上 下
226 / 504

怒られる

しおりを挟む
「いきなりなにすんのよ!」

「だって、しょうがないじゃないですか」

 いやぁ、こればっかりは許して欲しいものである。
 私だって、無駄死にはしたくないのでね。

 喧嘩態勢に入ると、さすがの反応速度。
 まあ、距離取られちゃいますよね……。

 この空間は憤怒の慣れ親しんだ場所なので、やはり傲慢という男の時のように変更可能なようだ。

 空間がものがたくさん詰まっている部屋から、場所が変わった。
 変更された空間は、なにもない空間なんかではなく、とてつもなく巨大な建物が建ち並ぶ場所に出た。

(なにこれ?何かとんでもないものを見てしまった気がする)

 ガラスが大量に貼られていて、等間隔に窓が設置されている。
 高さは何十メートルにも及び、そのような巨大な建物は見たことがない。

「これはね、『ビル』と言うのよ」

「ビル?」

「そうね、構造的には普通の建物よりも強靭だけど、私たちにかかれば余裕で壊せてしまうわ」

 通常の家では考えられない構造というのはわかる。
 うーむ……鉄鉱石、この場合は鉄というのだったっけ。

 鉄らしき、硬い物質がその建物を支えている。
 どんな硬さかといえば、木材より少し硬いくらいかな?

 まあ、憤怒さんの言う通りだね。
 私たちだったら壊せそう。

「というか、これ、どうやって変えてるんですか?」

「景色のこと?それは私の記憶からよ」

「こんな景色の場所見たことないけど?」

 私の疑問に、憤怒さんは鼻で笑った。
 さん付けで呼ぶのやめようかな……。

「私がいるこの場所はいろんな世界からいろんなものが流れ着く……それは、記憶も例外じゃなくってよ」

「他人の記憶も見れるんですか?」

「見れるというより、勝手に頭に流れてくるの。それをコピーして再現すればいいだけ。この場所限定だし、かなり使い勝手は悪いから、『嫉妬』の能力よりかは見劣りするけどね」

 あのヤバめな人か……。

 あの人は、あの方とやらのためなら、無敵になれるというチート。
 それ以外だと、そこまで強そうには感じなかった。

 それに見劣りして、使い勝手は悪いといっても、有能な力に変わりないのだけれど。

 その間に……。

 私は憤怒さんに接近する。
 が、まあバレました。

「いつの間に?」

「私の思考を読んでいる間に、移動しただけ」

「あんた器用ね……」

 振りかぶった拳は、右腕で受け止められた。
 地面はへこみ、ひびが入る。

「うわ、これすぐ壊れるじゃないですか……」

「あんたが手加減しないからでしょ。本気で殺しに来るのやめればいいのに」

 それは残念ながらできないんだなー。

 にしても、確かに土の地面よりかは壊れにくいけど、一点に力を加えるとすぐ壊れてしまうようだ。

 憤怒さんが立っている場所だけに力を入れれば、簡単に割れてしまうのだ。

 地面には文字が書かれてあって、どこまで不思議である。

「よそ見厳禁」

「あ……」

 飛び上がった破片に目をやっていたら、破片の隙間から反撃が返ってくる。

 拳での攻撃ではなく、青い炎による魔法攻撃だった。
 その威力は周りの飛び散った破片を隅にやるほどの風圧をおこした。

(まってヤバい)

 思った以上に憤怒さんって強い?
 私の張った防御の結界を簡単に破ったのだけれど……。

「ちょまっ……!」

 風魔法によって直撃を避ける。
 何とか避けることはできるけど、あの攻撃をかき消すことはできなさそう。

 そんなことを考えているうちに、二弾三弾目が飛んでくる。

「いや、もっと他の攻撃してよ!」

「だって、本気でやらないと、私はあんたに殺されるんでしょ?じゃあ、その前にぶっ殺すわよ」

 そういえば、この人も罪人の一人で強い人だった!
 人間味がある人はみんな弱いというのは、私の幻想だったようです。

 二弾目三段目の攻撃も同じく青い炎。
 ただし、威力はどんどん上がっている模様。

(攻撃するたびに威力が上がる権能?)

 でも、それだと最初の威力の説明が出来ない。
 もしかして、素の攻撃力があれなの?

 私の防御結界簡単に破っちゃったけど、あれが普段の攻撃力なの?

「嘘でしょ……」

「まだまだいくわよ!」

 掌の上にいくつもの、炎を出現させる憤怒さん。
 顔が満面の笑みなのが、なんとも怖い……。

(あ、ヤバ……)

 何度もの攻撃によって飛び散った地面の破片が死角となり、目の前に急に炎の球が現れる。

(私の全身全霊最大防御!)

 どうにか持ちこたえてくれ……。

 展開した結界は、私の体を覆い、透明な壁となる。
 それと炎の球が激突した瞬間、大きな火花が何度も散った。

 踏ん張っていた足は地面事削れて、後ろに後退していく。
 最終的に、なにやらでかい箱?のようなものにぶつかって、どうにか耐えることが出来た。

 その代わりに私の魔力はごっそりと削れて、ぶつかった衝撃で、支えていた掌は見てもいられないやけどを負った。

(大丈夫、大丈夫。三歳の時の訓練と比べれば大したことないわ)

 そう、三歳で修業を始めたすぐのころは、骨折・病気(魔力欠乏症)・その他、本当の意味で血が滲む努力をしてきたのだ!

「だから、全然……」

「ちょーっと待ってもらっていい?」

 歯を食いしばって、追撃に備えようとしていた時、そんな声が聞こえた。

「なによ!憐れむつもり?お断りよ!」

「そうじゃなくて!三歳?三歳から修業してんの?きっも!あんた分かってなさそうだから言うけど。あんたの力は異常なの!」

「い、異常?」

「そう!異常!私は罪人になる前の期間も入れて、数百年は生きてるの!その努力をたった十年程度で追いつくなんて……それのどこが正常なのかといているのよ!」

 そして、景色は変わることなく、憤怒さんはその場に正座した。

「あの……なにを……」

「こっちに来なさい!説教よ!」

 私が始めた戦い、いつの間にかお説教タイムへと変わっていたのだった……・
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~

K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。 次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。 生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。 …決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)

丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】 深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。 前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。 そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに…… 異世界に転生しても働くのをやめられない! 剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。 ■カクヨムでも連載中です■ 本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。 中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。 いつもありがとうございます。 ◆ 書籍化に伴いタイトルが変更となりました。 剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~ ↓ 転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル
ファンタジー
 病弱で寝たきりの少年「立原隆人」はある日他界する。そんな彼の意志に残ったのは『もっと強い体が欲しい』。       そんな彼の意志と強靭な魂は世界の壁を越え異世界へとたどり着く。でも目覚めたのは真っ暗なダンジョンの奥地で…?  これは異世界で新たな肉体を得た立原隆人-リュートがパワーレベリングして得たぶっ飛んだレベルとチートっぽいスキルをひっさげアヴァロンを王道ルートまっしぐら、テンプレート通りに謳歌する物語。  初投稿作品です。つたない文章だと思いますが温かい目で見ていただけたらと思います。

処理中です...