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騎士道
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「た、たた、助けていただきありがとうございます!」
「あ、はい……」
「ななな、なんと!お礼を、したらい、いいか!」
「はあ……」
とりま、魔物たちを全滅させて騎士たちを救ったまでは良かった。
なぜかはわからないけど、馬車に乗っていた若そうなお兄さんに「一緒に馬車に乗ってくれ!」と言われたのだ。
そして、噛む。
めちゃくちゃ噛む!
吃音症か?ってぐらい噛んでいる。
それ自体は悪いことではないのだが、服装的にも貴族だろう?
こんなに噛んでいて平気なのか?
大丈夫なのだろうか?
「あ、自己紹介が……えっと、ルイスと申します!あ、あの戦っている姿……と、とってもかっこよかったです!」
「え、ああ。ありがとうございます」
「……………」
「……………?」
無言の時間が続く。
なぜそうなるかといえば、この場には私とルイスさんしかいなかった。
この場を持たせてくれるような存在がいないのだ。
後から追いついたカイラスさんたちは完全に話がついていけず、騎士たちの馬とともに、進んでいく。
そして、私が話しかけない理由が……。
「……………」
頬を赤く染めて、下を向いているからだ。
なんなの!?
確かに凛々しい顔立ちが赤く染まって、なんともいえない美貌を作っているが、それによって私はなんだか近寄りづらい気配を感じている。
「あのー」
「ひゃい!?」
「なんでそんなに、噛んでいらっしゃるので?」
「あぅ、それは……」
黙りこくり、再び顔を赤くする。
一体なんだというんだ?
(もしかして、私に惚れた、とか?)
いやいやいやいや!
ないないないない!
ただ、一回危機を救った程度で好意を寄せられたら人間苦労しない。
そもそも、今の私は男の格好をしているのだ。
同性に恋愛感情を抱くとは思えない。
ただし、ターニャの「同性愛は普通」という、前に聞いた話が頭の中に残った。
ま、まあ、今は気にしなくていかな……。
「あ、あの!」
「はい」
「お、おお、お名前を伺っても!?」
「あーはい。ベア……」
「ベアさんですね!わかりました!」
本名を名乗ろうか迷っている間にも、勝手に勘違いされた。
この際、これで押し通そうかな……。
「あのルイスさんは何しに首都へ?」
「え、えっと、我が家の当主たる、父上のも元へ向かうのです」
「へー、何しにですか?」
「えと、父上がいない間の領地経営に問題はないかとか、何か話があると、言ってましたね」
「それわた、し……じゃなくて、俺に教えても大丈夫なんですか?」
「わ、私を救ってくださったんです!大丈夫です!」
とのことらしい。
この人も、私たちの仲間に取り入れられないかなーとか考えながらも、セコいなと自分を諫めて馬車に揺られる。
♦︎♢♦︎♢♦︎
首都に着き、ルイスさんと別れる。
また後ほど会いましょう!
とか言っていたけど、会えるとは思っていない。
なんせめちゃめちゃ広いから。
帝国の首都こと帝都より、二倍ほど広いのだ。
そして、宮殿のような見た目をしているお城が街の奥側にある。
そこに着いた私は、宮殿の中にカイラスさんと共に入り、謁見の間に進む。
「緊張するか?」
「問題ないですね」
「ふふ、そうだろうな」
そう言ったところで、謁見の間の扉が開く。
自国の国王と親しくなった私にとって他国の国王も大して変わらない。
「第一騎士団長カイラス様、同じく第一騎士団長補佐ベ、ベア様ご到着!」
私の名前を明確に伝えてなかったからか、読み上げ係が一瞬迷っているのが見えた。
それを気にせずに、私は前へ出る。
その様子に驚いている人たちが数名いるが、隣でカイラスさんが笑いを堪えているのが見えて、それすらもどうでも良く感じた。
私はカーペットのある一定の、線引きされたところまで前に進み出ると、跪く。
「面をあげよ」
「はっ!」
慣れた手つきで、私は顔を上げる。
目に映るのは小さな猫だった。
ただし、それは猫獣人が小柄だからという理由であって、年相応な威厳を持ち合わせている。
銀色が主な色を占めていて、獣寄りの見た目、ゆったりとした聖職者が着そうな服を着て、片目式のメガネ……白を誇張とした服だからこそ、銀色に輝く毛並みがさらに光って見える。
「此度は、ここまでの旅路ご苦労であった」
「はっ」
旅路と言っても、すぐ近くなのだが……そこは気にしないでおこう。
「して、此度貴殿らを呼び寄せた理由は、お主についてである」
「存じております」
「まず貴殿はなぜ騎士団に志願した?」
「争いをなくすためにございます」
ありきたりな回答、だが、今の場面ではそれが正解だった。
「そうか、貴殿にはその実力があるか?」
私はラディの親族として、身分証を発行し、提出している。
それに加えて、ラディはそこそこいいところの人らしい。
つまり、『コネ』を疑われているのだ。
「はい」
「ならばそれを示せ」
そう言われた瞬間だった。
私の視界の端にいた、鎧を着た男が剣を抜いた。
それを見たカイラスさんも慌てた様子で、剣を抜く。
だが、それをボーッと見ているわけもなく、
二人の剣がぶつかり合う前に、私が中に潜り込む。
「ベア!?」
「大丈夫です」
私はその剣を素手で受け止めた。
「!?」
もう一人の偉そうな騎士は、剣が抜けないことに驚いている様子だった。
「なぜ……!?」
「黙れ、我らが団長に剣を向けたのだ。死んで償え」
少し脅しをかける。
それと同時に、私は力を込めて長剣を握り、折る。
「そこまでだ」
それなりに、透き通る声。
それを聞いた瞬間、騎士が元いた場所に戻っていく。
(ああ、そういうことね)
「すまない、貴殿を試したのだ」
「ええ、そのようで……」
このような無礼が、国王の前で許されるわけがない。
その時点で怪しさは満点だった。
「ははは、騎士団長。面白い部下を持ったのだな」
「はあ……そのようです」
ため息を混じらせたあきれの声が聞こえる。
解せぬ。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ぃよっしゃー!終わったー!」
謁見が終わり、私は来賓室に通されるが、トイレに行くと言って、逃げ出した。
私が素直に従っている時点で何かがおかしいと気づくべきだったな国王よ(初対面だからそれは不可能だが)!
さあて!
するべきことはただ一つ。
資料を探すこと。
国王のことだから、何かしら相手(野生派)の情報を持っていても不思議ではない。
先に言っておこう!
私に騎士道なんてものはない!
ふははは!
向かう先は国王の自室。
(多分ここかな?)
一際豪華な部屋がある。
白色と銀色で強調されている扉は、金属のように輝いていた。
私は誰もいないことを確認し、その扉に手をかけた……その時だった。
「なにしてるの?」
「あ、はい……」
「ななな、なんと!お礼を、したらい、いいか!」
「はあ……」
とりま、魔物たちを全滅させて騎士たちを救ったまでは良かった。
なぜかはわからないけど、馬車に乗っていた若そうなお兄さんに「一緒に馬車に乗ってくれ!」と言われたのだ。
そして、噛む。
めちゃくちゃ噛む!
吃音症か?ってぐらい噛んでいる。
それ自体は悪いことではないのだが、服装的にも貴族だろう?
こんなに噛んでいて平気なのか?
大丈夫なのだろうか?
「あ、自己紹介が……えっと、ルイスと申します!あ、あの戦っている姿……と、とってもかっこよかったです!」
「え、ああ。ありがとうございます」
「……………」
「……………?」
無言の時間が続く。
なぜそうなるかといえば、この場には私とルイスさんしかいなかった。
この場を持たせてくれるような存在がいないのだ。
後から追いついたカイラスさんたちは完全に話がついていけず、騎士たちの馬とともに、進んでいく。
そして、私が話しかけない理由が……。
「……………」
頬を赤く染めて、下を向いているからだ。
なんなの!?
確かに凛々しい顔立ちが赤く染まって、なんともいえない美貌を作っているが、それによって私はなんだか近寄りづらい気配を感じている。
「あのー」
「ひゃい!?」
「なんでそんなに、噛んでいらっしゃるので?」
「あぅ、それは……」
黙りこくり、再び顔を赤くする。
一体なんだというんだ?
(もしかして、私に惚れた、とか?)
いやいやいやいや!
ないないないない!
ただ、一回危機を救った程度で好意を寄せられたら人間苦労しない。
そもそも、今の私は男の格好をしているのだ。
同性に恋愛感情を抱くとは思えない。
ただし、ターニャの「同性愛は普通」という、前に聞いた話が頭の中に残った。
ま、まあ、今は気にしなくていかな……。
「あ、あの!」
「はい」
「お、おお、お名前を伺っても!?」
「あーはい。ベア……」
「ベアさんですね!わかりました!」
本名を名乗ろうか迷っている間にも、勝手に勘違いされた。
この際、これで押し通そうかな……。
「あのルイスさんは何しに首都へ?」
「え、えっと、我が家の当主たる、父上のも元へ向かうのです」
「へー、何しにですか?」
「えと、父上がいない間の領地経営に問題はないかとか、何か話があると、言ってましたね」
「それわた、し……じゃなくて、俺に教えても大丈夫なんですか?」
「わ、私を救ってくださったんです!大丈夫です!」
とのことらしい。
この人も、私たちの仲間に取り入れられないかなーとか考えながらも、セコいなと自分を諫めて馬車に揺られる。
♦︎♢♦︎♢♦︎
首都に着き、ルイスさんと別れる。
また後ほど会いましょう!
とか言っていたけど、会えるとは思っていない。
なんせめちゃめちゃ広いから。
帝国の首都こと帝都より、二倍ほど広いのだ。
そして、宮殿のような見た目をしているお城が街の奥側にある。
そこに着いた私は、宮殿の中にカイラスさんと共に入り、謁見の間に進む。
「緊張するか?」
「問題ないですね」
「ふふ、そうだろうな」
そう言ったところで、謁見の間の扉が開く。
自国の国王と親しくなった私にとって他国の国王も大して変わらない。
「第一騎士団長カイラス様、同じく第一騎士団長補佐ベ、ベア様ご到着!」
私の名前を明確に伝えてなかったからか、読み上げ係が一瞬迷っているのが見えた。
それを気にせずに、私は前へ出る。
その様子に驚いている人たちが数名いるが、隣でカイラスさんが笑いを堪えているのが見えて、それすらもどうでも良く感じた。
私はカーペットのある一定の、線引きされたところまで前に進み出ると、跪く。
「面をあげよ」
「はっ!」
慣れた手つきで、私は顔を上げる。
目に映るのは小さな猫だった。
ただし、それは猫獣人が小柄だからという理由であって、年相応な威厳を持ち合わせている。
銀色が主な色を占めていて、獣寄りの見た目、ゆったりとした聖職者が着そうな服を着て、片目式のメガネ……白を誇張とした服だからこそ、銀色に輝く毛並みがさらに光って見える。
「此度は、ここまでの旅路ご苦労であった」
「はっ」
旅路と言っても、すぐ近くなのだが……そこは気にしないでおこう。
「して、此度貴殿らを呼び寄せた理由は、お主についてである」
「存じております」
「まず貴殿はなぜ騎士団に志願した?」
「争いをなくすためにございます」
ありきたりな回答、だが、今の場面ではそれが正解だった。
「そうか、貴殿にはその実力があるか?」
私はラディの親族として、身分証を発行し、提出している。
それに加えて、ラディはそこそこいいところの人らしい。
つまり、『コネ』を疑われているのだ。
「はい」
「ならばそれを示せ」
そう言われた瞬間だった。
私の視界の端にいた、鎧を着た男が剣を抜いた。
それを見たカイラスさんも慌てた様子で、剣を抜く。
だが、それをボーッと見ているわけもなく、
二人の剣がぶつかり合う前に、私が中に潜り込む。
「ベア!?」
「大丈夫です」
私はその剣を素手で受け止めた。
「!?」
もう一人の偉そうな騎士は、剣が抜けないことに驚いている様子だった。
「なぜ……!?」
「黙れ、我らが団長に剣を向けたのだ。死んで償え」
少し脅しをかける。
それと同時に、私は力を込めて長剣を握り、折る。
「そこまでだ」
それなりに、透き通る声。
それを聞いた瞬間、騎士が元いた場所に戻っていく。
(ああ、そういうことね)
「すまない、貴殿を試したのだ」
「ええ、そのようで……」
このような無礼が、国王の前で許されるわけがない。
その時点で怪しさは満点だった。
「ははは、騎士団長。面白い部下を持ったのだな」
「はあ……そのようです」
ため息を混じらせたあきれの声が聞こえる。
解せぬ。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ぃよっしゃー!終わったー!」
謁見が終わり、私は来賓室に通されるが、トイレに行くと言って、逃げ出した。
私が素直に従っている時点で何かがおかしいと気づくべきだったな国王よ(初対面だからそれは不可能だが)!
さあて!
するべきことはただ一つ。
資料を探すこと。
国王のことだから、何かしら相手(野生派)の情報を持っていても不思議ではない。
先に言っておこう!
私に騎士道なんてものはない!
ふははは!
向かう先は国王の自室。
(多分ここかな?)
一際豪華な部屋がある。
白色と銀色で強調されている扉は、金属のように輝いていた。
私は誰もいないことを確認し、その扉に手をかけた……その時だった。
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