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ネームバリュー
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ブリェールの街は港町として長らく栄えてきた。貿易から漁……宿場町としても栄えているブリェールには、多くの店が立ち並んでいることから、人も集まりやすい。
「ここに店を構えたらいいのに……」
「お金稼ぎでやってはいないので」
あくまで私たちの目的地は日ノ本なので、ここには長く留まることはないだろう。栄えていると言った通り、馬車の通行口には長蛇の列ができていた。
「これを並ぶの?」
「かなり時間がかかりそうですね……」
そう思って長くなりそうだと、覚悟を決めていたら、
「みなさんはここでお待ちください」
と、ミハエルが馬車を降りスタスタ走っていく。一応護衛として、私もついていく……というのは嘘で、何をするつもりなのか気になったからついていく。
すると、ミハエルは衛兵の元までかけていき、
何かを衛兵に見せた。その時の衛兵の表情を言葉で表すなら、目玉が飛び出たが一番正しい表現方法になることだろう。
実際に飛び出てしまうのではないかと思うくらい、目を丸くしていた。そして、かしこまったようにぺこぺこと頭を下げていた。
それを目にして呆然としている私に気付いたのか、ミハエルがこちらへ戻ってくる。
「みなさん、馬車から荷物をとってください」
「馬車本体は?」
「後で回収に来てくれるようです」
一体何をしたのか……もしかして私はとんでもない人の護衛になってしまったのではないだろうか?
馬車の中から荷物を取り出し、それらを一度異納庫にしまう。
「盗賊は置いておきましょう」
人は流石に収納できないのでね……。そして、私たちは馬車で何時間も待機している商人たちの恨めしそうな視線を浴びながら横の衛兵用通路を通って中へと入っていく。
そして、ブリェールの街に入ってみればそこは下り坂のように、下に向かって斜めっていた。その一番奥には、大きく広がる大海原が姿を現している。
何げに海を見るのは初めてかもしれない。太陽光が海に反射し、キラキラと輝きながらも、青々しい色がどこから落ち着きを感じさせる。遠くから漂ってくる塩の匂いはどこか食欲が刺激された。
「なんだかしょっぱい物が食べたくなってくる……」
「とりあえず、次の出港便を確認しましょう」
そう言って、私たちは坂を下っていくのだった。
♦️
「だから!次の出航はいつなんだ!?」
「すみません、まだ確認が追いついておらず……」
役所に入るなりなんなりそんな大声が聞こえてきた。
「急いでるんだ早くしてくれ!」
「申し訳ございません、現在安全圏の見直しのため運航を見合わせています」
出航してないのか?
私たちがその話に耳を傾けていると、他の役員さんがいらっしゃいませと声をかけてくる。
「海に出れないんですか?」
「はい……現在、海が荒れ始めてしまい、貿易船が一船行方不明になってしまったんです」
普段は荒れないはずの海域で、突如荒波が発生し、運航を見直しているとのこと。だが、私たちは急いでいるのでできるだけ早めの便に乗りたい。
「噂では、海の魔物のせいだとか言われているようで……」
「どうにかならないんですか?」
「何が起こるかわからないため、安全を期して……Sランク冒険者でもいたら別なんでしょうけれど……」
その言葉を聞いて、私とミサリーは目配せをした。
「それなら出航できそうですね」
「はい?」
私とミサリーは持っている冒険者カードを見せた。
「これは!?」
「Sランク冒険者二人なら、出航できますか?」
「少々お待ちください!」
そういうと、私たちの冒険者証を持った役員さんが奥で揉めている役員さん(おそらく先輩)のところまで持っていく。
「なんですって!?」
「今度はなんだ?」
船に乗りたがっていたお客がそう尋ねると私たちの方を向いてヒソヒソと何かを話し始める。
「え、Sランク冒険者だと!?しかも二人!?」
しーっとベテラン役員がジェスチャーするが、時既に遅し。その場にいた全員の視線が私たちの方へと向けられる。
「世界に10人といないSランク冒険者が二人もここに!?」
あれ?そんなに少ないんだ。じゃあもしかしてミサリーって有名人?
「お客さま!どこ行きの便ですか?」
「東の島国まで」
それを聞いた役員さんが私たちの方まで走ってきて、
「冒険者様方は!?」
「同じくですね」
すると、奥にいるお客はよっしゃー!と大喜び。一部の客は少し落胆していたご様子。
「運航手続きを行います!こちらへお越しください!」
そう言って、みんな揃って役員の元へ向かう。
「ちなみに、そちらの方々は……?」
「Aランク冒険者のレオとユーリですね」
「ぎょえ!?」
またまた役員さんの口から変な声が漏れた。
「ひゃ、100人もいないAランク冒険者が二人……」
「ちょ、ちょっと!?大丈夫ですか!?」
バタンと倒れてしまった役員さん、どうやら疲れているようだね……うん、半分は私たちのせいだろうけど……。
「う、運航手続きを行います……どうぞこちらへ……」
疲れ切ってしまったのか、声には元気がなくなり、どこか魂が抜けていた。
「ま、まあ乗れることになったし……」
ともかく結果オーライ!
「ここに店を構えたらいいのに……」
「お金稼ぎでやってはいないので」
あくまで私たちの目的地は日ノ本なので、ここには長く留まることはないだろう。栄えていると言った通り、馬車の通行口には長蛇の列ができていた。
「これを並ぶの?」
「かなり時間がかかりそうですね……」
そう思って長くなりそうだと、覚悟を決めていたら、
「みなさんはここでお待ちください」
と、ミハエルが馬車を降りスタスタ走っていく。一応護衛として、私もついていく……というのは嘘で、何をするつもりなのか気になったからついていく。
すると、ミハエルは衛兵の元までかけていき、
何かを衛兵に見せた。その時の衛兵の表情を言葉で表すなら、目玉が飛び出たが一番正しい表現方法になることだろう。
実際に飛び出てしまうのではないかと思うくらい、目を丸くしていた。そして、かしこまったようにぺこぺこと頭を下げていた。
それを目にして呆然としている私に気付いたのか、ミハエルがこちらへ戻ってくる。
「みなさん、馬車から荷物をとってください」
「馬車本体は?」
「後で回収に来てくれるようです」
一体何をしたのか……もしかして私はとんでもない人の護衛になってしまったのではないだろうか?
馬車の中から荷物を取り出し、それらを一度異納庫にしまう。
「盗賊は置いておきましょう」
人は流石に収納できないのでね……。そして、私たちは馬車で何時間も待機している商人たちの恨めしそうな視線を浴びながら横の衛兵用通路を通って中へと入っていく。
そして、ブリェールの街に入ってみればそこは下り坂のように、下に向かって斜めっていた。その一番奥には、大きく広がる大海原が姿を現している。
何げに海を見るのは初めてかもしれない。太陽光が海に反射し、キラキラと輝きながらも、青々しい色がどこから落ち着きを感じさせる。遠くから漂ってくる塩の匂いはどこか食欲が刺激された。
「なんだかしょっぱい物が食べたくなってくる……」
「とりあえず、次の出港便を確認しましょう」
そう言って、私たちは坂を下っていくのだった。
♦️
「だから!次の出航はいつなんだ!?」
「すみません、まだ確認が追いついておらず……」
役所に入るなりなんなりそんな大声が聞こえてきた。
「急いでるんだ早くしてくれ!」
「申し訳ございません、現在安全圏の見直しのため運航を見合わせています」
出航してないのか?
私たちがその話に耳を傾けていると、他の役員さんがいらっしゃいませと声をかけてくる。
「海に出れないんですか?」
「はい……現在、海が荒れ始めてしまい、貿易船が一船行方不明になってしまったんです」
普段は荒れないはずの海域で、突如荒波が発生し、運航を見直しているとのこと。だが、私たちは急いでいるのでできるだけ早めの便に乗りたい。
「噂では、海の魔物のせいだとか言われているようで……」
「どうにかならないんですか?」
「何が起こるかわからないため、安全を期して……Sランク冒険者でもいたら別なんでしょうけれど……」
その言葉を聞いて、私とミサリーは目配せをした。
「それなら出航できそうですね」
「はい?」
私とミサリーは持っている冒険者カードを見せた。
「これは!?」
「Sランク冒険者二人なら、出航できますか?」
「少々お待ちください!」
そういうと、私たちの冒険者証を持った役員さんが奥で揉めている役員さん(おそらく先輩)のところまで持っていく。
「なんですって!?」
「今度はなんだ?」
船に乗りたがっていたお客がそう尋ねると私たちの方を向いてヒソヒソと何かを話し始める。
「え、Sランク冒険者だと!?しかも二人!?」
しーっとベテラン役員がジェスチャーするが、時既に遅し。その場にいた全員の視線が私たちの方へと向けられる。
「世界に10人といないSランク冒険者が二人もここに!?」
あれ?そんなに少ないんだ。じゃあもしかしてミサリーって有名人?
「お客さま!どこ行きの便ですか?」
「東の島国まで」
それを聞いた役員さんが私たちの方まで走ってきて、
「冒険者様方は!?」
「同じくですね」
すると、奥にいるお客はよっしゃー!と大喜び。一部の客は少し落胆していたご様子。
「運航手続きを行います!こちらへお越しください!」
そう言って、みんな揃って役員の元へ向かう。
「ちなみに、そちらの方々は……?」
「Aランク冒険者のレオとユーリですね」
「ぎょえ!?」
またまた役員さんの口から変な声が漏れた。
「ひゃ、100人もいないAランク冒険者が二人……」
「ちょ、ちょっと!?大丈夫ですか!?」
バタンと倒れてしまった役員さん、どうやら疲れているようだね……うん、半分は私たちのせいだろうけど……。
「う、運航手続きを行います……どうぞこちらへ……」
疲れ切ってしまったのか、声には元気がなくなり、どこか魂が抜けていた。
「ま、まあ乗れることになったし……」
ともかく結果オーライ!
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