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怒られる

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「いきなりなにすんのよ!」

「だって、しょうがないじゃないですか」

 いやぁ、こればっかりは許して欲しいものである。
 私だって、無駄死にはしたくないのでね。

 喧嘩態勢に入ると、さすがの反応速度。
 まあ、距離取られちゃいますよね……。

 この空間は憤怒の慣れ親しんだ場所なので、やはり傲慢という男の時のように変更可能なようだ。

 空間がものがたくさん詰まっている部屋から、場所が変わった。
 変更された空間は、なにもない空間なんかではなく、とてつもなく巨大な建物が建ち並ぶ場所に出た。

(なにこれ?何かとんでもないものを見てしまった気がする)

 ガラスが大量に貼られていて、等間隔に窓が設置されている。
 高さは何十メートルにも及び、そのような巨大な建物は見たことがない。

「これはね、『ビル』と言うのよ」

「ビル?」

「そうね、構造的には普通の建物よりも強靭だけど、私たちにかかれば余裕で壊せてしまうわ」

 通常の家では考えられない構造というのはわかる。
 うーむ……鉄鉱石、この場合は鉄というのだったっけ。

 鉄らしき、硬い物質がその建物を支えている。
 どんな硬さかといえば、木材より少し硬いくらいかな?

 まあ、憤怒さんの言う通りだね。
 私たちだったら壊せそう。

「というか、これ、どうやって変えてるんですか?」

「景色のこと?それは私の記憶からよ」

「こんな景色の場所見たことないけど?」

 私の疑問に、憤怒さんは鼻で笑った。
 さん付けで呼ぶのやめようかな……。

「私がいるこの場所はいろんな世界からいろんなものが流れ着く……それは、記憶も例外じゃなくってよ」

「他人の記憶も見れるんですか?」

「見れるというより、勝手に頭に流れてくるの。それをコピーして再現すればいいだけ。この場所限定だし、かなり使い勝手は悪いから、『嫉妬』の能力よりかは見劣りするけどね」

 あのヤバめな人か……。

 あの人は、あの方とやらのためなら、無敵になれるというチート。
 それ以外だと、そこまで強そうには感じなかった。

 それに見劣りして、使い勝手は悪いといっても、有能な力に変わりないのだけれど。

 その間に……。

 私は憤怒さんに接近する。
 が、まあバレました。

「いつの間に?」

「私の思考を読んでいる間に、移動しただけ」

「あんた器用ね……」

 振りかぶった拳は、右腕で受け止められた。
 地面はへこみ、ひびが入る。

「うわ、これすぐ壊れるじゃないですか……」

「あんたが手加減しないからでしょ。本気で殺しに来るのやめればいいのに」

 それは残念ながらできないんだなー。

 にしても、確かに土の地面よりかは壊れにくいけど、一点に力を加えるとすぐ壊れてしまうようだ。

 憤怒さんが立っている場所だけに力を入れれば、簡単に割れてしまうのだ。

 地面には文字が書かれてあって、どこまで不思議である。

「よそ見厳禁」

「あ……」

 飛び上がった破片に目をやっていたら、破片の隙間から反撃が返ってくる。

 拳での攻撃ではなく、青い炎による魔法攻撃だった。
 その威力は周りの飛び散った破片を隅にやるほどの風圧をおこした。

(まってヤバい)

 思った以上に憤怒さんって強い?
 私の張った防御の結界を簡単に破ったのだけれど……。

「ちょまっ……!」

 風魔法によって直撃を避ける。
 何とか避けることはできるけど、あの攻撃をかき消すことはできなさそう。

 そんなことを考えているうちに、二弾三弾目が飛んでくる。

「いや、もっと他の攻撃してよ!」

「だって、本気でやらないと、私はあんたに殺されるんでしょ?じゃあ、その前にぶっ殺すわよ」

 そういえば、この人も罪人の一人で強い人だった!
 人間味がある人はみんな弱いというのは、私の幻想だったようです。

 二弾目三段目の攻撃も同じく青い炎。
 ただし、威力はどんどん上がっている模様。

(攻撃するたびに威力が上がる権能?)

 でも、それだと最初の威力の説明が出来ない。
 もしかして、素の攻撃力があれなの?

 私の防御結界簡単に破っちゃったけど、あれが普段の攻撃力なの?

「嘘でしょ……」

「まだまだいくわよ!」

 掌の上にいくつもの、炎を出現させる憤怒さん。
 顔が満面の笑みなのが、なんとも怖い……。

(あ、ヤバ……)

 何度もの攻撃によって飛び散った地面の破片が死角となり、目の前に急に炎の球が現れる。

(私の全身全霊最大防御!)

 どうにか持ちこたえてくれ……。

 展開した結界は、私の体を覆い、透明な壁となる。
 それと炎の球が激突した瞬間、大きな火花が何度も散った。

 踏ん張っていた足は地面事削れて、後ろに後退していく。
 最終的に、なにやらでかい箱?のようなものにぶつかって、どうにか耐えることが出来た。

 その代わりに私の魔力はごっそりと削れて、ぶつかった衝撃で、支えていた掌は見てもいられないやけどを負った。

(大丈夫、大丈夫。三歳の時の訓練と比べれば大したことないわ)

 そう、三歳で修業を始めたすぐのころは、骨折・病気(魔力欠乏症)・その他、本当の意味で血が滲む努力をしてきたのだ!

「だから、全然……」

「ちょーっと待ってもらっていい?」

 歯を食いしばって、追撃に備えようとしていた時、そんな声が聞こえた。

「なによ!憐れむつもり?お断りよ!」

「そうじゃなくて!三歳?三歳から修業してんの?きっも!あんた分かってなさそうだから言うけど。あんたの力は異常なの!」

「い、異常?」

「そう!異常!私は罪人になる前の期間も入れて、数百年は生きてるの!その努力をたった十年程度で追いつくなんて……それのどこが正常なのかといているのよ!」

 そして、景色は変わることなく、憤怒さんはその場に正座した。

「あの……なにを……」

「こっちに来なさい!説教よ!」

 私が始めた戦い、いつの間にかお説教タイムへと変わっていたのだった……・
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