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第10話 迎撃
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目の前に鎮座する石造りの教会は、今や見る影もなかった。かつての荘厳さは完全に失われ、朽ち果てた姿がリオンら三人の目の前に広がっている。
風化した石の壁は長年の雨風に削られ、かつての滑らかな感触が荒く、粗雑なものへと変化してしまっていた。いたるところに亀裂が走り、大きく崩れた屋根の穴からは昼下がりの青空が見えている。
かつて――まだここが“廃棄地区”と呼ばれる前は、多くの人々がこの教会に足を運び、神に祈りを捧げていたのだろう。リオンは巨大な石の塊と化した教会の残骸を前に、この場所に焼き付いた過去の情景に思いを馳せてしまった。
いまやこの地に足を運ぶのは、信仰心を持った善良な市民などではない。“廃棄地区”に流れ着いた浮浪者やならず者、犯罪者の類が真昼間からこの地に集まり、持ち寄った物資を肴に“酒”を飲み交わしている。
この教会はもう、祈りの場などではない。かつての神聖な地は、今や無法者たちがテーブルや椅子を持ち運び作り上げた、即席の“野外酒場”と化してしまっていた。
酒場と言っても、かつてリオンが勤めていたような設備が整ったものではない。ガラクタや廃材を持ち寄り、辛うじて宴を楽しむことができる空間を作り上げた、といった形である。清掃など行き届いているわけもなく、足元には食べかすや空き瓶が無数に転がり、凄まじい悪臭が鼻をついた。
教会を前に立ち尽くすリオンら三人の影を、“先客”たちが鋭い眼差しを向け、観察している。誰も彼も赤ら顔ではあったものの、その肉体の内に宿した獰猛な気配はまるで腑抜けてなどいない。
その値踏みするような視線の雨を受けながら、リオンは静かに左右の二人――『デュランダル』の面々に問う。
「トモジの言葉が確かなら、ここにやつら――悪名高い『ブリュレ兄妹』がいるはずだ。ただそうなると、ここから先はなにが起こってもおかしくない。改めて聞くけど、本当に行くんだな?」
ちらりと隣を見たリオンに対し、アテナはなぜか満面の笑みを浮かべ、大きくうなずいてみせた。ボロの下の青い瞳が、わずかな太陽光を受けて爛々と輝いている。
「もちろんさ。我々にとって危険極まりない場所だが、それでも有力な情報が眠っているかもしれないのだ。ならば、行くしかないだろう?」
あっけらかんと言ってのける“女騎士”の姿に、リオンは「はあ」と肩の力が抜けてしまう。
対し、隣に立つ女剣士・カンナも目を細めてくすくすと笑った。
「荒事になるんやったら、そらそれで、な? なにせ、うちはそっちが専門どすさかい」
言いながら彼女は、腰の帯に刺した一刀をゆるりと撫でてみせた。彼女の細長い指が柄尻を遊ぶその様は、なんだか妙に艶めかしい。
無法者たちのテリトリーのど真ん中にいながら、まるで緊張感を持たない二人の姿にリオンまでも闘争心が揺らいでしまう。しかし、彼は気を引き締め直し、再び前を向く。
「そうかい……まぁ、なら了解だ。もしやばいことになったら、その時はそれぞれ、自己責任ってことで頼む。俺だって、自分の命が惜しいからな」
リオンはならず者たちの酒場を睨みつけながら、自然と両の手に力を込めてしまう。“廃棄地区”に足を踏み入れてから、常に心のどこかで臨戦態勢をとってきたのだが、いよいよ左右に携えた愛用のナイフを使う場面が訪れてしまうかもしれない。
肉体を力ませるリオンだったが、一方で不意に聞こえてきた「クスリ」という笑い声に緊張の糸が緩んでしまう。振り向くと、やはりアテナはボロの下でどこか無邪気で不敵な笑みを浮かべていた。
「どうした。一体、なにがおかしいんだ?」
「失敬。意外と君、リーダー気質なんだなぁ、と」
思いがけない一言に「えぇ?」と声を上げてしまうリオン。困惑してしまう彼に、アテナは微笑んだまま解説してくれた。
「この“廃棄地区”に足を踏み入れてから、常に我々のことまで気にかけてくれているだろう? 目の付け所も的確だし、なにより配慮が行き届いているなぁと思っていたんだ」
「いや、それは……このエリアについてよく知ってるのが、俺しかいないからだよ。だから――」
なんとも調子が狂ってしまうリオンだったが、アテナはやはり嬉しそうに彼を見つめている。二人のやり取りを、すぐ隣に立つカンナも黙ったまま、微笑と共に眺めていた。
「君の言う通り、ここは我々『デュランダル』にとっても未知の領域だ。だから、君のその知見はおおいに頼りにさせてもらっている。無論、君の“実力”についてもな?」
にっこりと笑うアテナを前に、リオンはついに返す言葉を失ってしまう。彼は困ったように後ろ頭をかき、気の抜けたため息をつくのが精いっぱいだった。
終始、空気がひりついたこの“廃棄地区”のなかにおいて、女騎士の放つどこまでも“いつもどおり”の気配は、リオンにとってもどこかわずかばかりの気休めになっていた。
そんな締まらない空気のまま、とにもかくにも一同は目の前の教会――もとい、荒くれ者たちの酒場へと乗り出す。
こちらに向けられた先客たちの射るような視線を真っ向から受け止め、三人は前へと足を運んでいく。
建物のなかに入った瞬間、四方から向けられる圧はその強さを増した。薄暗い室内に響いていた笑い声はぴたりと止まり、誰も彼もが姿を現した三人の“乱入者”へと目を向ける。
傷だらけの筋骨隆々とした戦士や、隻眼の獣人、杖を携えた覆面集団と、統一感のない面々が卓を囲んでいた。酒やたばこ、特殊な薬を楽しむ者だけでなく、“賭け”目的のテーブルゲームに興じる者や違法な取引の場として活用している者と、その目的も様々だ。
だが、リオンらが一歩を踏み込んだ瞬間、誰しもが手を止め、三人を睨みつける。表情こそ変えていないが、彼らは皆、即座にリオンたちの戦力を事細かに分析しているようだった。
なんとも手厚い“歓迎”っぷりに怯んでしまうリオンだったが、彼らが酒場のなかに視線を走らせる間もなく、最奥の一席から大きな笑い声が響く。
「カーカッカッカッ! 随分と遅かったじゃあねえかぁ、リオン」
不意に名を呼ばれたリオンはもちろん、左右に立つアテナとカンナも、一斉に一点を見つめる。
教会の最奥――石造りの“女神像”が飾られた壁のその下に、ガラクタを組み合わせて作った大きな席が設けられていた。即席の“玉座”に腰かけている“彼”の姿を、三人はほぼ同時に見つめてしまう。
席の大きさに反し、そこに座っているのは実に小さな存在であった。“彼”は三人の美女を脇に従え、長い銀色のパイプをふかしながら、にんまりと笑っている。
一言で言えばそれは、赤い鱗を持つ小さな“トカゲ男”であった。大きな頭には鋭利な角がいくつも生えており、わずかに飛び出た眼球がぐりぐりと動いている。眼の中心に浮かぶ縦長の瞳が、ギラリと輝きリオンらを捉えていた。
何から何まで聞き及んだとおりの見た目に、リオンは黙したまま歯噛みする。実際に目の当たりにする“凶悪犯”を前に、彼は微かに拳を握りしめてしまった。
二頭身の小さな体を持つリザードマンの男性・ハーディ=ブリュレは、目を細めながらまた一つ、下品な笑い声をあげてみせる。
「そうだ、その顔だ。記憶の通り、小生意気な面ぁしてやがるな」
堂々とした侮蔑の一言だったが、リオンはさほど怯むこともなく切り返す。周囲の悪漢たちの出方をうかがいつつ、臨戦態勢のまま言葉を投げた。
「へえ、天下の大悪党・『ブリュレ兄妹』に名前を覚えてもらえてるとは、光栄だな。けれど、俺とあんたは初対面のはずだけど?」
「カカカカッ! 馬鹿ぁ言っちゃいけねえよ。お前さんだって、かつては“連合”のなかにいたんだろう? そっちは興味なかったかもしれねえが、俺ぁ、早くからお前のことをしっかりとマークしてたんだぜ?」
連合――その一言でより一層、リオンの表情が曇る。思わず両の拳に力を込めてしまうリオンに、なおもハーディは無遠慮な言葉を叩きつけてきた。
「なにせあいつの――ヴァンの遺志を継ぐ、期待の若手だってんだからなぁ。いずれは大物になるだろうと踏んでたが、まさか城塞都市を駆け回る“義賊”になるとは。なにからなにまで、“師匠”譲りなこってぇ」
ハーディが笑えば笑うほどに、リオンの全身に言い知れぬ力が滾っていく。一方で、彼の隣に立ち、ボロの奥から状況を分析していたアテナたちは、ハーディが先程から口にしているとある名に思いを馳せてしまう。
ヴァン――先程出会った情報屋・トモジもその名を口にしていた。何気ないトーンではあったが、それでもやはりほんのわずかに、リオンはその名を聞き険しい表情を浮かべていたことを覚えている。
慎重に状況を見計らっているアテナらの隣で、なおもリオンは鋭い眼差しを浮かべたまま、凶悪犯・ハーディと対話していく。
「こっちだって驚いたよ。各地で暴れまわっているあんたら兄妹が、まさかこの城塞都市にまでやってきてるとはな。一体全体、なんでこんなところに? 王国相手に戦争でもおっぱじめようってのか?」
リオンは相手のペースに流されないよう、逆に向こうの思惑を引き出そうと斬り込んでいく。ハーディらの口から少しでも、城塞都市で起こっている“富豪殺し”に関する手掛かりを引き出そうと、慎重に言葉を選んでいった。
しかし、身構えたリオンらに答えたのは、目の前のハーディではなかった。
「戦争、かぁ。それも良いなぁ、楽しそう~!」
背後からの大声にリオンたちが振り返るなか、有無を言わせず、大勢のならず者たちが建物の中へとなだれこんできた。彼らは入り口を塞ぐように布陣し、各々が得物を手にして凶暴な眼差しを浮かべている。
予想だにしなかった事態に唖然としてしまうリオンたちだったが、教会のドアを押し除け、最後の一人が部屋へと入ってきた。目の前に現れた巨体に、三人の視線が自然と持ち上がってしまう。
あっけに取られるリオンらを悠々と見下ろしたまま、巨大な肉体を持つ彼女が笑った。
「兄ぃの言ったとおりだねえ。本当にのこのことやってくるなんて、揃いも揃って能天気なやつらあ!」
周囲の面々が殺気立つなか、目の前に立つ彼女だけはリラックスしたまま、肩を揺らしてケラケラと笑う。その間延びした喋り方は、どこか兄のそれに似ていた。
皮膚の上をびっしりと覆う茜色の鱗と、長い尻尾。ギョロリと飛び出た大きな目玉に、耳元まで裂けた口。兄同様、リザードマンならではの特徴を持つその姿に、リオンらは黙したまま息をのむ。身の丈3メートルはあろうかという巨大な彼女の素性を、おのずと悟ってしまった。
各地で名を轟かせる凶悪犯兄妹の妹・ピーギィ=ブリュレは、筋骨隆々とした肉体を揺らし、呆けてしまうリオンらを見下ろしながらなおも笑っている。
彼女の視線が、リオンではなくその左右に立つボロ二人へと向けられていた。
「それにしても、本当に『デュランダル』の奴らまで連れてくるなんてねぇ。しかもこの匂い――右も左も、どっちも女だぁ」
ボロの下に隠れたアテナ、カンナの視線が揺れる。リオンもずばり言い当てられてしまったことに、わずかに動揺の色を見せてしまった。
玉座の上から相も変わらず、下品な“兄”の笑い声が響く。今や完全に、この場の空気はブリュレ兄妹に掌握されつつあった。
「カーカカカッ! “義賊”さんも、随分と丸くなったなぁ、オイ! 正義の味方にあこがれてか? それとも、その二人の姉ちゃんに色仕掛けでもされちまったか? んん?」
ハーディの言葉を受け、彼の周囲を取り囲んでいる娼婦たちや、遠巻きに眺めていた悪漢たちが下卑た笑い声をあげる。だが一方で、部屋になだれ込んできたならず者たちは険しい表情を浮かべたまま、それぞれが手にした武器をゆっくりと持ち上げ、構えていた。
数にしておおよそ20ほどの軍勢が、またたくまに三人を取り囲む。布陣の中央で素早く視線を走らせながら、リオンは玉座の上に座る小さな兄目掛けて言葉を叩きつけた。
「どういうことだ……お前ら、なんで俺らが来るってことが分かった?」
「カカカッ! 妙な連中が“廃棄地区”にやってきたっていう、お達しがあったのよぉ。この都市でできた、新しい“友達”が親切におしえてくれたのさぁ」
言いながら、ハーディは懐から小さな“石”を取り出し、掲げる。かすかな光を灯すそれを見て、リオンはついに眉間にしわを寄せてしまった。
「持つべきものは友、ってことだなぁ。俺らもきちんと、お返しをしねえといけねえや。それこそ、『デュランダル』の奴らの武器や服――それこそ、女隊員の着ていた下着なんか渡せば、“あいつ”も喜ぶだろうさぁ。そういうのは、マニアックな筋に高く売れるだろうからなぁ」
「なるほど……トモジの奴か。どうりで、素直にあんたらの居場所を教えるとは思ったが……」
リオンは自分たちが“はめられた”ことに気付き、歯噛みしてしまう。三人がここにやってくることは、とうの昔にブリュレ兄妹たちには筒抜けだったらしい。
待ち伏せされ、まんまとテリトリーに誘い込まれてしまった自分たちのうかつさを、リオンは酷く恥じた。だが今は過去を悔やむのではなく、とにかくこの現状を打破するための新たな一手を考えていく。
一方、三人を高い位置から見下ろしている妹・ピーギィは、両手の指をごきごきと鳴らしながら、実に嬉しそうに笑う。
「『デュランダル』の奴らぶち殺したら、私たち、また有名人になっちゃうねぇ、兄ぃ! 懸賞金がもっともっと上がりそう」
「カカカッ! いいねいいねぇ、悪党として“箔”がつくってもんだぁ。やっぱりハルムートに来て正解だったなぁ。当分は、色々と美味しい思いができそうだぁ」
兄妹の言葉を受け、周囲を取り巻く殺気が濃度を増した。じわりと輪が近付てきたことを悟り、リオンはゆっくりと腰に携えた二刀へと手を伸ばす。
こうなっては、事情聴取もなにもあったものではない。“富豪殺し”のあれこれを聞き出すよりも、まずは自分たちが生き残ることを最優先せねばならない。
誰から相手取るべきか、どう動くべきなのか。リオンが素早く状況を分析するなか、その緊迫した空気をやはり、隣に立つ“女騎士”の一言が打ち砕く。
混沌とした酒場の空気を、アテナの透き通った声が鋭く震わせた。
「なるほど。どうやら、話し合いの余地はないらしいな。ならば、結構! そうと決まれば、やることは一つだな」
リオンが「えっ」と声を上げるなか、アテナ、そしてカンナまでも身に纏っていたボロを脱ぎ捨てる。薄汚れた布が宙に投げ捨てられ、鎧と着物に身を包んだ二人の姿があらわになった。
教会の天井に開いた大穴から太陽光が降り注ぎ、瓦礫の中央に立つ二人の姿を照らしている。くすんだ光を浴び、それでもこの場に立つ誰よりも強い輝きを放つ彼女たちの姿に、悪漢たちまでもが息をのむのが分かった。
微かにアテナは笑っていた。彼女はその強い眼差しを、玉座に座る兄・ハーディへと向ける。
「先程の一言、我々への宣戦布告ととって構わないな? 我々『デュランダル』の身ぐるみを剝ぐ――お前は確かに、そう言ったよな?」
彼女の言葉と共に、明確な“敵意”が空間を伝う。しかしそれは、周囲の悪漢たちが放つようなどんよりとした瘴気ではなく、気高く、凛とした波長としてハーディの肉体を貫いた。
さしもの凶悪犯も、アテナのその一言に「あぁ?」と呆けてしまう。だが、“女騎士”は彼らの返答など待たず、すぐさま行動に出る。
「先程の発言、そして武器を身構えたお前たちのその態度。我々への明らかな“敵意”であるとみなした。よってこれより――正々堂々、“迎撃”に移らせてもらうぞ」
しゃおんという鞘走りの甲高い音が響いた。気が付いた時にはアテナは腰の直剣と愛用の盾を手に取り、毅然と身構えている。彼女の素早い戦闘態勢に合わせるように、カンナも腰の一刀に手をかけ、微笑を浮かべたまま一歩前に歩み出た。
彼女たちのぶれることのない姿に、身構えていたはずのリオンまでも唖然としてしまう。
「お、おい、あんたら本気か? まさか――この人数とやるのかよ?」
「もちろんだ。我々、『デュランダル』はいかなる理由があろうとも、“敵前逃亡”などという発想はない。ましてや、目の前に明らかな“悪”がいるのだ。ならば、剣を取らうぬ理由などないだろう?」
うろたえるリオンに、アテナはまるでひるむことなく返してくる。一方で、その一言は離れた位置でこちらを見つめていたハーディの心にも火を灯してしまう。
「カッカッカ、威勢のいいお嬢さんだぁ。なんともまぁ、カッコいいじゃあねえか! 俺はあんたみたいな毅然とした態度をとる女が、屈服して泣き叫ぶ姿を見ると、たまらなくなっちまうんだぜえ」
ハーディは手で合図を送り、周囲に侍らせていた娼婦たちを追い払う。女を対比させ、彼はようやく小さな体を起こし、玉座から立ち上がってみせた。
彼が手を伸ばすと、椅子の隣に置いていた“杖”がひとりでに浮き上がり、手元に収まる。動物の骨や牙を組み合わせて作った禍々しい一本を手に、小さな凶悪犯は大きな目で三人を見つめていた。
圧がまた強くなり、殺気が濃度を増す。だがそれにまるで構うことなく、やはり“女騎士”は堂々と言い放った。
悪意にぶれず、不利に揺らがず、アテナの言葉は悪漢たちを真正面から押し返す。
「なるほどな。けれど残念だよ。なにせ、君を満足してあげられそうにはない。この程度で泣き叫ぶようでは、“守護隊”の長は務まらんからな!」
アテナが剣を持ち上げ、真横に振り払う。瞬間、教会内部の密な空気が一気に速度を帯び、かき回された。
突如生まれた突風に、悪漢たちはもちろん、隣に立つリオンまでも息をのんでしまう。多勢に無勢という状況を気にもせず、たった一人で毅然と前を向く彼女の姿に、なぜかリオンの体にまでも力が宿っていった。
アテナの気高い姿がリオンらを鼓舞し、そして同時に悪漢たちの怒りを増幅させる。
縄張りに迷い込んできた三人の“獲物”を前に、凶悪犯・ブリュレ兄妹は全身に力をたわませ、内に秘めていた野蛮な衝動を加速させていった。
風化した石の壁は長年の雨風に削られ、かつての滑らかな感触が荒く、粗雑なものへと変化してしまっていた。いたるところに亀裂が走り、大きく崩れた屋根の穴からは昼下がりの青空が見えている。
かつて――まだここが“廃棄地区”と呼ばれる前は、多くの人々がこの教会に足を運び、神に祈りを捧げていたのだろう。リオンは巨大な石の塊と化した教会の残骸を前に、この場所に焼き付いた過去の情景に思いを馳せてしまった。
いまやこの地に足を運ぶのは、信仰心を持った善良な市民などではない。“廃棄地区”に流れ着いた浮浪者やならず者、犯罪者の類が真昼間からこの地に集まり、持ち寄った物資を肴に“酒”を飲み交わしている。
この教会はもう、祈りの場などではない。かつての神聖な地は、今や無法者たちがテーブルや椅子を持ち運び作り上げた、即席の“野外酒場”と化してしまっていた。
酒場と言っても、かつてリオンが勤めていたような設備が整ったものではない。ガラクタや廃材を持ち寄り、辛うじて宴を楽しむことができる空間を作り上げた、といった形である。清掃など行き届いているわけもなく、足元には食べかすや空き瓶が無数に転がり、凄まじい悪臭が鼻をついた。
教会を前に立ち尽くすリオンら三人の影を、“先客”たちが鋭い眼差しを向け、観察している。誰も彼も赤ら顔ではあったものの、その肉体の内に宿した獰猛な気配はまるで腑抜けてなどいない。
その値踏みするような視線の雨を受けながら、リオンは静かに左右の二人――『デュランダル』の面々に問う。
「トモジの言葉が確かなら、ここにやつら――悪名高い『ブリュレ兄妹』がいるはずだ。ただそうなると、ここから先はなにが起こってもおかしくない。改めて聞くけど、本当に行くんだな?」
ちらりと隣を見たリオンに対し、アテナはなぜか満面の笑みを浮かべ、大きくうなずいてみせた。ボロの下の青い瞳が、わずかな太陽光を受けて爛々と輝いている。
「もちろんさ。我々にとって危険極まりない場所だが、それでも有力な情報が眠っているかもしれないのだ。ならば、行くしかないだろう?」
あっけらかんと言ってのける“女騎士”の姿に、リオンは「はあ」と肩の力が抜けてしまう。
対し、隣に立つ女剣士・カンナも目を細めてくすくすと笑った。
「荒事になるんやったら、そらそれで、な? なにせ、うちはそっちが専門どすさかい」
言いながら彼女は、腰の帯に刺した一刀をゆるりと撫でてみせた。彼女の細長い指が柄尻を遊ぶその様は、なんだか妙に艶めかしい。
無法者たちのテリトリーのど真ん中にいながら、まるで緊張感を持たない二人の姿にリオンまでも闘争心が揺らいでしまう。しかし、彼は気を引き締め直し、再び前を向く。
「そうかい……まぁ、なら了解だ。もしやばいことになったら、その時はそれぞれ、自己責任ってことで頼む。俺だって、自分の命が惜しいからな」
リオンはならず者たちの酒場を睨みつけながら、自然と両の手に力を込めてしまう。“廃棄地区”に足を踏み入れてから、常に心のどこかで臨戦態勢をとってきたのだが、いよいよ左右に携えた愛用のナイフを使う場面が訪れてしまうかもしれない。
肉体を力ませるリオンだったが、一方で不意に聞こえてきた「クスリ」という笑い声に緊張の糸が緩んでしまう。振り向くと、やはりアテナはボロの下でどこか無邪気で不敵な笑みを浮かべていた。
「どうした。一体、なにがおかしいんだ?」
「失敬。意外と君、リーダー気質なんだなぁ、と」
思いがけない一言に「えぇ?」と声を上げてしまうリオン。困惑してしまう彼に、アテナは微笑んだまま解説してくれた。
「この“廃棄地区”に足を踏み入れてから、常に我々のことまで気にかけてくれているだろう? 目の付け所も的確だし、なにより配慮が行き届いているなぁと思っていたんだ」
「いや、それは……このエリアについてよく知ってるのが、俺しかいないからだよ。だから――」
なんとも調子が狂ってしまうリオンだったが、アテナはやはり嬉しそうに彼を見つめている。二人のやり取りを、すぐ隣に立つカンナも黙ったまま、微笑と共に眺めていた。
「君の言う通り、ここは我々『デュランダル』にとっても未知の領域だ。だから、君のその知見はおおいに頼りにさせてもらっている。無論、君の“実力”についてもな?」
にっこりと笑うアテナを前に、リオンはついに返す言葉を失ってしまう。彼は困ったように後ろ頭をかき、気の抜けたため息をつくのが精いっぱいだった。
終始、空気がひりついたこの“廃棄地区”のなかにおいて、女騎士の放つどこまでも“いつもどおり”の気配は、リオンにとってもどこかわずかばかりの気休めになっていた。
そんな締まらない空気のまま、とにもかくにも一同は目の前の教会――もとい、荒くれ者たちの酒場へと乗り出す。
こちらに向けられた先客たちの射るような視線を真っ向から受け止め、三人は前へと足を運んでいく。
建物のなかに入った瞬間、四方から向けられる圧はその強さを増した。薄暗い室内に響いていた笑い声はぴたりと止まり、誰も彼もが姿を現した三人の“乱入者”へと目を向ける。
傷だらけの筋骨隆々とした戦士や、隻眼の獣人、杖を携えた覆面集団と、統一感のない面々が卓を囲んでいた。酒やたばこ、特殊な薬を楽しむ者だけでなく、“賭け”目的のテーブルゲームに興じる者や違法な取引の場として活用している者と、その目的も様々だ。
だが、リオンらが一歩を踏み込んだ瞬間、誰しもが手を止め、三人を睨みつける。表情こそ変えていないが、彼らは皆、即座にリオンたちの戦力を事細かに分析しているようだった。
なんとも手厚い“歓迎”っぷりに怯んでしまうリオンだったが、彼らが酒場のなかに視線を走らせる間もなく、最奥の一席から大きな笑い声が響く。
「カーカッカッカッ! 随分と遅かったじゃあねえかぁ、リオン」
不意に名を呼ばれたリオンはもちろん、左右に立つアテナとカンナも、一斉に一点を見つめる。
教会の最奥――石造りの“女神像”が飾られた壁のその下に、ガラクタを組み合わせて作った大きな席が設けられていた。即席の“玉座”に腰かけている“彼”の姿を、三人はほぼ同時に見つめてしまう。
席の大きさに反し、そこに座っているのは実に小さな存在であった。“彼”は三人の美女を脇に従え、長い銀色のパイプをふかしながら、にんまりと笑っている。
一言で言えばそれは、赤い鱗を持つ小さな“トカゲ男”であった。大きな頭には鋭利な角がいくつも生えており、わずかに飛び出た眼球がぐりぐりと動いている。眼の中心に浮かぶ縦長の瞳が、ギラリと輝きリオンらを捉えていた。
何から何まで聞き及んだとおりの見た目に、リオンは黙したまま歯噛みする。実際に目の当たりにする“凶悪犯”を前に、彼は微かに拳を握りしめてしまった。
二頭身の小さな体を持つリザードマンの男性・ハーディ=ブリュレは、目を細めながらまた一つ、下品な笑い声をあげてみせる。
「そうだ、その顔だ。記憶の通り、小生意気な面ぁしてやがるな」
堂々とした侮蔑の一言だったが、リオンはさほど怯むこともなく切り返す。周囲の悪漢たちの出方をうかがいつつ、臨戦態勢のまま言葉を投げた。
「へえ、天下の大悪党・『ブリュレ兄妹』に名前を覚えてもらえてるとは、光栄だな。けれど、俺とあんたは初対面のはずだけど?」
「カカカカッ! 馬鹿ぁ言っちゃいけねえよ。お前さんだって、かつては“連合”のなかにいたんだろう? そっちは興味なかったかもしれねえが、俺ぁ、早くからお前のことをしっかりとマークしてたんだぜ?」
連合――その一言でより一層、リオンの表情が曇る。思わず両の拳に力を込めてしまうリオンに、なおもハーディは無遠慮な言葉を叩きつけてきた。
「なにせあいつの――ヴァンの遺志を継ぐ、期待の若手だってんだからなぁ。いずれは大物になるだろうと踏んでたが、まさか城塞都市を駆け回る“義賊”になるとは。なにからなにまで、“師匠”譲りなこってぇ」
ハーディが笑えば笑うほどに、リオンの全身に言い知れぬ力が滾っていく。一方で、彼の隣に立ち、ボロの奥から状況を分析していたアテナたちは、ハーディが先程から口にしているとある名に思いを馳せてしまう。
ヴァン――先程出会った情報屋・トモジもその名を口にしていた。何気ないトーンではあったが、それでもやはりほんのわずかに、リオンはその名を聞き険しい表情を浮かべていたことを覚えている。
慎重に状況を見計らっているアテナらの隣で、なおもリオンは鋭い眼差しを浮かべたまま、凶悪犯・ハーディと対話していく。
「こっちだって驚いたよ。各地で暴れまわっているあんたら兄妹が、まさかこの城塞都市にまでやってきてるとはな。一体全体、なんでこんなところに? 王国相手に戦争でもおっぱじめようってのか?」
リオンは相手のペースに流されないよう、逆に向こうの思惑を引き出そうと斬り込んでいく。ハーディらの口から少しでも、城塞都市で起こっている“富豪殺し”に関する手掛かりを引き出そうと、慎重に言葉を選んでいった。
しかし、身構えたリオンらに答えたのは、目の前のハーディではなかった。
「戦争、かぁ。それも良いなぁ、楽しそう~!」
背後からの大声にリオンたちが振り返るなか、有無を言わせず、大勢のならず者たちが建物の中へとなだれこんできた。彼らは入り口を塞ぐように布陣し、各々が得物を手にして凶暴な眼差しを浮かべている。
予想だにしなかった事態に唖然としてしまうリオンたちだったが、教会のドアを押し除け、最後の一人が部屋へと入ってきた。目の前に現れた巨体に、三人の視線が自然と持ち上がってしまう。
あっけに取られるリオンらを悠々と見下ろしたまま、巨大な肉体を持つ彼女が笑った。
「兄ぃの言ったとおりだねえ。本当にのこのことやってくるなんて、揃いも揃って能天気なやつらあ!」
周囲の面々が殺気立つなか、目の前に立つ彼女だけはリラックスしたまま、肩を揺らしてケラケラと笑う。その間延びした喋り方は、どこか兄のそれに似ていた。
皮膚の上をびっしりと覆う茜色の鱗と、長い尻尾。ギョロリと飛び出た大きな目玉に、耳元まで裂けた口。兄同様、リザードマンならではの特徴を持つその姿に、リオンらは黙したまま息をのむ。身の丈3メートルはあろうかという巨大な彼女の素性を、おのずと悟ってしまった。
各地で名を轟かせる凶悪犯兄妹の妹・ピーギィ=ブリュレは、筋骨隆々とした肉体を揺らし、呆けてしまうリオンらを見下ろしながらなおも笑っている。
彼女の視線が、リオンではなくその左右に立つボロ二人へと向けられていた。
「それにしても、本当に『デュランダル』の奴らまで連れてくるなんてねぇ。しかもこの匂い――右も左も、どっちも女だぁ」
ボロの下に隠れたアテナ、カンナの視線が揺れる。リオンもずばり言い当てられてしまったことに、わずかに動揺の色を見せてしまった。
玉座の上から相も変わらず、下品な“兄”の笑い声が響く。今や完全に、この場の空気はブリュレ兄妹に掌握されつつあった。
「カーカカカッ! “義賊”さんも、随分と丸くなったなぁ、オイ! 正義の味方にあこがれてか? それとも、その二人の姉ちゃんに色仕掛けでもされちまったか? んん?」
ハーディの言葉を受け、彼の周囲を取り囲んでいる娼婦たちや、遠巻きに眺めていた悪漢たちが下卑た笑い声をあげる。だが一方で、部屋になだれ込んできたならず者たちは険しい表情を浮かべたまま、それぞれが手にした武器をゆっくりと持ち上げ、構えていた。
数にしておおよそ20ほどの軍勢が、またたくまに三人を取り囲む。布陣の中央で素早く視線を走らせながら、リオンは玉座の上に座る小さな兄目掛けて言葉を叩きつけた。
「どういうことだ……お前ら、なんで俺らが来るってことが分かった?」
「カカカッ! 妙な連中が“廃棄地区”にやってきたっていう、お達しがあったのよぉ。この都市でできた、新しい“友達”が親切におしえてくれたのさぁ」
言いながら、ハーディは懐から小さな“石”を取り出し、掲げる。かすかな光を灯すそれを見て、リオンはついに眉間にしわを寄せてしまった。
「持つべきものは友、ってことだなぁ。俺らもきちんと、お返しをしねえといけねえや。それこそ、『デュランダル』の奴らの武器や服――それこそ、女隊員の着ていた下着なんか渡せば、“あいつ”も喜ぶだろうさぁ。そういうのは、マニアックな筋に高く売れるだろうからなぁ」
「なるほど……トモジの奴か。どうりで、素直にあんたらの居場所を教えるとは思ったが……」
リオンは自分たちが“はめられた”ことに気付き、歯噛みしてしまう。三人がここにやってくることは、とうの昔にブリュレ兄妹たちには筒抜けだったらしい。
待ち伏せされ、まんまとテリトリーに誘い込まれてしまった自分たちのうかつさを、リオンは酷く恥じた。だが今は過去を悔やむのではなく、とにかくこの現状を打破するための新たな一手を考えていく。
一方、三人を高い位置から見下ろしている妹・ピーギィは、両手の指をごきごきと鳴らしながら、実に嬉しそうに笑う。
「『デュランダル』の奴らぶち殺したら、私たち、また有名人になっちゃうねぇ、兄ぃ! 懸賞金がもっともっと上がりそう」
「カカカッ! いいねいいねぇ、悪党として“箔”がつくってもんだぁ。やっぱりハルムートに来て正解だったなぁ。当分は、色々と美味しい思いができそうだぁ」
兄妹の言葉を受け、周囲を取り巻く殺気が濃度を増した。じわりと輪が近付てきたことを悟り、リオンはゆっくりと腰に携えた二刀へと手を伸ばす。
こうなっては、事情聴取もなにもあったものではない。“富豪殺し”のあれこれを聞き出すよりも、まずは自分たちが生き残ることを最優先せねばならない。
誰から相手取るべきか、どう動くべきなのか。リオンが素早く状況を分析するなか、その緊迫した空気をやはり、隣に立つ“女騎士”の一言が打ち砕く。
混沌とした酒場の空気を、アテナの透き通った声が鋭く震わせた。
「なるほど。どうやら、話し合いの余地はないらしいな。ならば、結構! そうと決まれば、やることは一つだな」
リオンが「えっ」と声を上げるなか、アテナ、そしてカンナまでも身に纏っていたボロを脱ぎ捨てる。薄汚れた布が宙に投げ捨てられ、鎧と着物に身を包んだ二人の姿があらわになった。
教会の天井に開いた大穴から太陽光が降り注ぎ、瓦礫の中央に立つ二人の姿を照らしている。くすんだ光を浴び、それでもこの場に立つ誰よりも強い輝きを放つ彼女たちの姿に、悪漢たちまでもが息をのむのが分かった。
微かにアテナは笑っていた。彼女はその強い眼差しを、玉座に座る兄・ハーディへと向ける。
「先程の一言、我々への宣戦布告ととって構わないな? 我々『デュランダル』の身ぐるみを剝ぐ――お前は確かに、そう言ったよな?」
彼女の言葉と共に、明確な“敵意”が空間を伝う。しかしそれは、周囲の悪漢たちが放つようなどんよりとした瘴気ではなく、気高く、凛とした波長としてハーディの肉体を貫いた。
さしもの凶悪犯も、アテナのその一言に「あぁ?」と呆けてしまう。だが、“女騎士”は彼らの返答など待たず、すぐさま行動に出る。
「先程の発言、そして武器を身構えたお前たちのその態度。我々への明らかな“敵意”であるとみなした。よってこれより――正々堂々、“迎撃”に移らせてもらうぞ」
しゃおんという鞘走りの甲高い音が響いた。気が付いた時にはアテナは腰の直剣と愛用の盾を手に取り、毅然と身構えている。彼女の素早い戦闘態勢に合わせるように、カンナも腰の一刀に手をかけ、微笑を浮かべたまま一歩前に歩み出た。
彼女たちのぶれることのない姿に、身構えていたはずのリオンまでも唖然としてしまう。
「お、おい、あんたら本気か? まさか――この人数とやるのかよ?」
「もちろんだ。我々、『デュランダル』はいかなる理由があろうとも、“敵前逃亡”などという発想はない。ましてや、目の前に明らかな“悪”がいるのだ。ならば、剣を取らうぬ理由などないだろう?」
うろたえるリオンに、アテナはまるでひるむことなく返してくる。一方で、その一言は離れた位置でこちらを見つめていたハーディの心にも火を灯してしまう。
「カッカッカ、威勢のいいお嬢さんだぁ。なんともまぁ、カッコいいじゃあねえか! 俺はあんたみたいな毅然とした態度をとる女が、屈服して泣き叫ぶ姿を見ると、たまらなくなっちまうんだぜえ」
ハーディは手で合図を送り、周囲に侍らせていた娼婦たちを追い払う。女を対比させ、彼はようやく小さな体を起こし、玉座から立ち上がってみせた。
彼が手を伸ばすと、椅子の隣に置いていた“杖”がひとりでに浮き上がり、手元に収まる。動物の骨や牙を組み合わせて作った禍々しい一本を手に、小さな凶悪犯は大きな目で三人を見つめていた。
圧がまた強くなり、殺気が濃度を増す。だがそれにまるで構うことなく、やはり“女騎士”は堂々と言い放った。
悪意にぶれず、不利に揺らがず、アテナの言葉は悪漢たちを真正面から押し返す。
「なるほどな。けれど残念だよ。なにせ、君を満足してあげられそうにはない。この程度で泣き叫ぶようでは、“守護隊”の長は務まらんからな!」
アテナが剣を持ち上げ、真横に振り払う。瞬間、教会内部の密な空気が一気に速度を帯び、かき回された。
突如生まれた突風に、悪漢たちはもちろん、隣に立つリオンまでも息をのんでしまう。多勢に無勢という状況を気にもせず、たった一人で毅然と前を向く彼女の姿に、なぜかリオンの体にまでも力が宿っていった。
アテナの気高い姿がリオンらを鼓舞し、そして同時に悪漢たちの怒りを増幅させる。
縄張りに迷い込んできた三人の“獲物”を前に、凶悪犯・ブリュレ兄妹は全身に力をたわませ、内に秘めていた野蛮な衝動を加速させていった。
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