではなく実力が為した結果だとしたら、僕でも簡単には倒せないだろう」
だが、ベアトリスに対する対抗手段はもう用意できた。
「あとは戦場をかき乱してくれさえすれば完璧だ」
それで計画は完璧に終わる。
「『真獣』のほうも計画を始めたころだし、悪魔の軍勢もそろそろいくつかの国を支配したころ合いかな?」
全世界を黒薔薇と悪魔がかき乱している。
「まさに戦乱の世だ!改革の時だ!」
待っててくれ友よ。すぐに殺してやるからな。
「兄妹ですから、そんなに冷め切った会話をするのではなく仲良くしてほしいのです!」
いきなり冒険者組合へ来たと思ったら予想の斜め上なことを言われたが……蘭丸さんのほうを見てもにこりと笑顔で返すだけだった。
「いやいやいや、私にはやるべきことが……」
「でも、今暇そうでしたよ?」
「ぐぬっ……」
反乱軍の侵攻を止めることについて考えたんです!決して暇だったわけじゃないです!
《否定します》
しないで!?
「とにかく、せっかく義妹殿が遠くの国から来てくださったんですもの、少しは仲良くしましょうよ」
そう言って、私の肩に腕を巻いてくる。
馴れ馴れしい感じもするが、馴れ馴れしいのではなくどちらかというとこの人はマイペースなのだろう。
マイペースな人は嫌いじゃないため、別にいいのだが……。
「あと、後ろの方たちも紹介してくださらない?特に後ろの獣人の方たち」
ライ様は獣人を見たことないようで、触りたそうにうずうずしていた。
「わかります……私も初めて見たときなんかもう大興奮でしたよ」
「そうよね!私がおかしいわけじゃないのよね!ほれ蘭丸、私も言った通りじゃない」
控えていた蘭丸さんは悔しそうな顔をしていた。
「なにかかけてたんですか?」
「私が獣人を見て興奮していたのを、横目でため息ついてきたんです!あんな可愛さの塊みたいな存在相手によく平静を装えますね蘭丸」
「いや、たとえ可愛くても同性でござるから……」
「今可愛いと認めたわね?」
「いえ、違うでござる!」
大変二人は仲がよろしいようで何よりだ。
「まあ?私には旦那様がいるからいいのだけど。蘭丸もそろそろ相手探したら?このままじゃ生涯独身よ?」
その言葉は蘭丸さんのハートにダイレクトに直撃したようで、ぐぬぬとうなりながら倒れこんでいる。
「このお兄さん大丈夫?」
「多分?」
ユーリの憐れなものを見るかのような目を見てライ様は爆笑していた。
「改めて、自己紹介するわお三方。私は磊……ライと呼んでね」
「ボクはユーリだよ!」
「レオです、よろしくお願いします」
「きゃあ可愛い!もう最高!義妹殿も美人だけど、二人も超美形じゃん!」
口調崩れてますよライ様。
「っと、義妹殿と一緒に行動しているということは二人も護衛なのかしら?」
「あー、護衛ではないですね。友達です」
「にしても、よくこんな美形を見つけてきますね。もしかして、義妹殿は面食いですか?」
なっ!?
「面食いじゃないです!」
今は……。
「それはそうと、お兄様と仲良くしろと言われても、私はどうすればいいんですか?」
「私にもわからないわ。だけど、そこは兄妹パワーで何とか……」
「兄妹パワーがないから仲良くないんですけど?」
「とにかく!私は旦那様と義妹殿が会話している姿を見ると心が痛むんです!二人とも真顔でかしこまった口調で話しちゃって!そんなの兄妹のあるべき姿ではありません!」
ライ様はそう念押ししてくる。多分、私が暗いことを言ってしまったから気を使ってくれているんだろう。
「まあ、善処します」
♦↓???視点↓
面白いものを見た。妹の顔だ。
「あんな髪色の家族、よく一発でわかったなー」
我ながらすごい。自身の髪の毛を黒染めしながら鏡を見る。
顔立ちも少し似ているが、それだけだ。
「やはり兄妹とは面白い」
会ったことがないのにもかかわらず、お互い一発で分かるのだから。だが、今は妹にかまっていられる時期ではない。
「まだ、だな……」
足りない、まだ今のままじゃ足りないのだ。
「犠牲が」
……私は今何を言った?犠牲が足りないと?
「違う、そうじゃない。私が望んでいるのはそういうものじゃない!」
唯一燃えていなかった自分の部屋でそう叫ぶ。だが、独り言だったはずのそれに返答が返ってきた。
「いいや、君が望んだのはまさにそれだ」
振り向けば、どこから現れたのか、一人の青年がいた。
「君は力を望んでいたはずだ。どうだい?幸せだろう?」
「違う……私は望んでいないぞ仙人め……」
次の瞬間には頭が狂いそうになるほどの激痛が全身を襲った。
「ぐっ……!」
「君の願望なんて関係ないけどね。『邪仙』の名のもとに、君は僕の言うことだけを聞いていればいいのだ」
一種の洗脳というものか、痛みが引いた頃にはすっかり考え方も変わっていた。
「ああ、そうだな。変えるには犠牲が必要だ」
「よし、これでいいかな」
邪仙は呟く。
「手駒は定期的に洗脳しないとね」
友との約束を果たすために、これは必要不可欠なことなのだ。
「それにしても、ベアトリスか……面白くなりそうだ」
黒薔薇の組織に協力していたあの少女……高祖の悪魔が倒せなかったのだ。
「もし仮に、運ではなく実力が為した結果だとしたら、僕でも簡単には倒せないだろう」
だが、ベアトリスに対する対抗手段はもう用意できた。
「あとは戦場をかき乱してくれさえすれば完璧だ」
それで計画は完璧に終わる。
「『真獣』のほうも計画を始めたころだし、悪魔の軍勢もそろそろいくつかの国を支配したころ合いかな?」
全世界を黒薔薇と悪魔がかき乱している。
「まさに戦乱の世だ!改革の時だ!」
待っててくれ友よ。すぐに殺してやるからな。
0
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在三巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる