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騎士団へ
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(今日も、ターニャはいないのね)
伯爵を家に帰してから、時間が経過し次の日になっていた。
今日も私に特に予定はなく、調査に乗り出すことにした。
調査というよりも、簡単な捜索だよね。
侯爵が娘さんを誘拐したとのことで、どこにいるのか探すことになったのだ。
簡単に見つかるだろう。
そんな甘ったれたことを思っていた私がバカだった。
(いない!?)
なんと、侯爵家のどこを見ても誘拐された娘さんがいなかった。
豪華な作りをしている分、物が多く隠しやすい場所がたくさんあると思って調べて見たが、その痕跡すらなかった。
痕跡、例えば何かを引きずった跡とか、ガッシガシに施錠された扉とか、隠し通路とか……。
それらが一切見つからん!
(つまり、ここには娘さんはいない……)
連れ込まれた形跡はなかったので、きっとここにはいないのだろう。
不可視化の魔法もそんなに長くは続かない。
私は一旦街に降りて気分を治す。
まだ時間はあるのだから……。
(ちゃんと約束したんだ。私が救ってあげなきゃね)
メアリ母様が私を守ったように、私もそういうことができる人間になりたい。
(それにしても、侯爵家にいないんだったら、探しようなくない?)
それが今ある一番の問題。
誘拐されたのは確かだろう。
言質も取ってあるしね。
だけど、肝心の娘さんがいないと、意味がないのだ。
そもそもの誘拐の痕跡すら見つからない。
だから、あんなに自信満々だったのか……。
今になって考えると、あの傲慢そうな態度の意味もよくわかってくる。
「ひとまずは違う方法で調査するかな」
違う方法……。
侯爵家に行ってもわからなかったのだから、内部からではなく外部から調査するしかあるまい。
というわけで、私はとある場所に向かうことにした。
その場所とは……。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼しまーす!」
「どうしたんだい、坊ちゃ……嬢ちゃん」
あ、はい。
相変わらず私は女認定なんですね。
だったら、この格好もしなくていいのでは?
貴族の子供がよく着る服、それも男用の。
「あ、えっとここって騎士団駐屯地であってますよね?」
私がやってきたのは騎士団駐屯地。
街の離れにあり、もっとも情報が行き交う場所の一つ。
騎士団の人なら、何か知っていても不思議ではない。
どうやらここにも何日か滞在しているらしいしね。
些細なことでもいいので、教えてもらいにきたのだ。
「うん、そうだよ。何か困りごとかい?」
「はい、ちょっと聞きたいことがあって……まあまあ偉い人います?」
「偉い人か……。その格好を見ると、君貴族だろう?どうして、そんなことを……」
「?」
この人は何を言っているのだろうか?
ここのところ会話に、わからない単語が頻繁に出現してくる今日この頃。
今度は一体なんなのだ?
貴族だからって……
あ!
ずばり、派閥についてか!
完全に忘れかけていたが、貴族の中には派閥が二つあるのだった。
そんでもって、騎士団は基本的に中立の立場を守っているのだ。
派閥が激しい今の時代、騎士団なんていう大戦力が分断されれば、睨み合いが争いに発展するのはわかりきったこと。
そういう意味でも、騎士団の存在は大きいのだ。
騎士団がいるからこそ、睨み合いで済んでいるのということがそれを証明している。
ただし、水面下では着々と火種が大きくなっているようだが……。
「私、あの、貴族だけど……」
「うん」
こっちをじっと見てくる騎士団のメンバーらしきお兄さん。
もう一度説明しておくと、ここは騎士団駐屯地の入り口にあたる部分。
そこに立って警備していたのが、このお兄さんってわけで、その奥にはテントが張られていて、その奥から騎士団と思われる人たちの声が聞こえてくる。
(どう言い訳する?なんて言えばいいんだ!)
ただの住民ですなんて言ったら、速攻で追い返される。
どんなんい贅沢をしても、こんな高そうな服を買うことはできないだろうという理由で怪しさ急増間違いなし。
だったら……!
「お、」
「お?」
「お兄ちゃんに会いにきたんです!」
「お兄……へ、へー。それは誰なんだい?」
「あの……ラディ、お兄ちゃん」
「ブフ!」
思わずと言った風に吹き出すお兄さん。
「ラディ!?あの方のことか?」
「うん、多分そう」
「あっはは!これは傑作だな!あの冷酷な副団長が……お兄ちゃんだなんて……あはは!お腹痛い!」
腹を抱えて大きな声で笑っている。
「あの~……」
「ああ!ごめんごめん!つい……。副団長はまだ入院しててね、今はいないんだ」
「そ、そうなの?」
確かに、あの深い傷は一日で治るわけない——
「今日の昼ごろに退院だっけ?」
ブフ!
退院!?
あのラディオス、そんな早く退院するの?
「ねえ、それって大丈夫なの?そんなすぐに退院って……」
「君も知っているだろう?あの人、普通の傷程度なら一瞬で完治するんだよ。特殊体質ってやつかな」
そんな特殊体質あってたまるか!
「だから、今回の任務で負った怪我もすぐに治る……っと、少し話しすぎたかな?」
「あ、いえ……」
「とりあえず、中に入って待っていてよ。すぐに副団長も帰ってくるだろうし。あ、でも騎士団の訓練の邪魔はしちゃダメだよ?」
「は、はい!」
そう言って、どうぞと言わんばかりに、お兄さんが道の横に逸れる。
(なんか、あっけないわね……)
もっとグダグダになるものだと思っていた。
一番大変だったのは、強いていうなら公爵の屋敷からここまで歩いてくることだったんじゃ?っていうぐらいにすんなり入れてしまった。
(ま、まあ!結果オーライだよね!)
だけど、思わず反射でラディって言ったけど、あいつが帰ってくるまで暇だな。
騎士団の訓練でも見ていよう……。
私は、駐屯地の中に一歩足を踏み入れるのだった。
伯爵を家に帰してから、時間が経過し次の日になっていた。
今日も私に特に予定はなく、調査に乗り出すことにした。
調査というよりも、簡単な捜索だよね。
侯爵が娘さんを誘拐したとのことで、どこにいるのか探すことになったのだ。
簡単に見つかるだろう。
そんな甘ったれたことを思っていた私がバカだった。
(いない!?)
なんと、侯爵家のどこを見ても誘拐された娘さんがいなかった。
豪華な作りをしている分、物が多く隠しやすい場所がたくさんあると思って調べて見たが、その痕跡すらなかった。
痕跡、例えば何かを引きずった跡とか、ガッシガシに施錠された扉とか、隠し通路とか……。
それらが一切見つからん!
(つまり、ここには娘さんはいない……)
連れ込まれた形跡はなかったので、きっとここにはいないのだろう。
不可視化の魔法もそんなに長くは続かない。
私は一旦街に降りて気分を治す。
まだ時間はあるのだから……。
(ちゃんと約束したんだ。私が救ってあげなきゃね)
メアリ母様が私を守ったように、私もそういうことができる人間になりたい。
(それにしても、侯爵家にいないんだったら、探しようなくない?)
それが今ある一番の問題。
誘拐されたのは確かだろう。
言質も取ってあるしね。
だけど、肝心の娘さんがいないと、意味がないのだ。
そもそもの誘拐の痕跡すら見つからない。
だから、あんなに自信満々だったのか……。
今になって考えると、あの傲慢そうな態度の意味もよくわかってくる。
「ひとまずは違う方法で調査するかな」
違う方法……。
侯爵家に行ってもわからなかったのだから、内部からではなく外部から調査するしかあるまい。
というわけで、私はとある場所に向かうことにした。
その場所とは……。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「失礼しまーす!」
「どうしたんだい、坊ちゃ……嬢ちゃん」
あ、はい。
相変わらず私は女認定なんですね。
だったら、この格好もしなくていいのでは?
貴族の子供がよく着る服、それも男用の。
「あ、えっとここって騎士団駐屯地であってますよね?」
私がやってきたのは騎士団駐屯地。
街の離れにあり、もっとも情報が行き交う場所の一つ。
騎士団の人なら、何か知っていても不思議ではない。
どうやらここにも何日か滞在しているらしいしね。
些細なことでもいいので、教えてもらいにきたのだ。
「うん、そうだよ。何か困りごとかい?」
「はい、ちょっと聞きたいことがあって……まあまあ偉い人います?」
「偉い人か……。その格好を見ると、君貴族だろう?どうして、そんなことを……」
「?」
この人は何を言っているのだろうか?
ここのところ会話に、わからない単語が頻繁に出現してくる今日この頃。
今度は一体なんなのだ?
貴族だからって……
あ!
ずばり、派閥についてか!
完全に忘れかけていたが、貴族の中には派閥が二つあるのだった。
そんでもって、騎士団は基本的に中立の立場を守っているのだ。
派閥が激しい今の時代、騎士団なんていう大戦力が分断されれば、睨み合いが争いに発展するのはわかりきったこと。
そういう意味でも、騎士団の存在は大きいのだ。
騎士団がいるからこそ、睨み合いで済んでいるのということがそれを証明している。
ただし、水面下では着々と火種が大きくなっているようだが……。
「私、あの、貴族だけど……」
「うん」
こっちをじっと見てくる騎士団のメンバーらしきお兄さん。
もう一度説明しておくと、ここは騎士団駐屯地の入り口にあたる部分。
そこに立って警備していたのが、このお兄さんってわけで、その奥にはテントが張られていて、その奥から騎士団と思われる人たちの声が聞こえてくる。
(どう言い訳する?なんて言えばいいんだ!)
ただの住民ですなんて言ったら、速攻で追い返される。
どんなんい贅沢をしても、こんな高そうな服を買うことはできないだろうという理由で怪しさ急増間違いなし。
だったら……!
「お、」
「お?」
「お兄ちゃんに会いにきたんです!」
「お兄……へ、へー。それは誰なんだい?」
「あの……ラディ、お兄ちゃん」
「ブフ!」
思わずと言った風に吹き出すお兄さん。
「ラディ!?あの方のことか?」
「うん、多分そう」
「あっはは!これは傑作だな!あの冷酷な副団長が……お兄ちゃんだなんて……あはは!お腹痛い!」
腹を抱えて大きな声で笑っている。
「あの~……」
「ああ!ごめんごめん!つい……。副団長はまだ入院しててね、今はいないんだ」
「そ、そうなの?」
確かに、あの深い傷は一日で治るわけない——
「今日の昼ごろに退院だっけ?」
ブフ!
退院!?
あのラディオス、そんな早く退院するの?
「ねえ、それって大丈夫なの?そんなすぐに退院って……」
「君も知っているだろう?あの人、普通の傷程度なら一瞬で完治するんだよ。特殊体質ってやつかな」
そんな特殊体質あってたまるか!
「だから、今回の任務で負った怪我もすぐに治る……っと、少し話しすぎたかな?」
「あ、いえ……」
「とりあえず、中に入って待っていてよ。すぐに副団長も帰ってくるだろうし。あ、でも騎士団の訓練の邪魔はしちゃダメだよ?」
「は、はい!」
そう言って、どうぞと言わんばかりに、お兄さんが道の横に逸れる。
(なんか、あっけないわね……)
もっとグダグダになるものだと思っていた。
一番大変だったのは、強いていうなら公爵の屋敷からここまで歩いてくることだったんじゃ?っていうぐらいにすんなり入れてしまった。
(ま、まあ!結果オーライだよね!)
だけど、思わず反射でラディって言ったけど、あいつが帰ってくるまで暇だな。
騎士団の訓練でも見ていよう……。
私は、駐屯地の中に一歩足を踏み入れるのだった。
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