召喚された勇者ですが魔王様のペット『犬野郎』として後宮で飼われています。

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1章 『勇者』は失業の危機にある。

今までは『犬』見習い(インターン)やったんですか? 1

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 窓(てか庭先やな)から入ってこられた『魔王』様なご主人様に、いきなりおしおきをされそうな俺は『勇者』ナシこと、渡辺 梨生。
 元はダブりの大学4回生で年は23歳。

 現在はこの異世界の鬼族という亜人種の王族(皇族)の後宮兼遊郭で、『【白】の魔王』様の『オスの性奴隷ペットの犬(未満)』をしている。

「駄犬、貴様…覚悟は良いのか?」

 ご主人様のお手が俺の着物の合わせに伸びる。

 そのことで遂に俺もご主人様からお情けを賜り、いよいよラスボスであられるあの・・ご主人様の魔王様を、俺のおけつに受け入れるのかと思い、歓喜に胸を踊らせていたが……

 そんな俺の期待も虚しく、そのお手は俺の胸ぐらをぐいと掴んだ。
 そしてそのまま片腕のみでご主人様は俺を釣り上げる。

「あらら…ご主人様~なんでそないにおこですのん?」

 身長差が20センチ近くあるので、ギリギリ着くか着かないかだが、足をプラプラさせながらお尋ねする。

 (俺、細いけど結構筋肉あるから75kg以上あんねんで?すごいわぁ!)

「…どうやら貴様というやつは全くコトを理解しておらぬようだな?」

 こんなことを言われたご主人様は、俺を放り投げるとその場に胡座をかいて座られた。
 草履は既に脱がれており、お腰に佩いた刀などをおろされている。

 今日は学校から帰られると、狩りと呼ばれるお務めをされてからこちらに来られたようだ。

 (期末試験に入られたというのにお忙しいなぁ)

 その穢れを落とす為に禊(冷水被り)を済ませてすぐに来られたようで、まだ髪の毛は乾ききっていなかった。

「あ、お風邪を召されますさかい、次からはもうちょい御髪おぐしを乾かしてから、お支度にしましょうね?」
 
 どうやら先程の大量の鬼火で髪を乾かされていたようだ。
 何度かそんなことをされているので知っているが、意外と面倒くさがりのこの方は、ご自分の容色に全く頓着されない!
 この神々しい美貌を損なう行動を俺は看過出来ず、お説教をする。

「ご主人様!何度もご忠言申し上げとりますけど、あれは御髪が痛みおすしよろしないですよ?
せっかくの美しい御髪がわや(台無し)になったらもったいないです。
それから傷んだ時のオススメは椿油です!俺もちっこい頃から使つこてます」

 高い位置で結われた御髪は乱れており、髪を結われたまま水浴びをされたとわかる。

 (これは綺麗に乾かしてから、結い直してさしあげなくてあかしまへん!)

 そう考え、俺はご主人様の元結いに手を伸ばすが、その手をピシャリとはたかれる。

「要らぬわこの阿呆!
貴様、鬼のオスの頭を気安く触るな!私でなければ殺されておるぞ?」
「はぁ…それはえろうすんまへん」

 叱られてしまったが、俺としては見過ごすことはできない。

 (後でご機嫌が治ったら御髪をあたらせてもらお)

 しかしながら、今日はご主人様にとって喜ばしい日のはずなのに、何故かご機嫌は最悪であるらしい。
 普段は穏やかな方なのだが、俺と話していると時々このようにキレられる。
 今日は初っ端からブチギレまくっているし、苛立ちを隠せないお声で俺を叱責されている。

「全く、この犬野郎は!貴様は一体どれほど私を弄び、苛立たせれば気が済む!」
「ええぇ~ッ?!俺…なんかしましたぁ?」 
「ほぉ…見当がつかぬと申すのか?この駄犬は」

 滅茶苦茶に恐ろしい鬼面をつけた顔で俺を恫喝されるご主人様。

「ご主人様、近い近い近い近い近い近いッ!そのお面めっちゃ怖っわいわぁ~!」

 俺に詰め寄るご主人様のお面がマジに怖い。 

 (能に使われるような鬼の面やけど般若より怖いねん!ちなみに角は自前やで)

「貴様のその様子ではそうは感じぬぞ」

 お面に空いた目の穴から覗く金の瞳はギラリとした光を放ち、大変恐ろしい。

「駄犬、貴様の行動はたし、こえた。
…拒むなら、去るのならなぜあのようなことを申した?」

 未だに外されていない面の下のお顔は多分、あの時・・・のような冷たいお顔に違いない。
 そう簡単に予想がつくほど氷のように冷ややかなお声で俺に尋ねられる。

「なんのことですやろか?」
「私は言わぬ。貴様が今日した行動を振り返ってみろ」

 そう仰られるとぷいと横を向き、お年相応に可愛らしい反応で拗ねられたご主人様に、俺はニヨニヨしてしまうが、言われたことについても反芻していた。 


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