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クラブ作成

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「最悪な目にあったよ……」

「ほんと~」

 そう愚痴りながら歩く二人の後ろを私はのそのそとついていく。

「たまにはいいじゃない……二人だって案外嬉しかったりするんじゃないの?」

「「……………」」

 本気で嫌なら、威嚇くらいはするもんだ……多分。獣人だし?

 なのに、触られっぱなしというのは何ともおかしな話!故に!私は一ミリたりとも悪くなんかない!

 私のかわいい生徒たちに喜んでほしかっただけなのだ!

「もう!いいから、行くよ!」

「はーい」

 私の初めての授業は終わり、今は自由行動中である。と言っても、遊びまわったりできるわけではない。

 今から、『クラブ』の見学なのだ!

 まあ、前にもあったやつだね。基本、私は知識だけなら何でもあるので、どんなクラブでもすぐに教える立場になれるということで、自由に決めていいとのこと。

 ユーリとレオ君も自由に決めていいはずなのだけれど、私と一緒のところにするらしく、こうして三人で移動しているわけだ。

 人気なのは『剣術』『魔術』と言ったありきたりのないものから、その職業ごとに分かれているクラブもある。

 ヤンキーみたいな拳で戦う人たちには『空手』『柔道』とかがおすすめだと。

 これは、転移者もしくは転生者から教わってできたクラブで、新設。所属している人数も少ない。

「どれにするつもりなの?」

「うーん、まだ決めてない……」

 正直、どれも興味をそそられない内容だ。私が行くクラブを決めたからって、別に一緒になってやるわけでもあるまいし。

 あまつさえ、やることがなかったら突っ立っているだけではないか!

「じゃあ、いっそのこと新しく作れば?」

「それだ!」

 私が新しくクラブを作ればよいのだ!

 私の趣味嗜好に沿った内容であれば、なんとなく満喫できる気がする。それに、指導側の顧問は私たち三人で十分足りているではないか!

「あとは、理事長の許可さえあれば、クラブは作れるわね……」

 言いたいこともあるし、今すぐ理事長室に乗り込むべきか?

 ……そう思っていた時、ちょうどよく目の前から知っている顔がやってくる。

「ああ、ベアトリス――」

「理事長!」

「え!?な、なんだい?」

 私の大声は案外廊下に響いたらしく、かなりビビった様子の理事長。だが、そんなことはどうでもいいのだぁ!

「新しくクラブが作りたいです!」

「ええ?まあ、それは別にいいですけど……」

「よっし!」

 理事長の許可ゲット!

 これで、実質クラブは作れるわけである。

 だがしかし、そんな簡単にいかないのが現実なのである。

「何ですか、その顔」

「いや~うちの教師たっての願いはかなえてあげたい気持ちは山々なんだけどぉ~」

「……」

「そうね、私のお願いを聞いてくれたら、作ってもいいわ」

 やはりである。

 まあ、この理事長がただで動くわけないということね。

「で、願いは?」

「最近、この大学院近辺で、変な人影が見えたという目撃情報が上がってるの」

「人影?」

 一瞬頭に思い浮かんだのはあの白装束。

「服装は何色?」

「服装ねぇ……少なくとも目立つ色ではなかったわね」

「そう……」

 まあ、そううまく話がいくわけないか。

「それで、けが人だと思って近づいた実践訓練中の生徒がその人影にケガを負わされたの」

「私が、その人影とやらを調査すればいいんですね」

「あ、それともう一つ!」

 二つあるんかい。

「来期の入学試験の試験監督をやってくれない?」

「ああ、それなら別にいいです――」

「もう一つ!」

「何個あるの!?」

 この欲張りな理事長め……よくもまあ、大学院と学院の二つを運営できてるもんだ。そんな能力がこの人のどこに埋もれているという!?

「あなた、一応死亡扱いになってるの知ってる?」

 どこかで聞いた覚えが……。

 この国では一年間以上行方が不明な場合、失踪から死亡扱いへと変わるらしい。

「早い話、国王の元に出向いて、死亡診断を塗り替えてきてほしいのよ」

「どういうことですか?」

 別に死んでいようが、生きていようが関係ないと思ってそうな理事長にしては、少しまとも……というか、いきなりすぎて頭がついていけない。

「二年前、あなたの生まれた領が破壊された。そして、その多くの住人は各地に散りじりになって逃げたわ。難民として受け入れられてるはずだから、今では貧困生活を送っている人はいないと思うけど」

「……ちゃんと逃げれたんですね」

「城のほうを見れば、あなたが戦っている姿が見えた……しかも死にかけだったそうじゃない」

「え?見えてた?」

「壁が崩れてたから、丸見えだったそうよ?」

 確かに焼け落ちてたけども!視線なんて気にしてられないくらい焦ってたんだろうなぁ。

「それでね、公爵家から避難した人たちが、生活は安定していても、心がまだ不安定なのよ」

「なんで?家族を亡くした人たちもいるだろうけど、ようやくちゃんとした生活が送れるようになったのに」

「あなたが死亡扱いだからよ」

「へ?」

 余計に分からない。

 私がいたとして、何か変わったのか?

 その疑問に対して自問自答を繰り返していると、「わかった!」とでもいうように、手をポンと叩くユーリの姿が目に入る。

「ご主人様が、みんなの希望だったわけだね!」

「そう、ベアトリスという希望がいなくなったと知った難民たちは、ひどく悲しんだそうよ。話を聞けば、死亡扱いとして国が発表する前まで、確実に生きていると信じていた人が大半だった。今も信じてない人がいるらしいわ」

 そう聞くと、私ってばかなり頼りにされてたんじゃない?

「お父さんの方は……」

 悲しいことを口にするかのように、顔を暗くする理事長。
 だが、私はそんなことない。

「大丈夫ですよ、父様は私なんかよりもずっとしぶとい生き物ですから」

 父様はきっとまだ生きてる。ミサリーたち使用人も生きていると、精霊が言っていたのだ。

 主人を守らず逃げる部下はうちにはいない。そういうわけである。

「そう?まあ、そういうわけでよろしくね」

「わかりましたー」

 そう言って、立ち去る理事長。

 色々やらなくちゃいけないことが多いが、最後の内容だけ覚えとけばとりあえずはよさそう。

 それの次くらいに私が考えていたのは、

「クラブの名前どうする?」
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