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探し人

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 それらを何百回、何千回と繰り返す。

「ねええ!これいつになったら終わるの!」

 私はもうとっくのとうに疲れ果てていた。
 体を起こすのも大変だ。

「うーん、あと数年分くらいかな?」

「!?」

「狙った記憶を再現できるわけじゃないから、これが当たり前でしょう」

 流石、百年間閉じ込められていただけあるな。
 精神力が半端ない。

 ここの空間と現実世界の時間の流れは違っていて、単純計算、現実で百年間、ここでは百万年程度の時間が流れてる計算になったり……。

 あら、私計算早い。
 流石!

「じゃないよ!私そんなに耐えられないんだけど!?」

「まあ、それは気長にやっていくしかないわね」

「そんなぁ!」

 軽く絶望するのだった。


 ♦♢♦♢♦↓色欲視点↓


「え?いなくなった?逃げ出したの?」

「そんなの知らないよぉ、私が目を離した隙に逃げ出したのかもしれないし、どこかに隠れているかもしれないし」

 強欲からそんな話を聞かされる。

(逃げ出した?ここは現実とは隔離してあるのよ?転移した……それにしても、私たちが気づかないなんておかしい)

 ベアトリスという少女を連れ出したところまではよかった。
 だが、まさか逃げ出されるとは思わなかったのだ。

「いえ、違うわ。やはり逃げ出せるわけない」

 確かに彼女からは並々ならぬ力を感じたが、誰にもばれずに逃げ出せるほどの力の差は私たちにはない。

(つまり、どこかに隠れている?)

 気配の遮断を極めているのか?
 どうでもいいが、ここのどこかにいるのは間違いない。

「ったく、面倒なことをさせてくれるわね」

「じゃあ、私は宿に帰るとするよ」

 強欲は、相変わらずの不愛想な顔で出て行った。

 それとほぼ同時にそいつが現れたのだ。
 いつも通りの入り方に、私も慣れていた。

「タイミング最悪」

「やあやあ、元気してる?調子どうよ」

 その男、傀儡はどこからともなく現れた。

「調子は最悪」

「なにかあった?」

「ベアトリスを連れてくるまではうまくいったのだけど、隠れちゃってね」

「ふーん、流石って言っておこうか」

 傀儡はベアトリスに賞賛を送っていた。

「珍しいわね」

「王国の英雄様の子供で、上の三兄弟とは違い、すべての才能を引き継いでいるんだ。そりゃあ警戒もするし、悪魔に狙われながら、ここまで生き延びてるの彼女が初めてなんじゃない?」

 公爵家が長女、ベアトリス・フォン・アナトレス。

 その上には三人の兄がいた。
 三男は剣の才、次男は魔法の才、そして長男はよくわかっていなかった。

 ただ、どこぞの貴族と婚約して、早々に姿をくらませたので、行方も分からないため、死んだものとみなそう。

 確かにあの忌々しい聖騎士女の才能を引き継いではいる三人。
 だが、ベアトリスだけは違い、その才能をすべて引き継いでいるらしい。

「何度も言ってなんだけど、うちらのボスですら、『化け物』と言っているんだから、相当だよな」

 私が所属する組織にはもちろん頭がいた。
 ボスは、強い。

 私よりも強い。

 数年前に一度、傀儡がよく話す悪魔と争ったそうだが、決着はつかなかったそうだ。

 その悪魔ですら、メアリに一度負けている。
 そうなれば、ボスもメアリより弱いことになる。

 メアリの下に、ボスと悪魔、さらに下に私たちと考えてくれたらわかりやすいと思われる。

「それと、ここに来るまでに見てきたんだけど、お前の治めてる国でなんか面白そうなことが起きてたぞ?」

 突然そんなことを言い出す傀儡。
 水晶を取り出し、国を観察してみれば、そう言った理由は大体わかってきた。

「何こいつら」

「な?面白いだろ?」

 水晶の中には、何やら怪しげに動く影がいくつもあった。
 身長で年齢を計るのであれば、平均年齢十歳前後といったところか。

「そいつら、ベアトリスの仲間なんだけどさ、お前の城までの行き方を探してるっぽいぞ?」

「ふーん」

「あんま驚かないんだな」

 別に、行き方なんていくらでもある。
 その中の一つを見つけ出し、ここに侵入してきたとしても、焦るようなことではない。

「いらないやつは殺すだけだけよ」

「ひゅー、怖いねー!」

 水晶に映る影はとある宿を出入りしていた。

(ここは、強欲がよく泊ってるところね)

 あいつなら、面白半分で、招待してきそう……。

 はぁー、面倒事が増えるのは嫌だわー。

 そう思って水晶を眺めていると、その中に映る一人の少女が目に留まった。

「こいつ、どっかで見たことが……」

 一人、フードを付けていない吸血鬼がいた。
 その容姿は過去に一度見たことがあったような気がする。

 でも、私がじゃない。

(あれから、百年は経つわ。早く、早く見つけないと……)

 私が、罪人となってから百年。
 別れてから百年だ。

「じゃ、進展ないんだったら、帰るねー」

 そう言って帰っていく傀儡。
 私の目的は彼も知らないだろう。

 目的……それは、とある吸血鬼の男を探すこと。

『嫉妬』とは似て非なる目的だ。

 最後にあいつが言っていた言葉が耳の中に残っている。

『バイバイ』

 何がバイバイだ。
 ふざけるな。

 私は諦めない。
 絶対に見つけ出してやる。

 百年?
 そんなの吸血鬼の寿命から考えると短い時間だ。

「さっさとベアトリスを回収しないと」

 ベアトリスを探すためにリソースを割くわけにはいかないのだ。
 それ以上に重要なのだ。

 あいつが見せた最後の笑みを思い出しながら、私はいつも通り、水晶で彼の行方の探すのだった。
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