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憤怒

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「あら、お客さん?そこ邪魔だから、どいてくれない?」

さっきとは違うパターン!

さっきのチャラ男?は、ぐいぐい来たのに、今度は突っぱねてきた!
逆にうれしい!

変人に好かれる趣味はないのでね。

さて、傲慢と名乗った男に穴から落とされた後、私がどうなったか説明しましょう。

そのまま落下し続けて、結果。
この場所に落ちてきたというわけです。

痛みなんかはよくに感じず、ふわっと着地したとさ。

ここは、さっきの虚無空間とは真逆で、ここは物が乱雑に置かれていた。
強いて言うなら、本がたくさんある普通の部屋?だった。

(一般人風の家かな?)

貴族風の家ではなく、私の見たこともないものがたくさん置かれていた。

そして、この女!

目の前にいる奴である。
赤毛のロングの髪に、柔らかい目。

だが、口調だけは厳しめである。

その女は何やら怪しげな本をもって、読んでいるではありませんか!?
無視すんなし!

「無視?虫?どっちにしろ殺すわよ?」

「え?」

え、なにこわ!?
考えていることが読まれたような気がしたけど……。

気のせいか!

「気のせいなわけないでしょ、バカ」

「うわぁ!マジで!?」

「うっさいわね、耳がおかしくなりそうだから、そのうるさい口を閉じて頂戴」

「あ、はい」

なんか怒られてしまった……。

でも、この人は誰なの?
そもそも論、傲慢が最後私に言ったセリフの内容を考慮するに、この人は『憤怒さん』ってことになるけど……。

だとしたら、自分で会いに行けよ!
穴作れるんだからさ!

「無理よ、封印は空間を外側にまで作用しているもの」

「あの、心読むのやめてもらっていいですか?」

「じゃあ、黙ってよ。こっちは嫌でも聞こえてくるの」

どうにかしてほしいものである。

「ちょっと、私が悪いみたいに言わないで」

まあ、それはいいとして……。
空間の外側って?

「空間外にも作用しているの。言うなれば一種の4次元空間にまで作用しているというわけ」

「4次元って?」

「あーあー、これだから、この世界の人間は」

「なんですか?ほかの世界の人間は知ってて当たり前なんですか?」

ムカついてそう聞いてみたら、

「当たり前じゃない。これを見なさい」

そう言って、手に持っていた本を見せてきた。
ちなみに、ずっとベッドらしき場所に寝っ転がっているので、本の向きが反転していることに彼女は気づいていない。

「黙れよ」

「スミマセン」

心の声を読めるの忘れてた。

「で、これは?」

本に書いてあったのは文字ではなく、絵?
なんかものすごいファンシーな絵が描かれているのだけれど……。

「それは、『マンガ』って呼ばれるものよ。この世界にはない本」

マンガ?
どこかで聞いたことあるような。

「マンガのここ」

寝っ転がりながら指を指された場所を見てみれば、私の知らない言語が書かれていた。

「4次元へのワープって書いてあるの」

「だから、4次元って何ですか」

「要するに、ここの空間に時間がプラスされた感じよ」

えっと?つまり?

ここは、時間ごと封印されているということ?

「その通り。抜け出そうものなら、強制的に時間巻き戻し。だから私たちでも破れないの」

「へー……」

「そして、ここからが重要なの」

そう言って、どこか鼻息荒く本を投げてきた。

「その本は主に市販されていたらしいわ。つまり、あなたのようなどっかのボンボンですら知らないような知識が、当たり前とされていたのよ!」

ボンボンで悪かったな!

「これを知っているのは、色欲と私くらいでしょうね」

「ちなみにあなたは……?」

「憤怒よ」

デスヨネー。

それにしても、とんでもないな。
そんなことされたら、どうしようもないじゃないか。

「って、どうしてそんな本を封印されてるあなたが持っているのですか?」

「これ?あー、なんか流れ着いた。ここは時間が止まってるのよ。だからいろんなものが流れ着く。別世界の雑誌、武器、この世界のお宝なんかもね」

なんか、この生活満喫していない?

「悔しいわ……」

「その反応ということは?」

「超絶快適!もうここに一生住んでいたい!」

さっきまでの厳しめな言葉はどこへやら、表情も緩んでかわいい顔になっていた。

「ちょっと、聞こえてるわよ」

「スンマセン」

「まあいいわ。とにかく、私はこの生活を満喫しているの。だから出てって頂戴な」

「はい……え?」

「何よ」

いや、こんなすぐに解放されるとは思ってもみなかった。

「そんなのどうだっていいわね。他に知りたいことがないなら、さっさと出てきなさい。私の機嫌がいいうちに……ね」

いやーこの人はなーんて優しいのだろうか。
さっきのどこぞのチャラ男とは段違いである。

あいつはそもそもきもいのだ。
大人の遊び?

黙れよ。

絶対モテないだろあいつ。

とまあ、こんぐらい悪口を言っておいて、なんですが憤怒さんや。

「なに?」

「出口ってどこですか?」

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」

しばらくの沈黙。

「知らないわ」

「そこをなんとか……」

「無理」

やっぱ鬼だこの人!

「聞こえてるって言ってるでしょ!」

「じゃあ、出口を教えてくださいよ!」

「知らないわ」

ダメだ……。
これじゃ、らちが明かない。

「なんか出る方法知らないですか?」

「はあ、しょうがないわね……。マンガによると、封印から抜け出す方法はいくつかあって、一つ目は強い力で封印まるごと破壊、二つ目は封印した張本人の消滅、三つ目が封印されている人物の消滅らしいわ」

ほほう、つまりはそのどれかが達成できればいいわけだ。

「そうね、だから一つ目のやつを早速……」

「よし、ちょっと死んでもらっていいですか!」

「は?」

「え?」

何か問題でも?

「どうしてそうなるのよ!」

「え?だって、私に色欲さんにもあったことあるんですけど、あなたより強そうだったんですもん。敵対したくないんです」

「だからってどうして私になるんだ!」

「強そうな人なので、二つ目の案は絶対無理だし、そんな人が施した封印を壊せる気がしないので一つ目も却下。じゃあ、最後の一つしかないじゃないですか!」

「おい!笑うな、きっもちわるいなぁ!」

「というわけで、お手合わせのほど、おねがいしまぁーす!」

「この鬼畜め!」

乙女の心を覗くのは犯罪です。
なので、皆さん真似しないように……。
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