208 / 504
呼び出し①
しおりを挟む
部屋の中に入ってみれば、案の定広かった。
ネルネには申し訳ないが、できればこっちに泊まりたい……そう思ってしまうほどには清潔感もあり、いい。
ネルネは悔しそうにベットを眺めていた。
家具に関してはネルネの宿もいい勝負をしているとは思うが、装飾が……ねえ?
「ネルネ?」
「まだです!もしかしたら、何か勝るところが……!」
諦めないことは……いいことですよ。
うん……。
部屋の中は外見とマッチして、おしゃれな感じ。
モダンな雰囲気で統一された部屋には一人用のベットがあるようだが、どう見ても三人くらいは寝れそうである。
そして、家具の一つ一つも高級そうで、ただの宿とは思えなかった。
(ネルネの高速脳内計算でもものすごい金額を割り出してたけど……)
それが正しいのかはいまいちわからないものの、ネルネが言うには維持費だけでも大金貨何十枚……。
金額をモノで例えたら、貴族たちが舌を巻いて羨ましがるレベルの金額だ。
物凄い金額をかけているというのは私の目でもわかったが、
「で、この宿が問題なんだよね?」
「そうですよ、私の宿に対する嫌がらせ……早く証拠を探さなくては!」
そう勢いでネルネが天に拳を突き上げたあたりで、扉がノックされた。
「失礼します」
鍵はまだかけていなく、中に入ってきた人もそれを知っていたようだった。
中に入ってきたの従業員らしき女性だった。
「お休み中のところ失礼したします、お客様。申し訳ありませんが、一階、管理人室までお越しいただけますでしょうか?お手数をおかけします」
「は?え、待っ——!」
有無を言わさず、扉が閉められた。
従業員も出ていく。
さっきからそうだが、従業員がもはや私たちの話を聞いてくれない……。
まあ、客を逃さないためだろうから仕方ないけどさ~?
それに、急に入ってこられるとびっくりするのよね。
あんまり部屋の中では意味がないけど、ローブをつけておいている。
吸血鬼のフリをするだけだったら、ここで脱いでしまっても何の問題もないけど、私は悪魔からも追われてる身。
部屋の中だろうとどこだろうと、隠す必要があるのだ。
「どうするんですか?」
「……そりゃあ、行くしかないでしょ」
こればっかりはしょうがない。
抵抗しても別に大した意味なんてないんだし、ここは素直にその場所に向かおう。
(管理人室だっけ?ま~た一階にいくのか……)
私たちは部屋を出る。
♦︎♢♦︎♢♦︎
一階、よくみればお客さんらしき人もいた。
従業員の押し売りで気づかなかったが、エントランスでくつろいでいる吸血鬼が数多くいる。
しかも、そのほとんどが紳士ものの服を着ていたり、ドレスを着ていたり、とにかくおしゃれをしていた。
(なんかそういうパーティーでもあるのかな?)
あんまりじろじろ見るのもあれなので、そこそこにしておく。
そして、隣の部屋からでてきたあの女性の姿はなかった。
今気にする必要はないので、管理人室とやらに向かう。
エンんトランス部分、横の通路に入り、その一番奥が管理人室とやららしい。
宿内地図にはそう書いてあった。
というか、宿に地図があるって……。
若干引きつつ、私たちはその場所にたどり着いた。
そして、扉をノックする。
「どうぞ」
中から声がして、許可が下りた。
「失礼します」
中に入ると、そこはより一層豪華な装飾で出迎えられた。
見たところ、従業員がいる様子はなく、いるのはただ一人だった。
目の前にいるのは、女性……だが、雰囲気は女性らしくなかった。
茶色っぽい髪をしていて、キリッとした瞳、ちゃんとした正装をしていて、ずっと書類に目を通している。
「まあ、座りなさい」
「あ、はい」
気持ち偉そうに聞こえるのはきっと本当に偉いからだろう。
管理人室……どうやらこの人がこの宿の管理人のようだった。
(この人が、ネルネの宿に嫌がらせを?)
とてもそんな風には見えない。
そんなことを考えながら、近くの椅子に腰掛けた。
木の椅子はちょうど三人分が座れるくらい大きく、目の前に置かれたテーブルは背丈が低かった。
そして、その女性も立ち上がり、私たちの目の前に座る。
「突然呼び出してしまい、すまないね」
「いえ、滅相もございませんわ」
一応淑女らしく返事を返す。
「さて、世間話でも挟む前に……自己紹介といこう。私はメアル、この宿の管理人をしている者だ」
「……………」
「どうかされたかな?」
「いえ……私はベアトリスと申します。どうぞよろしくお願いします」
メアル
という名前に若干反応を示してしまった。
(メアリ……って言われた気がしたわ……紛らわしいなーもう!)
茶色い髪の毛もメアリ母様と似ているから、ちょっとびっくりしてしまった。
だが、問題ない。
この人は吸血鬼。
人間じゃないのだから。
「あ、私はネルn——」
ネルネが自己紹介をしようとして、私は思わず彼女の足を踏んだ。
そして小声で会話する。
(何するんですか!)
(馬鹿じゃないの?もしかしたら、相手は名前を知っているかもしれないでしょ?)
ネルネは一応メアルと同じ業界の吸血鬼。
名前を知られている可能性は大いにあるのだ。
「えと、ネルと言います!」
「ベアトリスにネルか、覚えておこう」
そう言って、メアルは目を一度瞑り再び開いた。
「世間話をする時間はあるのだが、あいにく無駄なことは嫌いなのでな。このまま本題に入らせてもらう」
そう言って、メアルがより一層目つきを鋭くさせる。
「君たちは、どこの貴族だ?」
ネルネには申し訳ないが、できればこっちに泊まりたい……そう思ってしまうほどには清潔感もあり、いい。
ネルネは悔しそうにベットを眺めていた。
家具に関してはネルネの宿もいい勝負をしているとは思うが、装飾が……ねえ?
「ネルネ?」
「まだです!もしかしたら、何か勝るところが……!」
諦めないことは……いいことですよ。
うん……。
部屋の中は外見とマッチして、おしゃれな感じ。
モダンな雰囲気で統一された部屋には一人用のベットがあるようだが、どう見ても三人くらいは寝れそうである。
そして、家具の一つ一つも高級そうで、ただの宿とは思えなかった。
(ネルネの高速脳内計算でもものすごい金額を割り出してたけど……)
それが正しいのかはいまいちわからないものの、ネルネが言うには維持費だけでも大金貨何十枚……。
金額をモノで例えたら、貴族たちが舌を巻いて羨ましがるレベルの金額だ。
物凄い金額をかけているというのは私の目でもわかったが、
「で、この宿が問題なんだよね?」
「そうですよ、私の宿に対する嫌がらせ……早く証拠を探さなくては!」
そう勢いでネルネが天に拳を突き上げたあたりで、扉がノックされた。
「失礼します」
鍵はまだかけていなく、中に入ってきた人もそれを知っていたようだった。
中に入ってきたの従業員らしき女性だった。
「お休み中のところ失礼したします、お客様。申し訳ありませんが、一階、管理人室までお越しいただけますでしょうか?お手数をおかけします」
「は?え、待っ——!」
有無を言わさず、扉が閉められた。
従業員も出ていく。
さっきからそうだが、従業員がもはや私たちの話を聞いてくれない……。
まあ、客を逃さないためだろうから仕方ないけどさ~?
それに、急に入ってこられるとびっくりするのよね。
あんまり部屋の中では意味がないけど、ローブをつけておいている。
吸血鬼のフリをするだけだったら、ここで脱いでしまっても何の問題もないけど、私は悪魔からも追われてる身。
部屋の中だろうとどこだろうと、隠す必要があるのだ。
「どうするんですか?」
「……そりゃあ、行くしかないでしょ」
こればっかりはしょうがない。
抵抗しても別に大した意味なんてないんだし、ここは素直にその場所に向かおう。
(管理人室だっけ?ま~た一階にいくのか……)
私たちは部屋を出る。
♦︎♢♦︎♢♦︎
一階、よくみればお客さんらしき人もいた。
従業員の押し売りで気づかなかったが、エントランスでくつろいでいる吸血鬼が数多くいる。
しかも、そのほとんどが紳士ものの服を着ていたり、ドレスを着ていたり、とにかくおしゃれをしていた。
(なんかそういうパーティーでもあるのかな?)
あんまりじろじろ見るのもあれなので、そこそこにしておく。
そして、隣の部屋からでてきたあの女性の姿はなかった。
今気にする必要はないので、管理人室とやらに向かう。
エンんトランス部分、横の通路に入り、その一番奥が管理人室とやららしい。
宿内地図にはそう書いてあった。
というか、宿に地図があるって……。
若干引きつつ、私たちはその場所にたどり着いた。
そして、扉をノックする。
「どうぞ」
中から声がして、許可が下りた。
「失礼します」
中に入ると、そこはより一層豪華な装飾で出迎えられた。
見たところ、従業員がいる様子はなく、いるのはただ一人だった。
目の前にいるのは、女性……だが、雰囲気は女性らしくなかった。
茶色っぽい髪をしていて、キリッとした瞳、ちゃんとした正装をしていて、ずっと書類に目を通している。
「まあ、座りなさい」
「あ、はい」
気持ち偉そうに聞こえるのはきっと本当に偉いからだろう。
管理人室……どうやらこの人がこの宿の管理人のようだった。
(この人が、ネルネの宿に嫌がらせを?)
とてもそんな風には見えない。
そんなことを考えながら、近くの椅子に腰掛けた。
木の椅子はちょうど三人分が座れるくらい大きく、目の前に置かれたテーブルは背丈が低かった。
そして、その女性も立ち上がり、私たちの目の前に座る。
「突然呼び出してしまい、すまないね」
「いえ、滅相もございませんわ」
一応淑女らしく返事を返す。
「さて、世間話でも挟む前に……自己紹介といこう。私はメアル、この宿の管理人をしている者だ」
「……………」
「どうかされたかな?」
「いえ……私はベアトリスと申します。どうぞよろしくお願いします」
メアル
という名前に若干反応を示してしまった。
(メアリ……って言われた気がしたわ……紛らわしいなーもう!)
茶色い髪の毛もメアリ母様と似ているから、ちょっとびっくりしてしまった。
だが、問題ない。
この人は吸血鬼。
人間じゃないのだから。
「あ、私はネルn——」
ネルネが自己紹介をしようとして、私は思わず彼女の足を踏んだ。
そして小声で会話する。
(何するんですか!)
(馬鹿じゃないの?もしかしたら、相手は名前を知っているかもしれないでしょ?)
ネルネは一応メアルと同じ業界の吸血鬼。
名前を知られている可能性は大いにあるのだ。
「えと、ネルと言います!」
「ベアトリスにネルか、覚えておこう」
そう言って、メアルは目を一度瞑り再び開いた。
「世間話をする時間はあるのだが、あいにく無駄なことは嫌いなのでな。このまま本題に入らせてもらう」
そう言って、メアルがより一層目つきを鋭くさせる。
「君たちは、どこの貴族だ?」
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
流石に異世界でもこのチートはやばくない?
裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。
異世界転移で手に入れた無限鍛冶
のチート能力で異世界を生きて行く事になった!
この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
聖女も聖職者も神様の声が聞こえないって本当ですか?
ねここ
ファンタジー
この世界では3歳になると教会で職業とスキルの「鑑定の儀」を受ける義務がある。
「鑑定の儀」を受けるとスキルが開放され、スキルに関連する能力を使うことができるようになり、その瞬間からスキルや身体能力、魔力のレベルアップが可能となる。
1年前に父親を亡くしたアリアは、小さな薬店を営む母メリーアンと2人暮らし。
3歳を迎えたその日、教会で「鑑定の儀」を受けたのだが、神父からは「アリア・・・あなたの職業は・・・私には分かりません。」と言われてしまう。
けれど、アリアには神様の声がしっかりと聞こえていた。
職業とスキルを伝えられた後、神様から、
『偉大な職業と多くのスキルを与えられたが、汝に使命はない。使命を担った賢者と聖女は他の地で生まれておる。汝のステータスを全て知ることができる者はこの世には存在しない。汝は汝の思うがままに生きよ。汝の人生に幸あれ。』
と言われる。
この世界に初めて顕現する職業を与えられた3歳児。
大好きなお母さん(20歳の未亡人)を狙う悪徳領主の次男から逃れるために、お父さんの親友の手を借りて、隣国に無事逃亡。
悪徳領主の次男に軽~くざまぁしたつもりが、逃げ出した国を揺るがす大事になってしまう・・・が、結果良ければすべて良し!
逃亡先の帝国で、アリアは無自覚に魔法チートを披露して、とんでも3歳児ぶりを発揮していく。
ねここの小説を読んでくださり、ありがとうございます。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる