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口を割らせる

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「それで、この妖精どうするの?」

 一旦、みんなが忘れかけている妖精の存在について触れる。
 なんとなく、ミレーヌとトーヤがキラキラしていたものの、手に持っている妖精をどうするのかという問題が残っている。

 すでに、私の魔法と同じような……不可視化の魔法が解け、その姿があらわになっている。

 髪の毛は……三つ編みにしていて所々にキラキラ輝いている。
 精霊の一種で、精霊の中でも魔力の扱いに長けているのが目の前の妖精。

 魔力が漏れているからか……だからキラキラ輝いているのだろうか?
 ともかくとして、妖精は普通、人間の前に姿を現さない。

 だから、精霊種は人間から神扱いされたりするのだ。
 珍しいの一言で済むはずがなく、精霊一匹を崇拝するためだけに、国ができるほどだ。

 過去の歴史書に記述してあった。
 まあ、とっくに滅んだわけだけど。

 そんな妖精が……人間に友好的で、滅多に姿を出さない妖精が、私たちが近づいた途端、襲いかかってきたのだ。

 何かしら理由があるのかもしれない。

「あ、忘れてた」

 手につかんでいた妖精を目線まで持ち上げて、トーヤが呟く。
 ミレーヌは雰囲気を壊されて、殺気が漏れているがこの際気にしない。

「人間は敵!」

 相変わらず物騒なことを唱えている妖精。

「なあ、なんでお前は俺たちを襲ったんだ?」

「言わない!」

 頑なに口を閉ざす妖精。
 がルル、と唸っているので威嚇されているのだろう。

 ただ、トーヤにはそんなの関係なかったっぽい。

「質問に答えてもらわなくちゃこっちが困るんだよ。仕事も残ってるし、できれば早くしてくれないかな?」

 ど直球だね……。
 調査が終わってないし、残業したくないからってか?

 正直すぎるにも程があるが、それがトーヤなんだろうな……。

「絶対に言わない!」

「これは、困ったな……」

 片手で頭を掻き毟る勇者。
 その様子に一同は苦笑い。

 妖精はそんなこと気にしないで、怒り顔を続ける。

「ちょっと見せてみ?」

 時間がかかりそうだなと思った私は救いの手を差し伸べる。

「なんか思いついたの?」

「いいからいいから」

 手渡しで妖精が渡される。
 私の顔を見ても怒り顔のまま。

 それはわかっていたことなので、何も思わないが……。
 そして、そっぽを向くとね……。

 全く、礼儀がなっとらんなー!

「ねえねえ」

「何!」

 呼びかけても、プイッとそっぽを向いている妖精。
 しょうがないので、無理やりこっちをむかせる。

「な、なにする——」

 私の顔を見て黙り込む。

「ちょっとさー?俺たち急いでんの。だから、お前に構ってる暇はないの」

「あわわ……」

「できれば早く話してくれないかなー」

 と、魔力をたっぷり浴びせてあげる。
 威圧というのか?

 格の違いを教えてあげれば、たいていの人も魔物も、大人しくいうことを聞いてくれる。

 この今世で学んだ。

 学んではいけなかったような気もするが、今は置いておくとしよう。
 この妖精よりも魔力をたくさん持っているとにらんだ私は、隠蔽していた魔力を解放してみる。

「あ……。あ……」

「おい……ベアトリス。やりすぎだよ」

「あ、ごめんごめん!」

 単語しか喋れなくなっちゃった妖精さんをトーヤに返す。

「あ、あの~」

「ひっ!」

 私ではなくトーヤにすら怯えるようになってしまった妖精。
 こちらをジト目で見てくる人物が数名ほどいるが、私は気にしない。

 冒険者さんたちはというと、魔物が来たのかと警戒態勢を取っている。

(魔物じゃないんだけど……)

 若干の怒りを覚えつつ、私はユーリをモフって怒りを解消するのだった。

「で、話してくれるかな?」

「は、はひぃ……」

 情けない声を出しながらも、妖精は喋りだす。

「なんで襲ったの?」

「だ、だって!人間、住処荒らすから……」

「住処だって?」

「ここの近くに洞窟があるの……。でも人間たちが来て、穴を掘ってったの!」

 曰く、自分たちが住む、つまり、妖精の住処が人間たちによって荒らされたと。

「それって鉱夫さんみたいな格好をしていた?」

「わからない……けど、人間たち、私たちのお宝盗んでった!」

 はい、新情報いただきました~!
 穴掘って荒らされたから襲ったんじゃなかったんですかぁー?

 私の脳はパンクしそうである。

 だが、大体の予想はついた。
 宝を盗られたと、穴を掘って荒らされた……しかも洞窟で。

 ここらでもうみんな分かっただろう?

「トーヤ?」

「うん、そうだね」

 トーヤも理解できたようだ。
 ただし、冒険者たち、勇者パーティの三人はまだ分かっていないようなので、トーヤが代表して説明をする。

「つまり、私たちが探していたのは、妖精の住処だったってことですか?」

 お世話になった女冒険者がスッと手を上げて、トーヤに質問する。

「そういうこと。わからなかった人のためにもう一度説明する。俺らが探していた、『鉱山』は、妖精の棲み家のことだった。そして、帝国の人間が先に訪れて鉱山にある鉱物を掘っていった。だけど、妖精たちに追い出され、俺たちに捜索をさせたんだ」

 帝国の兵士じゃ、妖精に勝てないからって勇者を引っ張ってくんなや!
 私にまで迷惑かかっとるんやぞ!

「じゃあ、帝国は最初から鉱山の場所を知っていたってことですか?」

「そういうこと。騙されたわけだ」

「騙したって……」

 勇者として、トーヤはそんなに帝国に好印象を抱いているわけじゃないっぽい。
 帝国の格差社会を嫌っていて、平等な社会を目指してるらしいよ?

「とりあえず、妖精は解放しようか」

「いいの?」

 不思議そうに妖精が尋ねる。

「当たり前だよ。無意味に捕まえるのは嫌だし」

「あ、ありがと……」

 妖精はとんで何処かへと行ってしまった。

「どうするの?」

 妖精を逃すのはいいとして、その後どうするのだろうか?
 そんな疑問が湧いた私はトーヤに聞いてみる。

「わかんね」

「まさかの無計画!?」

「まあ、でもなんとかしてみるよ」

 一応これでも勇者なのだ。
 少しの融通は通るだろう。

 ただし、鉱山の財宝……帝国であったとしても、そこまでして欲しがったものをみすみす手放すとは考えにくい。

(まあ、なんとかやって見ますかね)

 私もそう決意した時だった。

「それは重畳ですな」

 冒険者たちのさらに後ろからそんな声が聞こえてきた。
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