61 / 504
変装という名の男装
しおりを挟む
「なあ、なあ。どっか行こう?」
「は?なんで私が……」
「おお?いいのかなぁ、みんな(獣人たち)に『変な人に見られてたよ』って言っちゃおっかなぁ?」
「すいませんした」
現在、ターニャと屋上の上で合流したところだ。
(ターニャって案外鬼畜?)
ボーイッシュ風な短いボサボサ髪、半袖短パンの姿はどう考えても元気っ子にしか見えない。
だが、中身はただの鬼畜である。
「というか、なんでベアトリスは獣人の街にいるの?」
「なんでって、観察……的な?」
「はっ!もしや、戦争の準備をするための!?」
「んなわけないでしょ!」
「知ってるよん!」
こいつ………。
歯軋りしたい気持ちを抑えながら、会話を続ける。
「でもさー。じゃあなんでここまできたの?一番近い人間の街でも数十キロ離れてるのにさ」
私は転移とか、魔法でショートカットしているが、実際はそれぐらい距離があるのだ。
私が全力疾走をずっと続けたとして、一、二時間くらいはかかる。
……………もちろん身体強化してだよ?
「え?だってかわいいじゃん?」
「か、かわ?」
「だってさ、あのもふもふな毛見てよ!触ってみたいとか思わないの?」
「いや別に?」
「とにかく!ただの人間目線だと、癒しの他なにものでもないの!」
「へーそうなんだ。じゃあおいらの触ってみる?」
ターニャの耳がちょこちょこ動く。
(っく!心持ってかれそう……)
ターニャは耳と尻尾しか生えていない。
そのため、人間とさほど変わらない見た目をしている。私目線で言えばとんでもない愛らしさで思わず卒倒してしまいそうだが……
「いいよ……触らない」
「え?いいの?」
「無理に触らせてもらうのは、なんか違うでしょ?」
「ふ~ん、そういうもんかぁ」
「それより、どっか行きたかったんじゃないの?」
「あ!そうそう!おいらおすすめの観光スポットに連れて行くんだ!」
「案外普通ね」
ターニャのことだから………。
「どこに連れてかれると思ったんだ!?」
「拷問部屋とか?」
「連れてかねーよ!」
「あ、そう?獣人って人間のこと嫌ってるらしいから、そういうことかと……」
嫌ってる……っていうのは少し違う。
前世の頃、今から数年先に即位するであろう獣王が人間のことを嫌っているのであって、現段階の獣王は別に人間を嫌っているわけではない。
つまり、嫌っているのは今代の獣王の息子であるということだ。
「別に嫌ってるわけじゃないけど……まあ、いいや!観光スポットを巡るにあたって、ベアトリスくんにはして欲しいことがあるのだな!」
「なに?そのいやらしい目」
「むふふふ!」
なんだか嫌な予感がする。
(逃げたいけど……)
逃げたら、後でもっとやばいことさせられそうだと思った私は、素直に従うのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「か、かわいい!」
「どこが!?」
「このちょこんと出てる髪の毛とか!」
「はぁ?」
「名付けて、『変装大作戦』だね!」
現在私がなにをさせられているかといえば、それは……。
言うなればファッションショーである。
観光スポットを巡るにあたって、私は獣人の格好をしなくちゃいけない。
見つかったら普通に不法侵入だしね。
それはわかってはいるのだが……。
「な、なんで私が男の子の格好を……」
「だって、そっちの方がよく似合うんだもん!」
「私は女よ!」
「イケメンのくせに贅沢言うな!」
逆ギレ、だと?
「それに、尻尾も無理やりつけるんだから、スカートじゃなくて、短パンとかの方がいいでしょ?」
「それはそうかもだけどさ……」
店の中で服を選んでいて、よくこんなしっぽ見つけたな。
それとも、元から持ってたとか?
鏡を見てみる。
黒色の尻尾がだらんとお尻のあたりから垂れている。
「うんうん、かっこかわいい!」
「どっちよ……」
それを言うんだったら、ターニャも大概だ。
「ターニャだって、昨日は髪長かったじゃん。だから女の子だってわかったのに……なんで切ったの?」
「え?なんか邪魔だなーって思って……引きちぎった!」
だからボサボサなのかよ!
ターニャは昨日まで、肩ぐらいの長さの髪を持っていた。
だけど、引きちぎったは凶暴すぎでしょ。
「どうせならベアトリスもちぎる?」
「ちぎんないよ!私はちゃんとお団子にして帽子かぶってるし!」
だからボーイッシュに見えるのも仕方ないと思わなくもないが……。
はい!
ここで、私の見た目の特徴を振り返ってみましょう!
まず、髪の毛は帽子で見えません!(ショートに見える)
帽子の中から鋭い眼光が見えます!(女らしさが消え去る)
ぶかぶかな長袖を着ています!(ダボダボファッション)
ズボンは短パンを履いてます!(男の子がよく履く)
そして、尻尾がついています!(かわいい)
&謎にくっついてる靴とズボンを繋ぐベルト(なんか……ターニャの趣味を感じる……)
…………………………あれ?
私って男?
ちょっとチャラついてる男の子?
ついでに言えば、私の声って普通の女の子よりかは、若干低いので、男だと言われても違和感ないと思う。
「まあ、いいや。もう疲れた……」
「じゃあ、早速行ってみよう!」
だいぶ疲れた私の体に鞭を打つかの如く、ターニャが手を引いて、走り出す。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「まじで、しんどい……」
「なにが?」
「見る分にはいいけど、見られるのはダメなのよ……」
観光スポットを回るのは正直楽しい。
だが、それまでの途中経過が地獄なのだ。
いやぁ、大人目線から見たら私たちは元気に走り回ってる男の子二名なのだ。
暖かい目で見ている人もいれば、やばそうな人も……。
「じゃあ、じゃあ!観光スポットじゃないんだけど、連れて行きたい場所があるの!いい?」
「連れてきたい場所?もう、この際どこでもいいわよ」
別に観光することに関して言えば、楽しいのなんの。
いいスポットが見れて楽しいってのもあるし、すれ違う獣人さんたちがみんな可愛いって言うのもある。
いやぁ!
最近はストーカー(勇者)の相手で忙しかったから、まじで最高!
まあ、そんなことを考えながら、私はターニャの後をついて行くのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「じゃーん!おいらのお家だ!」
「はぁ!?」
やってきたのは、でかいお家の前だった。
「あ、あの、ここってお家というか、お屋敷なんだけど?」
「そうなの?よくわからないけど、ここに住んでるんだ!」
まってまって!
ターニャって貴族だったの?
「ほら!早くきて!」
「あ、ちょっとまって!」
屋敷の中に入って行くターニャを見て、私も後を追うのだった。
「は?なんで私が……」
「おお?いいのかなぁ、みんな(獣人たち)に『変な人に見られてたよ』って言っちゃおっかなぁ?」
「すいませんした」
現在、ターニャと屋上の上で合流したところだ。
(ターニャって案外鬼畜?)
ボーイッシュ風な短いボサボサ髪、半袖短パンの姿はどう考えても元気っ子にしか見えない。
だが、中身はただの鬼畜である。
「というか、なんでベアトリスは獣人の街にいるの?」
「なんでって、観察……的な?」
「はっ!もしや、戦争の準備をするための!?」
「んなわけないでしょ!」
「知ってるよん!」
こいつ………。
歯軋りしたい気持ちを抑えながら、会話を続ける。
「でもさー。じゃあなんでここまできたの?一番近い人間の街でも数十キロ離れてるのにさ」
私は転移とか、魔法でショートカットしているが、実際はそれぐらい距離があるのだ。
私が全力疾走をずっと続けたとして、一、二時間くらいはかかる。
……………もちろん身体強化してだよ?
「え?だってかわいいじゃん?」
「か、かわ?」
「だってさ、あのもふもふな毛見てよ!触ってみたいとか思わないの?」
「いや別に?」
「とにかく!ただの人間目線だと、癒しの他なにものでもないの!」
「へーそうなんだ。じゃあおいらの触ってみる?」
ターニャの耳がちょこちょこ動く。
(っく!心持ってかれそう……)
ターニャは耳と尻尾しか生えていない。
そのため、人間とさほど変わらない見た目をしている。私目線で言えばとんでもない愛らしさで思わず卒倒してしまいそうだが……
「いいよ……触らない」
「え?いいの?」
「無理に触らせてもらうのは、なんか違うでしょ?」
「ふ~ん、そういうもんかぁ」
「それより、どっか行きたかったんじゃないの?」
「あ!そうそう!おいらおすすめの観光スポットに連れて行くんだ!」
「案外普通ね」
ターニャのことだから………。
「どこに連れてかれると思ったんだ!?」
「拷問部屋とか?」
「連れてかねーよ!」
「あ、そう?獣人って人間のこと嫌ってるらしいから、そういうことかと……」
嫌ってる……っていうのは少し違う。
前世の頃、今から数年先に即位するであろう獣王が人間のことを嫌っているのであって、現段階の獣王は別に人間を嫌っているわけではない。
つまり、嫌っているのは今代の獣王の息子であるということだ。
「別に嫌ってるわけじゃないけど……まあ、いいや!観光スポットを巡るにあたって、ベアトリスくんにはして欲しいことがあるのだな!」
「なに?そのいやらしい目」
「むふふふ!」
なんだか嫌な予感がする。
(逃げたいけど……)
逃げたら、後でもっとやばいことさせられそうだと思った私は、素直に従うのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「か、かわいい!」
「どこが!?」
「このちょこんと出てる髪の毛とか!」
「はぁ?」
「名付けて、『変装大作戦』だね!」
現在私がなにをさせられているかといえば、それは……。
言うなればファッションショーである。
観光スポットを巡るにあたって、私は獣人の格好をしなくちゃいけない。
見つかったら普通に不法侵入だしね。
それはわかってはいるのだが……。
「な、なんで私が男の子の格好を……」
「だって、そっちの方がよく似合うんだもん!」
「私は女よ!」
「イケメンのくせに贅沢言うな!」
逆ギレ、だと?
「それに、尻尾も無理やりつけるんだから、スカートじゃなくて、短パンとかの方がいいでしょ?」
「それはそうかもだけどさ……」
店の中で服を選んでいて、よくこんなしっぽ見つけたな。
それとも、元から持ってたとか?
鏡を見てみる。
黒色の尻尾がだらんとお尻のあたりから垂れている。
「うんうん、かっこかわいい!」
「どっちよ……」
それを言うんだったら、ターニャも大概だ。
「ターニャだって、昨日は髪長かったじゃん。だから女の子だってわかったのに……なんで切ったの?」
「え?なんか邪魔だなーって思って……引きちぎった!」
だからボサボサなのかよ!
ターニャは昨日まで、肩ぐらいの長さの髪を持っていた。
だけど、引きちぎったは凶暴すぎでしょ。
「どうせならベアトリスもちぎる?」
「ちぎんないよ!私はちゃんとお団子にして帽子かぶってるし!」
だからボーイッシュに見えるのも仕方ないと思わなくもないが……。
はい!
ここで、私の見た目の特徴を振り返ってみましょう!
まず、髪の毛は帽子で見えません!(ショートに見える)
帽子の中から鋭い眼光が見えます!(女らしさが消え去る)
ぶかぶかな長袖を着ています!(ダボダボファッション)
ズボンは短パンを履いてます!(男の子がよく履く)
そして、尻尾がついています!(かわいい)
&謎にくっついてる靴とズボンを繋ぐベルト(なんか……ターニャの趣味を感じる……)
…………………………あれ?
私って男?
ちょっとチャラついてる男の子?
ついでに言えば、私の声って普通の女の子よりかは、若干低いので、男だと言われても違和感ないと思う。
「まあ、いいや。もう疲れた……」
「じゃあ、早速行ってみよう!」
だいぶ疲れた私の体に鞭を打つかの如く、ターニャが手を引いて、走り出す。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「まじで、しんどい……」
「なにが?」
「見る分にはいいけど、見られるのはダメなのよ……」
観光スポットを回るのは正直楽しい。
だが、それまでの途中経過が地獄なのだ。
いやぁ、大人目線から見たら私たちは元気に走り回ってる男の子二名なのだ。
暖かい目で見ている人もいれば、やばそうな人も……。
「じゃあ、じゃあ!観光スポットじゃないんだけど、連れて行きたい場所があるの!いい?」
「連れてきたい場所?もう、この際どこでもいいわよ」
別に観光することに関して言えば、楽しいのなんの。
いいスポットが見れて楽しいってのもあるし、すれ違う獣人さんたちがみんな可愛いって言うのもある。
いやぁ!
最近はストーカー(勇者)の相手で忙しかったから、まじで最高!
まあ、そんなことを考えながら、私はターニャの後をついて行くのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「じゃーん!おいらのお家だ!」
「はぁ!?」
やってきたのは、でかいお家の前だった。
「あ、あの、ここってお家というか、お屋敷なんだけど?」
「そうなの?よくわからないけど、ここに住んでるんだ!」
まってまって!
ターニャって貴族だったの?
「ほら!早くきて!」
「あ、ちょっとまって!」
屋敷の中に入って行くターニャを見て、私も後を追うのだった。
0
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
「自重知らずの異世界転生者-膨大な魔力を引っさげて異世界デビューしたら、規格外過ぎて自重を求められています-」
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
ネットでみつけた『異世界に行ったかもしれないスレ』に書いてあった『異世界に転生する方法』をやってみたら本当に異世界に転生された。
チート能力で豊富な魔力を持っていた俺だったが、目立つのが嫌だったので周囲となんら変わらないよう生活していたが「目立ち過ぎだ!」とか「加減という言葉の意味をもっと勉強して!」と周囲からはなぜか自重を求められた。
なんだよ? それじゃあまるで、俺が自重をどっかに捨ててきたみたいじゃないか!
こうして俺の理不尽で前途多難?な異世界生活が始まりました。
※注:すべてわかった上で自重してません。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる