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日常と動乱(レオ視点)
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「帰ってこないねー」
「そうだね……」
授業が終わり、クラブの方に一瞬顔を出したベアトリスだったが、その後夜まで帰ってこないとはこの場にいた二人は想像していなかった。
三人で使ってた部屋も一人減るだけでだいぶ広く感じる。
特に、ユーリは虚無感が凄そうだ。眠ることもせずにぼーっと天井を見つめているのはもはや病気の域なのではないかと思ってしまうレオだったが、自分もベアトリスが心配なだけに何処か落ち着かない。
「まあ……ベアトリスのことだし、大丈夫だとは思うけど」
「暇だー……」
遊んでくれるベアトリスがいないことで、することがなく自分の尻尾を追いかけ回しているユーリ。
「ユーリはなんか子供っぽいね」
「いきなり悪口!?」
「いや、違うけど……」
普段一緒に過ごしていると子供の見た目と幼い言動から普通の子供と思ってしまうが、このキツネは何百年と生きている魔族なのだ。
なのに、精神年齢が低すぎるのは一体何事なのか……。
「言動が子供っぽい?それは、肉体に魂が持ってかれてるからだよ」
「どういうこと?」
「ベアトリスは、また自分の魔力を注ぎ込めば、ボクが完全復活すると信じているけど、実際は違うって話」
ベアトリスは魔力を使い、ユーリの封印の一部を解除した。そのことによって人化(不完全)できるようになり、多少……いや、今のところかなり強い力を取り戻していた。
だが、封印が完全に解けたわけではないそうだ。
「レオは信用できるから言っておくけど、ボクは人化している間は常に魔力を使ってるんだ。そして、ベアトリスの魔力で失くなったボクの魔力を補充するのはかなり難しい」
ベアトリスはもうすぐ成人という年齢ではあり得ないほどの魔力を有している。が、それは人基準の話。
魔族のトップに立っていたユーリにしてみればまだかわいい量だったようだ。
無尽蔵の魔力を全て埋め尽くすにはベアトリスが何度も魔力枯渇症になる必要がある。魔力枯渇症は下手すれば死ぬ可能性のあるもの。
そして、人化には相当魔力を使う。
「人化しなかったとしても、敵の襲撃が来たら一瞬でパーってわけ!」
そもそもキツネの姿ではうまく戦えないそうで、結局人化するしかないとのこと。
「面倒だね」
「まあね、ボクが本調子ならあの女の子と互角くらいにはやりあえるよ!」
勝てないんだ……とは言わない。
「で、少ない魔力しかないからその分人化が小さくなっちゃうの。魔族は肉体と魂が依存しているから……」
魔族は人間とは違い、幼いのに知能が発達したいわゆる『天才』なんてものは存在しない。年齢が幼ければ知能も幼い個体しかいない。
ユーリも例外ではない。
僕は魔族ではなく、獣人だったおかげで若返っても知能は退化していないというわけか。
ユーリにも、ベアトリスにも話していない秘密。
時間を渡るユニークスキル。
(バレたら、引かれちゃうかな……)
今までそんなことを黙っていた。後ろめたいことがあった。
初めの人生で既に、僕はベアトリスのことを知・っ・て・い・た・。
と、少々昔話に浸りかけていたら、
「何してんの?」
「のわ!?」
上のベッドから落下してきたユーリの下敷きにされる。
「暇だから遊ぼ!」
「わかったわかった、何して遊ぼうか?」
「うーん、ご飯は食べたし、お風呂にも入ったし……」
あんまり動きたくないと言った顔でユーリは思案している。
でも、二人でも遊んでもつまらなくないか?
「あ、そうだ」
「なになに?」
「ちょっときて……」
♦️
目の前には少しやんちゃそうな青年と、誠実そうな青年の二人がいた。
「なんでそうなる!?」
「まあまあ、いいじゃん。可愛いお客さんが来たんだから一緒に遊ぼうよ!」
ヤンキー君(ベアトリスがそう呼んでいた)は若干嫌そうにしながらも、顔が若干赤くなっている。
やはり、獣人というのは異世界人には評判のようだ。
「ダメ……かな?」
「うぐっ……べ、別にそんなこと言ってねえじゃん!」
単純なやつで助かる!
すぐ近くにヤンキー君とリョウヘイ君のいる部屋があってよかった。
「何して遊ぶ?」
「そうだねー……じゃんけんでもする?」
「つまらなくない?」
「罰ゲームで黒歴史発表しましょうか!」
「「「は?」」」
リョウヘイ君の爆弾発言だったが、ユーリは言葉の意味がわかっていないのか、すぐに同意してしまった。
ここで、ヤンキー君と自分が反対しても過半数同士で話は平行線……そうなることを予感した僕はすぐに諦めるのでした……。
「裏切ったな、先生!?」
罪悪感がなきにしもあらずだったが、それはしょうがない。
「じゃあ、やっていきましょうか!」
そうして、地獄のジャンケンは始まる。
♦️↓国王視点↓
「何?獣王国で内乱だと?」
国王直属の執事は嘘を言うはずがない。故に、情報事態がデマでない限り、この情報は正しいことになってしまう。
国王は頭を抱えた。
(ただでさえ今の時期厄介ごとが多いと言うのに、一体どうすればいいのだ!?)
ベアトリスという少女が二年ぶりに生還し、国民たちを安心させるために新聞にベアトリスの置き手紙と共に、生きていることを伝えた。
国民は信じない者を除いて全ての者が喜んだ。
そこまでは良かったのだが、まさか隣国の帝国の『勇者』が動くなど考えてもなかった。
「黒薔薇……だったか?組織の痕跡の調査もある……やることが山積みではないか!」
勇者の出動に獣王国の内乱。
「ベアトリス殿を呼ぶか?」
「それが……」
「なんだ!?そっちのも何かあったのか!?」
「陛下が大学院理事長に依頼した素材採集に、ベアトリス様が出かけているらしく、帰って来てないそうです!」
「なんだと!?」
なんということだ!こんな忙しい時に救いの綱がないとは……。
「だが、今は一刻の猶予も許されん!動くぞ!」
すぐに貴族を集め、会議を開こうと立ち上がるが、ドアがバタンと開く音がし、国王の足が止まる。
「お待ちください陛下、その事案……私に任せていただけないでしょうか?」
「おお、お前のことを完全に失念しておったわ!勇者は任せる!私は獣王国への援軍を配備しようぞ!」
「お任せください!」
飛び出してきた女性は、とても美しい金色の髪の毛を短く切ったお嬢様というような見た目。
それもそのはず、彼女はこの王国の第一王子の妹……『ローラ姫』なのだった。
なおベアトリスは、長らく王家と関わっていなかったので、このことは知らない。
ローラは部屋を退室して、静かにほくそ笑んだ。
「みぃつけた♡」
「そうだね……」
授業が終わり、クラブの方に一瞬顔を出したベアトリスだったが、その後夜まで帰ってこないとはこの場にいた二人は想像していなかった。
三人で使ってた部屋も一人減るだけでだいぶ広く感じる。
特に、ユーリは虚無感が凄そうだ。眠ることもせずにぼーっと天井を見つめているのはもはや病気の域なのではないかと思ってしまうレオだったが、自分もベアトリスが心配なだけに何処か落ち着かない。
「まあ……ベアトリスのことだし、大丈夫だとは思うけど」
「暇だー……」
遊んでくれるベアトリスがいないことで、することがなく自分の尻尾を追いかけ回しているユーリ。
「ユーリはなんか子供っぽいね」
「いきなり悪口!?」
「いや、違うけど……」
普段一緒に過ごしていると子供の見た目と幼い言動から普通の子供と思ってしまうが、このキツネは何百年と生きている魔族なのだ。
なのに、精神年齢が低すぎるのは一体何事なのか……。
「言動が子供っぽい?それは、肉体に魂が持ってかれてるからだよ」
「どういうこと?」
「ベアトリスは、また自分の魔力を注ぎ込めば、ボクが完全復活すると信じているけど、実際は違うって話」
ベアトリスは魔力を使い、ユーリの封印の一部を解除した。そのことによって人化(不完全)できるようになり、多少……いや、今のところかなり強い力を取り戻していた。
だが、封印が完全に解けたわけではないそうだ。
「レオは信用できるから言っておくけど、ボクは人化している間は常に魔力を使ってるんだ。そして、ベアトリスの魔力で失くなったボクの魔力を補充するのはかなり難しい」
ベアトリスはもうすぐ成人という年齢ではあり得ないほどの魔力を有している。が、それは人基準の話。
魔族のトップに立っていたユーリにしてみればまだかわいい量だったようだ。
無尽蔵の魔力を全て埋め尽くすにはベアトリスが何度も魔力枯渇症になる必要がある。魔力枯渇症は下手すれば死ぬ可能性のあるもの。
そして、人化には相当魔力を使う。
「人化しなかったとしても、敵の襲撃が来たら一瞬でパーってわけ!」
そもそもキツネの姿ではうまく戦えないそうで、結局人化するしかないとのこと。
「面倒だね」
「まあね、ボクが本調子ならあの女の子と互角くらいにはやりあえるよ!」
勝てないんだ……とは言わない。
「で、少ない魔力しかないからその分人化が小さくなっちゃうの。魔族は肉体と魂が依存しているから……」
魔族は人間とは違い、幼いのに知能が発達したいわゆる『天才』なんてものは存在しない。年齢が幼ければ知能も幼い個体しかいない。
ユーリも例外ではない。
僕は魔族ではなく、獣人だったおかげで若返っても知能は退化していないというわけか。
ユーリにも、ベアトリスにも話していない秘密。
時間を渡るユニークスキル。
(バレたら、引かれちゃうかな……)
今までそんなことを黙っていた。後ろめたいことがあった。
初めの人生で既に、僕はベアトリスのことを知・っ・て・い・た・。
と、少々昔話に浸りかけていたら、
「何してんの?」
「のわ!?」
上のベッドから落下してきたユーリの下敷きにされる。
「暇だから遊ぼ!」
「わかったわかった、何して遊ぼうか?」
「うーん、ご飯は食べたし、お風呂にも入ったし……」
あんまり動きたくないと言った顔でユーリは思案している。
でも、二人でも遊んでもつまらなくないか?
「あ、そうだ」
「なになに?」
「ちょっときて……」
♦️
目の前には少しやんちゃそうな青年と、誠実そうな青年の二人がいた。
「なんでそうなる!?」
「まあまあ、いいじゃん。可愛いお客さんが来たんだから一緒に遊ぼうよ!」
ヤンキー君(ベアトリスがそう呼んでいた)は若干嫌そうにしながらも、顔が若干赤くなっている。
やはり、獣人というのは異世界人には評判のようだ。
「ダメ……かな?」
「うぐっ……べ、別にそんなこと言ってねえじゃん!」
単純なやつで助かる!
すぐ近くにヤンキー君とリョウヘイ君のいる部屋があってよかった。
「何して遊ぶ?」
「そうだねー……じゃんけんでもする?」
「つまらなくない?」
「罰ゲームで黒歴史発表しましょうか!」
「「「は?」」」
リョウヘイ君の爆弾発言だったが、ユーリは言葉の意味がわかっていないのか、すぐに同意してしまった。
ここで、ヤンキー君と自分が反対しても過半数同士で話は平行線……そうなることを予感した僕はすぐに諦めるのでした……。
「裏切ったな、先生!?」
罪悪感がなきにしもあらずだったが、それはしょうがない。
「じゃあ、やっていきましょうか!」
そうして、地獄のジャンケンは始まる。
♦️↓国王視点↓
「何?獣王国で内乱だと?」
国王直属の執事は嘘を言うはずがない。故に、情報事態がデマでない限り、この情報は正しいことになってしまう。
国王は頭を抱えた。
(ただでさえ今の時期厄介ごとが多いと言うのに、一体どうすればいいのだ!?)
ベアトリスという少女が二年ぶりに生還し、国民たちを安心させるために新聞にベアトリスの置き手紙と共に、生きていることを伝えた。
国民は信じない者を除いて全ての者が喜んだ。
そこまでは良かったのだが、まさか隣国の帝国の『勇者』が動くなど考えてもなかった。
「黒薔薇……だったか?組織の痕跡の調査もある……やることが山積みではないか!」
勇者の出動に獣王国の内乱。
「ベアトリス殿を呼ぶか?」
「それが……」
「なんだ!?そっちのも何かあったのか!?」
「陛下が大学院理事長に依頼した素材採集に、ベアトリス様が出かけているらしく、帰って来てないそうです!」
「なんだと!?」
なんということだ!こんな忙しい時に救いの綱がないとは……。
「だが、今は一刻の猶予も許されん!動くぞ!」
すぐに貴族を集め、会議を開こうと立ち上がるが、ドアがバタンと開く音がし、国王の足が止まる。
「お待ちください陛下、その事案……私に任せていただけないでしょうか?」
「おお、お前のことを完全に失念しておったわ!勇者は任せる!私は獣王国への援軍を配備しようぞ!」
「お任せください!」
飛び出してきた女性は、とても美しい金色の髪の毛を短く切ったお嬢様というような見た目。
それもそのはず、彼女はこの王国の第一王子の妹……『ローラ姫』なのだった。
なおベアトリスは、長らく王家と関わっていなかったので、このことは知らない。
ローラは部屋を退室して、静かにほくそ笑んだ。
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