上 下
239 / 504

組織勧誘

しおりを挟む
「は?なに……を……?」

 その場にいた全員が固まってしまった。
 今度は強欲の独壇場と化した。

「あのさー、ベアトリス」

「!」

「私が、本当に感情薄いとか思ってた?」

「それは、どういう……?」

 剣を引き抜いて、強欲はこちらを向く。
 笑顔で……それは、嘘偽りのない様子だった。

「んなわけないでしょ?なに?無欲だとでも思った?」

「でも……いつも、つまらなさそうで……」

「私も演技がうまくなってみたいね」

「え?」

「四百年前、私は吸血鬼に殺されかけた。もちろん、私はかかわったやつ全員殺した。だけどね、それじゃつまらなかったの。殺してもさー面白くなかったんだよ。だったらさ!私がこの国を治めて、全員奴隷にしてみようかなって思ったのよ!」

 そう言って、少年をどかし色欲に剣を突き立てた。
 色欲ですら、私を本気で殺そうとしなかったのに、容赦しなかった。

「狂ってる……」

「狂ってる?バカにしないで。狂ってるのはあなたたち。弱肉強食の世の中で、仲良しこよししてるあなたたちがおかしいの。仲間愛、家族愛……くだらない!」

 強欲は鼻で笑った。
 まるで、私たちをバカにするかのように……いや、バカにしている。

「あ、忘れてたわ。憤怒?」

「……なんだよ」

「あなたと色欲を対立させようと仕向けたの、私なの。言い忘れてたわ」

「は?」

「私って、影で頑張るタイプだからさ!面白いくらいに私の予想通り動いてくれた助かったよ。出てくるとは思わなかったけどね」

 憤怒さんが怒りに耐えきれずに突っ込んだ。
 凄まじい早さだった。

 そんな速度で、手に作った魔法を直接強欲にぶつける。
 その相乗効果はえげつなく、きっと強欲だって傷を負うだろう。

 そう思っていたのに……

「はいざんねーん。学習できないなら、そこら辺の有象無象と大して変わらないわね」

「っ!?」

 強欲が手を動かして、何かをする。
 それと同時に、憤怒さんのお腹に大きな穴が開いた。

 大量の血を吐いて、憤怒さんが何歩か下がる。

「再生が……間に合わない……」

 しまいには強欲に蹴飛ばされ、元の場所まで飛んでくる。
 それを数人でキャッチする。

「やっぱりベアトリス、あなたについてきてよかった。こうして、色欲の弟を見つけられたし、それに……」

 強欲が笑いながら、ネルネの方を見た。

「『』もいたんだから!」

「怠惰?」

 ネルネのつぶやきに再び高笑い。

「そんなことも知らなかったの?なんであなたが太陽の光を浴びても無事なのか知らない?遺伝?ある意味ではそうね。『怠惰』の権能は、『怠け』だもの!一切の何物にも干渉されない力!その子孫だったとしても、多少の力は引き継がれてるようね」

「でも……でも!私は痛みだって感じるし、火に触れたら熱く感じるし……」

「それは力が使いこなせてないだけ!あ、そうだ。もう一つ言うのを忘れていたわ。私、『強欲』の権能はあらゆるものを手に入れる力なの」

 手を天に向けて掲げる強欲。
 一体何をするのかと思えば、いつの間にか手の中に小さなナイフが握られていた。

「なーんでも作れちゃう。もちろん、『ベアトリスの力を無効化する力が欲しい』と願えば、あなたの攻撃は効かなくなるわけ」

 なんだよ、それ……。

 憤怒さんのあの攻撃も効かなくなるのか?

 じゃあ、どうやって太刀打ちすれば……。

「おっと、暴れないでよ」

 色欲が背後を狙って、魔法を放つが、すべて避けられた。
 代わりとばかりに、色欲を剣で切りつけた。

「っっっ!」

「落ち着け、ベアトリス。あんたが行っても何も変わらない」

「でも!」

 憤怒さんは首を縦に振ることはなかった。

「いいわね、長年我慢してきたかいがあるわ。こんなにも素敵な表情がたくさん見れるなんてね!」

 あははは!

 高笑いが続く最中、また一つ、変化があった。

「お邪魔しまー……なんかヤバそうなことになってるね」

 そんなのんきな声が聞こえてきた。
 のんきな声は、どうやら影の中から聞こえてくる。

 そして、その中から何かが飛び出した。
 人の形、見たことある顔。

「は?え、あなた……母様が殺したはず!」

「こっちこそ、は?だよ。勝手に人を殺すなよなベアトリス。まあ、死んだのは事実だけどね」

 見た目は若干変わっているが、わかる。
 肉体に乗り移る能力でもあるのだろうか?

『傀儡』は。

「あら、いらっしゃい。今パーティーをしてるのだけれど、あなたも混ざる?」

「へー、パーティーか。面白そうじゃん、俺も入れてー」

「ちょっと!何のんきなこと言ってるのよ!この状況分かってるの!?」

「わかってるさ」

 そこで思い出す。
 こいつは敵だったと。

(万事休す?)

「あなた、とっても強そうね。色欲とどっちが強い?」

「メアリに関する記憶の『操作』の術式は解除してあるし、今だったら俺かな?」

「そう」

 強欲と、傀儡は笑みを浮かべあう。
 それがとても恐ろしく、私は一歩も動けなかった。

「そして!ここで、一つお知らせがあります!」

 傀儡がくるりと一回転して、言った。

「色欲君や」

「……………」

「君、解雇!」

「!」

「うちの組織に軟弱者はいらないしねー。ってことで、そこのお嬢さん!」

 強欲を指名する。

「君、世界征服に興味はないかね?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...