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エルフの王族
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トレイルが仲介に入り、事情の説明が行われた。
「私の妹が世話になったようだな!」
「いえいえ、滅相もないですね」
「ははは!なかなかに肝の据わった娘だな!」
バンバンと背中を叩かれる。
「じゃあ、トレイル様はノル様の妹ってことですよね」
「知っての通りだろう。私と妹はハイエルフだ!」
私はこのトレイルの姉のノルという人に連れられて、ハイエルフが住む家……森の中で一番大きな屋敷まで案内してもらう。
いきなり殴りかかってきたのは、帰ってこなかった妹が帰ってきたと知って、私たちを試したそうだ。
エルフの魔法はかなり進んでいて、なんと長距離でも話をすることができるそうだ。
ただ、一人限定の力で、『念話』よりも使い勝手は悪いが、かなりの距離でも話せるそうな。
衛兵から、話を聞いたノルさんは私たちが本当にトレイルを守れたほどの実力があるか知りたかったそうだ。
ハイエルフたち……トレイルの兄妹たちは過保護なようで、末っ子のトレイルが大好きすぎるっぽい。
トレイルはというと、衛兵に連れられて医務室に向かわされた。
私たちはノルさん自身に、王の間に連れて行ってもらっている。
いまだフードを取っていないことも併せて警戒されているのだろう。
緊張の様子が窺え、私たちが行動を起こせば即再び殴りかかってくるんだろうな……。
そりゃあ、トレイルと一緒に帰ってきて、恩人ですとか言っても、怪しいから信用できないでしょう?
それに、私たちについて『恩人』と伝えるときにトレイルが顔を引きつかせていたのも、エルフの警戒心の高さを表している。
「さあここだ!」
元気よくその扉を開く。
木製の建物ながら、とてつもなく巨大な家。
それは、地上に設置されている建物ではなく、なんと大樹の枝を地面として建てられている。
風に吹かれて倒れないか心配だが、風魔法を扱えるエルフにとってそんなの問題のうちに入らないのだろう。
「ここに、我が父、そして兄妹たちがいる。お前たちは礼儀を尽くししっかりと挨拶をするのだぞ?」
「わかっていますわ」
その一室の部屋が開かれ、人生で何度目かになる謁見をする。
フードの下からでもそれが少し見えた。
十人ほどの人影が見え、その奥に座っている一人の老人。
その老人は今にも死にそう……いや、訂正しよう……だいぶ老けて見えた。
そして、私が一歩前に踏み出した時だ。
「おい、ノル。そいつは誰だ」
「ああ、兄様。トレイルを救ってくれたという方だ」
「ほう?」
私の方に近づいてくるその男。
兄様と呼んでいるあたりノルさんのお兄さんにあたる人物であるのは間違いない。
それによって対応にも違いが出てくる。
「どうもはじめまして。わたくし、ベアトリスと申します。以後お見知り置きを」
「ふん、つまらん女だ」
舌打ちをして、再びさっきまでいた場所に戻っていく。
(ハイエルフって……全員くせ強いの?)
トレイルはどことなく偉そうだし……悪口じゃないよ?……ノルさんエルフなのに物理で殴ってくるし、王族なのに柄の悪いお兄さんいるし。
そんなことを考えつつも、私はその間に足を踏み入れ、国王の前に進んでいく。
だが、それは再び止められた。
「君、だぁれ?」
「え?私ですか?」
「君しかいない……だろう?」
横からまた話しかけられたかと思ったら、今度は国王と同じような……今にも死にそうな顔をした男の人が出てきた。
根暗っぽく顔を俯きかけていて、フラフラしている。
それだけならよかった、不気味だなって思うだけだから……。
「……人間の匂いがする」
「「「!」」」
その場にいたハイエルフたち全員が警戒態勢をとった。
ノルさんは構えつつも困惑しているようだった。
「ノル!こっちへこい!」
「あ、ああ……」
と思ったら、柄の悪いお兄さんの元までバックステップしていった。
その間にもフラフラな男の人は私の方を指差し、
「フード、取ってみて」
「なぜですか?」
そう言うと、腰に携えていた剣を引き抜く。
ただし、その剣筋は私が目で追えるギリギリの速度だった。
(早い!)
気づいたときには目の前に剣が突き出されていた。
「いいからとれよ。僕に逆らうな」
その台詞とともに、横にいたユーリたちの方から音がする。
「おい、ご主人に手を出すな」
「……子供に何ができる?」
「!」
今にも飛びかかっていきそうだったユーリを手で制す。
それを見てユーリは後ろに下がりはしたものの、まだガルルと唸っている。
守ってくれようとしたことは嬉しいが、ここで面倒ごとを起こされるわけにはいかない。
「しょうがないですね」
「ご主人様、いいの?」
「ええ、問題ないわ」
私はフードに手をかける。
ふわふわな感触とともに、そのフードがめくれて、私の顔があらわになる。
それと同時に、周囲にどよめきが広がる。
その声はこの部屋の中に反響するが、依然として目の前のフラフラ男には動揺が見られない。
「人間、何年ぶりだろう?僕が……人間を殺せる日が来るとはね」
「あら?お願いを聞いてあげたんだから、少しは丁重に案内してほしいわね」
私も下手に出るのをやめて、堂々とした態度を示す。
そして、睨み合っている間に……
「やめたまえ」
その一言が玉座の方から聞こえた。
その瞬間、目の前にいる男以外、全員がその場で一斉に跪いた。
「父さん、こいつは人間。僕に殺させて?」
そんなサイコパスなことを言う男を諫めるように国王はいう。
「この国の王は儂である、口を出すでない」
「……はい」
そして前の男も跪いた。
「人間……見たのは何百年ぶりか?其方はエルフと言う種族を知っていたか?」
「いいえ?ここにきて初めて知ったわ」
その問いには正直に答える。
あまり開かれていないその国王の瞳が一瞬輝き、そして、前のめりになっていた体を元に戻す。
「そうか、約・束・は守られたか」
「約束?」
「して、人間がどうしてここにいる?人間の住むところから渡ってきたのか?」
「まあ、そんなところ……かしら?」
正直、いつの間にか転移していたと言うだけの話なんだよね。
だから、私が自らの意思でここまでやってきたわけじゃないし、答えるのは難しい。
その言葉を受け取った国王は、
「一部は守られなかったか」
とても残念そうに頭を抱えた。
そして、
「そこにいる二人もフードをとれ」
「僕たちもか」
二人がフードを取る。
一番の問題点である私がフードを取っているので、もはや二人が隠す必要はない。
獣人としての二人の姿がハイエルフたちの視界にも映る。
人間ほど、嫌悪感を抱いてはないようだが、やはり少しは嫌われているようだ。
国王は二人の姿を見て、片方を注視していた。
それはユーリだった。
「其方、どこかで……」
そんな呟きが聞こえたときに、私はなんとなくわかってしまった気がした。
もしその呟きが正しいのであれば、きっとこの国王とユーリの関係というのは……。
「久しぶりだね、ゴーノア」
私の背後からそんな声が聞こえた。
「私の妹が世話になったようだな!」
「いえいえ、滅相もないですね」
「ははは!なかなかに肝の据わった娘だな!」
バンバンと背中を叩かれる。
「じゃあ、トレイル様はノル様の妹ってことですよね」
「知っての通りだろう。私と妹はハイエルフだ!」
私はこのトレイルの姉のノルという人に連れられて、ハイエルフが住む家……森の中で一番大きな屋敷まで案内してもらう。
いきなり殴りかかってきたのは、帰ってこなかった妹が帰ってきたと知って、私たちを試したそうだ。
エルフの魔法はかなり進んでいて、なんと長距離でも話をすることができるそうだ。
ただ、一人限定の力で、『念話』よりも使い勝手は悪いが、かなりの距離でも話せるそうな。
衛兵から、話を聞いたノルさんは私たちが本当にトレイルを守れたほどの実力があるか知りたかったそうだ。
ハイエルフたち……トレイルの兄妹たちは過保護なようで、末っ子のトレイルが大好きすぎるっぽい。
トレイルはというと、衛兵に連れられて医務室に向かわされた。
私たちはノルさん自身に、王の間に連れて行ってもらっている。
いまだフードを取っていないことも併せて警戒されているのだろう。
緊張の様子が窺え、私たちが行動を起こせば即再び殴りかかってくるんだろうな……。
そりゃあ、トレイルと一緒に帰ってきて、恩人ですとか言っても、怪しいから信用できないでしょう?
それに、私たちについて『恩人』と伝えるときにトレイルが顔を引きつかせていたのも、エルフの警戒心の高さを表している。
「さあここだ!」
元気よくその扉を開く。
木製の建物ながら、とてつもなく巨大な家。
それは、地上に設置されている建物ではなく、なんと大樹の枝を地面として建てられている。
風に吹かれて倒れないか心配だが、風魔法を扱えるエルフにとってそんなの問題のうちに入らないのだろう。
「ここに、我が父、そして兄妹たちがいる。お前たちは礼儀を尽くししっかりと挨拶をするのだぞ?」
「わかっていますわ」
その一室の部屋が開かれ、人生で何度目かになる謁見をする。
フードの下からでもそれが少し見えた。
十人ほどの人影が見え、その奥に座っている一人の老人。
その老人は今にも死にそう……いや、訂正しよう……だいぶ老けて見えた。
そして、私が一歩前に踏み出した時だ。
「おい、ノル。そいつは誰だ」
「ああ、兄様。トレイルを救ってくれたという方だ」
「ほう?」
私の方に近づいてくるその男。
兄様と呼んでいるあたりノルさんのお兄さんにあたる人物であるのは間違いない。
それによって対応にも違いが出てくる。
「どうもはじめまして。わたくし、ベアトリスと申します。以後お見知り置きを」
「ふん、つまらん女だ」
舌打ちをして、再びさっきまでいた場所に戻っていく。
(ハイエルフって……全員くせ強いの?)
トレイルはどことなく偉そうだし……悪口じゃないよ?……ノルさんエルフなのに物理で殴ってくるし、王族なのに柄の悪いお兄さんいるし。
そんなことを考えつつも、私はその間に足を踏み入れ、国王の前に進んでいく。
だが、それは再び止められた。
「君、だぁれ?」
「え?私ですか?」
「君しかいない……だろう?」
横からまた話しかけられたかと思ったら、今度は国王と同じような……今にも死にそうな顔をした男の人が出てきた。
根暗っぽく顔を俯きかけていて、フラフラしている。
それだけならよかった、不気味だなって思うだけだから……。
「……人間の匂いがする」
「「「!」」」
その場にいたハイエルフたち全員が警戒態勢をとった。
ノルさんは構えつつも困惑しているようだった。
「ノル!こっちへこい!」
「あ、ああ……」
と思ったら、柄の悪いお兄さんの元までバックステップしていった。
その間にもフラフラな男の人は私の方を指差し、
「フード、取ってみて」
「なぜですか?」
そう言うと、腰に携えていた剣を引き抜く。
ただし、その剣筋は私が目で追えるギリギリの速度だった。
(早い!)
気づいたときには目の前に剣が突き出されていた。
「いいからとれよ。僕に逆らうな」
その台詞とともに、横にいたユーリたちの方から音がする。
「おい、ご主人に手を出すな」
「……子供に何ができる?」
「!」
今にも飛びかかっていきそうだったユーリを手で制す。
それを見てユーリは後ろに下がりはしたものの、まだガルルと唸っている。
守ってくれようとしたことは嬉しいが、ここで面倒ごとを起こされるわけにはいかない。
「しょうがないですね」
「ご主人様、いいの?」
「ええ、問題ないわ」
私はフードに手をかける。
ふわふわな感触とともに、そのフードがめくれて、私の顔があらわになる。
それと同時に、周囲にどよめきが広がる。
その声はこの部屋の中に反響するが、依然として目の前のフラフラ男には動揺が見られない。
「人間、何年ぶりだろう?僕が……人間を殺せる日が来るとはね」
「あら?お願いを聞いてあげたんだから、少しは丁重に案内してほしいわね」
私も下手に出るのをやめて、堂々とした態度を示す。
そして、睨み合っている間に……
「やめたまえ」
その一言が玉座の方から聞こえた。
その瞬間、目の前にいる男以外、全員がその場で一斉に跪いた。
「父さん、こいつは人間。僕に殺させて?」
そんなサイコパスなことを言う男を諫めるように国王はいう。
「この国の王は儂である、口を出すでない」
「……はい」
そして前の男も跪いた。
「人間……見たのは何百年ぶりか?其方はエルフと言う種族を知っていたか?」
「いいえ?ここにきて初めて知ったわ」
その問いには正直に答える。
あまり開かれていないその国王の瞳が一瞬輝き、そして、前のめりになっていた体を元に戻す。
「そうか、約・束・は守られたか」
「約束?」
「して、人間がどうしてここにいる?人間の住むところから渡ってきたのか?」
「まあ、そんなところ……かしら?」
正直、いつの間にか転移していたと言うだけの話なんだよね。
だから、私が自らの意思でここまでやってきたわけじゃないし、答えるのは難しい。
その言葉を受け取った国王は、
「一部は守られなかったか」
とても残念そうに頭を抱えた。
そして、
「そこにいる二人もフードをとれ」
「僕たちもか」
二人がフードを取る。
一番の問題点である私がフードを取っているので、もはや二人が隠す必要はない。
獣人としての二人の姿がハイエルフたちの視界にも映る。
人間ほど、嫌悪感を抱いてはないようだが、やはり少しは嫌われているようだ。
国王は二人の姿を見て、片方を注視していた。
それはユーリだった。
「其方、どこかで……」
そんな呟きが聞こえたときに、私はなんとなくわかってしまった気がした。
もしその呟きが正しいのであれば、きっとこの国王とユーリの関係というのは……。
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