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プロローグ
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閉め切ったガラス窓から差し込む月光が、並ぶ枯れ木の影を室内まで伸ばし、椅子や机の上を滑らせる。
誰一人いない静かな空間で、“彼女”はただ一人、暗闇の中を歩く。
左右に並べられた本棚の隙間から、時折、鋭く差し込んでくる夜の光を頬に受けながら、思いを馳せる。
――あいつのせいだ。
あらゆる感覚が酷く希薄になってしまったこの肉体の奥で、それでも確かに残っている強い思いがあった。
静かに湧き上がってくる、例えようのない恨み。
今までの自分では決して感じなかったであろう、明らかな邪悪さを孕んだ憎しみ。
今の“彼女”を突き動かしているのは、それだ。
こうして大好きだったこの場所にいるというのに、考えれば考えるほど、肉体の奥底でどす黒い炎が燃え上がり、騒ぎ立てる。
本棚の前に立ち、“彼女”は背表紙の群れを見つめ、自然と呟いてしまう。
固く拳を握りしめ、瞬きすらせず、一心不乱に呪文のように口走る。
あいつが悪いんだ。
あいつのせいで全てを失い、こんなことになっているんだ。
居場所を失い、宝物を奪われ、未来を消され。
“命”すら――無くなった。
人気のない図書館に、怨嗟の言葉がこだまする。
渦巻く憎悪を身にまとった“彼女”は、誰にも届くことのない無数の呪いを、ただひたすらに吐き出し続けた。
書物は決して答えてはくれない。
無数の“物語”が詰まったそれらはただ黙したまま、月光の中で蠢く“彼女”の言葉に耳を傾けていた。
誰一人いない静かな空間で、“彼女”はただ一人、暗闇の中を歩く。
左右に並べられた本棚の隙間から、時折、鋭く差し込んでくる夜の光を頬に受けながら、思いを馳せる。
――あいつのせいだ。
あらゆる感覚が酷く希薄になってしまったこの肉体の奥で、それでも確かに残っている強い思いがあった。
静かに湧き上がってくる、例えようのない恨み。
今までの自分では決して感じなかったであろう、明らかな邪悪さを孕んだ憎しみ。
今の“彼女”を突き動かしているのは、それだ。
こうして大好きだったこの場所にいるというのに、考えれば考えるほど、肉体の奥底でどす黒い炎が燃え上がり、騒ぎ立てる。
本棚の前に立ち、“彼女”は背表紙の群れを見つめ、自然と呟いてしまう。
固く拳を握りしめ、瞬きすらせず、一心不乱に呪文のように口走る。
あいつが悪いんだ。
あいつのせいで全てを失い、こんなことになっているんだ。
居場所を失い、宝物を奪われ、未来を消され。
“命”すら――無くなった。
人気のない図書館に、怨嗟の言葉がこだまする。
渦巻く憎悪を身にまとった“彼女”は、誰にも届くことのない無数の呪いを、ただひたすらに吐き出し続けた。
書物は決して答えてはくれない。
無数の“物語”が詰まったそれらはただ黙したまま、月光の中で蠢く“彼女”の言葉に耳を傾けていた。
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