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第21話 巨獣
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また一つ、港に大きな爆炎が上がり、紅蓮の炎が岩肌や淀んだ海面に煌々とした輝きをばらまく。
男が投げつけた“炸裂弾”が怪物を数匹、まとめて吹き飛ばしてしまった。この成果にバリケードの背後に隠れていた数名が手ごたえを感じたのだが、一方でまたすぐに黒い“靄”が空間に集まり、呆気なく怪物の増援を生み出してしまう。
押しては引き、引いては押し――一進一退の攻防が、港の至る箇所で繰り広げられていた。生き残った“義賊連合”の面々はそれぞれが協力し合い、とにかく押し寄せる怪物の群れを撃破していく。
終わりが見えなくても、とにかく今は向かってくる殺意を跳ねのけ、押し返すほかなかった。荒くれ者たちの顔には疲弊の色が見えたが、それでも彼らは体力と気力を振り絞り、手にした各々の武器と限られた物資で立ち向かい続ける。
そんな悪夢的な光景を、リオンら三人は高い位置の通路から見下ろしていた。すぐ下の通路では大斧を持った男が、怪物3体をまとめて相手に、跳ねのけている。
「生き残った連中は、この港に集結してるのか? だがそれにしても――怪物の数も相当なもんだぜ」
戦慄しながら状況を把握していくリオンだったが、すぐ隣でライフル銃のスコープを覗いているニーアが「ううむ」と唸ってみせる。
「どうやら、脱出に使えそうな船はまるでなさそうですね。どれもこれも、破壊されてしまっています。タタラが乗ってきた帆船も、すでにエンジン部分にまで火の手が上がっていますよ」
「ここから脱出は不可能か……しかし、タタラの船まで破壊されてるってのはどうにも妙だな。連合の誰かが、逃がさないように破壊したのか?」
「さあ、なんとも。あるいは、はなからタタラはこの場から逃げるつもりなどない――ということなのかもしれませんね」
ニーアの一言で、わずかにリオンは背筋を震わせてしまう。もしその予測が正しいとすれば、教祖・タタラははなからこの“義賊連合”のアジトにいる人間を残らず駆逐し、島そのものを乗っ取るつもりでやって来たのだろう。
荒くれ者たちの隠れ家から一変、タタラがけしかけた謎の怪物たちが巣くう戦場となってしまった孤島の姿を、三にはしばし、歯噛みしたまま見つめてしまった。
しかし、港を俯瞰から眺めていたリオンの目線が、とある一点で止まってしまう。彼のその明らかな動揺を、包帯男・ニーアもすぐさま察知した。
「どうしました、リオンさん?」
「あ、いや……ちょっと、見覚えのある顔を見つけたもんでさ」
リオンに言われるまま、ニーアとココも彼方の一点を見つめる。瓦礫と死体がそこら中に散らばる港の中を、その影に隠れながら背の低い男が逃げ惑っている。
「あんな所にいたとはな。あいつ、どうにか生き延びていたらしい」
「武器も持ってないところを見ると、ああやってこそこそ逃げ続けてきたみたい。指名手配されてた凶悪犯とは思えない、みっともない姿ね」
ココの歯に衣着せぬ一言に苦笑してしまうリオンだったが、もはや悠長に言葉を交わしている場合でもない。これまで同様、真っ先にココが杖を片手に動き出す。
彼女の小さな体がふわりと浮き上がり、欄干の外へと跳躍していった。
「とはいえ、あたしたち――『デュランダル』にとってやつは重要参考人よ。まだまだ聞き出したいことも山ほどあるわ。“連合”の生き残りと一緒に、救い出すわよ」
ココはリオンやニーアの返答を待つことなく、そのまま眼下に見える港へと舞い降りていく。彼女の躊躇することのない行動力に唖然としてしまうリオンだったが、彼もまた腰の二刀を引き抜きながら、欄干に足をかけた。
唯一、ライフル銃を携えた包帯男・ニーアだけがその場に残り、鋼鉄の銃身を欄干に据え置きながら告げた。
「僕はここから援護します。ココのことだから心配は無用でしょうが、万が一ってこともありますから……すみませんが、よろしくお願いしますね」
緊急事態でありながら、やはり彼の物言いは実に懇切丁寧なものだった。リオンはその律儀な性格に苦笑しながら、それでも「ああ」と力強く頷き、迷うことなく欄干を蹴って飛び出した。
“連合”の構成員たちは一人、また一人と黒い“靄”の怪物たちによって無惨に殺害されていく。事切れ、破壊された彼らの死体をそのまま怪物たちは乗っ取り、次から次へと“生ける屍”が増えていってしまう。
その悪夢のような光景に小さな体を震わせながら、“リザードマン”の男性は必死に逃げ道を探し、駆け抜ける。目の前で誰かが苦戦していようとも、まるで救いの手すら伸ばすことなく、むしろ恰好の“身代わり”として利用し、己が生存することだけを考え行動した。
しかし、そんな彼の悪運にも限界が来てしまう。突如飛来した火炎弾――抗戦していた魔法使いの“流れ弾”によって、男が隠れていた瓦礫が粉々に吹き飛ばされてしまう。
小さなリザードマンの喉元から「ぴぎい!」という情けない悲鳴が漏れた。肉体を微かに焼かれ、煤まみれになりながらもなんとか受け身を取り立ち上がった彼だが、その小さな姿を発見した“死体”たちが一斉に群がってきた。
「やっべ――待った、待った待った待った待ったぁぁあ!!」
咄嗟に叫び声を上げる小男だったが、彼の訴えが死体たちに届くわけもない。ガタガタ震えながら目を見開くリザードマンに、死体の群れが一斉に飛びかかってきた。
しかし、飛びかかった死体たちの動きが、不意に空中で止まってしまう。「へっ?」と驚きの声をあげる男の体に、まずは圧倒的な“冷気”が伝わってきた。
襲いかかってきた死体たちは皆、瞬間的にその体を“氷漬け”にされ、動きを止められてしまっている。地面から天目掛けて伸びた氷柱が肉体を貫き、凍り付かせることでその場に縛り付けてしまう。
その現象の正体を、話の中心にいる彼――リザードマン・ハーディが知り得るわけもない。一方、情けなく口を開け、立ち尽くす彼に駆け寄りながら、一人の“義賊”が刃を走らせた。
ココの“氷魔法”で動けなくなった死体たちを、リオンは次々に手にした2本のナイフで切り裂いていく。氷結した肉体ごとバラバラに切断し、屍を次々に氷塊に変えていった。
リオンの突進に、飛来した無数の銃弾が続く。ニーアもまた、動きを止めた死体たちの体内にある“核”を的確に射抜き、消滅させていった。
ハーディの周囲に群がっていた死体たちは、瞬く間によって駆逐されてしまう。危機が去ってもなお唖然としてしまうハーディに対し、リオンが熱いため息をついてみせた。
「危なかったな。もう少しでお前も、あの動く死体の群れの中に加わることになったかもしれないぜ」
「お、おおお、お前ら……生きてやがったのか!?」
「そう簡単にくたばってたまるかっての。どさくさに紛れて俺らから逃げようって魂胆だろうが、残念だったな?」
どうやらリオンの予想は当たっていたようで、ハーディは駆けつけたリオンを見てどこか恐れ慄いているようだった。ハーディが情けなく後ずさるなか、つまらなそうな眼差しを浮かべたココが辿り着き、太々しく威嚇する。
「だいたい、あんたにも私の“呪印”は刻み込んでんのよ。今更遠くに逃げようが、どこにいるかは常に把握済み――ちょろちょろ逃げ回るのはやめて、観念しなさい」
ダメ押しのように言い放つココの姿に、また一つ、ハーディは「ひいい!」と声をあげた。いざとなればココが仕掛けた“呪印”が発動し、リザードマンの肉体を麻痺させることができる。もはやどうやったところで、ハーディが『デュランダル』から逃げおおせることは不可能なのだろう。
リオンらがハーディと対峙している間にも、高所にいるニーアが港にいる怪物たちを着実に射抜き、数を減らしていた。徐々に入江に静寂が戻ってくるなか、ハーディは改めて、目の前に広がる惨状を見渡してしまう。
陸地はもちろん、海面にもバラバラに砕かれた船舶が瓦礫となって浮かんでいる。教祖・タタラが乗ってきた帆船も戦いに巻き込まれたようで、その巨体は砕け、大きく傾いていた。
おおよそハーディは、港にある船を奪い取り、混乱に乗じてこのアジトから単身、脱出を図ろうとしたのだろう。しかし、逃走手段がことごとく打ち砕かれたことで、小さな肉体の奥底に秘めた心がぼっきりと折れかけていた。
だがそれでも、かつて指名手配された小さな悪党は、諦めるつもりなどない。彼は「ちぃ」と舌打ちし、再びリオンらへと向き直る。
再び対峙したハーディの姿に、リオンとココは目を丸くしてしまった。いつのまにか、ハーディのその手には一振りのナイフが握られている。おそらく、ここまで逃げ延びる道中で、調達したものなのだろう。
「うるせぇ……これ以上、付き合ってられるかってんだよぉ!!」
明確な怒号を撒き散らしながら、ハーディはナイフをぶんぶんと乱雑に振り回す。突如激昂した彼の姿に、思わずリオンとココは一歩を躊躇してしまった。
「なんだよ……なんなんだよぉ、これはぁ!? 俺ぁ、ただ案内役にって連れてこられたんだぞ? それがなんで、こんなドンパチに巻き込まれてんだよぉ!」
「お、おいおい、落ち着けって。仕方ないだろ? まさか、こんな事態になるなんて、想定外だったわけだし――」
「だいたい、やり口が汚ねぇんだよぉ! 妹を――ピーギィのことを、人質に取るなんざなぁ!!」
支離滅裂な彼の言い分に、リオンらも肩の力が抜けてしまう。彼の言う通り、凶悪犯として名を馳せていた妹・ピーギィは現在、『デュランダル』が確保しているが、それは彼女を然るべき裁きの場に立たせるために収容しているだけだ。ピーギィの傷も医療部隊によって日々、治療が続いている。
ハーディの完全なる逆恨みにたじろぐリオンらだったが、なおも小さなリザードマンは手にした刃をいたずらに振り回し、二人を威嚇し続けている。
たとえ凶器を手にした所で、ハーディが二人に勝つことはほぼ不可能だろう。彼はそもそも、杖を媒体とした魔法で戦う魔導士なのである。ハーディの必死の態度は、彼の奮う暴力がただの虚勢でしかないことを、如実に物語っていた。
そもそも、今は仲違いなどしている場合ではない。まずは、少しでも人員を確保しながら、アジトとなっている孤島を脱出することこそが最優先なのである。
リオンはとにかく激昂するハーディをなだめようとしたのだが、やはり彼は唾と汗を撒き散らし、支離滅裂な言葉で喚き散らすのみであった。
「もうたくさんだ……それ以上、よるんじゃあねえよ!!」
ハーディはぶんと強くナイフを振り抜き、その勢いのまま踵を返す。彼は堂々と背を向け、リオンたちの前から逃走を図った。
リオンがなおも呼び止めようと、手を掲げる。一方、ココは容赦することなく“呪印”を発動させようと、「やれやれ」といった表情のまま、杖に力を込めた。
数歩、ハーディはもつれそうになる足を、それでも前に出した。彼がリオンらから離れたのと同時に、俯瞰で状況を監視していたニーアが、たまらず呟いてしまう。
「あれは――!?」
イヤリングから響いた声に、リオン、ココも目を見開く。唯一、ハーディのみが逃げることに夢中になり、すぐそばで動く“それ”に気付くことができなかった。
瓦礫が散乱している入江の水面が、ぐぐぐとせり上がっていく。海中に潜んでいた巨大な物体が、水しぶきと共にその姿を表した。
一瞬遅れ、ハーディもようやく気付く。彼はすぐそばの水面から天高く突き出したそれ――真っ黒な、なにかの“腕”を見上げ、間の抜けた声をあげてしまったり
「――はっ?」
誰一人がその正体に気付く前に、迫り出した“腕”が躊躇することなく振り下ろされる。大樹のような太さを持つそれは、すぐそばにいるハーディ目掛けて落下した。
リオンが彼の名を叫ぶ間もなかった。振り下ろされた腕――否、なにかの“触手”が、容赦なくハーディの体を押しつぶす。
ビタァンという音の中に、肉と骨が潰れ、圧縮された血が弾けるおぞましい音色が重なった。
その壮絶な光景に、リオンはもちろん、さしものココやニーアも絶句するほかなかった。『デュランダル』の精鋭部隊すら呆気に取られるなか、海面がさらに盛り上がり、入江全体が揺れた。
一本、二本とまた新たな触手が水の中にから飛び出てくる。リオンらが身構えるなか、それらの核たる存在が、瓦礫や朽ちた帆船すらも押しのけ、堂々と姿を現した。
それは、真っ黒な肉体を持つ巨大な“タコ”である。
リオンらが相手取ってきたものと同様に、黒一色の丸みを帯びた巨体が海中からせり上がり、数本の巨大な触手を揺らし一同を威嚇していた。
ハーディを押し潰した触手が、ずるりと海中へ戻っていく。地面に染み込んだ真っ赤な血の跡が痛々しかったが、そこにリザードマンの死体がないことに気付き、一同は戦慄してしまった。
巨大な黒いタコは、次から次へと触手で入江にいた怪物――もとい、それらが乗っ取った“死体”を掴み取り、引きずり込んでしまう。リオンらはその巻き添えにならないよう、叩きつけられ、振り回される触手を必死に交わし続けた。
一撃、真横に薙ぎ払われた触手をリオンが跳び超え、着地と同時に顔を持ち上げる。入江でうごめく巨体な塊の“変化”にいち早く気付き、彼は冷や汗を浮かべてしまった。
死体だけではない。港や、海面に浮かんでいた瓦礫までをも、巨大なタコは“吸収”しているのだ。なにかを取り込むたびにその肉体はさらに大きさを増し、喰らったものが体内で循環しているのか、表皮がぼごぼごと隆起しだす。
騒然としていた港の風景は、たった一匹の黒い巨獣によって綺麗さっぱりと掃除されてしまう。唯一生き残ったリオンら三人が、触手と共に体を揺らす怪物を見上げ、息をのんでしまった。
「なんてこった……こいつも――タタラが仕込んだっていうのか?」
言いながらも、リオンは自然と両の手に携えた短刀に力を込め、ゆっくりと腰を下ろしてしまう。隣に立っているココも覚悟を決めたのか、杖に力を込め、小さな体をふわりと浮き上がらせた。
「タタラってやつ、はなから話し合う気なんてまるでなかったんでしょうね。こんな“魔導生物”を仕込んでおくなんて、どっちみちここにいる人間を皆殺しにするつもりだったんでしょ。本当、分かりやすい悪党ね」
すべてが“黒”一色で彩られた巨体が、バックリと口を開く。本来のタコならば決して発することのないおぞましい雄叫びが、港の大気をびりびりと揺らした。
その明らかな“威嚇”を受け、リオンらの耳元の通信石からニーアの真剣な声が響く。
「放っておけば、この島そのものを飲み込んでしまいかねませんね。どうやらここで――やるしかないようですよ」
続けて、彼が銃弾を装填する乾いた音が響いた。その音色が契機となり、リオンとココもまた覚悟を決める。
リオンとて、これまで数々の修羅場を経験してきた。しかし、このような巨体を相手取ったことなど、一度足りとない。
生まれて初めて挑む巨獣を前に、リオンの全身におびただしい汗が伝う。叩きつけられる咆哮と極上の“圧”
を突き破るように、彼は痛いほどにナイフを握りしめ、歯を食いしばっていた。
男が投げつけた“炸裂弾”が怪物を数匹、まとめて吹き飛ばしてしまった。この成果にバリケードの背後に隠れていた数名が手ごたえを感じたのだが、一方でまたすぐに黒い“靄”が空間に集まり、呆気なく怪物の増援を生み出してしまう。
押しては引き、引いては押し――一進一退の攻防が、港の至る箇所で繰り広げられていた。生き残った“義賊連合”の面々はそれぞれが協力し合い、とにかく押し寄せる怪物の群れを撃破していく。
終わりが見えなくても、とにかく今は向かってくる殺意を跳ねのけ、押し返すほかなかった。荒くれ者たちの顔には疲弊の色が見えたが、それでも彼らは体力と気力を振り絞り、手にした各々の武器と限られた物資で立ち向かい続ける。
そんな悪夢的な光景を、リオンら三人は高い位置の通路から見下ろしていた。すぐ下の通路では大斧を持った男が、怪物3体をまとめて相手に、跳ねのけている。
「生き残った連中は、この港に集結してるのか? だがそれにしても――怪物の数も相当なもんだぜ」
戦慄しながら状況を把握していくリオンだったが、すぐ隣でライフル銃のスコープを覗いているニーアが「ううむ」と唸ってみせる。
「どうやら、脱出に使えそうな船はまるでなさそうですね。どれもこれも、破壊されてしまっています。タタラが乗ってきた帆船も、すでにエンジン部分にまで火の手が上がっていますよ」
「ここから脱出は不可能か……しかし、タタラの船まで破壊されてるってのはどうにも妙だな。連合の誰かが、逃がさないように破壊したのか?」
「さあ、なんとも。あるいは、はなからタタラはこの場から逃げるつもりなどない――ということなのかもしれませんね」
ニーアの一言で、わずかにリオンは背筋を震わせてしまう。もしその予測が正しいとすれば、教祖・タタラははなからこの“義賊連合”のアジトにいる人間を残らず駆逐し、島そのものを乗っ取るつもりでやって来たのだろう。
荒くれ者たちの隠れ家から一変、タタラがけしかけた謎の怪物たちが巣くう戦場となってしまった孤島の姿を、三にはしばし、歯噛みしたまま見つめてしまった。
しかし、港を俯瞰から眺めていたリオンの目線が、とある一点で止まってしまう。彼のその明らかな動揺を、包帯男・ニーアもすぐさま察知した。
「どうしました、リオンさん?」
「あ、いや……ちょっと、見覚えのある顔を見つけたもんでさ」
リオンに言われるまま、ニーアとココも彼方の一点を見つめる。瓦礫と死体がそこら中に散らばる港の中を、その影に隠れながら背の低い男が逃げ惑っている。
「あんな所にいたとはな。あいつ、どうにか生き延びていたらしい」
「武器も持ってないところを見ると、ああやってこそこそ逃げ続けてきたみたい。指名手配されてた凶悪犯とは思えない、みっともない姿ね」
ココの歯に衣着せぬ一言に苦笑してしまうリオンだったが、もはや悠長に言葉を交わしている場合でもない。これまで同様、真っ先にココが杖を片手に動き出す。
彼女の小さな体がふわりと浮き上がり、欄干の外へと跳躍していった。
「とはいえ、あたしたち――『デュランダル』にとってやつは重要参考人よ。まだまだ聞き出したいことも山ほどあるわ。“連合”の生き残りと一緒に、救い出すわよ」
ココはリオンやニーアの返答を待つことなく、そのまま眼下に見える港へと舞い降りていく。彼女の躊躇することのない行動力に唖然としてしまうリオンだったが、彼もまた腰の二刀を引き抜きながら、欄干に足をかけた。
唯一、ライフル銃を携えた包帯男・ニーアだけがその場に残り、鋼鉄の銃身を欄干に据え置きながら告げた。
「僕はここから援護します。ココのことだから心配は無用でしょうが、万が一ってこともありますから……すみませんが、よろしくお願いしますね」
緊急事態でありながら、やはり彼の物言いは実に懇切丁寧なものだった。リオンはその律儀な性格に苦笑しながら、それでも「ああ」と力強く頷き、迷うことなく欄干を蹴って飛び出した。
“連合”の構成員たちは一人、また一人と黒い“靄”の怪物たちによって無惨に殺害されていく。事切れ、破壊された彼らの死体をそのまま怪物たちは乗っ取り、次から次へと“生ける屍”が増えていってしまう。
その悪夢のような光景に小さな体を震わせながら、“リザードマン”の男性は必死に逃げ道を探し、駆け抜ける。目の前で誰かが苦戦していようとも、まるで救いの手すら伸ばすことなく、むしろ恰好の“身代わり”として利用し、己が生存することだけを考え行動した。
しかし、そんな彼の悪運にも限界が来てしまう。突如飛来した火炎弾――抗戦していた魔法使いの“流れ弾”によって、男が隠れていた瓦礫が粉々に吹き飛ばされてしまう。
小さなリザードマンの喉元から「ぴぎい!」という情けない悲鳴が漏れた。肉体を微かに焼かれ、煤まみれになりながらもなんとか受け身を取り立ち上がった彼だが、その小さな姿を発見した“死体”たちが一斉に群がってきた。
「やっべ――待った、待った待った待った待ったぁぁあ!!」
咄嗟に叫び声を上げる小男だったが、彼の訴えが死体たちに届くわけもない。ガタガタ震えながら目を見開くリザードマンに、死体の群れが一斉に飛びかかってきた。
しかし、飛びかかった死体たちの動きが、不意に空中で止まってしまう。「へっ?」と驚きの声をあげる男の体に、まずは圧倒的な“冷気”が伝わってきた。
襲いかかってきた死体たちは皆、瞬間的にその体を“氷漬け”にされ、動きを止められてしまっている。地面から天目掛けて伸びた氷柱が肉体を貫き、凍り付かせることでその場に縛り付けてしまう。
その現象の正体を、話の中心にいる彼――リザードマン・ハーディが知り得るわけもない。一方、情けなく口を開け、立ち尽くす彼に駆け寄りながら、一人の“義賊”が刃を走らせた。
ココの“氷魔法”で動けなくなった死体たちを、リオンは次々に手にした2本のナイフで切り裂いていく。氷結した肉体ごとバラバラに切断し、屍を次々に氷塊に変えていった。
リオンの突進に、飛来した無数の銃弾が続く。ニーアもまた、動きを止めた死体たちの体内にある“核”を的確に射抜き、消滅させていった。
ハーディの周囲に群がっていた死体たちは、瞬く間によって駆逐されてしまう。危機が去ってもなお唖然としてしまうハーディに対し、リオンが熱いため息をついてみせた。
「危なかったな。もう少しでお前も、あの動く死体の群れの中に加わることになったかもしれないぜ」
「お、おおお、お前ら……生きてやがったのか!?」
「そう簡単にくたばってたまるかっての。どさくさに紛れて俺らから逃げようって魂胆だろうが、残念だったな?」
どうやらリオンの予想は当たっていたようで、ハーディは駆けつけたリオンを見てどこか恐れ慄いているようだった。ハーディが情けなく後ずさるなか、つまらなそうな眼差しを浮かべたココが辿り着き、太々しく威嚇する。
「だいたい、あんたにも私の“呪印”は刻み込んでんのよ。今更遠くに逃げようが、どこにいるかは常に把握済み――ちょろちょろ逃げ回るのはやめて、観念しなさい」
ダメ押しのように言い放つココの姿に、また一つ、ハーディは「ひいい!」と声をあげた。いざとなればココが仕掛けた“呪印”が発動し、リザードマンの肉体を麻痺させることができる。もはやどうやったところで、ハーディが『デュランダル』から逃げおおせることは不可能なのだろう。
リオンらがハーディと対峙している間にも、高所にいるニーアが港にいる怪物たちを着実に射抜き、数を減らしていた。徐々に入江に静寂が戻ってくるなか、ハーディは改めて、目の前に広がる惨状を見渡してしまう。
陸地はもちろん、海面にもバラバラに砕かれた船舶が瓦礫となって浮かんでいる。教祖・タタラが乗ってきた帆船も戦いに巻き込まれたようで、その巨体は砕け、大きく傾いていた。
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だがそれでも、かつて指名手配された小さな悪党は、諦めるつもりなどない。彼は「ちぃ」と舌打ちし、再びリオンらへと向き直る。
再び対峙したハーディの姿に、リオンとココは目を丸くしてしまった。いつのまにか、ハーディのその手には一振りのナイフが握られている。おそらく、ここまで逃げ延びる道中で、調達したものなのだろう。
「うるせぇ……これ以上、付き合ってられるかってんだよぉ!!」
明確な怒号を撒き散らしながら、ハーディはナイフをぶんぶんと乱雑に振り回す。突如激昂した彼の姿に、思わずリオンとココは一歩を躊躇してしまった。
「なんだよ……なんなんだよぉ、これはぁ!? 俺ぁ、ただ案内役にって連れてこられたんだぞ? それがなんで、こんなドンパチに巻き込まれてんだよぉ!」
「お、おいおい、落ち着けって。仕方ないだろ? まさか、こんな事態になるなんて、想定外だったわけだし――」
「だいたい、やり口が汚ねぇんだよぉ! 妹を――ピーギィのことを、人質に取るなんざなぁ!!」
支離滅裂な彼の言い分に、リオンらも肩の力が抜けてしまう。彼の言う通り、凶悪犯として名を馳せていた妹・ピーギィは現在、『デュランダル』が確保しているが、それは彼女を然るべき裁きの場に立たせるために収容しているだけだ。ピーギィの傷も医療部隊によって日々、治療が続いている。
ハーディの完全なる逆恨みにたじろぐリオンらだったが、なおも小さなリザードマンは手にした刃をいたずらに振り回し、二人を威嚇し続けている。
たとえ凶器を手にした所で、ハーディが二人に勝つことはほぼ不可能だろう。彼はそもそも、杖を媒体とした魔法で戦う魔導士なのである。ハーディの必死の態度は、彼の奮う暴力がただの虚勢でしかないことを、如実に物語っていた。
そもそも、今は仲違いなどしている場合ではない。まずは、少しでも人員を確保しながら、アジトとなっている孤島を脱出することこそが最優先なのである。
リオンはとにかく激昂するハーディをなだめようとしたのだが、やはり彼は唾と汗を撒き散らし、支離滅裂な言葉で喚き散らすのみであった。
「もうたくさんだ……それ以上、よるんじゃあねえよ!!」
ハーディはぶんと強くナイフを振り抜き、その勢いのまま踵を返す。彼は堂々と背を向け、リオンたちの前から逃走を図った。
リオンがなおも呼び止めようと、手を掲げる。一方、ココは容赦することなく“呪印”を発動させようと、「やれやれ」といった表情のまま、杖に力を込めた。
数歩、ハーディはもつれそうになる足を、それでも前に出した。彼がリオンらから離れたのと同時に、俯瞰で状況を監視していたニーアが、たまらず呟いてしまう。
「あれは――!?」
イヤリングから響いた声に、リオン、ココも目を見開く。唯一、ハーディのみが逃げることに夢中になり、すぐそばで動く“それ”に気付くことができなかった。
瓦礫が散乱している入江の水面が、ぐぐぐとせり上がっていく。海中に潜んでいた巨大な物体が、水しぶきと共にその姿を表した。
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リオンが彼の名を叫ぶ間もなかった。振り下ろされた腕――否、なにかの“触手”が、容赦なくハーディの体を押しつぶす。
ビタァンという音の中に、肉と骨が潰れ、圧縮された血が弾けるおぞましい音色が重なった。
その壮絶な光景に、リオンはもちろん、さしものココやニーアも絶句するほかなかった。『デュランダル』の精鋭部隊すら呆気に取られるなか、海面がさらに盛り上がり、入江全体が揺れた。
一本、二本とまた新たな触手が水の中にから飛び出てくる。リオンらが身構えるなか、それらの核たる存在が、瓦礫や朽ちた帆船すらも押しのけ、堂々と姿を現した。
それは、真っ黒な肉体を持つ巨大な“タコ”である。
リオンらが相手取ってきたものと同様に、黒一色の丸みを帯びた巨体が海中からせり上がり、数本の巨大な触手を揺らし一同を威嚇していた。
ハーディを押し潰した触手が、ずるりと海中へ戻っていく。地面に染み込んだ真っ赤な血の跡が痛々しかったが、そこにリザードマンの死体がないことに気付き、一同は戦慄してしまった。
巨大な黒いタコは、次から次へと触手で入江にいた怪物――もとい、それらが乗っ取った“死体”を掴み取り、引きずり込んでしまう。リオンらはその巻き添えにならないよう、叩きつけられ、振り回される触手を必死に交わし続けた。
一撃、真横に薙ぎ払われた触手をリオンが跳び超え、着地と同時に顔を持ち上げる。入江でうごめく巨体な塊の“変化”にいち早く気付き、彼は冷や汗を浮かべてしまった。
死体だけではない。港や、海面に浮かんでいた瓦礫までをも、巨大なタコは“吸収”しているのだ。なにかを取り込むたびにその肉体はさらに大きさを増し、喰らったものが体内で循環しているのか、表皮がぼごぼごと隆起しだす。
騒然としていた港の風景は、たった一匹の黒い巨獣によって綺麗さっぱりと掃除されてしまう。唯一生き残ったリオンら三人が、触手と共に体を揺らす怪物を見上げ、息をのんでしまった。
「なんてこった……こいつも――タタラが仕込んだっていうのか?」
言いながらも、リオンは自然と両の手に携えた短刀に力を込め、ゆっくりと腰を下ろしてしまう。隣に立っているココも覚悟を決めたのか、杖に力を込め、小さな体をふわりと浮き上がらせた。
「タタラってやつ、はなから話し合う気なんてまるでなかったんでしょうね。こんな“魔導生物”を仕込んでおくなんて、どっちみちここにいる人間を皆殺しにするつもりだったんでしょ。本当、分かりやすい悪党ね」
すべてが“黒”一色で彩られた巨体が、バックリと口を開く。本来のタコならば決して発することのないおぞましい雄叫びが、港の大気をびりびりと揺らした。
その明らかな“威嚇”を受け、リオンらの耳元の通信石からニーアの真剣な声が響く。
「放っておけば、この島そのものを飲み込んでしまいかねませんね。どうやらここで――やるしかないようですよ」
続けて、彼が銃弾を装填する乾いた音が響いた。その音色が契機となり、リオンとココもまた覚悟を決める。
リオンとて、これまで数々の修羅場を経験してきた。しかし、このような巨体を相手取ったことなど、一度足りとない。
生まれて初めて挑む巨獣を前に、リオンの全身におびただしい汗が伝う。叩きつけられる咆哮と極上の“圧”
を突き破るように、彼は痛いほどにナイフを握りしめ、歯を食いしばっていた。
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