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物は試し
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「ふざけんじゃねーぞてめー?三歳なんてちびっ子のくせになに訓練してんだよ!死んだらどうするんだよ!何したら、そんな風になるんだよ!」
「スミマセン」
「すみません?謝るんだったらその訓練内容を教えろよ!」
私は、今までやってきていた訓練の数々を伝えた。
「は?きも。魔力放出しながら、筋トレ?それが三歳?死にたいの?極度の疲労に、肉体負荷かけてさぁ……で?それを毎日?四歳になっても五歳になってもずっと?」
「あーいやぁ、実はまだ続きがあるのですよ……」
その続きも伝える。
「へぇ、やっぱりバカなんだ。誘拐された?そこまではいい。そこで懲りろよ。なんでその訓練を他人に享受するんだよ!」
アレンのことである。
まあ、なんか強くなりたいとか言っていたし、こうしたらいいんじゃね?って間接的に教えてあげた時の話である。
ドン引きしたような表情で、アレンがこちらを見ていたのを思い出すと申し訳なくなってくる……。
最近は会っていないからなぁ……。
あ、そういえばアレンはレイのところに行っているのだっけ?
じゃあ安心か。
「おい、なに男のこと考えてんだよ。今どういう状況かわかってる?」
「スミマセンでした」
見慣れない風景の広い道のど真ん中でお説教を喰らっていたが、それも終わりを迎える。
「とにかく、あんたは少し異常性に気づきなさい。そして、私を殺そうとするのをやめなさい」
「ハイ……」
なぜか言いくるめられた気がするけど、それは間違っていないと思う。
だけど、気づいた時には手遅れ、すでに違う方法を憤怒さんは模索していた。
「確かにこの場所は私の権能であっても、破ることはできないのよねー」
「あんなに威力が高いのに、ですか?」
正座の態勢はつらいので、私も立ち上がってそう質問した。
「最初に言ったけど、壊れた瞬間、時間が巻き戻って修復されちゃうのよ。壊すことは可能だけど、抜け出せるかどうかは別問題ってこと」
空間をあの炎の球で破壊するのは簡単にできるようだ。
「だったら、どうするんですか?」
「それが思いつかないから、ここまで幽閉されてるのよ」
抜け出すのはこの憤怒さんでも不可能らしい。
(え?私、逃げ出せなくない?)
もしかして、ここで死ぬとかある?
私はただの人間だから早く抜け出さないと死んじゃうけど?
「色欲を殺すのはそんなに難しいことではない……ここにいなければの話だけどね……」
「え、難しくない……なのに、負けたの?」
「それは私の権能に関係してくるのよ」
そう言って、憤怒さんは権能を教えてくれた。
別に言ったところで、あんたは私の敵じゃないから……というのが理由らしい。
「私の権能は『怒』という。怒りとか大層なお名前だけど、感情によって威力が変わったりするだけ。それと、これにはもう一つ効果があって、使えば使うほど、技の威力が格段に増すのよ」
「感情によって威力が変わって、使えば使うほど強くなる……憤怒さん、正座しますか?」
「さっきのを根に持つのはやめて」
ちっ。
なんだよなんだよ!
憤怒さんのほうがよっぽどチートじゃんか!
「そんなに強い権能なのに、なんで負けちゃったんですか?」
「私は負けてない!ただ……そう、研鑽が足りなかったの。ほら、私の力は使えば使うほど、強くなる。色欲に勝負を仕掛けたころは、まだ数回しか使ったことがなかったの!だから威力が弱かったの!」
今では、私の防御結界を破壊するほどに強力な一撃も、昔とではダイブ威力が違うらしい。
「ここを抜け出そうと何度も何度も、魔法を放った。魔力をなんども消耗しきって、倒れて起きたらまた攻撃……それを繰り返してきて、もう疲れたのよ私は。だから、ここでぐーたら生活してるってわけ」
そんな過去があったとは……。
「もういっそのこと、自分の意志で死んでみようとか思わなかったんですか?」
それはただの好奇心だった。
少々、この状況ではデリカシーの欠けている発言だったのはそうだが、その疑問は意外にも憤怒さんの目を大きくさせた。
「それだ!」
「はい?」
「死んでみよう!そうだそうだ……最初からそうすればよかったんだ!」
「おいおい、ちょっと待ってくださいよ!話が見えないんですけど!?」
いきなり目を輝かせて喜んでいる憤怒さんに、私はついていけない。
「つまり!私が死ねばいいのだ!」
「それ、さっき私が試そうとしましたよね?」
「あんたに殺されるのとは話が別なのよ!自分意志で死んだと誤・認・さ・せ・る・ことさえできればいいの!」
誤認?
「そもそも、そんな強力な結界にあなたはどうやって入ってきた?」
「え、っと……傲慢って名乗っている人に落とされたから?」
「違う!そもそも私たちの封印まで、近づける人なんてそんなにいないのよ。他の罪人たちもそれは同じ。色欲が持つ莫大な魔力……それと並ぶほどの術者じゃないと、近づけないの」
「つまり、ほかの罪人さんたちは色欲の人より魔力量が少ないってこと?」
「その通り。そして、あなたは色欲と同等の魔力を持っているということになる」
「それはいいんですけど、それとこれと何の関係が?」
魔力が同じくらい多いのは分かったけど、全体の話についていけない。
「ものは試しだ!行くぞ!」
「え?どこにですか?」
そう言った瞬間、私の魔力がごっそりと抜かれた。
「開け!」
憤怒さんがそう唱えた時には、視界は真っ白に染まっていた。
「スミマセン」
「すみません?謝るんだったらその訓練内容を教えろよ!」
私は、今までやってきていた訓練の数々を伝えた。
「は?きも。魔力放出しながら、筋トレ?それが三歳?死にたいの?極度の疲労に、肉体負荷かけてさぁ……で?それを毎日?四歳になっても五歳になってもずっと?」
「あーいやぁ、実はまだ続きがあるのですよ……」
その続きも伝える。
「へぇ、やっぱりバカなんだ。誘拐された?そこまではいい。そこで懲りろよ。なんでその訓練を他人に享受するんだよ!」
アレンのことである。
まあ、なんか強くなりたいとか言っていたし、こうしたらいいんじゃね?って間接的に教えてあげた時の話である。
ドン引きしたような表情で、アレンがこちらを見ていたのを思い出すと申し訳なくなってくる……。
最近は会っていないからなぁ……。
あ、そういえばアレンはレイのところに行っているのだっけ?
じゃあ安心か。
「おい、なに男のこと考えてんだよ。今どういう状況かわかってる?」
「スミマセンでした」
見慣れない風景の広い道のど真ん中でお説教を喰らっていたが、それも終わりを迎える。
「とにかく、あんたは少し異常性に気づきなさい。そして、私を殺そうとするのをやめなさい」
「ハイ……」
なぜか言いくるめられた気がするけど、それは間違っていないと思う。
だけど、気づいた時には手遅れ、すでに違う方法を憤怒さんは模索していた。
「確かにこの場所は私の権能であっても、破ることはできないのよねー」
「あんなに威力が高いのに、ですか?」
正座の態勢はつらいので、私も立ち上がってそう質問した。
「最初に言ったけど、壊れた瞬間、時間が巻き戻って修復されちゃうのよ。壊すことは可能だけど、抜け出せるかどうかは別問題ってこと」
空間をあの炎の球で破壊するのは簡単にできるようだ。
「だったら、どうするんですか?」
「それが思いつかないから、ここまで幽閉されてるのよ」
抜け出すのはこの憤怒さんでも不可能らしい。
(え?私、逃げ出せなくない?)
もしかして、ここで死ぬとかある?
私はただの人間だから早く抜け出さないと死んじゃうけど?
「色欲を殺すのはそんなに難しいことではない……ここにいなければの話だけどね……」
「え、難しくない……なのに、負けたの?」
「それは私の権能に関係してくるのよ」
そう言って、憤怒さんは権能を教えてくれた。
別に言ったところで、あんたは私の敵じゃないから……というのが理由らしい。
「私の権能は『怒』という。怒りとか大層なお名前だけど、感情によって威力が変わったりするだけ。それと、これにはもう一つ効果があって、使えば使うほど、技の威力が格段に増すのよ」
「感情によって威力が変わって、使えば使うほど強くなる……憤怒さん、正座しますか?」
「さっきのを根に持つのはやめて」
ちっ。
なんだよなんだよ!
憤怒さんのほうがよっぽどチートじゃんか!
「そんなに強い権能なのに、なんで負けちゃったんですか?」
「私は負けてない!ただ……そう、研鑽が足りなかったの。ほら、私の力は使えば使うほど、強くなる。色欲に勝負を仕掛けたころは、まだ数回しか使ったことがなかったの!だから威力が弱かったの!」
今では、私の防御結界を破壊するほどに強力な一撃も、昔とではダイブ威力が違うらしい。
「ここを抜け出そうと何度も何度も、魔法を放った。魔力をなんども消耗しきって、倒れて起きたらまた攻撃……それを繰り返してきて、もう疲れたのよ私は。だから、ここでぐーたら生活してるってわけ」
そんな過去があったとは……。
「もういっそのこと、自分の意志で死んでみようとか思わなかったんですか?」
それはただの好奇心だった。
少々、この状況ではデリカシーの欠けている発言だったのはそうだが、その疑問は意外にも憤怒さんの目を大きくさせた。
「それだ!」
「はい?」
「死んでみよう!そうだそうだ……最初からそうすればよかったんだ!」
「おいおい、ちょっと待ってくださいよ!話が見えないんですけど!?」
いきなり目を輝かせて喜んでいる憤怒さんに、私はついていけない。
「つまり!私が死ねばいいのだ!」
「それ、さっき私が試そうとしましたよね?」
「あんたに殺されるのとは話が別なのよ!自分意志で死んだと誤・認・さ・せ・る・ことさえできればいいの!」
誤認?
「そもそも、そんな強力な結界にあなたはどうやって入ってきた?」
「え、っと……傲慢って名乗っている人に落とされたから?」
「違う!そもそも私たちの封印まで、近づける人なんてそんなにいないのよ。他の罪人たちもそれは同じ。色欲が持つ莫大な魔力……それと並ぶほどの術者じゃないと、近づけないの」
「つまり、ほかの罪人さんたちは色欲の人より魔力量が少ないってこと?」
「その通り。そして、あなたは色欲と同等の魔力を持っているということになる」
「それはいいんですけど、それとこれと何の関係が?」
魔力が同じくらい多いのは分かったけど、全体の話についていけない。
「ものは試しだ!行くぞ!」
「え?どこにですか?」
そう言った瞬間、私の魔力がごっそりと抜かれた。
「開け!」
憤怒さんがそう唱えた時には、視界は真っ白に染まっていた。
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