232 / 504
探し人
しおりを挟む
それらを何百回、何千回と繰り返す。
「ねええ!これいつになったら終わるの!」
私はもうとっくのとうに疲れ果てていた。
体を起こすのも大変だ。
「うーん、あと数年分くらいかな?」
「!?」
「狙った記憶を再現できるわけじゃないから、これが当たり前でしょう」
流石、百年間閉じ込められていただけあるな。
精神力が半端ない。
ここの空間と現実世界の時間の流れは違っていて、単純計算、現実で百年間、ここでは百万年程度の時間が流れてる計算になったり……。
あら、私計算早い。
流石!
「じゃないよ!私そんなに耐えられないんだけど!?」
「まあ、それは気長にやっていくしかないわね」
「そんなぁ!」
軽く絶望するのだった。
♦♢♦♢♦↓色欲視点↓
「え?いなくなった?逃げ出したの?」
「そんなの知らないよぉ、私が目を離した隙に逃げ出したのかもしれないし、どこかに隠れているかもしれないし」
強欲からそんな話を聞かされる。
(逃げ出した?ここは現実とは隔離してあるのよ?転移した……それにしても、私たちが気づかないなんておかしい)
ベアトリスという少女を連れ出したところまではよかった。
だが、まさか逃げ出されるとは思わなかったのだ。
「いえ、違うわ。やはり逃げ出せるわけない」
確かに彼女からは並々ならぬ力を感じたが、誰にもばれずに逃げ出せるほどの力の差は私たちにはない。
(つまり、どこかに隠れている?)
気配の遮断を極めているのか?
どうでもいいが、ここのどこかにいるのは間違いない。
「ったく、面倒なことをさせてくれるわね」
「じゃあ、私は宿に帰るとするよ」
強欲は、相変わらずの不愛想な顔で出て行った。
それとほぼ同時にそいつが現れたのだ。
いつも通りの入り方に、私も慣れていた。
「タイミング最悪」
「やあやあ、元気してる?調子どうよ」
その男、傀儡はどこからともなく現れた。
「調子は最悪」
「なにかあった?」
「ベアトリスを連れてくるまではうまくいったのだけど、隠れちゃってね」
「ふーん、流石って言っておこうか」
傀儡はベアトリスに賞賛を送っていた。
「珍しいわね」
「王国の英雄様の子供で、上の三兄弟とは違い、すべての才能を引き継いでいるんだ。そりゃあ警戒もするし、悪魔に狙われながら、ここまで生き延びてるの彼女が初めてなんじゃない?」
公爵家が長女、ベアトリス・フォン・アナトレス。
その上には三人の兄がいた。
三男は剣の才、次男は魔法の才、そして長男はよくわかっていなかった。
ただ、どこぞの貴族と婚約して、早々に姿をくらませたので、行方も分からないため、死んだものとみなそう。
確かにあの忌々しい聖騎士女の才能を引き継いではいる三人。
だが、ベアトリスだけは違い、その才能をすべて引き継いでいるらしい。
「何度も言ってなんだけど、うちらのボスですら、『化け物』と言っているんだから、相当だよな」
私が所属する組織にはもちろん頭がいた。
ボスは、強い。
私よりも強い。
数年前に一度、傀儡がよく話す悪魔と争ったそうだが、決着はつかなかったそうだ。
その悪魔ですら、メアリに一度負けている。
そうなれば、ボスもメアリより弱いことになる。
メアリの下に、ボスと悪魔、さらに下に私たちと考えてくれたらわかりやすいと思われる。
「それと、ここに来るまでに見てきたんだけど、お前の治めてる国でなんか面白そうなことが起きてたぞ?」
突然そんなことを言い出す傀儡。
水晶を取り出し、国を観察してみれば、そう言った理由は大体わかってきた。
「何こいつら」
「な?面白いだろ?」
水晶の中には、何やら怪しげに動く影がいくつもあった。
身長で年齢を計るのであれば、平均年齢十歳前後といったところか。
「そいつら、ベアトリスの仲間なんだけどさ、お前の城までの行き方を探してるっぽいぞ?」
「ふーん」
「あんま驚かないんだな」
別に、行き方なんていくらでもある。
その中の一つを見つけ出し、ここに侵入してきたとしても、焦るようなことではない。
「いらないやつは殺すだけだけよ」
「ひゅー、怖いねー!」
水晶に映る影はとある宿を出入りしていた。
(ここは、強欲がよく泊ってるところね)
あいつなら、面白半分で、招待してきそう……。
はぁー、面倒事が増えるのは嫌だわー。
そう思って水晶を眺めていると、その中に映る一人の少女が目に留まった。
「こいつ、どっかで見たことが……」
一人、フードを付けていない吸血鬼がいた。
その容姿は過去に一度見たことがあったような気がする。
でも、私が探している人物じゃない。
(あれから、百年は経つわ。早く、早く見つけないと……)
私が、罪人となってから百年。
別れてから百年だ。
「じゃ、進展ないんだったら、帰るねー」
そう言って帰っていく傀儡。
私の目的は彼も知らないだろう。
目的……それは、とある吸血鬼の男を探すこと。
『嫉妬』とは似て非なる目的だ。
最後にあいつが言っていた言葉が耳の中に残っている。
『バイバイ』
何がバイバイだ。
ふざけるな。
私は諦めない。
絶対に見つけ出してやる。
百年?
そんなの吸血鬼の寿命から考えると短い時間だ。
「さっさとベアトリスを回収しないと」
ベアトリスを探すためにリソースを割くわけにはいかないのだ。
それ以上に重要なのだ。
あいつが見せた最後の笑みを思い出しながら、私はいつも通り、水晶で彼の行方の探すのだった。
「ねええ!これいつになったら終わるの!」
私はもうとっくのとうに疲れ果てていた。
体を起こすのも大変だ。
「うーん、あと数年分くらいかな?」
「!?」
「狙った記憶を再現できるわけじゃないから、これが当たり前でしょう」
流石、百年間閉じ込められていただけあるな。
精神力が半端ない。
ここの空間と現実世界の時間の流れは違っていて、単純計算、現実で百年間、ここでは百万年程度の時間が流れてる計算になったり……。
あら、私計算早い。
流石!
「じゃないよ!私そんなに耐えられないんだけど!?」
「まあ、それは気長にやっていくしかないわね」
「そんなぁ!」
軽く絶望するのだった。
♦♢♦♢♦↓色欲視点↓
「え?いなくなった?逃げ出したの?」
「そんなの知らないよぉ、私が目を離した隙に逃げ出したのかもしれないし、どこかに隠れているかもしれないし」
強欲からそんな話を聞かされる。
(逃げ出した?ここは現実とは隔離してあるのよ?転移した……それにしても、私たちが気づかないなんておかしい)
ベアトリスという少女を連れ出したところまではよかった。
だが、まさか逃げ出されるとは思わなかったのだ。
「いえ、違うわ。やはり逃げ出せるわけない」
確かに彼女からは並々ならぬ力を感じたが、誰にもばれずに逃げ出せるほどの力の差は私たちにはない。
(つまり、どこかに隠れている?)
気配の遮断を極めているのか?
どうでもいいが、ここのどこかにいるのは間違いない。
「ったく、面倒なことをさせてくれるわね」
「じゃあ、私は宿に帰るとするよ」
強欲は、相変わらずの不愛想な顔で出て行った。
それとほぼ同時にそいつが現れたのだ。
いつも通りの入り方に、私も慣れていた。
「タイミング最悪」
「やあやあ、元気してる?調子どうよ」
その男、傀儡はどこからともなく現れた。
「調子は最悪」
「なにかあった?」
「ベアトリスを連れてくるまではうまくいったのだけど、隠れちゃってね」
「ふーん、流石って言っておこうか」
傀儡はベアトリスに賞賛を送っていた。
「珍しいわね」
「王国の英雄様の子供で、上の三兄弟とは違い、すべての才能を引き継いでいるんだ。そりゃあ警戒もするし、悪魔に狙われながら、ここまで生き延びてるの彼女が初めてなんじゃない?」
公爵家が長女、ベアトリス・フォン・アナトレス。
その上には三人の兄がいた。
三男は剣の才、次男は魔法の才、そして長男はよくわかっていなかった。
ただ、どこぞの貴族と婚約して、早々に姿をくらませたので、行方も分からないため、死んだものとみなそう。
確かにあの忌々しい聖騎士女の才能を引き継いではいる三人。
だが、ベアトリスだけは違い、その才能をすべて引き継いでいるらしい。
「何度も言ってなんだけど、うちらのボスですら、『化け物』と言っているんだから、相当だよな」
私が所属する組織にはもちろん頭がいた。
ボスは、強い。
私よりも強い。
数年前に一度、傀儡がよく話す悪魔と争ったそうだが、決着はつかなかったそうだ。
その悪魔ですら、メアリに一度負けている。
そうなれば、ボスもメアリより弱いことになる。
メアリの下に、ボスと悪魔、さらに下に私たちと考えてくれたらわかりやすいと思われる。
「それと、ここに来るまでに見てきたんだけど、お前の治めてる国でなんか面白そうなことが起きてたぞ?」
突然そんなことを言い出す傀儡。
水晶を取り出し、国を観察してみれば、そう言った理由は大体わかってきた。
「何こいつら」
「な?面白いだろ?」
水晶の中には、何やら怪しげに動く影がいくつもあった。
身長で年齢を計るのであれば、平均年齢十歳前後といったところか。
「そいつら、ベアトリスの仲間なんだけどさ、お前の城までの行き方を探してるっぽいぞ?」
「ふーん」
「あんま驚かないんだな」
別に、行き方なんていくらでもある。
その中の一つを見つけ出し、ここに侵入してきたとしても、焦るようなことではない。
「いらないやつは殺すだけだけよ」
「ひゅー、怖いねー!」
水晶に映る影はとある宿を出入りしていた。
(ここは、強欲がよく泊ってるところね)
あいつなら、面白半分で、招待してきそう……。
はぁー、面倒事が増えるのは嫌だわー。
そう思って水晶を眺めていると、その中に映る一人の少女が目に留まった。
「こいつ、どっかで見たことが……」
一人、フードを付けていない吸血鬼がいた。
その容姿は過去に一度見たことがあったような気がする。
でも、私が探している人物じゃない。
(あれから、百年は経つわ。早く、早く見つけないと……)
私が、罪人となってから百年。
別れてから百年だ。
「じゃ、進展ないんだったら、帰るねー」
そう言って帰っていく傀儡。
私の目的は彼も知らないだろう。
目的……それは、とある吸血鬼の男を探すこと。
『嫉妬』とは似て非なる目的だ。
最後にあいつが言っていた言葉が耳の中に残っている。
『バイバイ』
何がバイバイだ。
ふざけるな。
私は諦めない。
絶対に見つけ出してやる。
百年?
そんなの吸血鬼の寿命から考えると短い時間だ。
「さっさとベアトリスを回収しないと」
ベアトリスを探すためにリソースを割くわけにはいかないのだ。
それ以上に重要なのだ。
あいつが見せた最後の笑みを思い出しながら、私はいつも通り、水晶で彼の行方の探すのだった。
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
星の記憶
鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは…
日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです
人類が抱える大きな課題と試練
【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。
チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。
なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!
こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。
※注:すべてわかった上で自重してません。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる