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聞き耳
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「いやぁ、Sランク冒険者の方々いて助かりました!本当にありがとうございました」
そう言ってお辞儀をしてくる先ほどの商人。怒っている時の様子と比べるとかなり印象が違う。
「東の島国には大事な取引相手がいたので、船が止まってしまうと困るんですよねー」
商人は信用が命なので、約束の時間は絶対厳守。ちょっとでも遅れたら信用が下がる。私は商人には向いてなさそうだな。
そんなことを考えながら、準備が進められる船を眺める。その時、
「ブリェールで一回教会に寄っていいですか?」
と、ミハエルが突然言い出した。
「何かあるの?」
「いえ、特別なことは……ただ、船旅の平穏を願いにいくだけです」
「へー……結構熱心なんですね」
そういうと、慣れたように教会へとミハエルは歩いて行った。東の島国へ行くために何度もこの街を利用したのだろうが……。
「うーん、なんか気になるんだよなー」
いやまぁ……ミハエルは明らかに変人である。路地裏の中に店を作って、内戦中の東の島国に行こうとしたり……さらには特別待遇を受けているかの如き衛兵の対応。
うん、不思議な人だ。
「みんなでつけてみよう。どうせ、することないんだし……」
「わかりました」
「「はーい!」」
と三人の返事を聞いたところで、早速後ろにつけていく。単純に後ろからくっついていくとバレてしまうので、屋根の上から渡っていく。
「うーん、なんか悪いことしてる気分……」
だが、依頼者について調べることは重要だからね。それに、出航までまだ時間がかかりそうだから、それまでの間だけだから。
そうして後ろを追いかけている間に、ミハエルは教会までたどり着いたようで、中に入って行った。ここの教会もかなりでかいようで、大きなベルが上の方についていて、十二時になったらなる鐘のようだ。
そして、教会の天井にはガラス張りになった部分があり、そこから光が中に入り込んで幻想的な感じになっている。私たちもそこからちらりと中を覗くと、誰もいない祈りの間をスタスタ歩くミハエルがいた。
「みんなあまり乗り出さないようにねー」
キツネ化したユーリをレオくんが抱き抱え、一緒に覗く。その横でミサリーも顔を乗り出している。
私は、少し試したかった視界共有をやってみる。大剣の視界を私の視界にリンクできるように、大剣を取り出して魔力を流す。
目を瞑って黒くなった視界に風景を思い浮かべてみるが、なかなかうまくいかない。
「うーん、まだダメそうかな~?」
しょうがないので、大剣をしまい私も身を乗り出してみた。
すると、そこには片膝をついたミハエルがいた。綺麗なその所作は慣れきった動きだった。
と、観察している間に奥の木製のドアからシスターの格好をした老けた女性がやってきて、ミハエルに話しかけてきた。
なんの会話をしているのかはよくわからないが、それでも見た感じシスターもミハエルには頭が上がらない様子を見せている。
何やら軽くお辞儀をしていて、それに対してミハエルは手を振りながら止めるようにおそらく言っているのだろう。
「ファー……なんかすごい……」
何がどうなっているのかはよくわからないが、ミハエルはこの街ではまあまあな影響力を持っていそうだ。
そうしているうちに、ミハエルがシスターに連れられて奥の部屋へと案内されていく。
「ここからじゃもうみれないよ!」
「どうしようかねー……」
考えた末、ユーリを中へ入れるという結論になった。どうせ誰もいないし、上から投げ入れてしまおう!
というわけで、ガラスに少しだけ穴を開けてユーリを中に入れさせる。キツネ状態だから疑われはしない……はず。
ガラスに関しては後で直しておこう。
「行ってきまーす!」
元気よく飛び降りたユーリはくるりと綺麗に着地し、木製のドアへ近づいていく。ガラスに穴を開けたからか、音がこっちにも少し響いてくる。
元々反響しやすいつくりだからね。
ユーリは聞き耳を立てつつ、こちらのことも確認してくる。
特に耳がいいレオ君はもう少しで聞こえそうなのか真剣に、眉を顰めて聞き耳を立てている。
と、聞き耳を立てていたその時だった。
ゴーン、と鐘の音が鳴り響いた。
十二時になったのだ。
「わ!?」
耳を澄ましていたせいか、レオ君にはそれが大音量で聞こえたらしく、バランスを崩していた。
「あっレオ君!」
ガラスに思いっきりぶつかりそうになっているレオ君を引っ張り上げようと手を伸ばすが、その時私も足を引っ掛けて転んでしまい、さらにはそれを助けようと手を伸ばしたミサリーの腕を引っ張って全員でガラスを割って下へと落っこちていってしまった。
落下した瞬間に私は魔法を発動し、ガラスの天井を修復する。それと同時に木製のドアが開いて、そこからシスターが顔を出した。
その背後にはミハエルの姿があった。
「みなさん、どうしてここに?」
「そろそろ終わったかなって思って迎えにきたんだよ。ほら、護衛だしさ」
「そうですか……でも、何やら何かが割れる音が……」
「気のせいだよ!ほら、どこも割れてないでしょ!?」
そう私がいうと、ミハエルが辺りを見渡して、確かに、と納得する。
「では、そろそろ戻りましょうか」
「う、うん……」
ミハエルがシスターに手を振り、私たちの方へ歩いてくる。
そして、一足先に教会をでた。私たちも教会を出て、気づかれない程度の小声で、ユーリに話を聞いた。
「何があったの?」
「うーんと……なんか、天使がどうのこうのって言ってたよ」
そう言ってお辞儀をしてくる先ほどの商人。怒っている時の様子と比べるとかなり印象が違う。
「東の島国には大事な取引相手がいたので、船が止まってしまうと困るんですよねー」
商人は信用が命なので、約束の時間は絶対厳守。ちょっとでも遅れたら信用が下がる。私は商人には向いてなさそうだな。
そんなことを考えながら、準備が進められる船を眺める。その時、
「ブリェールで一回教会に寄っていいですか?」
と、ミハエルが突然言い出した。
「何かあるの?」
「いえ、特別なことは……ただ、船旅の平穏を願いにいくだけです」
「へー……結構熱心なんですね」
そういうと、慣れたように教会へとミハエルは歩いて行った。東の島国へ行くために何度もこの街を利用したのだろうが……。
「うーん、なんか気になるんだよなー」
いやまぁ……ミハエルは明らかに変人である。路地裏の中に店を作って、内戦中の東の島国に行こうとしたり……さらには特別待遇を受けているかの如き衛兵の対応。
うん、不思議な人だ。
「みんなでつけてみよう。どうせ、することないんだし……」
「わかりました」
「「はーい!」」
と三人の返事を聞いたところで、早速後ろにつけていく。単純に後ろからくっついていくとバレてしまうので、屋根の上から渡っていく。
「うーん、なんか悪いことしてる気分……」
だが、依頼者について調べることは重要だからね。それに、出航までまだ時間がかかりそうだから、それまでの間だけだから。
そうして後ろを追いかけている間に、ミハエルは教会までたどり着いたようで、中に入って行った。ここの教会もかなりでかいようで、大きなベルが上の方についていて、十二時になったらなる鐘のようだ。
そして、教会の天井にはガラス張りになった部分があり、そこから光が中に入り込んで幻想的な感じになっている。私たちもそこからちらりと中を覗くと、誰もいない祈りの間をスタスタ歩くミハエルがいた。
「みんなあまり乗り出さないようにねー」
キツネ化したユーリをレオくんが抱き抱え、一緒に覗く。その横でミサリーも顔を乗り出している。
私は、少し試したかった視界共有をやってみる。大剣の視界を私の視界にリンクできるように、大剣を取り出して魔力を流す。
目を瞑って黒くなった視界に風景を思い浮かべてみるが、なかなかうまくいかない。
「うーん、まだダメそうかな~?」
しょうがないので、大剣をしまい私も身を乗り出してみた。
すると、そこには片膝をついたミハエルがいた。綺麗なその所作は慣れきった動きだった。
と、観察している間に奥の木製のドアからシスターの格好をした老けた女性がやってきて、ミハエルに話しかけてきた。
なんの会話をしているのかはよくわからないが、それでも見た感じシスターもミハエルには頭が上がらない様子を見せている。
何やら軽くお辞儀をしていて、それに対してミハエルは手を振りながら止めるようにおそらく言っているのだろう。
「ファー……なんかすごい……」
何がどうなっているのかはよくわからないが、ミハエルはこの街ではまあまあな影響力を持っていそうだ。
そうしているうちに、ミハエルがシスターに連れられて奥の部屋へと案内されていく。
「ここからじゃもうみれないよ!」
「どうしようかねー……」
考えた末、ユーリを中へ入れるという結論になった。どうせ誰もいないし、上から投げ入れてしまおう!
というわけで、ガラスに少しだけ穴を開けてユーリを中に入れさせる。キツネ状態だから疑われはしない……はず。
ガラスに関しては後で直しておこう。
「行ってきまーす!」
元気よく飛び降りたユーリはくるりと綺麗に着地し、木製のドアへ近づいていく。ガラスに穴を開けたからか、音がこっちにも少し響いてくる。
元々反響しやすいつくりだからね。
ユーリは聞き耳を立てつつ、こちらのことも確認してくる。
特に耳がいいレオ君はもう少しで聞こえそうなのか真剣に、眉を顰めて聞き耳を立てている。
と、聞き耳を立てていたその時だった。
ゴーン、と鐘の音が鳴り響いた。
十二時になったのだ。
「わ!?」
耳を澄ましていたせいか、レオ君にはそれが大音量で聞こえたらしく、バランスを崩していた。
「あっレオ君!」
ガラスに思いっきりぶつかりそうになっているレオ君を引っ張り上げようと手を伸ばすが、その時私も足を引っ掛けて転んでしまい、さらにはそれを助けようと手を伸ばしたミサリーの腕を引っ張って全員でガラスを割って下へと落っこちていってしまった。
落下した瞬間に私は魔法を発動し、ガラスの天井を修復する。それと同時に木製のドアが開いて、そこからシスターが顔を出した。
その背後にはミハエルの姿があった。
「みなさん、どうしてここに?」
「そろそろ終わったかなって思って迎えにきたんだよ。ほら、護衛だしさ」
「そうですか……でも、何やら何かが割れる音が……」
「気のせいだよ!ほら、どこも割れてないでしょ!?」
そう私がいうと、ミハエルが辺りを見渡して、確かに、と納得する。
「では、そろそろ戻りましょうか」
「う、うん……」
ミハエルがシスターに手を振り、私たちの方へ歩いてくる。
そして、一足先に教会をでた。私たちも教会を出て、気づかれない程度の小声で、ユーリに話を聞いた。
「何があったの?」
「うーんと……なんか、天使がどうのこうのって言ってたよ」
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