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協力しよう

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「はあ!?なんで人間が一緒に来るのです!」

 そう叫んでいるが……。

「でも、あなた一人じゃすぐに死んじゃうわよ?」

「!」

 それが現実。
 竜が出てくるのであれば、この子が強くてもすぐに死んでしまうだろう。

 私たちは三人いるから、油断していても平気かもだが、一人だとさすがに無防備すぎる。

 彼女がどんな装備をつけているかというと、正装というか……戦いに向いているような服装ではない気がする。

 武器も扇子ぐらいしか持っていない。

「そんなの……わかっているわ!」

「だったら、私たちもついて行ってもいいわよね」

「ダメなの!私は、人間の手なんて借りない!」

「竜を倒したのは私、すでに手は借りてるのよ」

「!ああいえばこういう……!」

 拳を握り締めて、ワナワナと震えている。
 怒っているのはわかるが、見ず知らずの人間とはいえ、死んで欲しくはないのだ。

「なんでわかってくれないのかしらね……」

「わかってないのは、お前の方だ、人間!」

 指を刺されて言い返された。

「その武力……人間は私たちエルフよりも強い。それは認める。だが、それが私たちに牙を向いたら……」

 つまり、裏切り。
 私がこのハイエルフのお嬢様をはめて、殺そうとするとでも思っているのだろう。

「大丈夫よ」

「お前がなんと言おうと、私に証明できないでしょ!」

「証明はできないけど……それだったら竜に襲われてる時に紛れて殺した方が私たちにとって得でしょ?それをしなかったんだから」

「それは……」

「それに、私たちの実力は知ってるでしょ?だったら、初めて会った時にエルフたちの前で殺しても、私たちが死ぬことはない」

 私たちが少女を殺そうと思えば、何回もできたわけだ。
 それを力説する。

 すると、

「わかりました。あなたたちのいうことを信じましょう」

「じゃあ……?」

「確かに、私を殺すタイミングはたくさんありました。それなのに、殺さないのは……。このまま森に入っても、わたしは意味もなく死ぬだけ。いいでしょう、同行を認めます」

「じゃあ、ついていかせてもらうわね」

「……勝手にしなさい」


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


「この先には何かあるの?」

「人間が私に聞かないで」

「言い方酷くない?」

「うるさい。黙ってついてきなさい」

 ずかずかと森の中を進んでいく。
 私たち三人は彼女の後ろをくっついて、護衛している。

「栄えあるハイエルフが人間の手を借りるなど……」

「うふふ、もう遅いわね」

「ええ、認めたくはないけど、この結果は私のせいとも言える……」

 強気な様子とは裏腹に、落ち込んでいる。
 エルフの仲間を逃していたので、犠牲者はいないだろう。

 じゃあ、なんで?

「期待に応えたいのね」

「え?」

 答えは単純だ。

「家族の期待に応えたい。認められたいって言ったところね」

「な!なんで人間が知っているの!」

「私も同じだともね~」

「それは、どういう……」

 私だって、周りからの期待に応えたいとは思ってきた。
 一応公爵令嬢なのよね……元だけど。

 前世も周りの目を気にしてた。
 周りの期待に応えないといけないという焦燥感は経験済み。

 だからこの少女の気持ちもわかる。

「そういえば、名前は何?」

「な、なんで人間に私の名前を……」

 少し押し黙った後、少女は口を開く。

「トレイルと呼びなさい。気を許したわけじゃないから、それだけは覚えておきなさい」

「いい名前ね」

「……早くいくわよ」

 そう言って足早に、木々をかき分けて行く。

「改めて聞くけど、この先に何かあるの?」

「……さあね」

「まさかの無計画?」

「ち、違うわ!……魔物はこちらの方角からくる傾向があるの。私はそれを調査しに来たのよ」

「へー、じゃあ私たちと一緒なのね」

「は?」

「私たちもそれを調査しにきたのよ」

 あの、精霊にお願いされた条件。
 魔物出現の理由を調べることだ。

 なんか知らない間に協力者を一人手に入れちゃった!?

「なぜ、人間が……」

「ご主人様、精霊に頼まれたんだー!」

 代わりにユーリが間に入り、答える。

「精霊……ですって?」

 驚愕の表情に変わったトレイル。
 だが、すぐに顔を扇子で隠した。

「……なんでもないわ。それにしても、人間と獣人は……協定でも結んでいるの?」

 どうやら、エルフ目線だと、そう見えるらしい。
 獣人と人間が仲がいいというわけではないのだが……。

「私たちが仲良いだけよ」

「でも、その主従関係のような呼び方は……」

「ご主人様はご主人様!僕の大好きな家族だよ!」

「ご主人様なのに、家族?なぜ別種が?」

 ヤバイ、トレイルが混乱している。
 トレイルはよく考えるタイプのエルフなのだろう。

 物事の一つ一つを正確に分析する、典型的な頭がいいタイプ。
 残念ながら、私はそんなことないので、羨ましい。

「まあいいわ。人間のことなんて私には関係ないし……」

 そんな会話をしながら、森の中を進むこと一時間。
 流石に、足が痛くなってきた。

 トレイルは体力の限界が近づいているらしく、汗を垂らしている。
 今は夏後半。

 まだまだ暑い時期だ。
 かなり辛いだろう。

「ここらで一旦、調査をしましょうか」

「ここで……?」

 立ち止まってそんなことを言い出した。
 だが、ここはさっきと景色がなんら変わらない、ただの森の中。

 特別な遺跡などがあるわけでもない。

「ふふふ、まあ見ておきなさい」

 そう言って、トレイルが何やら動き始めるのだった。
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