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可愛いものは拾いなさい
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「ーーキュン」
(んん?なんか声みたいなのが聞こえたような気がするようなしないような………)
「キュン!」
(やっぱ気のせいじゃないよね!?絶対何かそばにいるよね!?)
どうしよう………これ魔物とかだったら結構詰んだんじゃない?
まあ、私自身魔物と遭遇したことがほぼなく、戦ったことはないため、どのくらいの強さなのかすらわからないのだ。
(まあ、年齢的には私よりも強いと考えるのが妥当だよね………あれ?私結構無防備なはずだけど?)
攻撃されていないことに違和感がわく。
だとしても、単に警戒していて、まだ手を出されていないと考える方が妥当ではないか?
兎にも角にも、どうにかして気づかれずに逃げた方が得策と言える。
(と、その前に状況を確認しておかないとね)
魔法を発動することはできない。
もししてしまったら、魔物?を刺激して怒らせるだけに終わる可能性があるからだ。
(とりあえず、私はさっきまで平原に寝ていたわけだよね)
よくよく考えれば、平原なんて格好の的になるだけだろう。
そんなところで眠るなんて私はなんて馬鹿のことをしたのか……。
(後悔しても遅いよね)
ネガティブな思考を振り払い、これからどうするかを模索する。
(寝る前の記憶を辿ってみると、確か私の真横にはでかい木が一本生えていたはずだ。その木を利用して、一気に逃げる!もしくは、倒す!よし、これで行こう)
考えるのはあまり好きではない。
だから、思い立ったら即行動の方が簡単でいいのだ。
そのせいで、私は前世で『悪役令嬢』なんて呼ばれていたわけだが……。
「キュン!」
その鳴き声とともに、私は目を開けて、体を転がらせる。
その“何かが驚いている間に木まで体を運ぶ。
全力で動いたので、かなりの速さではあるはず……。
(動きが遅い?だったら案外何とかなるかも!)
魔物思しき影は、動きが遅かった。
それを確認した私は、でかい木を蹴り上げると同時になかなかに太い枝を折り、その枝を武器にして、魔物のもとに駆け出す。
ギラギラと目を光らせていたからだろうか、その魔物は一瞬怯えているような動作をとる。
(魔物が怯える?子供に?)
何かがおかしいと思った私は、枝で思いっきり殴りつける寸前で動きを止める。
「キュンーー」
意気消沈というか何というか、その魔物………改め、キツネは地面に倒れ込む。
(き、キツネ?)
一般的な肌色のような茶色のような毛の色をしている。
(あの~これ大丈夫かな?)
枝を当てた感触はしていないため、きっと当たってはいないと思う。
だが、ただの小動物なら納得はいく。
(今の速さだったら小動物は風圧だけでもきついもんね……)
私の速さは自慢じゃないが、並みの大人よりも早い。
ミサリーがそう言っていたので、本当だろう。
大人よりも早い速度で、武器を振るっていたのだ。
小動物には少しきついものがあったのだと思う。
(流石に死にはしなかったのね。安心した)
ムクっと起き上がるその様子を見て、何とか生きてはいることがわかった。
「キュンキュン!」
誰かに怒るかのようにキツネは鳴き始める。
「ごめん、ごめんって!」
私も何とか、謝っているが当分は許されなさそうだ。
(まあ、私はすぐ帰るから関係ないんだけどね)
「じゃあ、私は帰るから。ごめんね」
四歳ともなれば発音もしっかりしてきた。
なので、聞き取りやすいはずだが、キツネには関係なかったかな。
「キュンキュン!」
私がキツネから背を向けると、そいつは先ほどとは打って変わって、私のもとにすり寄ってきた。
(何?何が起こってるの?)
もう何がなんだかわからない……。
うちに連れて帰りたいという思いもあるが、流石にダメだろう。
私はそのキツネを引き剥がそうとする。
「キュン!」
だが、頑なに私の足に張り付いているのを見ると、何だか引き剥がすのが申し訳なくなってくる。
困り果てた私は天を仰ぐ。
(って、待って!?もう夕方!?)
どんだけ昼寝してたんだ私~!
見れば見るほどに、オレンジ色に染まりあがった空を見ながら、私は焦る。
「ちょっと!離して!」
「キュン!」
時間がないというのに、キツネは離さない。
「はぁ、もういいや。とにかく早く帰らないと!」
飛んで行ったとしても、時間が足りない。
っていうか、できるだけ早く帰らなければいけないのだ。
なので速攻帰るためにも、私は魔法を使う。
「『転移』」
♦︎♢♦︎♢♦︎
「セーフ!」
「アウトですお嬢様!」
私の転移先を読んでいたのか、はたまた偶然かはわからないが、転移するなり、ミサリーが目の前で仁王立ちしていた。
「はぁ、どこへ行っていたんですか?」
「えっと、ちょっと森の方にーー」
「森ですか!?」
「えっと、領の近くにあるところ………」
「ああ、そちらでしたか。そこは比較的安全なので、問題ないですね」
(いや、問題は多いでしょ)
その言葉は口に出る前に飲み込む。
「お嬢様のことですから、我がステイラル王国の反対側まで行っちゃったのかと思いました」
今更ながらこの国はステイラルという。
(というか、私は国の反対側まで行くわけないじゃん!)
私のことを何だと思っているのだろうか。
「まあ、幸いにも旦那様はお仕事………お嬢様の発見した犯罪組織に異変があったとのことで、忙しくなく動いておりますからバレていませんよ」
「異変?」
「私も詳しくは知りません」
絶対私のせいじゃん……。
でも、そのおかげでバレていないのか。
ナイスだ自分!
「とりあえず、私はお風呂の準備をして来たいとーー」
ミサリーの笑顔が固まり、どこかを注視している。
(え?何?)
私はミサリーの視線の先を向く前に、何かが飛んできた。
「キュン!」
「いた!」
顔面目掛けてさっきのキツネが飛んでくる。
先ほどの恨みを晴らすかのように……。
(忘れてた~!)
そういえば、このキツネくっついてきてたんだ!
(『転移』って使ってもくっついていれば、一緒にできるんだ……)
ってそうじゃないんだよな~………。
「お、お嬢様!?小動物を連れ込んで何をする気ですか!?」
「いや、何もしないよ……」
「わぁ~」
羨ましそうに私を見つめるミサリー。
「ミサリーって動物好きだったの?」
「いえ、そういうわけではないんですが」
私は顔に乗っていたキツネをどかしながら、立ち上がる。
「私のもとにはなぜか動物がよってこないんですよ~」
心底悲しそうに、ミサリーがキツネに手を伸ばす。
すると、キツネは私の体を這い上って肩に乗る。
「ホラァ~」
「それは………ご愁傷様です」
それしかいえない。
「お嬢様ぁ~。飼うのはいいですけどぉ~……ぐすん……旦那様には報告させてもらいますねぇ~」
半泣きになりながらも、ミサリーは父様の私室に向かって行く。
「え?この子どうするの?」
肩の上に乗っているキツネを見ながら、私はその場で棒立ちになる。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ちょっと!暴れないで!」
私は部屋に水を張った桶を持ってきていた。
ただ、キツネは少々暴れん坊すぎるため、なかなか入ってくれないという状況である。
「あ!水飛ばさないで!布団濡れちゃうから~!」
バシャバシャと桶の中で飛び跳ねるキツネ。
よっぽど嬉しいのか、私を困らせたいのかは知らないが、とにかく暴れている。
「キュンキュン!」
「あ、だからこっちこないで~!」
濡れた体で、私に向かって突進してくるキツネ。
「………あとでお風呂入りなおそ………」
キツネとは今度から一緒に入る必要がありそうだ。
幸いというのかはわからないが、父様はキツネを飼うことを了承してくれて、部屋も与えてあげたのだ。
だから、一緒に寝るということはないはず……。
一抹の不安を感じながらも私はため息を吐くのだった。
(んん?なんか声みたいなのが聞こえたような気がするようなしないような………)
「キュン!」
(やっぱ気のせいじゃないよね!?絶対何かそばにいるよね!?)
どうしよう………これ魔物とかだったら結構詰んだんじゃない?
まあ、私自身魔物と遭遇したことがほぼなく、戦ったことはないため、どのくらいの強さなのかすらわからないのだ。
(まあ、年齢的には私よりも強いと考えるのが妥当だよね………あれ?私結構無防備なはずだけど?)
攻撃されていないことに違和感がわく。
だとしても、単に警戒していて、まだ手を出されていないと考える方が妥当ではないか?
兎にも角にも、どうにかして気づかれずに逃げた方が得策と言える。
(と、その前に状況を確認しておかないとね)
魔法を発動することはできない。
もししてしまったら、魔物?を刺激して怒らせるだけに終わる可能性があるからだ。
(とりあえず、私はさっきまで平原に寝ていたわけだよね)
よくよく考えれば、平原なんて格好の的になるだけだろう。
そんなところで眠るなんて私はなんて馬鹿のことをしたのか……。
(後悔しても遅いよね)
ネガティブな思考を振り払い、これからどうするかを模索する。
(寝る前の記憶を辿ってみると、確か私の真横にはでかい木が一本生えていたはずだ。その木を利用して、一気に逃げる!もしくは、倒す!よし、これで行こう)
考えるのはあまり好きではない。
だから、思い立ったら即行動の方が簡単でいいのだ。
そのせいで、私は前世で『悪役令嬢』なんて呼ばれていたわけだが……。
「キュン!」
その鳴き声とともに、私は目を開けて、体を転がらせる。
その“何かが驚いている間に木まで体を運ぶ。
全力で動いたので、かなりの速さではあるはず……。
(動きが遅い?だったら案外何とかなるかも!)
魔物思しき影は、動きが遅かった。
それを確認した私は、でかい木を蹴り上げると同時になかなかに太い枝を折り、その枝を武器にして、魔物のもとに駆け出す。
ギラギラと目を光らせていたからだろうか、その魔物は一瞬怯えているような動作をとる。
(魔物が怯える?子供に?)
何かがおかしいと思った私は、枝で思いっきり殴りつける寸前で動きを止める。
「キュンーー」
意気消沈というか何というか、その魔物………改め、キツネは地面に倒れ込む。
(き、キツネ?)
一般的な肌色のような茶色のような毛の色をしている。
(あの~これ大丈夫かな?)
枝を当てた感触はしていないため、きっと当たってはいないと思う。
だが、ただの小動物なら納得はいく。
(今の速さだったら小動物は風圧だけでもきついもんね……)
私の速さは自慢じゃないが、並みの大人よりも早い。
ミサリーがそう言っていたので、本当だろう。
大人よりも早い速度で、武器を振るっていたのだ。
小動物には少しきついものがあったのだと思う。
(流石に死にはしなかったのね。安心した)
ムクっと起き上がるその様子を見て、何とか生きてはいることがわかった。
「キュンキュン!」
誰かに怒るかのようにキツネは鳴き始める。
「ごめん、ごめんって!」
私も何とか、謝っているが当分は許されなさそうだ。
(まあ、私はすぐ帰るから関係ないんだけどね)
「じゃあ、私は帰るから。ごめんね」
四歳ともなれば発音もしっかりしてきた。
なので、聞き取りやすいはずだが、キツネには関係なかったかな。
「キュンキュン!」
私がキツネから背を向けると、そいつは先ほどとは打って変わって、私のもとにすり寄ってきた。
(何?何が起こってるの?)
もう何がなんだかわからない……。
うちに連れて帰りたいという思いもあるが、流石にダメだろう。
私はそのキツネを引き剥がそうとする。
「キュン!」
だが、頑なに私の足に張り付いているのを見ると、何だか引き剥がすのが申し訳なくなってくる。
困り果てた私は天を仰ぐ。
(って、待って!?もう夕方!?)
どんだけ昼寝してたんだ私~!
見れば見るほどに、オレンジ色に染まりあがった空を見ながら、私は焦る。
「ちょっと!離して!」
「キュン!」
時間がないというのに、キツネは離さない。
「はぁ、もういいや。とにかく早く帰らないと!」
飛んで行ったとしても、時間が足りない。
っていうか、できるだけ早く帰らなければいけないのだ。
なので速攻帰るためにも、私は魔法を使う。
「『転移』」
♦︎♢♦︎♢♦︎
「セーフ!」
「アウトですお嬢様!」
私の転移先を読んでいたのか、はたまた偶然かはわからないが、転移するなり、ミサリーが目の前で仁王立ちしていた。
「はぁ、どこへ行っていたんですか?」
「えっと、ちょっと森の方にーー」
「森ですか!?」
「えっと、領の近くにあるところ………」
「ああ、そちらでしたか。そこは比較的安全なので、問題ないですね」
(いや、問題は多いでしょ)
その言葉は口に出る前に飲み込む。
「お嬢様のことですから、我がステイラル王国の反対側まで行っちゃったのかと思いました」
今更ながらこの国はステイラルという。
(というか、私は国の反対側まで行くわけないじゃん!)
私のことを何だと思っているのだろうか。
「まあ、幸いにも旦那様はお仕事………お嬢様の発見した犯罪組織に異変があったとのことで、忙しくなく動いておりますからバレていませんよ」
「異変?」
「私も詳しくは知りません」
絶対私のせいじゃん……。
でも、そのおかげでバレていないのか。
ナイスだ自分!
「とりあえず、私はお風呂の準備をして来たいとーー」
ミサリーの笑顔が固まり、どこかを注視している。
(え?何?)
私はミサリーの視線の先を向く前に、何かが飛んできた。
「キュン!」
「いた!」
顔面目掛けてさっきのキツネが飛んでくる。
先ほどの恨みを晴らすかのように……。
(忘れてた~!)
そういえば、このキツネくっついてきてたんだ!
(『転移』って使ってもくっついていれば、一緒にできるんだ……)
ってそうじゃないんだよな~………。
「お、お嬢様!?小動物を連れ込んで何をする気ですか!?」
「いや、何もしないよ……」
「わぁ~」
羨ましそうに私を見つめるミサリー。
「ミサリーって動物好きだったの?」
「いえ、そういうわけではないんですが」
私は顔に乗っていたキツネをどかしながら、立ち上がる。
「私のもとにはなぜか動物がよってこないんですよ~」
心底悲しそうに、ミサリーがキツネに手を伸ばす。
すると、キツネは私の体を這い上って肩に乗る。
「ホラァ~」
「それは………ご愁傷様です」
それしかいえない。
「お嬢様ぁ~。飼うのはいいですけどぉ~……ぐすん……旦那様には報告させてもらいますねぇ~」
半泣きになりながらも、ミサリーは父様の私室に向かって行く。
「え?この子どうするの?」
肩の上に乗っているキツネを見ながら、私はその場で棒立ちになる。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「ちょっと!暴れないで!」
私は部屋に水を張った桶を持ってきていた。
ただ、キツネは少々暴れん坊すぎるため、なかなか入ってくれないという状況である。
「あ!水飛ばさないで!布団濡れちゃうから~!」
バシャバシャと桶の中で飛び跳ねるキツネ。
よっぽど嬉しいのか、私を困らせたいのかは知らないが、とにかく暴れている。
「キュンキュン!」
「あ、だからこっちこないで~!」
濡れた体で、私に向かって突進してくるキツネ。
「………あとでお風呂入りなおそ………」
キツネとは今度から一緒に入る必要がありそうだ。
幸いというのかはわからないが、父様はキツネを飼うことを了承してくれて、部屋も与えてあげたのだ。
だから、一緒に寝るということはないはず……。
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